■獣達の啼く夜■
水貴透子 |
【3405】【北城・善】【狛鬼使い】 |
「今回で7件目か」
桃生 叶は遺体に被せられているビニールシートを捲りながら小さく呟く。
今回もまるで獣に食い荒らされたような遺体だった。
ここ3週間で七人もの人間が通り魔にあっている。
被害者の共通点は全くなく、共通して言えることは毎回、獣に食い荒らされたような遺体だという事。
「叶さん、気合入ってますね」
名も知らない同僚達が声を潜めて言っている。
「気合も入るさ、この通り魔事件の最初の被害者は彼女の妹だったんだからな」
年を取ると口が軽くなうというのは本当らしい。
「…すみませんケド、これ以上見ていても無意味なので失礼します」
そう言って叶はすたすたとどこかへと歩いていった。
これが普通の刑事課なら許されないのだろうが、叶が所属しているのは無職一課。
迷宮入りになりそうな事件、迷宮入りになった事件を調べる一課、といえば聞こえはいいが
簡単に言えば邪魔者を放り込む用なしの一課、というのが事実だ。
「…ふん、里香の仇は必ずとるわ…」
そう言って叶は調査書をファイルしてある分厚い本を取り出してパラパラと捲る。
「昨日の事件は公園か、今日の夜にでも調べに行こうかしら…」
▽ライターより▽
初めましての方もそうでない方もこんにちは、瀬皇緋澄です。
このシリーズ…獣達の啼く夜は一応続きモノですが、短編の集まりにする予定です。
ですから、最初から参加されても途中から参加されても大丈夫…だと思います^^:
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獣達の啼く夜〜act1〜
オープニング
「今回で7件目か」
桃生 叶は遺体に被せられているビニールシートを捲りながら小さく呟く。
今回もまるで獣に食い荒らされたような遺体だった。
ここ3週間で七人もの人間が通り魔にあっている。
被害者の共通点は全くなく、共通して言えることは毎回、獣に食い荒らされたような遺体だという事。
「叶さん、気合入ってますね」
名も知らない同僚達が声を潜めて言っている。
「気合も入るさ、この通り魔事件の最初の被害者は彼女の妹だったんだからな」
年を取ると口が軽くなうというのは本当らしい。
「…すみませんケド、これ以上見ていても無意味なので失礼します」
そう言って叶はすたすたとどこかへと歩いていった。
これが普通の刑事課なら許されないのだろうが、叶が所属しているのは無職一課。
迷宮入りになりそうな事件、迷宮入りになった事件を調べる一課、といえば聞こえはいいが
簡単に言えば邪魔者を放り込む用なしの一課、というのが事実だ。
「…ふん、里香の仇は必ずとるわ…」
そう言って叶は調査書をファイルしてある分厚い本を取り出してパラパラと捲る。
「昨日の事件は公園か、今日の夜にでも調べに行こうかしら…」
視点⇒北城・善
獣達の啼く夜〜act1〜
最近、連続通り魔事件が頻繁に起きている。犠牲者は三週間で七人と被害が起きている。犠牲者達に共通点は全くといってなく、一つだけ言えるのは皆がケモノに食い殺されたような殺され方をしているということ。
「…はー…。人ならざるものの犯行ねぇ、遺体はどれもケモノに食い殺されたような殺され方、か」
善はソファに背を預けて新聞を読んでいる。新聞に書かれている記事はどれも連続通り魔事件のことばかりだ。こんな事件が頻繁に起きるとは嫌な世の中になったものだ。
「さて、犯行現場まで行ってみるかな」
獣人や人以外の犯行ならばお手の物なので善は今回の事件を調べてみる事にした。
そして、今回の犯行現場である公園、人通りも多く、第一発見者は朝ジョギングをしていた中年男性だったとか。まだ夕方という事もあって警察関係者やマスコミの人間が所狭しといる。その中で善は一人の女性に目がいった。手帳を見せて現場から離れているところを見ると恐らく警察の人間だろう。現場を見ておきたかったがこの人込みでは近寄る事さえできないだろう。
「しかたねぇ、また夜にでも来るか」
さすがに夜ならば人はいないだろう。こんな物騒な事件があるのだから下手に犯行現場付近をうろついていたら次は自分かもしれないという事を皆は知っているのだから。
その夜…。
時間は九時を過ぎたところ、犯行現場は青いシートで覆っているだけで他に人の気配はしない…はずだったが善は一人の女性がいる事に気がついて咄嗟に自分を木の影に隠す。
「…あれは…」
