■茜の心を癒す人 【前編】■
滝照直樹 |
【3275】【オットー・ストーム】【異世界の戦士】 |
雨の中で、彼女は佇んでいた。
色々あったが、今まで支えて見守っていた幼なじみ織田義明に恋人が出来たこと。また、兄と思っていたが徐々に恋に芽生えつつある人物にも振られたこと。そして、己の運命が徐々に近づいてくる。
――「長谷神社の後継者」としての修行。
この状態では彼女はこの運命を受け入れられないだろう。
大きな事件が終わり、彼女は一人何かを考えるために家出してしまった。
暫くした後、家出をし知った長谷平八郎は必死に愛娘を捜していた。
茜は、知っている人の場所により着かず、路地裏で悪霊を退治していた。それはどう見てもやるせない気持ちを悪霊に当たっているだけにしか見えない。其れに隙が出来、悪霊の攻撃を受けて、倒れる茜。
あなたは、「危うい彼女」に出会った。
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茜の心の傷を癒す人 【前編】
雨の中で、彼女は佇んでいた。
色々あったが、今まで支えて見守っていた幼なじみ織田義明に恋人が出来たこと。また、兄と思っていたが徐々に恋に芽生えつつある人物にも振られたこと。そして、己の運命が徐々に近づいてくる。
――「長谷神社の後継者」としての修行。
この状態では彼女はこの運命を受け入れられないだろう。
大きな事件が終わり、彼女は一人何かを考えるために家出してしまった。
暫くした後、家出。其れを知った長谷平八郎は必死に愛娘を捜していた。
茜は、知っている人の場所により着かず、路地裏で悪霊を退治していた。それはどう見てもやるせない気持ちを悪霊に当たっているだけにしか見えない。其れに隙が出来、悪霊の攻撃を受けて、倒れる茜。
あなたは、「危うい彼女」に出会った。
偶々空を飛んでいたオットー・ストームは、レーダーに霊力反応をキャッチする。
「誰か戦っているロボ!? ゴーストバスターなのかロボ?」
と、彼は確認のためにその場所によるわけだが、
路地裏の狭さに彼は入らなかった。
何せ20mもの巨体が空を飛ぶこと自体不自然である。光学迷彩により誰も見ていないだろうし、他にステルス機能なら彼の今の主人(というか改造犯)が付け忘れる事はないだろう(大いにありそうだが)。
「女の子が危ないロボ!」
中に入れなくても、隙間から状況は確認できる。学生服の少女が悪霊と戦っているところを。そして、彼女は悪霊の手で叩きつけられて、気を失った。
「あの女の子の生命反応が激減だロボ。助けるロボ」
オットーは、悪霊のレベルをサーチ解析する。
「あの女の子凄いロボ……一人であの悪霊を重傷レベルまで追い込んでいるロボ。この世界の人間は凄いロボ」
と、感動しつつも、環境を考慮し、小型ミサイルランチャーを1基だけで少女に襲いかかる悪霊を燃やし尽くした。コレは謎の魔導書『チャリンコ地獄』によって魔力を帯びているからなんとか。
悪霊が絶叫をあげ燃え尽きていくが、そのまま少女を道連れにしようとする。急いでオットーは悪霊が嫌いな太陽光並みの発光弾を撃ち、悪霊を怯ませる。その隙に長いアームで少女と荷物を掴んで逃げた。
路地裏では放火か何かで大通りの人が集まっているのを気にもとめず、オットーは光学迷彩をフルに使ってその場を去っていった。
彼の秘密基地。自分を改造している主のモノなのかそう言うことは置いておき、彼の住まいなのは確かなようだ。何となくだが拷問器具やら、何か妖しげな魔術師の机、妙なスーパーコンピューターなどが混沌と置かれている。
「起きないロボ……」
確かに生命反応はあるが、かなりの疲労と空腹で気を失っているようだ。
「起きるまで待つロボ。其れまで魔力を補充するロボ」
と、彼は魔力供給のため一休みする。魔導書のネーミングからして、おそらく誰かが自転車で充電しなくては行けないのだろう。一体誰が其れをしているのか分からないが……。
――その辺は読者の皆さんにおまかせ願う。
朝になった。
「……ここは?」
「あ、起きたロボ。おはようロボ」
「へ?」
固まる女の子。周りは混沌とした“如何にも”悪の魔法使いの部屋。彼女の親しいあの神の部屋(の一角)に似ているが、目の前にいる足のない鉄人型に驚いているのだ。
「アイアンゴーレム! 其れにこの魔法使いらしい部屋ってまさか……私囚われた?」
「ま、待つロボ!」
「いやーこわいよー!」
どこから出したのか分からないハリセンをブンブン振り回す少女だが、流石に限界なのか、オットーに当たっても、特殊なハリセンの効果が現れない。
「はう〜。此処で私生け贄にされちゃうんだ〜! ふえーん!」
「待つんだロボ! 落ち着くロボ!」
もう、我を忘れて混乱している少女を宥めるのに小一時間かかってしまったオットーだった。
「助けてくれたんだ。ごめん。ありがとう」
少女が、落ち着いてから言った言葉。
「私は長谷茜。あなたは?」
「俺はオットー・ストームだロボ」
自己紹介を終えて、本題に入る。
「危なかったロボ。どうしたんだロボ? 一人であんなコトしているのはおかしかったロボ」
「そ、それは……ひっく、ひっく」
茜は悲しい事を思い出したのか泣き出す。
