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■ぼくとご主人さま。■

瀬戸太一
【3566】【アンラル・アルボーガド】【闇の主】
 俺?見てわかるように、黒コウモリだ。
何で昼間でも飛んでるかって?俺ぁ、こう見ても魔女の使い魔なんだよ。
但し、とんでもなく未熟モンの魔女だけどなっ。

で、なんでこんなとこうろついてるかっていうとだな…
あの魔女が、いっちょまえに雑貨屋なんぞ経営してんだがな、一向に客がこねえんだよ。
だからこの俺様が、カンユーとかしてやってるわけ。
主人想いだよな、俺もっ。

つーわけで、そこのアンタ。
うちの店来てみねえ?歓迎するぜっ。
どーゆう歓迎されるかは知らねえけどな、ケケケ。
アンタの日ごろの行いが良けりゃ、悪い結果にはならねーと思うぜ。

使い魔、呆然とするの巻


 俺?見てわかるように、黒コウモリだ。
何で昼間でも飛んでるかって?俺ぁ、こう見ても魔女の使い魔なんだよ。
但し、とんでもなく未熟モンの魔女だけどなっ。

で、なんでこんなとこうろついてるかっていうとだな…
あの魔女が、いっちょまえに雑貨屋なんぞ経営してんだがな、一向に客がこねえんだよ。
だからこの俺様が、カンユーとかしてやってるわけ。
主人想いだよな、俺もっ。

つーわけで、そこのアンタ。
うちの店来てみねえ?歓迎するぜっ。
どーゆう歓迎されるかは知らねえけどな、ケケケ。
アンタの日ごろの行いが良けりゃ、悪い結果にはならねーと思うぜ。






           ◆





 …とは言ったものの。
な、何で、こんなとこに…
(ドラゴンがうろついてんだーっ!!!)
 じろり、と目の前のでかいドラゴンが俺を睨み、俺は思わず震えた。
俺はこう見えても魔女の使い魔だから、ちょっとやそっとのことでは死なない。
傷や病気にも強く、本来は出ることのできない昼間にもどうどうとあたりと飛び回ることができる。
でも…でも…。

いくら使い魔でも、頭から丸呑みにされちゃおしまいだ。

「………」
 目の前のドラゴンから、ぷしゅうと鼻息が漏れる。
俺はひくひくと震えながら、
「ま、まあ…落ち着こうぜ!な!」
 自分に言い聞かすように深呼吸をした。

 ここは住宅街からだいぶ離れた林の中。
あまり開発もされていないから、ほとんど人はこない。
それを知っている俺は、昼寝でもしようと思ってやってきたわけだが…。
殆ど人が寄り付かない木々の合間に、大きな人影が見えた。
少しいびつな形をしているものの、とりあえずは、と思って
いつものように陽気に声をかけて、”カンユー”をしてみた。
カンユー先は、俺の主人である魔女のルーリィがやっている雑貨屋。
最近開店したものの、あんまり客の入りがよくないそうで、俺も微力ながら手伝っているというわけだ。
…これが、普通の人間ならよかったんだけども。
 俺が勧誘した相手は…何故か、人里近くにおりてきていたドラゴンだった。

