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■★鶴来理沙の剣術道場■

雛川 遊
【2592】【不動・修羅】【神聖都学園高等部2年生 降霊師】
剣神リアイアの巫女、鶴来理沙の剣術道場です。
理沙と一緒に武の道を極めたい人や、必殺技の修行をされたい人は修行をされて汗をかいてみませんか?
剣術道場では修練を積むお手伝いから戦いのアドバイスまで、手広くカバーしています。
なんとなく和みたい人も大歓迎!
ぜひ一度当道場の門をお叩きください。

★鶴来理沙の剣術道場

●ようこそいらっしゃいました! 〜オープニング〜

 はじめまして。
 当道場は剣神リサイアの巫女、鶴来理沙(つるぎ・りさ)の剣術道場になります。
(――――つまりこの私が道場主です!)
 場所はあやかし荘の大部屋を間借りして開いています。が、とある結界の力を用いて道場内に色んな修行の場を出現させたり、古の武術を伝える師範がいたりと、ふつーの道場ではないのです。
 武の道を極めたい人、必殺技の修行をされたい人、なんとなく和みたい人などは、ぜひ当道場の門をお叩きください。ビンボーですががんばりますので!
 あ、それと補足がひとつ。
 ただいま門下生希望者は、随時熱烈大歓迎です☆

 それでは、本日も良き修行の場になりますよーにっ。


●本日の修行、開始です!

「‥‥‥その格好、は‥‥?」
 二本の刀を背負った青年、五降臨 時雨(ごこうりん・しぐれ)が道場の入り口をくぐって発した第一声がこの一言。
「水着です!」
「‥‥‥」
「‥‥‥」
 道場内の一角に不自然な光景が広がっている。
 凛とした木造の道場の壁に、妙な揺らいだ空間でつながるように、その向こう側に涼しげな渓流の流れの光景が見えているのだ。冷たそうな清流の中、木刀と浮き輪を抱きしめた青いワンピースタイプの水着をつけている理沙のアンバランスな格好は、時雨に言葉を失わせるには十分だった。
「こ‥‥‥これは、結界の力‥‥?」
 道場には特殊な結界が存在しているため、道場内でありながら別の場所とつながり修行することもできるようになっている。
「はい、便利な力ですね、結界。これで修行もばっちりでしょう」
「そ、それで‥‥‥どうして、水着‥‥‥」
「いや、あの。最近って暑いですから」
 冷たい川の流れから上がっていそいそとバスタオルで体を拭きながら、浴衣を羽織って理沙が訊ねかけた。
「で、どうしたんですか? 顔色がすぐれないようですが」
 思い出したように、時雨は顔を青ざめさせてガタガタと震え出す。
「大屋さん‥‥に‥‥殺される‥‥」
「ころされるっ!?」
 ただ事ではない時雨の言葉に、理沙が色めき立った。同じ貧乏生活の仲間であり一言で事情を悟ったのだ。
「うぅ‥‥つらいときはいっしょに叫びましょう。びんぼうのばかー!!」
「‥‥‥貧乏の、馬鹿‥‥!」
「がんばりましょう、時雨さんっ!」
「同情するな‥‥ら家賃‥‥く‥‥れ」
 無常な言葉にがっくりとうな垂れる理沙。現実は夏の猛暑のようにキビシイのだ。気持ちを切り替えて、理沙は時雨を渓流の大滝に誘う。
「つらいときは修行です! 疲れるまで体を動かしましょう!」
「‥‥‥‥こ‥‥ここで?」
「はい! 大滝に打たれて身と心を清めるんです! あと、水の抵抗がある中での運動は動きを鍛えるのに最適ですし」
 たとえば、川の流れの中で剣の打ち込みをするだけでも、足運びの際にかかる水の抵抗や、流れに足を取られないためのバランス感覚、深さの違いがあるデコボコした川底など、普通の床で行う練習とは違った鍛錬になること間違いない。
 早速、竹刀を手にして時雨は清流に足をつけた。
「う‥‥‥冷た、い‥‥」


