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■ファイル-2 神隠し。■

朱園ハルヒ
【3448】【流飛・霧葉】【無職】
 電話が鳴り止まない、という光景自体、この司令室では珍しい事であった。受話器を置いた瞬間に再び鳴る、電子音。
「…………」
 呼び出されたはいいものの、司令塔である槻哉がこの状態では、話の進めようが無い。
 斎月も早畝もナガレも、槻哉が電話対応に追われているのを、黙って見守るしか出来ずにいた。
「…商売繁盛?」
「そーゆう問題じゃないだろ…。こりゃ、電話機増やさないとダメかもな」
 へろり、と槻哉に力の無い人差し指を指しながら、早畝が言葉を漏らすと、ナガレがそれに突っ込みをいれる。
 斎月は黙ったままで、咥えた煙草に火をつけて、テーブルの上に置かれていた資料に目を落としていた。
「……はい、これから調査いたしますので、そのままお待ちください」
 その言葉を最後に、電話の呼び出し音は一応の落ち着きを取り戻す。見かねていた彼の秘書が、内線を切り替えたらしい。
「ふぅ…。三人とも、待たせてすまなかったね」
「…事件はこれだな?」
 槻哉の表情は半ば疲れているようであったが、彼は三人に微笑みながら、言葉を投げかけてきた。すると斎月がいち早く反応を返す。
「…そう、今回はこの事件を担当してもらう。さっきからの電話は被害者のご家族からなんだよ。警察の怠慢さも、程々にしてもらいたいね…」
 槻哉の言葉は、何処と無く冷たいものであった。その言葉尻からも読み取れるように、『今回も』警察尻拭い的な、事件であるらしい。
「カミカクシ?」
 早畝は斎月が持ったままの資料を覗き込みながら、首をかしげる。昔はよく起こっていた事件らしいのだが、近年では稀なほうであり、早畝はそれを知らないようであった。
「前触れも無く突然、行方不明になってしまう事を言うんだよ。その後、その人たちが発見されない事が多いから『神隠し』と言われているんだ。昔話なんかにも、出てくるんだよ」
「犯人は天狗、とか言う奴だろ」
 ナガレはいつものように早畝の肩口から資料を覗き込んでいた。この中で一番永く生きている彼にとっては、気になる事件の一つのようだ。
「まさか今時、その『天狗』なわけじゃねぇだろ? 場所が場所だしよ」
「そうだね、この都会の真ん中では、それは有り得ない存在だろうね。…どうやら誰かが故意的に、次元の歪みを作り出しているようなんだ」
 槻哉がそう言うと、まわりの空気がピン、と張り詰めたように思えた。
「…また厄介な事件だな…」
「それを解決していくのが、僕らの仕事だろう?」
 斎月が独り言のような言葉を漏らすと、それに反応したのは槻哉だった。そして皆が視線を合わせて、こくりと頷く。
「今回も、よろしく頼むよ」
「了解」
 三人は資料を手に、調査に出向くための準備を始めた。
ファイル-2 神隠し。


