■文月堂奇譚 〜古書探し〜■
藤杜錬 |
【3942】【坂原・ルキア】【邦浪人】 |
とある昼下がり。
裏通りにある小さな古い古本屋に一人のお客が入っていった。
「いらっしゃいませ。」
文月堂に入ってきたあなたは二人の女性に迎えられる。
ここは大通りの裏にある小さな古本屋、文月堂。
未整理の本の中には様々な本が置いてある事でその筋で有名な古本屋だ。
「それでどのような本をお探しですか?」
店員であろう女性にあなたはそう声を掛けられた。
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文月堂奇譚 〜古書探し〜
坂原ルキア編
夏も終わりに近づき秋風が吹き始めたが、まだ暑い日差しの中、漆黒の衣装に身を包んだ少女、坂原ルキア(さかはら・−)は今日も自らの記憶の欠片を求めて街をさまよっていた。
そしてふらりと入った裏通りに一軒の古本屋を見つける。
どこにでもあるような小さい古いだけの古本屋の様であったが、何故かどこかその古本屋に惹かれるものをルキアは感じる。
『なんだろう?ここのお店から何か惹かれる物がある…。
ひょっとしてここに僕の探している物があるのかもしれない…。』
そんな事を考えながらルキアはそこの店の暖簾をくぐっていった。
古本屋には古めかしい看板に『古書店 文月堂』と書かれていた。
中に入ったルキアを出迎えたのは本の整理をしていた黒い髪の若い女性であった。
「いらっしゃいませ。」
笑顔でルキアの事を出迎えた女性だったが、ルキアは淡々とした様子で自らがほしい本の事を話しはじめる。
「僕が欲しいのは記憶喪失に関係した本だよ。
内容は問わない、体験談でも治す方法でも構わない、何か探して。」
「記憶喪失関係の本ですか?ええっとどの辺にあったかな?
あまりないと思うんだけど、ちょっと待っててね。」
どこか唐突もいえる感じでルキアの問いに店番をしていた女性、佐伯隆美(さえき・たかみ)は本棚の一角を探しはじめる。
「それにしても記憶喪失関係の本なんて、珍しいですね、何かあったんですか?」
「…僕は自分の記憶の欠片を探している…、なくしてしまった僕の欠片を。」
隆美はそれを聞いて、どこか引っかかるものを感じつつも本を探す。
「あの……ひょっとして記憶をなくしてしまったの?」
隆美のその言葉にルキアは小さくこくりと頷く。
「僕の名前は坂原ルキア、といても本当の名前ではないけどね。
お察しの通り僕は今自分が何者であるのかわからない、だからその欠片を探している。
もし僕について何か知っている事があれば何でも良いから教えて欲しい。」
唐突ともいっても良いような感じでルキアは隆美に対し問い放つ。
「あ……、ごめんなさい。残念ながら、私はあなたの事は知らないわ。
あ、さっきの頼まれた本だけど、これで良い?」
ルキアは心の中では落胆をしていたが、そんな事はおくびにも出さなかった。
そんなルキアの事を隆美はじっと見つめる。
その視線に気がついたのか、ルキアは思った事をそのまま口にする。
「僕の顔に何かついてるわけ?それとも何か用?」
「あ、いいえ、そういう訳じゃなくて……、あ、これご注文の本だけど、これで良いですか?」
短い髪と雰囲気の為に少年か少女か判断できずについ見つめてしまった、とは言えずに誤魔化す様に慌ててそう話す隆美。
「そう、だったら、いいけど。」
その慌てた様子も意に介さなかった様子で本を受け取るルキア。
「お代ここにおきますね。」
「あ、はい、ありがとうございました。」
代金を払うとルキアはそのまま何もなかったかのように外に向かって歩き出す。
「ありがとうございました、またよろしくお願いします。」
隆美の声を背中に聞きながら、外に出たルキアは何気なく後ろを振り返る。
『僕の記憶の欠片、どこにあるの?』
心の中で自らの記憶の欠片のありかを探しながらも、なんとなく郷愁に似たものを何故か感じながら、文月堂を後にするのであった。
Fin
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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≪PC≫
■ 坂原・ルキア
整理番号:3942 性別:女 年齢:16
職業:邦浪人
≪NPC≫
■ 佐伯・隆美
職業:大学生兼古本屋
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■ ライター通信 ■
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どうも初めまして、新人ライターの藤杜錬です。
この度は『文月堂奇譚 〜古書探し〜』にご参加頂きありがとうございます。
ルキアさんのクールな感じが出せてれば良いと思うのですが、どうでしょうか?
私が初めての依頼だったみたいで、これからのルキアさんの方向性を決めるかもしれない、と思うとかなり緊張してしまいました。
これからルキアさんが無事記憶が見つけられるといいですね。
それではご参加ありがとうございました。
2004.09.09
Written by Ren Fujimori
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