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■獣達の啼く夜■

水貴透子
【2196】【エターナル・レディ】【TI社プロモーションガール】
「今回で7件目か」
 桃生 叶は遺体に被せられているビニールシートを捲りながら小さく呟く。
 今回もまるで獣に食い荒らされたような遺体だった。
 ここ3週間で七人もの人間が通り魔にあっている。
 被害者の共通点は全くなく、共通して言えることは毎回、獣に食い荒らされたような遺体だという事。
「叶さん、気合入ってますね」
 名も知らない同僚達が声を潜めて言っている。
「気合も入るさ、この通り魔事件の最初の被害者は彼女の妹だったんだからな」
 年を取ると口が軽くなうというのは本当らしい。
「…すみませんケド、これ以上見ていても無意味なので失礼します」
 そう言って叶はすたすたとどこかへと歩いていった。
 これが普通の刑事課なら許されないのだろうが、叶が所属しているのは無職一課。
 迷宮入りになりそうな事件、迷宮入りになった事件を調べる一課、といえば聞こえはいいが
 簡単に言えば邪魔者を放り込む用なしの一課、というのが事実だ。
「…ふん、里香の仇は必ずとるわ…」
 そう言って叶は調査書をファイルしてある分厚い本を取り出してパラパラと捲る。
「昨日の事件は公園か、今日の夜にでも調べに行こうかしら…」


         ▽ライターより▽
 初めましての方もそうでない方もこんにちは、瀬皇緋澄です。
 このシリーズ…獣達の啼く夜は一応続きモノですが、短編の集まりにする予定です。
 ですから、最初から参加されても途中から参加されても大丈夫…だと思います^^:
獣達の啼く夜〜act1〜

オープニング

「今回で7件目か」
 桃生 叶は遺体に被せられているビニールシートを捲りながら小さく呟く。
 今回もまるで獣に食い荒らされたような遺体だった。
 ここ3週間で七人もの人間が通り魔にあっている。
 被害者の共通点は全くなく、共通して言えることは毎回、獣に食い荒らされたような遺体だという事。
「叶さん、気合入ってますね」
 名も知らない同僚達が声を潜めて言っている。
「気合も入るさ、この通り魔事件の最初の被害者は彼女の妹だったんだからな」
 年を取ると口が軽くなうというのは本当らしい。
「…すみませんケド、これ以上見ていても無意味なので失礼します」
 そう言って叶はすたすたとどこかへと歩いていった。
 これが普通の刑事課なら許されないのだろうが、叶が所属しているのは無職一課。
 迷宮入りになりそうな事件、迷宮入りになった事件を調べる一課、といえば聞こえはいいが
 簡単に言えば邪魔者を放り込む用なしの一課、というのが事実だ。
「…ふん、里香の仇は必ずとるわ…」
 そう言って叶は調査書をファイルしてある分厚い本を取り出してパラパラと捲る。
「昨日の事件は公園か、今日の夜にでも調べに行こうかしら…」


