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■目隠しの森〜獣達の啼く夜act2〜■

水貴透子
【2259】【芹沢・青】【高校生/半鬼?/便利屋のバイト】
 七人の犠牲者が出て、事件は一瞬の静寂を迎えた。
 ―…八人目の犠牲者は出ない、はずだったのだが…。
 七人目の犠牲者が出てから一週間、八人目の犠牲者が出た―…。
「ぐっ…」
 現場に向かった刑事の一人が遺体を見て、吐き出す。どんなに刑事歴の長い人間でもこの悲惨な現場を見たら吐き出してしまうのも無理はないだろう。
「吐くのは勝手だけど、現場を汚さないでね」
 叶は冷たく男の刑事に言うと、遺体の方へと足を進めた。
 殺され方は今までと同じ獣に食いちぎられたような殺され方。
 こんな異常な犯罪は今までにないため、同一犯と考えてもおかしくはないだろう。
「…だけど―…」
 今までと違うのは被害者が殺された場所。
 今までは人目につくような場所で殺されていたのだが、今回はあまり人が通らない樹海。間違えれば遺体は誰にも発見されない可能性だってあるのだ。
「…なんで今回はこんな場所に…」
 今までと何か違うのだろうか、叶はそう思いながら現場を後にした。



  ライターより

 この「目隠しの森」は前回の獣達の夜の続きになります。
 ですが、読みきりの短編シリーズなので、前回参加されてない方でも話が分かるように書きます。
 これは発注をかけてくださった方のみが登場する個人受注製です。
 発注をいただきましたら精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。
 
 
目隠しの森〜獣達の啼く夜act2〜

オープニング

 七人の犠牲者が出て、事件は一瞬の静寂を迎えた。
 ―…八人目の犠牲者は出ない、はずだったのだが…。
 七人目の犠牲者が出てから一週間、八人目の犠牲者が出た―…。
「ぐっ…」
 現場に向かった刑事の一人が遺体を見て、吐き出す。どんなに刑事歴の長い人間でもこの悲惨な現場を見たら吐き出してしまうのも無理はないだろう。
「吐くのは勝手だけど、現場を汚さないでね」
 叶は冷たく男の刑事に言うと、遺体の方へと足を進めた。
 殺され方は今までと同じ獣に食いちぎられたような殺され方。
 こんな異常な犯罪は今までにないため、同一犯と考えてもおかしくはないだろう。
「…だけど―…」
 今までと違うのは被害者が殺された場所。
 今までは人目につくような場所で殺されていたのだが、今回はあまり人が通らない樹海。間違えれば遺体は誰にも発見されない可能性だってあるのだ。
「…なんで今回はこんな場所に…」
 今までと何か違うのだろうか、叶はそう思いながら現場を後にした。


視点⇒芹沢・青

 目隠しの森〜獣達の啼く夜act2〜

「八人目の犠牲者が出たのか…」
 今回もあの時に出会った夜白という少年の仕業だろう。あれで終わりにするような奴じゃないってのは分かっていたけれど…。八人目の犠牲者が出たって事は、また新しくこの間のようなバケモノを作ったのだろう。
「…むかつくんだよ…」
 青は事件の事が書いてある新聞をグシャと握りつぶしながら呟いた。あの夜白という少年は『復讐』だと言っていた。何か自分には分からない深い事情と言うものもあるのだろう。
 だけど、復讐をするのならば相手を間違っている。当人達にはしないで、今頃馬鹿みたいに範囲だけを広げて人間全体を復讐の対象にしている、それは間違っていると思うし、そうなればそれは只の八つ当たりにしか過ぎない。
「…八つ当たりの結果、あいつは死んだんだ」
 それが青は許せないと思った。
「…樹海か、行くしかなさそうだな」
 青は上着を引っ掴んで家を後にした。樹海に行けば今回の事件を引き起こしたバケモノに出会う事になるだろう、そうなれば必ず、その背後には夜白がいるはずだ…青はそう思ったのだ。
「あの時の女刑事も来るのかな…」
 あの後、起こさないで帰ったし、そのことも言われるだろうな…。その前に事件の事を追及されたらどう切り抜けようか…。いや、それよりまず「帰れ」って言われそうだ。
「…言われて帰るくらいなら行かねーけどな」
 青は電車に乗りながら言う。早ければ最終までには帰ってこられるだろう。
「嫌な…月だな」
 事件のある日は決まって満月だ。この間のときも丸い月が出ていたような気がする。青はガタンガタンとゆれる電車の中で月を見ながらボーッとしていた。