 …ドラゴン。それは深い森に住み、滅多に人の目につくようなところには出てこない、伝説上の生き物。
しかし実際は、確実に存在するし、俺みたいな中途半端な魔物とも動物とも違う生き物にとって、かなりの脅威だ。
なんせ、ドラゴンは…魔物を食うのである。
つまり、俺。
俺イコール、目の前のドラゴンの食料。
(ひぃぃぃぃぃっ!)
 俺はいまさらながら事態の凶悪さに怯えて、ぶるぶると震えた。
(ど、ドラゴンの三時のおやつはいやーっ!)
 もし、目の前のドラゴンが腹を減らしていたら、それこそ一瞬で俺なんか消滅してしまう。
 しかし、まだ食われていないということは、目の前のドラゴンは満腹なんじゃないだろうか?
俺はふとそう思い、試してみることにした。
すなわち、コンタクト。
「あ…うん、こ、これじゃ話しにくいよなっ!うん!」
 俺はかくかくと頷いて、人型になることにした。
いくらなんでも小さいコウモリのままじゃ、あっという間に飲み込まれてしまう。
 俺は腹のあたりに、うん、と力をこめ、気を念じた。
そして、ぽんっと音がして、俺は人型になっていた。
ルーリィの魔力が弱いせいで、背中に小さな羽はついているものの、
12歳程度のかわいらしい少年の出来上がり。
これで、一瞬で飲み込まれてしまう危険は去った。ふう。
「ま、まあ。ドラゴンの旦那!とりあえず、じっくり話そうぜ!」
 俺はにこやかな笑みを浮かべてドラゴンに話しかけた。
ドラゴンはわかっているのかいないのか、少し首を傾げている。
「えーっと、通じてる?ユーキャンスピーックイングリッシュ?」
「…………」
 ドラゴンは始終無言で鼻息を噴出していたが、
唐突に俺の頭の中に直接”声”が鳴り響いた。
『…”いんぐりっしゅ”とは何だ』
「おおっ、アンタつっこみできるじゃん!」
 俺はホッと胸をなでおろした。とりあえず、言葉は通じるらしい。
「ま、ここじゃ人がくるかもしんねーから…とりあえず、もうちょっと奥いこうぜ!」
 俺はにこにこと敵意がないことを笑顔で証明しながら、
親指をピッとさし、林の奥を指差す。
ドラゴンは軽く頷き、重そうな体を揺らしながら奥へと入っていった。
それに続きながら、俺はふと思った。
(…もしかして、奥にいけばいくほど…俺、やべーんじゃねーの?)
 背筋がぞっと寒くなった。












