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■砂蝕の暁夜〜獣たち啼く夜act3〜■

水貴透子
【3362】【幻・―】【?】
樹海の事件も落ち着いたが、叶はみちると言うもう一人の犯人を知ってしまった。
そして、数日後に警察署に叶あてに手紙が届いた。
「…り、か…」
だけど、その文字は紛れもなくこの連続通り魔事件の最初の被害者、桃生里香の文字だった。
特徴のある丸みを帯びた文字。
ここまで似せて書けるものなのだろうか?
手紙の文章は以下の通り。

お姉ちゃんへ。

元気にしていますか?
お姉ちゃんは事件の事になるとまわりが見えなくなるんだからちゃんと体調管理しなきゃだめだよ?
私は元気、元気すぎて困ってるくらいなんだから(笑
今度、一緒にご飯でも食べに行かない?
もちろんお姉ちゃんのオゴリで(笑
じゃあ、また連絡するね。

まるで事件の事など何もなかったような文章に叶は混乱するばかりだった。
「何よ、これは…頭がおかしくなりそう…」
 手紙をクシャと強く握りながら叶は弱々しく呟いた。
砂蝕の暁夜〜獣達の啼く夜act3〜

オープニング

樹海の事件も落ち着いたが、叶はみちると言うもう一人の犯人を知ってしまった。
そして、数日後に警察署に叶あてに手紙が届いた。
「…り、か…」
だけど、その文字は紛れもなくこの連続通り魔事件の最初の被害者、桃生里香の文字だった。
特徴のある丸みを帯びた文字。
ここまで似せて書けるものなのだろうか?
手紙の文章は以下の通り。

お姉ちゃんへ。

元気にしていますか?
お姉ちゃんは事件の事になるとまわりが見えなくなるんだからちゃんと体調管理しなきゃだめだよ?
私は元気、元気すぎて困ってるくらいなんだから(笑
今度、一緒にご飯でも食べに行かない?
もちろんお姉ちゃんのオゴリで(笑
じゃあ、また連絡するね。

まるで事件の事など何もなかったような文章に叶は混乱するばかりだった。
「何よ、これは…頭がおかしくなりそう…」
 手紙をクシャと強く握りながら叶は弱々しく呟いた。


視点⇒幻・―


 死んだはずの里香から手紙が来たと叶から連絡が幻に来た。
 幻にはそれがすぐに相手からの罠だという事が分かった。
 理由は簡単、里香の死を幻自身が確認しているからだ。
 だけど、里香が生きているかもしれないと希望に胸を震わせる叶を見て幻は「罠です」とはっきり言う事ができなかった。
 叶に今後の予定を聞いてみると叶は手紙を出してきた里香に接触をしてみるという。もし、これがあの夜白とみちる達の仕業ならば今回は相手が多すぎる。その里香も敵とみて間違いはないだろう。
「何だ?幻でござるか」
 叶とは今後ともに行動するため、いったん叶のテレパシーの登録を削除して陽炎を登録した。相手が大勢となると誰かに助けを求めるのが妥当だと考えたからだ。
「ほぅ、それは興味深い話でござるな。拙者も力を貸そう」
 自分に体術や忍術の指南をしてくれている陽炎が同行してくれるにならばこれ以上の心強い味方はいない。
「分かった、そのニセモノの里香と遭遇したら連絡をもらえるでござるか?そうしたらすぐに応援に駆けつけるでござる」
「ありがとうございます。では、また連絡をしますね」
 幻はそう言って陽炎とのテレパシーを切った。