視点⇒エターナル・レディ

 獣達の啼く夜〜act1〜

「ふぅ…」
 レディは今、連続通り魔事件の七件目の事件があった公園にいる。何でこんな暗く、殺人事件があった場所なんかにいるのかというと『仕事』だからだ。
 先ほど見かけた少年達のやり取りを見てレディは確信をした。夜白と名乗る少年は自分達『TI社』側の人間、いや…生き物なのだということを。
「ハ〜イ。貴方をお迎えに来ちゃいました、夜白クン。アナタは選ばれたエリートとしての資格がありま〜す」
 レディは公園から少し離れた場所に座り込んでいる少年、十六夜・夜白に話しかける。夜白は怪訝そうな目でレディを見た後に「誰?」と短く問いかける。
「あたしの名前はエターナル・レディ、そうねぇ…あなたと同じと言ったら話がスムーズに通じるかしら」
 レディがそう言うと夜白は驚いたような顔でレディを見た。その表情は仲間を見つけた、という切望にも似た表情だった。
「お前も…あの製薬会社の…生き残り…?」
 夜白はか細く、小さな声で呟いた言葉にレディはきょとんとした顔で「製薬会社?」と疑問に疑問で言葉を返した。
「…誰だ。お前。あの会社の生き残りじゃなければ…なんでそんな身体を持っている!」
 夜白はレディが製薬会社の生き残りではないということを知ると表情を途端に変えて大きな声で怒鳴りつけた。
「…あたしは製薬会社の生き残りがなんなのかは知らないけれど、あなたのその力に興味があるの。あたし達の会社には、アナタと同じ遺伝子を強化合成したお友達が、い〜っぱいいるの。社長さんも貴方なら喜んで歓迎するって言ってました〜。」
「会社?合成遺伝子生命体の…?」
 夜白はそう呟きながら拳をギュッと握り締めて、レディに殴りかかろうとした。
「そんな会社に俺が行くとでも―…っ!?」
 立ち上がろうとした身体はガクンと膝が折れて、また座っていた場所に戻される。
「無駄ですね。さっきから貴方は燐粉を吸って身体が自由に動きません。それだけ動けるだけでも凄いですよ〜。お姉さん、感心しちゃうな」
 レディは本当に感心した、といった表情で笑う。夜白はレディの笑う顔を見てギリと唇を噛み締める。
「お前は…」
「あたしは蝶の遺伝子を持ってるんですよ。あたしにぴったりだと思いませんか?」
 クスクスと笑いながらレディが言うが夜白は何も言わない。
「…お前は一つ勘違いをしている」
 動かない身体を無理に動かす事を諦めて、夜白は溜め息交じりに呟く。
「かんちがい、ですか?」
「俺は、俺は!こんな力なんて望んだわけじゃない!!普通に人間として、年老いて、結婚をして、子供を持って、しわくちゃの顔になって死にたかった!なのにっ!」
 夜白は叫んだ。噛み締めた唇からは血は流れ、夜白の口を伝う。夜白の心の叫びをレディは淡々とした顔で見ていた。
「でも、復讐をするんでしょう?先ほどの話、聞かせていただいたんです。あなたは犠牲者ぶっているけれど、している事はあなたをそんな身体にした人たちと同じことではないんですか?罪のない人間を…獣と合成しているんですから」
 違う、と夜白は言いかけて言葉を止めた。
「否定、できないでしょう?認めたくはないでしょうが、あなたも汚いと罵った人間と同じ事をしているんですよ」
「やめろっ!」
 夜白はレディを睨みつけながら怒鳴る。
「まぁ、今回はスカウトにきただけですから。お返事は次回に聞かせていただきますね。では、良いお返事を待ってま〜す」
 そう言いながらレディは背中から翼を出して、夜白の前から姿を消した。
「…TI社…」



「社長、例の少年のところに行ってきました」
 レディは携帯電話を取り出して社長に電話をする。
「反応ですか?今回は微妙なところでしたね。ですが、彼は捨て置くにはあまりにも惜しい人材です。人と獣を合成させる技術を独自で編み出したのですから。天才と言う言葉で括るには簡単すぎますけど、え?はい。また今度お誘いに行ってみようかと思ってます。きっと彼は期待にこたえてくださいますよ」
 それだけ言うとレディは電話を切った。
 そう、多分…あの夜白という少年はこちら側へといずれやってくるだろう。今回は無理でも次に誘いに行ったときはきっと乗ってくるだろう。
「それにしても…製薬会社がどうとか言ってましたね。生き残りということはあの少年以外にも合成遺伝子生命体が存在するのかしら。そうなったらまたあたしの仕事が増えちゃうなぁ…」
 レディは気だるそうに呟くが、その表情は言葉とは裏腹にどこか楽しげにも見える。
「あぁ、今日はとてもいい月ね」
 レディは夜空を見上げながら呟く。
「いずれにせよ、彼の答えを聞くのは遠くない未来になりそうね」
 レディが意味深に呟いた言葉の意味を知るものはいなく、夜空に浮かぶ丸い月だけがその囁きを聞いていた。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2196/エターナル・レディ/女性/23歳/TI社プロモーションガール

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■         ライター通信          ■
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エターナル・レディ様>

初めまして、今回「獣達の啼く夜」を執筆させていただきました瀬皇緋澄です。
「獣達の啼く夜」に発注をかけてくださいまして、ありがとうございました^^
夜白側の話というのは初めて発注がきたものですから驚きました。
少しでも面白いと思ってくださったらありがたいです^^
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^^

              −瀬皇緋澄