「よお、遊びにきてやったぜ」
 神聖都学園の降霊師、不動 修羅(ふどう・しゅら)がガラッと扉を開けて道場に入ってきた。
「あ、こっちですよー。ご自由にお入りくださいっ!」
 道場の奥から理沙の大声が聞こえる。
 何となく感じ取れる気配の方向を頼りに進むと、奇妙な空間が道場の一角に広がっていた。
 室内なのに、向こう側には大自然の渓流がある。
「うおっ、なんだこれ、よく分からねぇけど凄ェな」
「えへへ、侍さんたちの残されたちょっとした贈り物です。修羅さんもご一緒に修行しますか?」
「すまん。今、佐々木小次郎を降霊しているから耳が聴こえないんだ」
 修羅は、修験道系の不動神祇陰陽宗家後継者であり、様々な霊や神を自身の体に降臨させることができる能力を持っているのだ。
「あうぅ〜‥‥それじゃここにお茶、出しておきますからね。ごゆっくりしていってください」
 しばらくお茶を啜りながらぼ〜っと理沙や時雨の修行を眺めていた修羅だが、気が変わったのか、ほっと声を出して立ち上がった。
「よう、やるかい?」
 声をかけてきたのは、剣術道場師範代の一人である無精髭の武芸者――剛陣(ごうじん)。
「ああ、頼むぜ」
 修羅は応えるように宮本武蔵を降霊して二刀を構える。
「ククッ、粋な事をしてくれるもんだな」
 剛陣もすらりと二本の刀を構えた。彼も二刀流を得手としているのだ。
 『二刀流』対『二刀流』
 空気が重い――瞬間、川原の小石が跳ね、一瞬にして間合いが詰まった。疾風のような動きで自在に生き物のような二刀を操る両者の間で、見えない無数の剣撃が交錯して火花を散らす。
「――在野の剣豪、良い太刀筋だ」
「まだまだだぜ。体がなまって仕方がないな」
「ハッ、これはどうかな!」
 突然、修羅の太刀筋が変わった。
 必殺の「突き」が剛陣を襲う。しかし、剛陣は紙一重で突きをかわしていた。
「ほう、この新撰組が斉藤一の突きをかわすとは‥‥」
「化け物みてぇな突きだな。だが、今、一瞬の間があったぜ」
 修羅が表意させていた霊を、宮本武蔵から斎藤一に変えていたのだ。しかし、その入れ替わる一瞬の隙を見逃さなかった剛陣も只者ではない。
 こうして、修練であることを忘れさせるような立会いはまだしばらく続くのだった。


 突然、道場の入り口から大きな声が掛けられた。
「頼もう!! 道場破りが参ったでござる!!」
「なぁ、なにごとですか!?」
 ズズゥ〜ンと周囲を震わせるような重低音と激しい振動に思わず理沙が飛び上がる。
 返事を待つことなく、その黒い鎧をまとった不気味な影は、駆動音を響かせながら隙なく道場の中を進んできた。
 楓希 黒炎丸(ふうき・こくえんまる)――黒き武者型の機械兵士だ。
 その腕は、阿修羅を思わせる6本腕。
「我が名は月霞様の一番刀、世界征服四人組が武者『おにぎり名人』の黒炎丸!! 拙者たちの世界征服の邪魔をするものはボロ雑巾にしてやるでござる!!」
「そんな、道場破りだなんて!?」
 と驚きながらも、理沙は期待に満ちた瞳を嬉しそうにキラキラさせている。
「拙者は、一度暴れ出すと自分でいうのもなんだが手がつけられぬでござるぞ。ここが破壊されてもよいならこの場で勝負いたすでござる」
「よ、よくないですっ!! こっちでやってください、こっちで」
 と、渓流の川原を指差す理沙。
 黒き機械の鎧武者は、3本の右腕に「金棒」「十字槍」「薙刀」、もう3本の左腕には「のこぎり刀」「斬馬刀」「戦斧」を構えて隙のない構えだ。
「――面白そうじゃないか。丁度体も温まった頃だし、俺が相手をしてやろうかい」
 豪快な笑みと共に、剛陣が二刀を構えた。
 即座に勝負が始まる。動いたのは黒炎丸から、振り下ろされた攻撃を避ける剛陣。空を切った打撃はそのまま地面にぶつかり大地を揺るがす。恐ろしいほどの力だ。
 さらに連続して放たれる一撃一撃が必殺の破壊力を持ちながら六本の腕から繰り出された。二刀しかない剛陣だが、速さでは勝り、波状で繰り出される鎧武者の攻撃を身のこなしと受け流し、そして地形をうまく生かしてかわしていった。
 一進一退の攻防が続く。
「ほらほら、当たらないことにはその破壊力も宝の持ち腐れだな」
「その軽口――止めてみせるでござるよ!!」

                「黒炎丸秘儀! 必殺・黒炎陣」

 ――――六本の腕と武器をフルに使った暴風雨のような連続攻撃。瞬間。
 視界が暗転した。何が起こったかわからない。
「はッ、なかなかな攻撃だったぜ――」
 剛陣の言葉を最後に、機械兵士はそのまま意識を失っていった‥‥。