「やっぱり行くんですね」
 後日、叶から再び里香から手紙が来たと連絡が来た。内容は指定日と指定場所のみが書かれたシンプルなものだった。
 答えは決まっているが一応、叶に「行くんですか?」と幻は聞いてみた。すると叶は幻が予想したとおり「行くわ」と短く答えた。
「今回は後から合流してくれる人がいるんです」
「誰?」
「夜切・陽炎さんといって信用できる人ですから安心してください」
 幻の言葉に叶は「そう…だったらいいわ」と表情を曇らせながら答えた。
「指定場所は…?」
「今日の午後七時に里香が殺された場所…だったわ。本当に…里香が帰ってきたのかしら…」
 叶はポツリと呟く。きっと叶も心の奥底では里香が死んだという現実を受け止めているはずなのに、やはり心のどこかで信じたい気持ちもあるのだろう。
「そろそろ、行きますか?」
「そうね…その陽炎さんって人には連絡はしなくてもいいの?」
「えぇ、一旦叶さんの登録を消して、陽炎さんを登録してありますから」
「そう?それならいいけど…じゃあ車を出すからちょっと待ってて」
 叶はそう言って駐車場へと足を向けた。
 幻は少し怖い事があった。
 もし、もしだけれど…里香が夜白たちの手によって生き返らされたのだとしたら、彼女はその時…どうするのだろう。それを理由にとんでもない事を命令されたら、彼女は実行するのだろうか…?
 それに―…夜白たちが里香を生き返らせたのだとすれば何の目的で生き返らせたのだろう…。
「お待たせ、幻くん、乗って」
 そう考え込んでいると叶が車の運転席から幻に話しかけていた。
 そして、二人は最初の事件が起きた場所に向かい始める。


