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■文月堂奇譚 〜古書探し〜■

藤杜錬
【1963】【ラクス・コスミオン】【スフィンクス】
とある昼下がり。
裏通りにある小さな古い古本屋に一人のお客が入っていった。

「いらっしゃいませ。」

文月堂に入ってきたあなたは二人の女性に迎えられる。

ここは大通りの裏にある小さな古本屋、文月堂。
未整理の本の中には様々な本が置いてある事でその筋で有名な古本屋だ。

「それでどのような本をお探しですか?」

店員であろう女性にあなたはそう声を掛けられた。
文月堂奇譚 〜古書探し〜

「ここに…ここにならあるのかしら?」

 とある夏の昼下がりの事である。
尻尾を振るわせて4つ足で歩く不思議な女性が大通りから少し入った所にある古い建物の中にある古本屋文月堂の前にやってきていた。
彼女はその姿から判る通り人ではない、アンドロスフィンクス、知識の守護者とも呼ばれている存在だった。

「……あ、いらっしゃいませ。」

 彼女が文月堂に入ると、本を両手に抱えた銀髪の少女がそれに気がついて一瞬驚いた顔をするが、すぐに何もなかったかのようにスフィンクスの女性ラクス・コスミオンに声をかける。
ラクスはその一瞬の間が当然の事であるように、銀髪の少女、佐伯紗霧(さえき・さぎり)に少しほっとしたような声で返事をする。

「ここには沢山の書物があると知り合いから伺ってまいったのですが、本当でしょうか?」
「あ、ええ、そうですよ、この状況を見れば判ると思いますけど」

 紗霧は少し恥ずかしそうに、周囲の未整理の本の山を見わたして苦笑をする。

「あの、それで探している本があるのですが……。」

 ラクスは少し話しにくそうに紗霧に声をかける。
紗霧は少し不思議そうな顔をして言いにくそうにしているラクスの事を見る。

………
…………
……………

 しばらくの後、ラクスがそろそろと話をきりだす。

「ラクスは、その少し変わった書を探していまして……。」
「変わった書、ですか?」

 ラクスの言葉に判らないといった顔で紗霧が答える。

「ええ、その…、いわゆる『禁書』と呼ばれているものがないかと……。」
「え?禁書ですか?ちょ、ちょっと待ってください。
私じゃちょっとわからないので。」

 そう言って紗霧は慌てて奥に戻っていく。
ラクスには奥に消えて行った紗霧が階段を上っていき誰かを呼んでいる声が聞こえてくる。
そして紗霧が戻ってきた時もう一人の女性が一緒にやってきた。
紗霧の義姉の佐伯隆美(さえき・たかみ)である。

「紗霧から聞いたのですが、『禁書』とはどのようなものをお求めなのですか?」
「魔術や術などに関わる物ならなんでもいいんです。
ラクスはとにかく勉強をしたいので。」

 勢い込んで話すラクスを見て、小さく隆美はため息をつく。

「あの欲しがってくださるのは嬉しいのですが、このお店は普通の古本屋なんですよ。
確かに変わった本は多いですけど、いきなり禁書といわれても困りますよ。」
「そう、ですか……。」

 あからさまに肩を落とし、がっかりした様子を見せるラクスであったがその様子を見て隆美は自分の言葉に追加をする。

「ただ、ちょっとした魔術の本などはありますので、よければどうですか?」

 そう言って1冊の本を棚から出して来る隆美であった。
出してきた本は『禁書』には全然遥かに及ばないが、ちょっとした知識をためるには十分な東洋の『式』について書かれている本であった。

「あ、その本で良いのでラクスに売ってもらえませんか?」
「この本でよろしければ喜んでお譲りしますよ。
読んでもらった方が本達も嬉しいでしょうし。」
「本当ですか?あ、御代はどのくらいですか?」
「あ、そうですね……、こういう本は値段が有って無きが如くですから、この値段ならと思う額で良いですよ。」

 そう微笑んで隆美はラクスに話しかける。
ラクスはしばらく考えた末、自分の持ってきたお金をテーブルに置く。

「これでお願いできますか?」

 本当ならばラクスは自分が錬金術で造った貴金属なども持ってきていたが、それで買うのはどこか違うと思ったからあえて出さなかったのだ。

「ええ、それで十分ですよ。」

 そう言って隆美はそのお金を受け取り袋に詰め、その本をラクスを手渡す。
嬉しそうに本を受け取るラクスにふと思いついたように隆美は話しかける。

「ところで外は暑いですし、もし良かったら中で少しお話でもしていきませんか?
お茶くらいお出ししますよ。
随分本がお好きなようですし、少しお話をしてみたいですし。」

 ラクスは本を受け取りしばらく考えていたがその誘いを受ける事にした。

「そうですね、ちょっと喉も乾きましたし、お言葉に甘えさせてもらおうかしら。」
「それじゃあ紗霧、あとの店番の続きお願いね。」
「ええっ!私は店番の続きなの、お姉ちゃん?」
「当たり前でしょ、今日は紗霧がするって言ったんだから、しっかりね?」

 少し意地悪気味に隆美は紗霧にそう言うとラクスの事を誘って奥に消えていった。
そして二人が去った後には店番を任された紗霧が困った顔をして残るだけであった。


Fin


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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≪PC≫
■ ラクス・コスミオン
整理番号:1963 性別:女 年齢:240
職業:スフィンクス


≪NPC≫
■ 佐伯・隆美
職業:大学生兼古本屋

■ 佐伯・紗霧
職業:高校生兼古本屋


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■         ライター通信          ■
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 どうも初めまして、新人ライターの藤杜錬です。
この度は『文月堂奇譚 〜古書探し〜』にご参加頂きありがとうございます。
さすがに禁書クラスになると簡単には見つからないかな?と思いこのような形になりました。
楽しんでいただけたら嬉しいのですが、少し緊張しています。
ラクスさんはスフィンクスとの事で他のキャラクターさんとは違う感じだったので、少し考え込んでしまいましたが、上手く表現できていたら良いのですが。
それから暑い盛りですが、御身体など壊されぬようお気をつけください。
それではご参加ありがとうございました。

2004.08.19
Written by Ren Fujimori