「あ、あああ、落ち着いてからで良いから、えっとー何もかも話せば楽になると知り合いが言っていたロボ。俺には其れぐらいのことしかできないロボ」
「ひっくひっく」
彼女が泣いている時、ふとオットーは思い出した。
「あまりお金がないから、こんなものしか……ないけど……食べるロボ?」
と、差し出したのは食パンの耳のつまった袋だった。
「……ありがとう」
数日間精神的に参って食欲もなかった茜だが、この奇妙なロボットのおかげか空腹感を覚え食欲がでたようだ。数日間食べていないから、このパンの耳だけでも事が足りるだろう。
「で、落ち着いたロボ?」
「うん……。あなたは異界の生命体だよね?」
「わかるロボ?」
「うん。兄みたいな異世界の神といたから、感覚でわかるの」
すこし、他愛のない話をしていた。オットーも腐れ縁の仲間にここの世界の常識を教わっているため、普通の会話ができた。
「あのね……、私失恋したんだ」
「失恋?」
「人って恋したり、慕ったりするって聞いているでしょ?」
「まぁ確かにそうだロボ。俺の世界も一応似た感情はあるロボ」
それ以降、オットーは黙る。人の話を聞くときは、全て話し終えるまで待つのが一番良いと誰かから聞いたのだ。そう言う詩もあるという。
「幼なじみの男の子がずっと好きだったんだ。何考えているのか分からないんだけど、いつも私の我が儘を聞いてくれていたし、守ってくれていた。でも、どんどん離れて言っちゃったんだ。幼なじみの彼は……この世界の“神”になる宿命を負っていてんだ。絶対私がちゃんと彼を支えていこうと思っていたんだけど……。ただの“幼なじみ”で終わっちゃったの。彼には本当に必要な女性(ひと)が出来たから。私、負けちゃったんだ」
少し間が空いた。オットーは少し潤んでいる。しかし何も言わない。茜が又話し始めるまで待つことにした。
「それにね、面白い趣味をしている兄のようで弟の人がいるの。私が落ち込んでいるときいつも励ましにどこかに連れて行ってくれたし、遊でくれた。まぁ、彼の趣味で色々コスプレさせられた事もあったけど楽しかった。でも彼にとって私は“妹”だったんだ。彼にも既に好きな人が出来ていて、先日その事を話されて……」
茜は悲しみのあまり嗚咽するが話を続ける。
「でも、でも、三滝と幼なじみの最後の戦いが……間近に迫っていた。それでも支えて、一緒にたたかって……全てが終わったんだ。よしちゃん……彼は、又一つ大きくなった。でも、私は……私は……」
もう、何を言いたいのか茜は分からなくなって叫ぶように泣いた。
「悲しいロボ……そこまでその男の子を好きだったんだロボ」
オットーは巨体故に彼女を撫でることは出来ない。ただ話を聞くだけか今持っている食べ物を分ける程度しかできない。
「でも、悪いヤツらだロボ」
ただ、見ていないが振った男達に腹を立てるオットー。
「ううん、悪くないよあの2人は、隠し事は何もしていないもん」
「怒ってないロボ?」
「うん、ただ、とても悲しいだけ。私に何があるのか分からなくなったんだ。今家にいてもあやかし荘にいても……辛いから逃げちゃった。悪いのは私。実は臆病なんだ」
「どうしてロボ?」
「自分の使命、運命に立ち向かう事が出来ないから……逃げたの」
「運命? 使命?」
「……うん」
「それは何だロボ?」
オットーは少し興味が湧いたのか尋ねた。
「それは、ゴメン。今は言えないの。其れを言ったら本当に自分に負けてしまうから……」
しかし、茜は其れを言わない。
その心をくみ取ってかオットーは、
「……分かったロボ。此処にはコレと言ったモノはないけど、なんとかするから好きなだけいても良いロボ」
と言い、出かけようとする。
「いいの?」
「多分……」
「ありがとう……無理というなら、直ぐに立ち去るから」
茜は、安堵か今まで溜めていたモノを吐きだしたからか、気を失うように眠ってしまった。
「……さて、彼女の為に何かしないと行けないロボ」
自分でも分からないが、今は彼女を放っておけない。そんな気がするオットーだった。
■PC/NPC紹介
【3275 オットー・ストーム 5 男 異世界の戦士】
【NPC 長谷・茜 18 女 神聖都学園生徒/巫女】
■ライター通信。
滝照直樹です。
『茜の心の傷を癒す人』に参加して下さりありがとうございます。
正直に申しますと。巨大ロボット様と出会う事とは思ってもいませんでした。其れが、東京怪談の楽しいところでもありまして、とても楽しく書かせていただきました。バストアップや過去の参加ノベル、相関を調べ、私なりのオットー・ストームさまを描いて見ましたが如何でしたでしょうか。
オットー様がどういう振る舞いをするかで、彼女の心の傷が癒され、成長するかになりますし、今後茜の父親との対峙もあると思います。茜の背景は異空間書斎〜東京怪談で起きる事件と同じですが、このノベルだけはパラレルです。今後中編、後編の行動次第で、茜との関係(殆ど人間と同じになるなら愛情、今の状態なら友情以上)が深まっていくでしょう。
では又の機会があればお会いしましょう。
滝照直樹拝
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