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■目隠しの森〜獣達の啼く夜act2〜■

水貴透子
【1855】【葉月・政人】【警視庁超常現象対策本部 対超常現象一課】
 七人の犠牲者が出て、事件は一瞬の静寂を迎えた。
 ―…八人目の犠牲者は出ない、はずだったのだが…。
 七人目の犠牲者が出てから一週間、八人目の犠牲者が出た―…。
「ぐっ…」
 現場に向かった刑事の一人が遺体を見て、吐き出す。どんなに刑事歴の長い人間でもこの悲惨な現場を見たら吐き出してしまうのも無理はないだろう。
「吐くのは勝手だけど、現場を汚さないでね」
 叶は冷たく男の刑事に言うと、遺体の方へと足を進めた。
 殺され方は今までと同じ獣に食いちぎられたような殺され方。
 こんな異常な犯罪は今までにないため、同一犯と考えてもおかしくはないだろう。
「…だけど―…」
 今までと違うのは被害者が殺された場所。
 今までは人目につくような場所で殺されていたのだが、今回はあまり人が通らない樹海。間違えれば遺体は誰にも発見されない可能性だってあるのだ。
「…なんで今回はこんな場所に…」
 今までと何か違うのだろうか、叶はそう思いながら現場を後にした。



  ライターより

 この「目隠しの森」は前回の獣達の夜の続きになります。
 ですが、読みきりの短編シリーズなので、前回参加されてない方でも話が分かるように書きます。
 これは発注をかけてくださった方のみが登場する個人受注製です。
 発注をいただきましたら精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。
 
 
目隠しの森〜獣達の啼く夜act2〜

オープニング

 七人の犠牲者が出て、事件は一瞬の静寂を迎えた。
 ―…八人目の犠牲者は出ない、はずだったのだが…。
 七人目の犠牲者が出てから一週間、八人目の犠牲者が出た―…。
「ぐっ…」
 現場に向かった刑事の一人が遺体を見て、吐き出す。どんなに刑事歴の長い人間でもこの悲惨な現場を見たら吐き出してしまうのも無理はないだろう。
「吐くのは勝手だけど、現場を汚さないでね」
 叶は冷たく男の刑事に言うと、遺体の方へと足を進めた。
 殺され方は今までと同じ獣に食いちぎられたような殺され方。
 こんな異常な犯罪は今までにないため、同一犯と考えてもおかしくはないだろう。
「…だけど―…」
 今までと違うのは被害者が殺された場所。
 今までは人目につくような場所で殺されていたのだが、今回はあまり人が通らない樹海。間違えれば遺体は誰にも発見されない可能性だってあるのだ。
「…なんで今回はこんな場所に…」
 今までと何か違うのだろうか、叶はそう思いながら現場を後にした。

視点⇒葉月・政人


「あれは…」
 今回の樹海の殺人事件も以前の七件の事件と同一犯と見て所轄との合同捜査で政人は樹海に調べに来ていた。
「桃生さん」
 同じく捜査で樹海にやってきた桃生叶を見かけて政人は声をかけた。
「あら、あなたも今回の捜査に参加しているの?」
「えぇ、それと科警研(科学警察研究所)で先日の獣人の鑑定結果が出たそうです」
 政人の言葉に叶は少し表情を強張らせたのが分かった。
「それで…?」
「歯型からみて、貴方のお姉さんを襲った個体にほぼ間違いないそうです。ですからもう復讐なんて考えるのはやめてください。警察官たるもの個人的感情で任務にあたるべきではありませんし」
 政人は叶がこれ以上事件に首を突っ込まないように諌めるように言った。
「…そうね。でもあの夜白という少年の事はどうなるのかしら。調べてみたけれど十六夜・夜白という少年は存在しないのよ」
「偽名、ですか」
 それはどうかしらね、と叶はため息交じりに呟く。
「ああいう自信に満ちたような物言いをする人間が偽名なんか使うかしら」
 確かに、と政人も納得した。偽名を使うくらいなら最初から名乗らないだろう。
「でも、今回は退いてください。何かあったら連絡を差し上げますから」
 政人の真剣な顔に叶は「…分かったわ。何かあったら連絡をちょうだい。携帯の番号はこの前教えていたわよね?」と苦笑交じりに答えた。
「えぇ、ではまた…」
 そう軽く挨拶をしてから政人は樹海を後にした。


