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■茜の心を癒す人 【後編】■

滝照直樹
【3275】【オットー・ストーム】【異世界の戦士】
 まだ止まない雨の中、親子は会った。
 然るべき運命が近づいているのだろう。
「茜……気分はどうだ?」
「決まったよ……お父さん」
「そうか、なら良いのじゃ」
 父親は安堵の溜息をつく。

 突然平八郎はあなたに振り向く。
「娘が世話になった。しかしお主は娘をどう思っているのだ?」
 と、訊いてきた。

 今までの短い間に彼女との日々をどう大事にしていたかを訊いているのだろう。

「どうであれ、儂の神社にある“純真の霊木”が知る。お主は茜が“長谷神社の後継者”の試練を見ることを見る権利を得た。その時、本心を聞く」

 と、言い残し彼は去っていった。

「明日、神社に戻るから」
 茜は“危うさ”は見えない。完全に何かを決意したのだろう。

 あなたは、どうする? 
茜の心を癒す人 中編

 まだ止まない雨の中、親子は会った。
 然るべき運命が近づいているのだろう。
「茜……気分はどうだ?」
「決まったよ……お父さん」
「そうか、なら良いのじゃ」
 父親は安堵の溜息をつく。

 突然平八郎はあなたに振り向く。
「娘が世話になった。しかしお主は娘をどう思っているのだ?」
 と、訊いてきた。

 今までの短い間に彼女との日々をどう大事にしていたかを訊いているのだろう。

「どうであれ、儂の神社にある“純真の霊木”が知る。お主は茜が“長谷神社の後継者”の試練を見ることを見る権利を得た。その時、本心を聞く」

 と、言い残し彼は去っていった。

「明日、神社に戻るから」
 茜は“危うさ”は見えない。完全に何かを決意したのだろう。

 あなたは、どうする? 



 20mの巨体に対して長谷平八郎は平然として告げている。本来ならば驚き逃げるかIO2が介入しにくるだろう。
「しかし茜、面白い体験をしていたな」
「ま、まあ……ね」
 苦笑する茜。
 オットー・ストームはこの老人はただ者ではないと思った。
 まず、彼の苦手な霊が彼を守っていること、いや霊というより驚異的な“世界の一部”からの加護だ。
「見に行くロボ……しかし、平八郎……俺は……神社に近づけない」
 怖々と平八郎にいう
「む? どうしてだ? 巨大すぎるとこと……ふむそうか。純真の霊木の力を感じて恐怖しているのだな」
「……」
 沈黙は肯定である。
 かっかっかと笑う平八郎。
「では、明日だ。2人とも来るのだぞ」
「うん」
「わ、分かったロボ」
 と、雨の中親子は別れた。


「大丈夫なのかロボ?」
 オットーは帰りに茜に訊く。
「何となく、だね。でも、君って幽霊とか怖いの?」
「……そうだロボ。それにお前の父親、怖いロボ。この世界怖いロボ」
 異世界の戦士である彼にとって、この世界に置ける怪奇現象、とくに幽霊という科学的に測定できない(似たようなモノは再現可能だが)事柄は理解できない。理解できない事は恐ろしいという。機械生命体であるオットーは、まさか世界の力を目の当たりにするなんて思ってもなかったのだ。
 それでも、茜を助けたことに後悔はない。
 茜を放っておけなかったことは事実だし、この短い期間の間に少しなりとも彼女を仲間と思っている。機械生物と人間に恋が芽生えることは稀かも知れない。何せ彼自身は生命兵器故、そう言う物はプログラムされていない。敵か味方か、怖いものかそうでないか、というものだ。現在の改造主が別のおかしな改造をするだろう。
 茜はどう思っているのか訊いてみたいが、敢えて止めておく。自分自身得体の知れない“力”に立ち向かおうとする茜にどう接するか困っているところなのだ。
 それに……人間の感情という物はまだ若い彼には分からない。大規模戦闘兵器として優れているとしても、一般的感情を持つ生命体としては未熟だ。この雨の数日あまり会話せずに、彼女を見守っていた。人間に興味がある等、色々な意味で。