 電話が鳴り止まない、という光景自体、この司令室では珍しい事であった。受話器を置いた瞬間に再び鳴る、電子音。
「…………」
 呼び出されたはいいものの、司令塔である槻哉がこの状態では、話の進めようが無い。
 斎月も早畝もナガレも、槻哉が電話対応に追われているのを、黙って見守るしか出来ずにいた。
「…商売繁盛?」
「そーゆう問題じゃないだろ…。こりゃ、電話機増やさないとダメかもな」
 へろり、と槻哉に力の無い人差し指を指しながら、早畝が言葉を漏らすと、ナガレがそれに突っ込みをいれる。
 斎月は黙ったままで、咥えた煙草に火をつけて、テーブルの上に置かれていた資料に目を落としていた。
「……はい、これから調査いたしますので、そのままお待ちください」
 その言葉を最後に、電話の呼び出し音は一応の落ち着きを取り戻す。見かねていた彼の秘書が、内線を切り替えたらしい。
「ふぅ…。三人とも、待たせてすまなかったね」
「…事件はこれだな?」
 槻哉の表情は半ば疲れているようであったが、彼は三人に微笑みながら、言葉を投げかけてきた。すると斎月がいち早く反応を返す。
「…そう、今回はこの事件を担当してもらう。さっきからの電話は被害者のご家族からなんだよ。警察の怠慢さも、程々にしてもらいたいね…」
 槻哉の言葉は、何処と無く冷たいものであった。その言葉尻からも読み取れるように、『今回も』警察尻拭い的な、事件であるらしい。
「カミカクシ?」
 早畝は斎月が持ったままの資料を覗き込みながら、首をかしげる。昔はよく起こっていた事件らしいのだが、近年では稀なほうであり、早畝はそれを知らないようであった。
「前触れも無く突然、行方不明になってしまう事を言うんだよ。その後、その人たちが発見されない事が多いから『神隠し』と言われているんだ。昔話なんかにも、出てくるんだよ」
「犯人は天狗、とか言う奴だろ」
 ナガレはいつものように早畝の肩口から資料を覗き込んでいた。この中で一番永く生きている彼にとっては、気になる事件の一つのようだ。
「まさか今時、その『天狗』なわけじゃねぇだろ? 場所が場所だしよ」
「そうだね、この都会の真ん中では、それは有り得ない存在だろうね。…どうやら誰かが故意的に、次元の歪みを作り出しているようなんだ」
 槻哉がそう言うと、まわりの空気がピン、と張り詰めたように思えた。
「…また厄介な事件だな…」
「それを解決していくのが、僕らの仕事だろう?」
 斎月が独り言のような言葉を漏らすと、それに反応したのは槻哉だった。そして皆が視線を合わせて、こくりと頷く。
「今回も、よろしく頼むよ」
「了解」
 三人は資料を手に、調査に出向くための準備を始めた。



 ―――困っている。
 皆が困っている。
 もっと困らせてやろう。それが『私』を認めるという証となるのなら。
 愚かな者達よ。
 『私』を拒絶した者達よ。
 もっと苦しめばいい。
 これが『私』の力だという事を、解らせてやる。