「さて、結構暗いですね」
 時刻はもう夜もとうに更けた頃。政人は再度樹海に足を運んでいた。
 もちろん生身で怪物と戦うわけにも行かず、強化服を装着してからだ。樹海に足を踏み入れたときから何かの視線を感じる。それも一人のものではなく複数の視線だ。
「誰、ですか?」
 ポツリと呟いた瞬間にソレは政人に襲い掛かってきた。
「っ!!」
 政人、FZ−00はネット弾を数発連射する、だが外れて蜘蛛の巣のように気に絡まり、怪物を倒すためのネット弾で自分自身が追い込まれてしまう。
 ニィ、と気味の悪い笑みをした怪物が襲い掛かってくる。
 だけど―…まるで危機感など感じないようにFZ−00は突っ立っているだけだ。
「そちらから来るのは分かっていましたよ」
 そう言って光霊子ライフルを素早く取り出して怪物を狙い撃ちにする。ネットによって逃げ場のない怪物は狙われるがままにライフルの餌食となってザァッと砂のようになって消えていった。
「あーっ、あたしが作ったケモノがぁっ!」
 倒すと同時に頭上から聞こえた女性特有の高い声、声の方に視線を向けると前の事件で出会った夜白という少年ともう一人、露出度の高い服を着た女性がFZ−00を見下ろしている。
「やぁ、また会ったね。機械のおにーさん」
 トン、とまるで空中を飛ぶかのように二人は木の上から降りてFZ−00の前に降り立った。
「やっぱり今回もあなたの仕業ですか」
「ぶー。はずれ。今回は俺はなーんもしてないよ、なぁ?みちる」
 夜白はおかしそうに笑いながらみちると呼んだ女性の方に視線を向けた。
「そやね。今回はあたしがしたんよ。結構上手くできた思ったンやどなぁ。まだまだ改良の余地あり、やね」
「キミ達の目的は何ですか?こんな事をして…良い理由なんてないはずだ!」
 少し声を荒げて言うと二人は一瞬目を丸くして、次に大きな声で笑い出した。
「…何がおかしいんですか?」
「くく、まさか…警察の犬にそういう言葉を言われるとは思わなかったわ、なぁ?夜白」
「本当にね。虫唾が走るよ。今すぐ殺してやりたい気分」
「同感。なぁ、良い事、教えたろか?警察がバックアップをしていた製薬会社の記録があるはずや。そこにあたしらのデータも残ってるはずや、見てみるといい。そのデータを見ても尚、偽善ぶったことが言えるかどうかが楽しみやなぁ」
 みちるはクククと笑いが収まらないのか口元に手を当てている。
「警察がバックアップをした製薬会社?」
「うん、それともう一つ、うちらの実験は成功してるんよ。意思を持つケモノ。敵はうちらだけとは限らへんよ、気をつけることだね」
 そう言ってみちるは背中から大きな漆黒の翼を現して夜白を抱えて夜の空へと消えていった。
「…警察の…?」
 残されたFZ−00は小さく呟いた。
 あの二人は『警察の人間』に対して激しい嫌悪を見せている。過去に何があったのか、それを調べれば一連の事件の解決策にも繋がるかもしれない。
「叶さんにも連絡して…調べてみる必要がありますね…」
 そう言ってFZ−00は叶の携帯に電話をする事にした。


 しかし、気になることが一つだけある。

―実験は成功している。意思を持つケモノ、敵はあたしらだけとは限らへんよ。

 意思を持つケモノ、あのみちるという女性の言葉を聞く限り身近に敵がいると言われている様で何かしっくりと来なかった。
 FZ−00、いや政人がその言葉の本当の意味に気がつくのはもう少し後になる。

「もしもし、葉月ですが―…」


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

1855/葉月・政人/男性/25歳/警視庁超常現象対策班特殊強化服装着員

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■         ライター通信          ■
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葉月・政人様>

いつもお世話になっております。
「目隠しの森」を執筆させていただきました瀬皇緋澄です。
「目隠しの森」はいかがだったでしょうか?
少しでも面白いと思ってくださったらありがたいです^^
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^^

         −瀬皇緋澄