「んで、何だっけ?」
 俺は切り株に腰掛けながら、ドラゴンに話しかけた。
このドラゴンの名前は、アンラル・アルボーガド、性別は男。歳はわからないらしい。そりゃそーだ。
全身真っ黒で、耐えず独特の気配を噴出している。
なんというか、その…とりあえず、怖い。
まさに、肉食動物と草食動物の関係。例えるなら、俺はライオンに睨まれたインパルってとこだ。
しかし怖いけども、ここは仕方ない。俺が食われないために、友好関係を築く必要がある。
と、いうわけで。友好関係を築くにはまず会話からだ。
『あんた、俺の話を聞いてくれんのか』
 どうでもいいけど、頭の中に直接声を届ける以外に方法はないのか。
これを続けていると割れそうに痛い。ちくしょう。
『すまねえ、人の言葉は判るにはわかるが、喋ることはできない。慣れてくれ』
 ていうか、俺も頭ん中読まれてるし。
『これも精進だ』
 ドラゴンのおっさん、意味わかんねーよ。
 俺ははぁ、とため息をつき、もう一度言った。
「んで、俺に何か用?」
 先ほどまでは食われる心配でいっぱいだったが、改めてドラゴン…いや、アンラルの様子を見ると、
何だか俺に用事があるようなのだ。
「何か俺にできることがあったらするし。言ってみ?」
 …食事の手伝い以外なら。
 そういうと、アンラルはフゥと息を吐き、深い声で言った。
『…この前、バイトの面接を受けにいったんだよ』
「ぶっ!」
 俺は思わず噴出した。
ドラゴンが?面接?
 どこのだよっ!
『寿司屋だ』
 あ…あほかーーーっ!!!
どこの世界に、寿司屋にバイトにいくドラゴンがいるんだ!?
 俺はぷるぷると震えた。勿論、先ほどとは違う意味での震えだ。
『…ドラゴンが寿司屋にバイトに行っちゃあ悪いのか?』
「いや…悪くないけど…うん。悪くはないと思う」
 確かにドラゴン禁止なんて寿司屋じゃなければいいと思うけども。
でもなあ…その、常識っつーもんがあるじゃねーか。
『常識なんぞに縛られているのは愚かな証拠だ』
 はいはい…。確かにそのとおりですよ。
「んで…どうなったん?」
『断られた』
「そりゃそーだろ」
 俺は予想通りの答えに、思わず言ってしまった。
アンラルは少しムッときたのか、俺をじろりと睨んだ。
「い、いやっ!残念だったな、うん。次回がんばれっ」
 俺は慌てて心にもないことをまくしたてた。
危ない危ない、食われるところだったぜ。
『まあいいが…。とりあえず、断れた理由が、だ。
”竜だからダメ”だぞ?あんた、納得できるか』
「うーん…あいにく、ドラゴンになった覚えはないからなぁー。
て言うか俺バイトの面接とかいったことねーし」
『何で行かないんだ。今の時代、コウモリでも働くことが必要だぞ』
 いや、何を考えての必要性かよくわかんねーんだけど。
「でも、俺働いてるぜ?一応」
 俺がぽろりと漏らした言葉に、アンラルはひどく反応した。
『ほんとか。魔物なのに?』
 魔物で悪かったなっ!どーせ俺はあんたみたいな捕食者から食われる立場の存在だよ!
「あー…俺の主人の魔女がさ、店開いてるんだよ。雑貨屋。
んで、そこの手伝い。なんつーか、営業?みたいな?」
 ははは、と笑ってみせる。
『ふぅむ…魔女か…』
 アンラルはそう唸って、暫し考え込むそぶりを見せた。
 …ちょっとまて。この展開、激しくやばくねーか?
俺がびくついていると、アンラルは、”うむ”と言って顔を上げた。
『もし、良ければ…俺もそこに…』
「だぁーーーーーっ!!!」
 俺は思わず大声でアンラルの言葉をさえぎった。
呆然としているアンラルを前に、俺はぜいぜいと肩で息をしながら叫んだ。
「いや!その…あれだ!ウチ、まだ開店したばっかで全然儲かってないし!
人雇う理由なんかねーし!そもそも、多分あんたの大きさだと、うちの店に収まらねーと思うんだな、俺は!」
『…そ、そうか?確かに俺はどちらかといえば体長は大きいほうだと思うが…』
 どちらかといえば、じゃなくて十分でけーんだよ、あんたはっ!
 俺はそう叫びたい気持ちをぐっとこらえ、
「そうそう、ウチ狭いからさ!多分、すっげー窮屈だと思うんだ!」
『そうか…残念だ』
 そういって、肩を落とすしぐさを見せた。
 ってほんとにウチで働く気だったのかよ!?
ドラゴンの考えることはよくわかんねー…。
『まあ、それはそれとして…。んじゃあんた、ドラゴンでも雇ってくれる仕事場、しらねえか?』
「ど、ドラゴンを雇う仕事場…?」
 こりゃまた難しい相談だ…。
 俺はうむぅと唸った。ドラゴンを雇うということは、十分な広さを持つ職場じゃないと無理だ。でかいし。
そして精密作業も難しいだろう。あんまりそういうの向いてなさそーだし。
でも客商売は、というとこれは更に難しいだろう。
絶対客が逃げる。むしろ、たまに客を食ってしまうかもしれない。
ドラゴンは腹が減ってりゃ人も襲うって話だし。
ということは…力仕事か?工場とか。空も飛べるから、宅配だとか…。
 俺はそこまで考えて、ハッと我に返った。
……何で、ドラゴンに似合う仕事なんて悩まなきゃいけねーんだよっ!!
もう、我ながら馬鹿馬鹿しくて呆れてしまう。
『…思いつかないか?』
 アンラルは俺の顔を覗き込むように首をかしげた。
馬鹿馬鹿しいが、こいつはこれでも真剣なんだよな…多分。
「…空飛べるから、宅配とか…いーんじゃねーかなーとか…」
 俺はぼそっと言った。かなり無責任な発言だということは覚悟の上で。
『ふむ、宅配か。…面白そうだな』
 アンラルは何故か納得したようで、満足げに頷いた。
『礼を言う。また情報誌でも見て探してみることにする』
「はぁ…まあ、がんばって…」
 俺は脱力して、口を歪めた笑みを浮かべた。
『ああ。世話になったな』
 アンラルはそう言い残して、巨体を揺らしながら、林の中へと消えていった。

 その後姿を見送りながら、俺は。
いつか、宅配ドラゴンが空を飛び回る様子を見る日が来るのかもなあ…。
と、ぼんやり思ったのだった。


 あとになって、そもそも何故ドラゴンがバイトを探しているのかを
疑問に思わなかったことをひどく後悔した。

そこが一番のツッコミどころだろ、俺っ!












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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【3566 / アンラル・アルボーガド / 男 / 999 / 闇の主】


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■         ライター通信          ■
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少々遅れてしまって申し訳ありません。ライターの瀬戸太一です。
プレイングから判断して、コメディにしてしまいましたがよろしかったでしょうか。
お気に召して頂けると幸いです。

では、またどこかでお会いできることを祈って。