「……どれもこれも怪しい奴ばっかりだな。少しはまともな人間はいねーのかよ…」
「うーん…そーいうもんじゃないの? なんだっけ…ほら、テレビとかでよくやってる…マッド…ナントカ」
「マッドサイエンティストだろ。お前、それはテレビの見すぎだ」
 集められた資料を眺めながら、独り言のような言葉に返事を返したのは、肩を並べて歩いている早畝だった。
 ナガレは珍しく『単独に動く』、と言って、彼らより先に司令室を後にしているのだ。
「ここの科学者達全員、洗いざらい調査してみる?」
「いや、その必要は無いだろ」
 二人が手にしている資料は、割と名の知れた大きな科学研究所のものだった。その中の所員が数名、例の『神隠し』で行方不明になっているのだが、所員の顔写真や、経歴をみていると、この研究所自体が怪しい、と言うことになったのだ。
 次元を歪めるなどと言う考え自体、自然を相手とする科学者が、一番やりそうなことであるもの、確かだ。
「…斎月がそう言うって事は、目ぼしい人物でも、いるんだ?」
 早畝が斎月を覗き込みながらそう言うと、に、と笑いながら斎月は言葉無く頷き返してくる。そして自分が手にしていたほうの資料を、早畝の目線にまで落として、とある人物の顔写真に指を刺して見せた。
「……コイツ、見るからに怪しいだろ」
「うっわ、陰気くさいなぁ…。影で変な化学実験してそう…」
 その写真には、科学者の一人である男が映し出されていた。だらしなく伸ばされた髪を適当に後ろで括り、表情には明るさが無い。頬はこけ、目の下には隈が出来ている。何年も研究一筋で表にも出たことが無い、と言いたげな風貌であった。
「表には漏れちゃいねーが、早畝が思ってる通り、怪しげな研究を独自で繰り返して、3ヶ月前に解雇になったらしい。その時、ちょっとした騒動になって、近隣がえらい迷惑だったらしいぞ」
「騒動?」
「解雇の理由が納得できねーって、毎日研究所に足を運んでは、怒鳴り散らしてたそうだ。しまいにゃぶちキレて、研究所の前で小さな爆発まで起こしたらしいぜ」
「うわー…」
 早畝が頭の中で色々と想像しながら斎月の話を聞いていたのか、実に素直に嫌そうな表情を作り、肩を落としてみせる。この人物が犯人であるならば、相当厄介な相手であることは間違いないと、解っているからだ。
「…で、俺達はどうすんの?」
「コイツを探すに決まってるだろ」
 早畝の言葉に、斎月はそう応えながら、手にしていた資料をくるりとまとめ、それを早畝の頭の上にぽん、と叩くように置いた。
 当然、頭から落下するそれを、早畝が受け止める。
「もー…いらなくなるとすぐに俺に寄越すんだから。自分で捨てろよなー…」
 そう、ブツブツと文句を言いつつも、斎月のゴミを捨てるのは、いつも早畝の役目らしく、目に留まったゴミ箱へと、それをくしゃくしゃにして、投げ入れた。
 つまりは二人とも、もう資料は必要ない、と言うことになる。
「ほら、置いてくぞ早畝」
「えっ、待ってよ斎月っ」
 無事、ゴミ箱に入ったかどうかを確認していた早畝を横目に、斎月は目的地である研究所がある場所へと足を向けていた。早畝は慌てて、彼の後姿を追う。
「………ん?」
 暫く歩いていると、斎月が前方に見覚えのある姿をその目に認めて、立ち止まった。
「…わっ、…なに、どうしたの斎月?」
 早畝は案の定、余所見をしながら歩いていたのか前を歩く斎月が立ち止まった事にも気が付かずに、彼の背中に自分の鼻をぶつけてしまう。
「………あれは…霧葉?」
「え? 誰?」
 斎月の肩口から覗き込むかのように、早畝が前方へと視線を投げると、その先には和服を着た少年が立っていた。その手には日本刀を持って。
「……また、食い扶ちでも危なくなったのか…?」
 斎月は早畝の言葉には答えることなく、その彼に向かい、足を向け始める。
「わわっ…」
 それまで斎月に寄りかかるようにして前方を見ていた早畝は、急にバランスを崩し、前へを転びそうになっていた。
「霧葉」
「…………」
 斎月はその人物に近づき、声をかける。彼は、前の事件で斎月に協力してくれた、流飛霧葉であった。
「何してる? こんな所で」
「…そっちこそ…って言いたいけど、そうか、また調査なんだな」
 霧葉はゆったりとした空気を作りながら、斎月の言葉にそう答えると、ふらりと背を向けた。
「…おい、ちゃんとメシ食ってんのか?」
「まぁ、それなりに」
「……………」
 斎月の言葉に、霧葉は肩越しにそう答えると、その場から姿を消した。この場に何かを感じたのか、それは彼本人にしか解らないことだが、以前より少しだけ、痩せているように思えたのは、斎月の思い違いだろうか。
「…斎月、今の…」
「ああ、前にお前も会っただろ。流飛霧葉だ」
「なんて言うか…フラフラしてるように、見えたんだけど…」
「だよなぁ…」
 斎月と早畝は彼が消えた方向を見ながら、独り言のように会話を続ける。
「まぁ、また会えたら、バイトとして協力させるかな…」
 言いながら、斎月は視線を変え、本来の目的であった研究所のほうへと身体を向けた。
 早畝もそれに習うかのように、続く。
 其処は人気の無い、深閑とした場所であった。
 研究所自体は現在、閉鎖状態にある。この場が事件の現場になってしまっているのだ、無理も無いだろう。警察の家宅捜索にもあったようで、それが歓迎できない部分もあり、研究所自体はこのまま無いものになってしまうのかもしれない。
「どうして研究者ってのは、まともな現実を見れないかねぇ…」
 斎月がそう零すと、早畝もそれに頷いて返す。
 するとその場が、急に重力がかかったようになり、二人は体制を崩した。
「……っ、聞こえるように言ってはみたが、ビンゴかよッ」
 斎月は傍にいた早畝を庇うようにしながら、何とかその両足を折る事はせずに、上空を見上げた。
「斎月…、平気…?」
「ああ、なんとかな」
 二人が気が付けば。
 目の前にあった研究所は消え、周りの景色も何処かに消え去り、その場は異空間と呼ぶにふさわしいモノに変わり果てていた。
「……これが、次元の歪みの、正体…?」
 早畝が辺りを見回しながら、そう呟いた。
 斎月は司令室と繋がる通信機を取り出すが、この場からの通信は不可能のようで、何の反応も見せない。それに彼は舌打ちをしながら、早畝の背に自分の背を充てた。
「油断するなよ、早畝。おそらくコレが、犯人のシマだ」
「うん…」
 斎月にそう言われ、早畝は腰の銃に手を置く。
 何処を見ても、濁ったような、灰色の世界。そんな中で、犯人の気配は、今のところ掴めてはいない。
「…どうする?」
 そう、呟いたのは、早畝であったのだが。
 斎月も心の中で、同様に同じ言葉を、呟いていた。
 全身に緊張が走る。動こうにもヘタに動けない。早畝も銃を構えたまま、同様に焦りを感じ始めていた。