 樹海というだけあって、夜になれば一層一面の闇と化している。
「またあなたなの?」
 樹海に入って暫く歩いていると、予想通りこの間の女刑事と出会ってしまった。
「この間の事、どうなったのか聞かせてもらえないかしら?」
「別に、どうもなかったけど…」
 青は素っ気無く返事を返すと女刑事は「はあ…」と溜め息をついて肩を竦ませた。
「じゃあ、私は何もないただの公園で夜を明かしたって事になるわけね、…ってそんな事あるわけないでしょう」
 この刑事は事件の事を調べにきたはずなのに、そこら中に響き渡るような大きな声で叫んでいる。
「どうでもいいけど、そんな大きな声だしていいのか?」
 青が言うと女刑事はハッと両手で口を覆った。
「そういえば、名前を聞いてないわ。私は桃生叶よ」
「俺は芹沢青、青でいい。それより気にならないか?」
 青が上を見上げながら小さな声で言う。なにが?と叶が聞く。
「鳥の声も、虫の声も何も聞こえない。何もいないみたいだ。おかしくないか?」
 樹海なら鳥や虫の鳴き声がうるさくてもおかしくはないのに、この樹海ではそれが何もないのだ。
「…あ」
 叶も気がついたようで周りを見渡しながら「本当だ…」と言う。
 その時だった。悲鳴のような雄叫びのような声が樹海中に響き渡った。青はこの声に聞き覚えがあった。この間のケモノもこんな声をしていたから。
「やぁ、また来たんだね、おにーさん…とこの間のおねーさんか」
 木の上から少年特有の高い声が響く。
「やっぱりお前の仕業か、夜白」
 青は木の上で青たちを見下ろす夜白に青は鋭くにらみつけた。
「…ビーンゴって言いたいけど、今回は俺じゃないんだよね。みちるっ」
 夜白がさけぶと同時に翼の羽ばたく音が青の耳に入ってきた。月夜に照らされるその姿は大きなカラスを思い浮かばせた。
「なんや?こいつら」
 みちると呼ばれた女性は夜白の隣に立った。
「味方じゃないね、今回も邪魔しに来たみたいだし」
「殺ってもいいんか?」
「だめだよ、一人や二人くらいは見物人もいた方がいいだろ?みちるの作ったアレ、戦わせてみれば?実践データが欲しいって言ってたじゃん」
 しゃーないなー。みちるはそう言いながら指笛をピーっと吹いた。それと同時に先ほどの雄叫びのような声が再度静かな樹海に響く。
「夜白は人間と動物の合成をしてるんやけど、うちは動物同士の合成をするンや。まぁ、楽しませてな」
 みちるが言い終わると同時に叶が「危ない!」と叶が叫んで青を突き飛ばす。みちるが呼んだケモノ、それはライオンに翼が生えたものだった。ただでさえ素早い生き物なのに、翼があるとなると厄介どころではない。
「冗談じゃねぇっての!」
 青はそう叫びながら雷の網でケモノを動けなくさせ、そこにいくつもの雷を落とした。逃げ場はない。全ての雷が命中してケモノは真っ黒になっていた。
 はぁ、と肩で息をしていると驚く叶の姿とヒュー、と口笛を吹くみちるの姿が見えた。
「へぇ、おもろい技使うンやな。あんた、うちらの仲間にならへん?人間なんかと一緒にいてもおもしろくないやろ?」
 みちるが木から降りてきて青の隣に立ちながらそう言う。
「俺は人間の味方とかそんなのでここにいるわけじゃない。俺がそうしたいからだ。それに−…馬鹿な復讐をしようとしているお前らの仲間なんてごめんだね」
 復讐という言葉を聞いてみちるの表情が険しくなった。
「あんたになにが分かるん?いきなり全てを失ったあたしらの気持ちなんか分からんやろ!」
「分かりたくもないね。当の本人達に復讐をするんじゃなく、今を生きる人間たちに復讐なんてお門違いだろ」
 パシンと渇いた音が樹海に響く。みちるが青の頬を引っ叩いたのだ。
「あんたも所詮は人間なんやね。次に会ったときは特別にあんただけはあたしが殺してあげる。覚えといて、それに―…」
 ひそ、とみちるは青の耳元で何かを呟いた後に夜白と共に姿を消した。

 いい事を教えたげるわ。
 実験は成功してるンや。今ままでみたいに知性の欠片も持たないケモノとは違う。意思を持ったケモノを作る事に成功したンや。
 敵はあたしらだけじゃなく、以外と近くにおるかもしれへんのや

 去る間際に青にみちるが言った言葉。
「青くん、あのひとは…?」
「敵はあいつらだけじゃない、身近にいるって…」
 その言葉を聞いた叶も首をかしげるばかりだった。
 青がその言葉の本当の意味を後に知る事になる。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2259/芹沢・青/男性/16歳/高校生/半鬼?/便利屋のバイト

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■         ライター通信          ■
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芹沢・青様>

前回に続いて発注をかけてくださり、ありがとうございます^^
目隠しの森を執筆させていただきました、瀬皇緋澄です。
「目隠しの森」はいかがだったでしょうか?
少しでも面白いと思ってくださったら幸いです^^
何かご意見等がありましたら遠慮なくどうぞです^^
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^^


         −瀬皇緋澄