                             ☆


 遠くに、少し早い蝉の鳴き声が聞こえる。
「あ、目を覚まされましたか?」
 そこは庭に面した縁側だった。
 庭側の道場の壁は大きく開くようになっていて、横に開けると広めの庭が現れる造りになっているのだ。
 黒炎丸は額におかれた濡れタオルをとると、勢いよく上半身を起こして庭を見つめた。陽が暮れようとしている。
「よう、気がつきやがったかい」
 柱にもたれて腕を組んだ剛陣が、ニカリと笑った。
「いつやってもまだ負ける気はしねーが、きっちり勝たせてもらった。ま、今回はこっちには地の利もあったしな」
 憎々しげに言い放つ剛陣。
「だが、立会いに言い訳は無しだ。今日のところはこの俺が勝たせてもらったぜ」
「く‥‥っ、拙者、負けたつもりなど毛頭ござらん! 今日は不覚があっただけでござる!」
 ひとしきり睨み合った後、憤るように、しかし礼儀を守りながら黒炎丸は背を向ける。
「おう。俺はいつでもここにいる。気が向いたらまた来るがいいさ」
 そう言って剛陣は去っていく鎧武者をカッカッカッと気持ち良さそうな笑い声で見送った。
「‥‥‥道場は、もう直ってる‥‥ね」
 一方、修行を終えた時雨は残念そうに広い道場を見回す。
 以前にこの道場を開くため、借りる場所であるあやかし荘の大広間に取り憑いていた武者の幽霊と戦ったときの部屋の痛みについての事をいっているのだが、修繕は終えられているようだ。
「未修理のままで道場に使うわけにはいきませんからね」
 縁側に腰掛けた時雨の隣に座って、くの一の師範代・村雨汐(むらさめ・しお)は懐かしそうに遠くを見つめる。
 ‥‥ただ、黒炎丸が道場内で暴れていたら修理どころか建て直しができたかもしれない‥‥。
「修理作業の雑用代をお支払いできなくて、ごめんなさいね」
「‥‥‥‥残念、だ」
「そんなにお金は出せないでしょうけれど、時雨さんも初心者向けで先生をされてみては?」
 まだ門下生は全然いませんけどね、と汐が小さく舌を出してみせると、修羅がヨォと声をかけた。
「修羅さま。いかがなさいました?」
「いかがってモンじゃないけどよ、汐と剛陣にちょっとした言伝ってやつがあってな」
「ん? 俺にもか?」
 ひょっこりと顔を見せる剛陣。
 ああ、と頷いて修羅が

「お前らが元気で安心したってよ。さっき残月丸たちが言ってたぜ」

 それは今は決して交わることのない時空からの伝言。
 剛陣は無造作に頭をかいて表情を隠すように背を向け、汐は嬉しそうに何度も、かみ締めるように頷いた。
「あいつらもしぶといこったぜ。人の心配ばかりしやがって」
「兄さんたちも‥‥元気ですよね、きっと‥‥」


 暮れ始めた夕陽を見つめながら、目元を拭った汐は、時雨と古今の暗殺術についてもうしばらくだけ話を続けることにした。




【本日の修行、おしまい!】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【1564/五降臨 時雨(ごこうりん・しぐれ)/男性/25歳/殺し屋(?)】
【2592/不動 修羅(ふどう・しゅら)/男性/17歳/神聖都学園高等部2年生 降霊師】
【3300/楓希 黒炎丸(ふうき・こくえんまる)/男性/1歳/武者型機械兵士】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、雛川 遊です。
 ゲームノベル『鶴来理沙の剣術道場』にご参加いただきありがとうございました。
 作成が大幅に遅れてしまい申し訳ありませんでした。今年はトラブルとの遭遇率が異常に高いような‥‥(泣)
 剣術道場はゲームノベルとなります。行動結果次第では、シナリオ表示での説明にも変化があるかもしれません。気軽に楽しく参加できるよう今後も工夫していけたらと思います。
 魔物退治ミッションや特別ゲスト(これまでの登場キャラクター)との交流なんて興味はありますか?

 最近、温暖湿潤気候なんてウソのような暑さが続きますね。なんだか倒れそうです。皆さんも熱中症には気をつけてくださいませ。

 それでは、あなたに剣と翼の導きがあらんことを祈りつつ。


>修羅さん
残月丸たちも降霊できるんですね! その手があったか、というかイタコの口寄せを思い出してしまいました。ですが、降霊術による修練なので剣術自体の普通の成長という感じです。