 嫌なにおいがする。
 あれは『私』を否定するもの。
 上手い具合に罠にはまった。このまま逃げ場の無い空間で苦しんで死んでいくといいさ。
 『私』は素晴らしい。それを皆に理解されるまで、この空間は誰にも邪魔をさせない。

「………なんか、すげームカついてこないか?」
「うん…」
 空気が悪いのは、取り込まれた瞬間から感じていたのだが。
 どうにも、この異空間の中にいると、胸の辺りがざわついて仕方ない。このままこの状態が続けば、斎月も早畝も、怒りを抑えきれるかどうか。
「俺に八つ当たりだけはするなよ、早畝」
「それ、そっくりそのまま返すよ…」
 これが、犯人の心理攻撃かとも、思う。
 おそらくそれは間違いのないことで、このまま姿を現す事の無いまま、斎月と早畝で互いの自滅を期待しているのだろう。
「……………」
 まさに八方塞で、ある。
 そんな、時に。
「……!?」
 斎月の鼻先を掠めた、風のようなモノ。
 慌てて身を引くと、早畝が条件反射で振り向き、銃を構えて見せた。
「何…?」
 斎月のほうを見ると、前方の空間が刃物のようなもので切り裂かれ、その向こうには現実の景色が映し出されている。
「……、まさか…霧葉?」
 斎月はこの鋭さに見覚えがあった。いや、肌で覚えていると言った方がいいのだろうか。疑問符で言葉を発したが、おそらくそれに間違いはないだろう。
「……あ、あれ…っ」
 早畝がその瞳に何かを捕らえたようで、指を刺した。
 その先には、やはり、と言っていいだろう。霧葉が刀を抜いた状態で、立っていた。どうやら斎月たちが取り込まれたときに、巻き込まれたらしい。
「…霧葉っ バイト代出すから協力してくれ!」
「……………」
 斎月が霧葉に向かいそう言葉を投げかけると、僅かであるが、表情に変化があった。それでもそれに返答はない。
「聞こえてるの?」
「…ああ、多分大丈夫だろ。あいつ、刀抜くと、全身戦闘モードになるらしくてさ。…それより早畝、真打登場だぜ」
 早畝の言葉にそう応えながら、破られた空間の端に現れた存在に、斎月は余裕を見せて笑った。
 資料にあった、怪しげな研究者の顔が、そこにあったからだ。
「……なぜだ。なぜこの私の邪魔をする…」
 ゆらり、と歩みを進めながら、研究者の男は斎月たちを睨み付ける。その視線は、異常なほどに。
「なんで、だぁ? お前、自分がどれだけ偉いと思ってんだ?」
「………!」
 斎月の言葉に、男は過剰に反応して見せた。
「私は素晴らしいのだ! お前らなど足元にも及ばないほど…!! それを理解も出来ずに、何を言うか!!」
「…あー………」
 早畝は男の発言に、一瞬だけ眩暈を覚えた。自分を過信するにも、程がある。こんな奴が自分達の手元を狂わせていたかと思うと、余計に情けなさが上乗せされた。
「……悪いけどさ、世の中にはあんたなんかより、ずっとずっとまともで、正しくて、凄い人、いっぱいいるし。…それに、今時ソレ、流行らないよ」
「まぁそう言うことだ。悪ぃけど、さっさと解決させてもらうぜ」
 ふー、と深い溜息を吐きながら、早畝がそう言うと、斎月がそれに言葉を繋げてくる。そして体勢を立て直し、男へと向き直った。
「………何故だ!! 何故否定をする!! お前たちなど、この場で死んでしまえ!!」
「―――霧葉!!」
 男は二人の言葉に激怒し、飛び掛ってきた。その手のひらの中には、小さな次元の歪みらしき、黒い物体を掲げて。
 それと同時に叫んだのは、斎月だった。
 その叫びと共に、動きを見せたのは、それまで彼らの後方で佇んでいた、霧葉。何も言葉を発する事も無く、大きく一歩を踏み出して、手にしている刀を振りかざした。
「…殺すなよ」
 後付するような、斎月の言葉は霧葉には届いていたのだろうか。
 彼の切っ先が、男の手にしている『力』に触れ、一瞬にして砕け散っていく。
「……っ!? 完璧な私の力が…!?」
「だから言っただろ。世の中にはお前よりすげーヤツがいるんだって」
 霧葉によって壊された男の力は、脆いものだったようで。
 再生する事さえも、出来ずにいる。
 見るみる崩れていく、回りの空間。そしてその奥からは、行方不明者らしき人々が、折り重なるようにして倒れているのが発見された。
「…もうお前に勝ち目なんかねーよ。大人しく俺らのボスに裁かれてくれ」
 斎月が男に向かいそう言うと、早畝が持っていた銃を発砲する。それは弾の中に網のようなものが仕込まれている、捕獲用のモノだった。
 男はいとも簡単に自分の力が壊された事にショックを受けたのか、その場にへたり込んだまま、動く事も無かった。


