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■茜の心を癒す人 【前編】■

滝照直樹
【3839】【七瀬・凛】【反IO2戦闘者】
 雨の中で、彼女は佇んでいた。
 色々あったが、今まで支えて見守っていた幼なじみ織田義明に恋人が出来たこと。また、兄と思っていたが徐々に恋に芽生えつつある人物にも振られたこと。そして、己の運命が徐々に近づいてくる。

 ――「長谷神社の後継者」としての修行。

 この状態では彼女はこの運命を受け入れられないだろう。
 大きな事件が終わり、彼女は一人何かを考えるために家出してしまった。

 暫くした後、家出をし知った長谷平八郎は必死に愛娘を捜していた。

 茜は、知っている人の場所により着かず、路地裏で悪霊を退治していた。それはどう見てもやるせない気持ちを悪霊に当たっているだけにしか見えない。其れに隙が出来、悪霊の攻撃を受けて、倒れる茜。
 あなたは、「危うい彼女」に出会った。
茜の心の傷を癒す人 【前編】

 雨の中で、彼女は佇んでいた。
 色々あったが、今まで支えて見守っていた幼なじみ織田義明に恋人が出来たこと。また、兄と思っていたが徐々に恋に芽生えつつある人物にも振られたこと。そして、己の運命が徐々に近づいてくる。

 ――「長谷神社の後継者」としての修行。
 この状態では彼女はこの運命を受け入れられないだろう。
 大きな事件が終わり、彼女は一人何かを考えるために家出してしまった。

 暫くした後、家出。其れを知った長谷平八郎は必死に愛娘を捜していた。

 茜は、知っている人の場所により着かず、路地裏で悪霊を退治していた。それはどう見てもやるせない気持ちを悪霊に当たっているだけにしか見えない。其れに隙が出来、悪霊の攻撃を受けて、倒れる茜。
 あなたは、「危うい彼女」に出会った。


 隠れ家の廃ビル近くで、七瀬凛は霊力を感じた。
「追っ手なのかな? かなり遠いけど……」
 彼は、切り札を置いておき、簡単な武装で外にでた。
 流石に今、IO2に見付かれば只では済まされない。

 しかし、彼が思っていた“追っ手”ではなく傷ついてなお、悲しみで悪霊と戦うポニーテールの奇妙でも可愛い制服の女の子だった。奇妙と言えば、腰にハリセンをぶら下げている事も含まれる。
「あの子は凄い力持っている……」
 彼女の戦いぶりは彼を感激させる。しかし、あまりに悲しいものだ。
 心が乱れているため、結局彼女は悪霊に反撃を喰らって昏倒してしまう。
「うわー、やばいよ」
 と、銃を持って、悪霊を滅した。
「大丈夫? キミ!」
 凛は、駆け寄って少女を抱き上げる。
 ――大丈夫だ。息がある。少し生命力を取られただけのようだ。
「こんな所じゃ、アイツ等に見付かるから……えっと」
 彼は彼女を横抱きして、いつもの隠れ家に急いで戻った。

 少女が目を覚ます。朝日が丁度彼女の目に当たったからのようだ。
「……あれ? ここ……」
「大丈夫?」
「……! ……っつ!」
 彼女は身を起こして警戒しようとするが、まだ戦いの傷が癒されていないので苦しむ。
「まだ戦いから1時間も経ってないんだ。ゆっくりしていた方が良いよ」
「……誰?」
「知りたい?」
 少し沈黙の間、
「わたし、長谷茜……。た、助けてくれてありがとう」
 少女は自分の名前を言う。
「僕は七瀬凛だ」
「どうして? 助けてくれたの?」
「ん? 何となく、さ」
 鍋に適当水をくんで見るも心配な手つきで料理をする凛がいる。
 そのとたん、茜の腹が鳴ってしまう。赤面する茜。
「お腹減っただろ?」
「……」
 頷く茜。

「キャンプみたい……」
 と、茜は言った。
「ははは」
 苦笑する凛。
「でも、キャンプじゃないんだよね……」
「どういう事? 確かに……廃ビルで隠れている何て、訳ありだよね?」
「実はね、内緒だよ……僕は百人殺しの逃亡殺人鬼にされてしまった人なのだ」
 と、凛はとんでも無いことを言った。
 茜は、ぽかんと口を開けてしまう。
「どうしてまた? 虚無の境界の離反者?」
「ちがうよ、全ての超常現象を隠蔽する組織IO2の裏の方面からだよ」
「!?」
 IO2は茜が今まで良く目にいており、かつ共闘した組織である。虚無の境界より過激な部署もあると聞いたが、まさかそこからの存在していたことは知らなかった。
 茜は、直ぐに起きあがって苦痛に耐え構える。もし、彼がIO2離反者と言うことが本当だとすれば、何らかの形でIO2憎んでいるだろう。得体の知れない敵と認識してしまった茜は、無意識に警戒し構える。リストバンドのダガースリットから抜いた聖別されたペーパーナイフを抜いて握る。
「お、落ち着いて。キミの怪我はまだ治って……あちいっ!」
 凛は、慌てふためいて思わず、まだスープが余っている鍋に手を突っこんでしまった。鍋はガラガラと音を立てて、床に具やスープがこぼれてしまう。
 ……
 緊張が台無しになった
「あちゃー朝ご飯がぱぁだ」
 と、呑気に言う凛をみて……
「ぷ、くすくす」
 茜は笑う。
「あ、あははは」
 それで緊張が解けたのか2人とも笑った。
 
