■目隠しの森〜獣達の啼く夜act2〜■
水貴透子 |
【3243】【風間・悠姫】【私立探偵(所長)】 |
七人の犠牲者が出て、事件は一瞬の静寂を迎えた。
―…八人目の犠牲者は出ない、はずだったのだが…。
七人目の犠牲者が出てから一週間、八人目の犠牲者が出た―…。
「ぐっ…」
現場に向かった刑事の一人が遺体を見て、吐き出す。どんなに刑事歴の長い人間でもこの悲惨な現場を見たら吐き出してしまうのも無理はないだろう。
「吐くのは勝手だけど、現場を汚さないでね」
叶は冷たく男の刑事に言うと、遺体の方へと足を進めた。
殺され方は今までと同じ獣に食いちぎられたような殺され方。
こんな異常な犯罪は今までにないため、同一犯と考えてもおかしくはないだろう。
「…だけど―…」
今までと違うのは被害者が殺された場所。
今までは人目につくような場所で殺されていたのだが、今回はあまり人が通らない樹海。間違えれば遺体は誰にも発見されない可能性だってあるのだ。
「…なんで今回はこんな場所に…」
今までと何か違うのだろうか、叶はそう思いながら現場を後にした。
ライターより
この「目隠しの森」は前回の獣達の夜の続きになります。
ですが、読みきりの短編シリーズなので、前回参加されてない方でも話が分かるように書きます。
これは発注をかけてくださった方のみが登場する個人受注製です。
発注をいただきましたら精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。
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目隠しの森〜獣達の啼く夜act2〜
オープニング
七人の犠牲者が出て、事件は一瞬の静寂を迎えた。
―…八人目の犠牲者は出ない、はずだったのだが…。
七人目の犠牲者が出てから一週間、八人目の犠牲者が出た―…。
「ぐっ…」
現場に向かった刑事の一人が遺体を見て、吐き出す。どんなに刑事歴の長い人間でもこの悲惨な現場を見たら吐き出してしまうのも無理はないだろう。
「吐くのは勝手だけど、現場を汚さないでね」
叶は冷たく男の刑事に言うと、遺体の方へと足を進めた。
殺され方は今までと同じ獣に食いちぎられたような殺され方。
こんな異常な犯罪は今までにないため、同一犯と考えてもおかしくはないだろう。
「…だけど―…」
今までと違うのは被害者が殺された場所。
今までは人目につくような場所で殺されていたのだが、今回はあまり人が通らない樹海。間違えれば遺体は誰にも発見されない可能性だってあるのだ。
「…なんで今回はこんな場所に…」
今までと何か違うのだろうか、叶はそう思いながら現場を後にした。
視点⇒風間悠姫
目隠しの森〜獣達の啼く夜act2~
「合成遺伝子生命体…」
連続通り魔事件のことを知った悠姫は独自の調査で合成遺伝子生命体の夜白という少年のところまで行きついた。
そして、その夜白という少年の過去も同時に悠姫は知ってしまった。知った、と言っても詳しくではない。夜白という少年が実験体として扱われ人間を《人間に》やめさせられてしまった…という事実。
そして、その事件を調べていくうちに一人の女性と知り合った。
桃生叶という女性だ。この女性は連続通り魔事件の最初の被害者である桃生里香の姉だ。叶から事情を聞いた悠姫は叶に協力することを決めた。
「今日の夜に事件のあった樹海に行ってみようと思ってるんだけど…」
叶の言葉に悠姫は「一緒に行こう」と答えた。それからすぐに叶の車に乗り込み樹海に向かうが、その途中の道で叶は何も言葉を発することはなかった。
無理もない。解決したと思っていた事件がまた再び動き出したのだ。不安になる気持ちも分かる。一時間ほど走ったところで樹海に着いた。
鬱蒼と茂る緑のせいか昼間でも暗い樹海は夜はなお一層暗い。その暗さに身震いしたのか叶が肩を少し震わせた。
「怖いのか?」
悠姫が聞くと叶は首を横に振った。だが恐怖は隠せないらしく叶の肩は今だ震えたままだ。暗闇を怖がるのも無理はない。叶は普通の人間なのだから。
その時、ふいに殺気を感じて悠姫は叶を突き飛ばした。
すると今まで叶たちのいた場所には無数の羽が地面に突き刺さっていた。強力な念の込められたその羽は、たかが羽、と侮ると命を落としかねない。
「何だ。また来たの。おねーさん」