「今回もお前のお陰で助かったよ。…ほら、今回の取り分」
「…いいんだ?貰っても」
 その場から去ろうとしていた霧葉を、半ば強引に引きずるような形で。
 司令室に戻ってきた斎月は、詳細を槻哉に説明し、霧葉に『バイト料』を手渡す。
 霧葉自身は本当にもらえるとは思ってもいなかったようで、袋を手にしながら、斎月に確認を取る。
「最初からそう言ってただろ? それとも俺がその場凌ぎで嘘付いてたって?」
「……そう、見える。あんたって」
「あははははっ斎月ってば信用無いー!」
 ぽつぽつと話す霧葉に、早畝が爆笑すると、斎月が無言で拳を彼の頭に打ち込んだ。
「いってぇー! なにすんだよ斎月ッ!」
「…まぁ、とりあえずコレはお前の稼ぎ分だ。また何かあったら顔出せよ。いつでも歓迎するしな。それから、ちゃんとメシ食えよ、霧葉」
「……ああ、気をつける」
 騒ぐ早畝を無視した状態で。
 斎月は霧葉にそう言うと、彼は静かに立ち上がった。
「じゃ、俺はこれで」
 そんな霧葉に斎月が頷くと、早畝も槻哉も笑いながら見送りをする。
「またな〜霧葉サン」
「いつでも遊びにおいで、流飛くん」
 霧葉は二人を見比べながら、静かに頭を下げると踵を返した。
 そして言葉無く、彼は司令室を後にするのだった。
「…さて、これから反省会だよ、二人とも」
「はーい」
 斎月は霧葉が姿を消した扉を暫く眺めていたが、槻哉の言葉を合図に、視線を戻し、デスクへと足を向けるのだった。


【報告書。
 10月06日 ファイル名『神隠し』

 時限の歪みを作りだし、その奥へと人々を押し込めていたと言う事件は、協力者、流飛霧葉氏とともに、斎月、早畝とが無事解決。
 犯人の個人的な恨みによる犯行であったが、異空間に取り込まれた人々は無傷で発見。その後の生活にも支障が無く、平穏に過ごせていると報告を得ている。
 
 以上。

 
 ―――槻哉・ラルフォード】
 

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             登場人物 
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【整理番号 : PC名 : 性別 : 年齢 : 職業】

【3448 : 流飛・霧葉 : 男性 : 18歳 : 無職】

【NPC : 斎月】
【NPC : 早畝】

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            ライター通信           
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 ライターの桐岬です。今回は『ファイル-2』へのご参加、ありがとうございました。
 個別と言う事で、PCさんのプレイング次第で犯人像を少しずつ変更しています。

 流飛・霧葉さま
 再びのご参加有難うございます。今回は戦闘のみとのプレイングでしたので
 それに近くなるように務めてみました。楽しんでいただければ幸いです。

 ご感想など、お聞かせくださると嬉しいです。今後の参考にさせていただきます。
 今回は本当に有難うございました。

 誤字脱字が有りました場合、申し訳有りません。

 桐岬 美沖。