 
「朝食はコンビニで何かあるから、私が何か買ってくるね」
「僕も行くよ」
「手配中の人が彷徨いていたら、大変でしょ?」
「それは、そうだけど……」
「あ、その前に……」
 茜は彼の火傷を負った手を取って、何かを呟いた。水ぶくれしかけていた手がみるみるうちに元の手に戻る。
「わぁ」
「時間治癒術。巻き戻したの、火傷する前に」
「ありがとう」
「……ううん、助けてくれたお礼だよ」
 と、茜は言った。


 コンビニで適当な物を買うと言うことで茜が少し遠出をするのだが、凛も付いてきてしまっている。危ないと、言っているのに、聞きもしない。凛には茜の方が危ない気配がするのだ。本人は自覚していないらしい。
「朝ご飯は重要だからね」
「でもさ、その制服でうろうろしていたら警察に見付かるよ? 高校生が昼間っから何している〜とかで」
「其れはお互い様でしょ? あなたの場合は殺人鬼だ〜」
「うーん、それはそうだけど」
 茜は直ぐに食べられるものを買って、凛に全てを渡した。
「え? キミの分は?」
「私は良いの。あなたは先ずっと逃げて行かなきゃならないし、それに私とあなたは敵対者と同じじゃない?」
 悲しそうな声でいう茜。
「僕はそう思ってないけどなぁ」
「私は、IO2と少し関わりがあるし共闘もした。あなたからしたら敵だよ?」
「でも今は違うんじゃない?」
「いいの、あなたと戦いたくないし……」
 と、茜はそのまま去っていこうとする。
「何処に行くんだよ?」
「私が求めている先は、ないの……」
「……」
 凛の足が止まる。
 雨の音が激しくなってきた。
「さようなら、ありがとう」
「……ちがうよ、茜さん」
「え?」
 立ち止まる茜。
「キミの事情は良く分からないけどさ……今朝、君と話してる時、楽しかった。賭けてもいい。他の人も同じ。外だけの君じゃないよ。泣いたり笑ったり怒ったり全部含めたそんな君を、きっと皆、好きなんだ。……泣いても良いんだよ? いざとなったら、殺人鬼に騙されちゃったせいにしちゃえばいいんだし」
「七瀬くん」
 凛は、ゆっくりと茜に近づき、頭を撫でた。
「泣いても良いんだよ。辛いときは。人は辛いときに泣いて良い生き物だから。其れが例え能力者であっても異能者であっても……」
「う……ひっく、うわあん」
 茜は何かをはき出すかのように泣いた。雨でその声はかき消されるが凛には聞こえる。
「ここでは風邪をひくから、ボクの所に帰ろう」
「……う……ん」

 2人は、また凛の住処に戻っていった。
 ずぶ濡れになった2人は、少し間を空けて服を乾かす。2人とも毛布にくるまっている。茜は準備が良いのか荷物の中に体操服やら色々用意していたようだ。
「家出するにはかなりの荷物だね」
 我に返れば、茜の荷物は大きかった。
「まぁ、女の子の家出って多少荷物はいるもん」
 少し赤面になってフグ面する茜。
「そっか……」
 外を見る凛。
 まだ雨は止まず。
 茜の心を顕すかのような雨だった。

 ――行き場所のないのは自分も同じ、か。
 凛は心の中で呟いた。
 何事もなく、その日は暮れる。
 夜、
「変なコトしたら承知しないから……」
「へ、変な事って、僕は殺人鬼だよ? 人を殺す方面で……」
「殺人鬼とかそう言う者の前に健全な男の子にしかみえないもん」
「あ、そ、そ……それは〜」
 “健全な男の子”と言われ赤面する凛。
「くすす、おやすみ」
「え、あ〜、うん。おやすみ」

 そうして、2人は廃ビルで夜を過ごした。
 しかし雨はまだ降り続けていた。


■PC/NPC紹介

【3839 七瀬・凛 18 男 反IO2戦闘者】

【NPC 長谷・茜 18 女 神聖都学園生徒/巫女】

■ライター通信。
 滝照直樹です。
 『茜の心の傷を癒す人』に参加して下さりありがとうございます。
 これから先、七瀬さまがどういう振る舞いをするかで、彼女の心の傷が癒され、成長するかになりますし、親との対峙もあると思います。茜の背景は異空間書斎で起きる事件と同じですが、このノベルだけはパラレルです。今後中編、後編の行動次第で、茜との関係(恋愛か友情)が深まっていくでしょう。

 では又の機会があればお会いしましょう。

 滝照直樹拝