 ――人間とは色々複雑ロボ。

 そう彼は考え、秘密基地に戻った。
 あとは、寝て明日を待つばかり。
 2人は何も会話をせず、夜を過ごした。



 翌日の昼頃
 長谷神社に巫女姿で茜が戻ってきた。
 オットーは巨体の為、また純真の霊木の力を恐れているため神社に入れない。視認可能範囲ぎりぎり、光学迷彩とステルス機能をフルに使い霊木と茜を見下ろしている。
「お帰り」
「ただいま」
 親は、娘を何事もなかったかのように出迎えた
「あのロボットは……上かの?」
「うん」
 しかたないものじゃ。と笑う平八郎。
「さて、始めるか?」
 しかし、直ぐに真剣な顔つきになった。

 霊木の前に親子は立つのをオットーは視ている。
 何か特殊な儀式、神道に通じるものなのかを行っていると、霊木の霊力が神社全体を更に包み込む。通常の何倍の強さで……。
 そして霊的な爆発が起こった。しかもその力は……オットーが浮遊している所まで炸裂したのだ。
「え? ぎゃぁ!!」


 オットーは気が付くと、妖精でも踊っていそうな神秘的な森にいる。しかも、彼は完全に今のボディを失っていた。人魂みたいな半透明の物質に生命コアが包まれている。
「こ、壊れたロボ!!か、身体がないロボ!」
 あまりのことで驚くオットー。
 いや、元から幽霊が苦手なために自分が似たような物になれば錯乱するだろう。
 一時間ぐらいフワフワと暴れて冷静さを取り戻す。
「たしか……あの力にぶつかって……しかし……どういうことロボ?」
 考えてみる。
 世界の力の一部というなら、不可能なことを可能にすることは簡単だろう。
 平八郎の言葉を思い出した。
「お主は茜が“長谷神社の後継者”の試練を見ることを見る権利を得た」
 権利。
 即ち、霊木の計らいにより、彼はこの姿になって茜の試練を見届ける事になったのだ。
「と言うことは?」
 オットーは一番自分的に怖い考えを持ってしまった。
 ――今は私の“固有世界”の中です……機械生物

 見知らぬ女性の声がした。
「ぎゃあ!」
 あとに癖になっている“ロボ”さえ口に出来ないほどオットーは驚き恐れ、今の身体を通常の三倍(?)で彼方此方飛んでいた。

 ――落ち着きなさい。地の鋼から生まれた者よ。
 その言葉は、威圧的ではなかった、しかも癒される。
「お、お前の………世界、ロボ?」
 ――そうです。見届けるには近くの方がいいでしょう? とは言っても……そこまで神秘を怖がるとは
 “木”は笑っている。
「む、わ、笑うなロボ! あ、茜は何処だロボ!?」
 少し怒るオットー。
 ――既に始まっています。

 霊木の世界の中心に茜が何かと対峙している。巫女姿に見えるわけだが、その服も透けており、殆ど裸に近い。得意武器のハリセンさえ無かった。
 彼女はこの“世界”で何を視ているのか、どういう風に戦っているのかオットーに分からない。ただ、相手は今自分と話している“霊木”というのは分かった。
 また、自分が人魂になっている事も考えれば、今の茜も幽体なのだと理解する。又其れで怖がッ手混乱する事は出来ない。なんとか我慢して茜を見守る。
 ――肉体ではなく魂、精神の戦いです。
 と霊木はオットーに囁いて気配をけした。
「魂、精神……」
 機械生命体は呟いた。