「何もないわね…」
 二人が着いた先は公園、里香の通う学校の帰り道にある小さな公園だ。
「あれ、誰でしょうか…」
 幻が指差した方を叶が見ると叶は表情を変えた。
「り、か…」
 木に凭れながら立つ少女は叶の声に気づき、こちらを見る。そしてにっこりと笑って「お姉ちゃんっ」とこちらに駆け寄ってきた。
「里香…」
「何よぅ、そんな死人を見るような顔で見ないでよー」
 その言葉に叶はハッとして拳を握り締めながら小さく呟いた。
「あなたは…死んだのよ…なぜ…私たちの前に現われたの?」
 叶の言葉に里香はニィと笑い、答えた。
「あたしね、生き返らせてもらったのよ。夜白さんとみちるさんに」
 夜白、みちるという言葉が出たときに叶はつらそうに目を伏せた。
「こんな力ももらったの」
 そう里香が言うと同時に頭の両脇からツノのようなものが姿を現して叶の腹を突き刺した。
「ぐっ…」
「夜白さんに聞いたわ。お姉ちゃんは夜白さんたちを殺そうとする悪い人だって。そこの幻、さんだっけ?あなたもでしょう?あたし、難しい事は分からない。だけど、夜白さんたちが死んだらあたしは生きていけないの」
 里香の話を聞くと、里香だけは完全な合成遺伝子生命体に作られていないらしい。夜白たちから渡される薬を服用しなければすぐに形が崩れて消滅してしまうらしい。
「あたし、まだ生きていたいの。だから―…お姉ちゃん達は死んで?」
 そう言って今度は鋭い爪で里香は二人に襲い掛かってくる。叶は傷と精神的ショックのため、動けない。いや、動こうとしない。だけど、幻からでは遠すぎる。
「諦めてはいけないでござるよ!」
 そう言って突然空間から現われのは黒装束を見に纏った少女だった。
「陽炎さん!」
幻が陽炎と呼んだその少女は叶と里香の間に割って入り、M4−S.I.R アサルトライフルで里香を撃つ。
 それを見た叶は陽炎の腕にしがみついて「やめてぇ!」と叫んだ。
「やめてっ、あの子は私の妹なの!どんな姿でもたった一人の妹なのよ!」
 叶がそう叫んだとき、背後からくすくすと笑う聞き覚えのある声が耳に入ってきた。
「どや、面白い展開になってきたやろ?里香、そろそろ薬の時間やなぁ?さっさとそいつらを殺れ」
 里香はその言葉を聞いて表情を変えて叶に再び襲い掛かる。
「叶さん!戦ってください!このままでは―っ…」
 幻がそう言った後グロック26アドバンス ハンドガンを叶のいる場所に投げる。グロック26アドバンス ハンドガンは叶の足元に転がってきたが叶はそれを持とうとはしなかった。
「叶殿、おぬしは何のためにここまで戦ってきた?目を閉じて…心の目であの少女を見るでござる、あれが叶殿の妹に見えるでござるか!?」
 陽炎が叫び、叶はハッとした表情で里香を見つめた。
 顔、声、何から何まで里香にしか見えない、だけど―…。
 叶は幻から投げ渡されたグロック26アドバンス ハンドガンを手に取って里香目掛けて撃った。弾は外れたもののみちる、夜白、そして里香に少なからずの動揺を与えた。
「お、お姉ちゃん…あたしを殺すの?ねぇ、たった二人の姉妹なのに?その銃であたしを殺すの?」
「あなたは…里香じゃない…。里香は…人に…死んでなんて残酷な言葉は言わなかった。あなたは…私の妹じゃない!」
 そう言って叶は再び発砲した。その弾は里香の肩を掠めた。
「どう思いますー?夜白クン」
「どうって…結構意外?みたいな感じかな」
 面白そうにクスクスと笑いながら話す夜白とみちるは里香を助けるそぶりすら見せない。
「助けないんですか?仲間でしょう?」
 幻が二人に問いかけると二人は一瞬目を丸くして高らかに笑い出した。
「仲間?うちの仲間は夜白だけや。実験動物にいちいち同情なんかできるか」
 みちるが冷たく言い放ち視線を叶と里香、そして陽炎に移した。
「陽炎、さん…お願いがあります。里香は私が…この手で…」
 叶は刺された場所が痛むのか、顔を苦痛にゆがめて搾り出すように消え入るような声で呟いた。
「分かったでござる」
 陽炎は短く返事を返すと幻がいる方向へと足を伸ばした。
「さて、拙者たちの相手はおぬし達か」
 陽炎がM4−S.I.R アサルトライフルをジャキと音を鳴らしながら構える。それに続いて幻も構えた。
「さっきの言葉は訂正してもらいます」
「さっきの言葉?」
 みちるが首をかしげながら幻に聞き返す。
「里香さんは実験動物ではありません。こんな人の命をもてあそぶような事を…っ」
「拙者も同意見でござる。命とは尊いものでござる!」
「尊い、ね。その尊い命とやらを最初に弄んだのはお前らだ!」
 みちるは先ほどのようなチャラけた表情ではなくゾッとするような表情で陽炎と幻を睨み付けた。
「それは僕たちがしたことではありません。もちろん叶さんも里香さんも関係がなかった。貴方達はただの殺人快楽主義者だ」
「へぇ、それは聞き捨てならないね」
 夜白がユラリと身体を震わせながら低い声で呟く。
「夜白、やめとき。あんたの力を使われたらここら一帯が吹き飛んでまうわ。じゃ、うちらは帰るわ。妹と戦う女刑事のカオが見たかっただけやしな〜」
「悪趣味ですね」
「どう言われても構わんわ、だけどな、全部あたしらが悪いような言い方はせんといて。こうなった原因もあるんや。警察の重要書類の中に高幡製薬って会社の書類があると思うわ。それ、調べたら分かると思う」
 それだけ言い残してみちると夜白は姿を消した。それと同時に背後からガゥンという銃声が響いた。
 陽炎と幻がそちらに目を向けると叶が立っていて叶の前には砂に姿を変えていく里香の姿があった。
「里香…私は…っ…」
 そう言って叶の膝が折れ、その場にガクンと座り込んだ。
「ねぇ、幻くん、陽炎さん…教えて…私は…何のためにここまで来たのかしら…里香の仇を取りたいと願いながら死にたくないという里香をこの手にかけたの」
 震える叶を見ながら二人は叶にかける言葉がみつからなかった。
 そして沈黙を破ったのは陽炎だった。
「叶殿も先ほど言っていたでござろう。叶殿の妹であった里香殿はもう…存在していなかったでござるよ。それだけは変わらない現実でござる」
 陽炎の言葉を聞いて叶は「そうね…」と力なく答えた。
「叶さん。高幡製薬という会社について調べてみませんか?あのみちるという女性の言葉を聞いているとそれが全ての原因に思われます。だけど、どうやら警察の重要書類となっているようで…」
 幻の言葉を聞いて叶は立ち上がり「私が調べてみるわ」と答えた。
 そして、三人は知る事になる。
 知らなければよかったと思えるくらいの残酷な現実を。




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

3362/幻・―/男性/1歳/能力の残滓

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■         ライター通信          ■
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幻・-様>

いつもお世話になっております、瀬皇緋澄です。
今回は「砂蝕の暁夜」に発注をかけてくださいまして、ありがとうございました^^
「砂蝕の暁夜」はいかがだったでしょうか?
少しでも楽しんでもらえるとありがたいです^^
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^^

         −瀬皇緋澄