木の上から聞こえた声に悠姫はバッと勢いよく首を上に向ける。そこには一人の少年と少女が木の上に立っていた。一人は夜白という少年に間違いはないだろう。だが…もう一人の少女、どう考えてもこちらの味方をしてくれる様子ではない。なぜなら彼女の背中には大きな黒い翼が姿を見せている。先ほどの攻撃も彼女からのようだ。
「なぁ。誰やの?夜白」
「前に俺の邪魔をしてくれたおねーさんさ。そっちの銀髪のおねーさんは知らないけど…誰?」
「風間…悠姫。人に名前を聞く時は自分から名乗るものでしょう」
「…確かに。俺は十六夜・夜白。こっちは…」
「紫峰堂みちる、別によろしくなんて言わへんわ。だって…あんたらここで死ぬンやからな」
そう言ってみちるは指笛を鳴らした。その指笛から数秒後に明らかに人ではない生き物が悠姫たちに襲いかかってきた。
「……え?」
驚きの表情を見せたのは意外にもみちるの方だった。
なぜなら…爪を鉤爪のように伸ばした悠姫が襲い掛かってきたケモノを切り裂いていたからだ。これには叶も驚いたようで目を丸くしている。
「人の手によって生み出されたお前達が世界に生み出された私に敵うと思っているのか?」
悠姫は冷たい眼差しで二人を射抜くように睨むが二人は木の上から降り、戦う事をやめない。この二人を初めて見たときから感じていた。自分の中に流れる真祖の血が「滅せよ」と訴えかけてくるのが分かる。
「お前にうちらの気持ちはわからへん!うちらは望んだわけじゃないっ!こんな力!…だから…この力で人間を滅ぼすっ!それまで戦う事はやめへんわっ!」
みちるが羽を刃のように悠姫めがけて放つ。それすらも悠姫はサラリと避ける。
「お前達の生まれには同情するが…だからと言って八つ当たりは感心せん」
そう言って悠姫は空想具現化で鎖の束を具現化してみちるの翼を引き千切った。
「これでお前はもう空を飛ぶ事はできない…諦めるんだな…」
そう呟く悠姫に夜白とみちるは自分の中の獣が「勝てない…」と思う。
「…ふっ…ざけるなぁっ!」
みちるが拳を振り上げて悠姫に殴りかかろうとしたときにガゥンという音と共にみちるの手のひらに穴があく。
「…叶」
「大丈夫?」
震える手で拳銃を握り、叶が悠姫に問いかけてきた。
「あぁ…助かったよ」
悠姫がそう答えると叶は安心したように笑いながら「よかった…」とつぶやいた。
「人間ごときが…」
みちるの呟いた言葉に悠姫が呟く。
「やはり…お前達は人間じゃないよ。人間ごときが…と人間を卑下するやつらに人間だと語る資格はない」
悠姫の言葉にみちるはその場に崩れ落ちた。
「みちる…立て。惑わされるな。俺達が生きているのは何のためだ。自分で考えて、動け」
夜白がみちるの前に立ち、言葉を投げかけるとみちるはグッと唇を噛み締めながら立ち上がった。
「確かにあたしは戦えないかもしれない、だけど…人間は必ず滅ぼしてやる…。それに…敵はあたしらだけとは限らへんで。敵は…意外と身近な人間かもなぁ…」
そう言って二人はふっと闇に溶け込むようにして姿を消した。
「はぁ…今回も空振り…」
叶が残念そうに呟くと悠姫は「そうでもないさ」と答えた。
「あいつらは多分ターゲットを私達に決めたはずだ。屈辱的な負けを強いられてそのまま黙っておくはずがない。だから、空振りってわけでもなかろう」
「…そう、だね。次こそは…里香のカタキを…」
叶には言っていないが悠姫には一つ気になる言葉があった。
―敵は意外と身近な人間。
悠姫がこの言葉の本当の意味を知るのはもう少し後になってからのことである。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
3243/風間・悠姫/女性/25歳/ヴァンパイアハーフの私立探偵
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■ ライター通信 ■
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風間・悠姫様>
初めまして。今回「目隠しの森」を執筆させていただきました瀬皇緋澄です。
今回は「目隠しの森」に発注をかけてくださいまして、ありがとうございました^^
「目隠しの森」はいかがだったでしょうか?
風間様のプレイングはとても分かりやすく書かれていて本当に反映しやすかったです^^
また、お会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^―^
-瀬皇緋澄
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