善は犯行現場をうろついている女性に見覚えがあった。夕方に見た警察の人間だ。何かを探すように色々な場所を歩き回っている。傍目には犯人が何かを探しに戻ってきたと取られても仕方のないことだ。
「何してんだい?」
善が話しかけると女性はビクッと肩を震えさせる。
「あ、あなたは…?」
よほど怖かったのだろう。声を上擦らせながら善に「何をしているの?」と問いかけてくる。
「そっちこそ…何をしてるんだ?てっきり犯人が戻ってきたのかと思ったぜ」
そう善が言うと「違うわよ!」と女性は少し声を荒げながら善に食って掛かる。
「私は桃生叶、これでも刑事よ、ほら手帳」
そう言って上着の内ポケットから黒い警察手帳を取り出して善の眼前に突きつけた。
「刑事さんが何してるわけ?勤務時間外だろ?しかも一人だし」
善がそう言うと叶と名乗った女性は下を俯いて「この事件の犯人は私が捕まえたいの」と小さな声で呟いた。話を聞けば、この連続通り魔事件の最初の被害者が叶の妹だったのだそうだ。
「…妹が…」
「だから―…犯人は私が捕まえたいの、里香の為に」
そう叶がいい終わったときだった。うぅ、と唸るような声が夜の公園に響いた。
「な、何?」
叶は拳銃を構えて回りを見渡す。善も叶につられるようにして周りを見渡すが…視線の先にいたソレに二人は言葉を失った。
叶と善の背後に立っていたソレは限りなく人に酷似したケモノだった。
「…うぅ…」
ケモノは一旦呻いた後に二人に向かって襲ってきた。善は叶を突き飛ばすようにして庇い、ケモノの爪で着ていたスーツの袖が破かれる。
「…ちっ」
破れた袖のところからは赤い血がぽたぽたと流れ、善は痛みに顔を歪ませる。
「ちょ…大丈夫!?」
叶が血を見て慌てて善のところに走ってくる、が…善のところにやってくるまでにケモノに殴り倒されてしまう。
「おい!」
叶は壁に強く叩きつけられて気を失う。幸い命に別状はなさそうで善はホッと胸をなでおろした。
「おい、て―…」
てめぇ、と言いかけた時に善の背後からナイフが飛んできてケモノの眉間に突き刺さる。ケモノは雄叫びのような、断末魔のような声をあげながらザァッと砂のようになって消えた。
何が起こったのか分からない善はナイフが飛んできた方向を見る。そこにいたのはジャングルジムの天辺で善を見ながら笑う少年の姿だった。
「…あんたは…誰だ?今のは…お前がやったのか?」
「そうだよ、だって俺が作ったものだからどうしようと勝手でしょ?ライオンと人間の遺伝子を混ぜて作ったんだけど、喰う事しか興味なくてウザイから殺した。これからの事を考えると目立った好悪胴は控えてほしいからね」
まるでおもちゃを壊したかのように言う少年に善はゾクと鳥肌が立つのを感じていた。
「お前は…誰だ…?」
「俺は十六夜・夜白。お前ら人間によって人間をやめさせられたものだ。おにーさん、覚えておくといいよ。これは始まりだ。これから起こる惨劇の始まりでしかないんだという事をね。今日はやりあうつもりはないから退くけど、次に会った時…邪魔するなら殺しちゃうよ」
クスクスと楽しげに笑いながら夜白は夜の闇に溶け込むようにして消えていった。
「なんだったんだ…?いったい…」
連続通り魔事件の犯人はケモノで、黒幕は今の夜白と名乗った少年という事だろう。話を聞いた限り、夜白も人間ではないということが分かる。
「始まりだといっていたな…まだ続くのか…?」
善の呟くような言葉は夜の闇に浮かぶ満月のみが聞いていた。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
3405/北城・善/男性/30歳/狛鬼使い
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■ ライター通信 ■
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北城・善様>
初めまして、今回「獣達の啼く夜」を執筆させていただきました瀬皇緋澄です。
「獣達の啼く夜」はいかがだったでしょうか?
初のおまかせだったので、緊張しながら書きました^^;
少しでも面白かったと思ってくださったらありがたいです^^
それでは、またお会いできる機会がありましたら、よろしくお願いします^^
−瀬皇緋澄
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