 茜の身体が徐々にかすむ。
「幽体が消えていくロボ? もしや! 茜……」
 精神戦闘中の茜。世界の一部とか弱い少女の戦い。世界に相手をしていると言うこと自体無謀だ。しかし何故そこまでして試練を受けるのか?
 オットーは知能兵器として考えた。
『俺は戦うために生まれたロボ。敵と戦うため、その拠点を破壊するため……。理由はそれだけだと思うロボ。しかし、茜はこの霊木を守り世界を守るために木に認めて貰う一族なのかロボ? つまり……ガーディアンヒューマン……』
 相反する理由、存在。
 彼は敵を倒す為の戦士。
 彼女は霊木を守るための戦士。
 状況によれば、敵対していただろう。
 しかし、茜が苦しみ、徐々に姿が消えていく所をみていると、そんな事より大事な思いが強くなってくる。
「たすけなきゃ……今のこの身体で何が出来るか分からない……しかし助けるロボ!」
 彼は、人魂のまま茜に向かっていった。
 ――見届けるのみです!
 いきなり謎の障壁が彼を阻む。
「邪魔するのかロボ! 茜があのままでは死んでしまうロボ!」
 ――もしそれが定めなら、彼女には資格がない事のみ。
「うるさい! 茜! 今助けるから頑張るロボ!」
 オットーは叫ぶ。
 その叫びに呼応するかのようにメガ魔弾砲のみが現れ、障壁を破壊した。
「!?」
 驚くのはオットー。
 しかし直ぐに理解した。
 精神と魂の戦い。即ち……魂と精神の尽きる限りで具現すれば……と。
 しかし、其れが何になろうか? 
 自分に世界に立ち向かえるほどの力などあるはずがない。
 いや、其れは違う。
 高速思考で結論が出た。
「茜! 頑張るロボ! 俺は……前にも言った通り、茜を仲間と思っているロボ!」
 彼の心の叫びが最大の助けなのだ。
 その叫び声が茜に聞こえたのか……茜はオットーに振り向き……、
 ――ありがとう……でもごめんね……。
 微笑んで全てが消えた。
「あかねー!?」
 白い爆発が起こり、オットーも飲み込まれていった。



 オットーは再び気が付けば、自分の秘密基地にいた。
 外では雨が降り続いている。
「ゆ? 夢ロボ?」
 夢を見ていたようで、断片的に夢を忘れてしまったみたいだ。
「何かあったような……なかったような……」
 ふと、基地を見渡すと人間用のベッドが目はいった。つい最近まで誰かが使っていたようだ。
「……!?」
 かなり記憶が混乱している。
 たしか……雨の日……。
 いや? 夢? それにしてもリアル……。
 ベッドにハリセンがあった。自分の物ではないことには直ぐに分かる。改造主は箒が武器なので違うだろう。

 ……分からないロボ……。
 彼は深く考えることは止めて、いつものとおり、腐れ縁の手伝いやら基地の雑用を始めるのだった。

 しかし、納得行かない。
 悲しい。
 何故か悲しい。
 何かがいや、誰かが目の前で……消えた。

 オットーは涙を流せないが、魂では泣いていた。
 少しだけ記憶に残る、雨の日に出会った“危うい”少女の事を。



End


■PC/NPC紹介
【3275 オットー・ストーム 5 男 異世界の戦士】

【NPC 長谷・茜 18 女 神聖都学園生徒/巫女】
【NPC 長谷・平八郎 65 男 長谷神社宮司】

■ライター通信。
 滝照直樹です。
 『茜の心の傷を癒す人』に参加して下さりありがとうございます。
 オットー様と茜のお話しは少し悲しい結末になりました。
 長谷茜は、どうなったのか分かりません。死んでしまったのか霊木に取り込まれたのかさえ分かりません。ただ、
 本編の方では、一応茜は元気です。このノベル自体はパラレル世界なので、殆ど影響はありません。
 オットー様の設定は面白いのですが、かなり不自由しているようですね。流石に20m巨体は改造主はやりすぎではないかと霊木も茜も思っていたことでしょう。正直申しますと私もですが。

 ではなにか機会があればお会いしましょう。

 滝照直樹拝