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■文月堂奇譚 〜古書探し〜■

藤杜錬
【3525】【羽角・悠宇】【高校生】
とある昼下がり。
裏通りにある小さな古い古本屋に一人のお客が入っていった。

「いらっしゃいませ。」

文月堂に入ってきたあなたは二人の女性に迎えられる。

ここは大通りの裏にある小さな古本屋、文月堂。
未整理の本の中には様々な本が置いてある事でその筋で有名な古本屋だ。

「それでどのような本をお探しですか?」

店員であろう女性にあなたはそう声を掛けられた。
文月堂奇譚 〜古書探し〜

羽角悠宇編

 学校帰りの羽角悠宇(はすみ・ゆう)その看板を見つけたのはほんの偶然であった。
今まで見て回ったどの古書店よりも古そうな看板、そこには『古書店 文月堂』と書かれていた。

「なんだかやたらと古そうな店だな…。ま、とりあえず中に入って探してみるか。」

 悠宇はそう一人ごちると、文月堂の戸をくぐって行った。
店の中は悠宇が予想していたよりも本の数が多く、どこに何があるのか一目では分からないといった様子だった。
店には若い女性、と云うよりも少女と云った方がいいだろうか、きれいな自分と同じ銀髪をした店員が何かの本、恋愛小説化何かだろうか?を一心不乱にカウンターの中で読んでいた。

「何か集中してるのに邪魔しちゃ悪いよな、とりあえず自分で探してみるか。」

 店員の様子を見て、邪魔をしない様にあまり音を立てない様にゆっくりと写真集などが置かれてるとおぼしき一角を探して、一冊一冊時間をかけて手にとって見始める。

「ふう……、写真集だけでも随分な数があるんだな。
なんだかよく分からない昔のおっさんの写真集みたいのまであるし。」

 悠宇はたまたま手に持っていた、明治時代のどこかの大臣か何かの写真だろうか?が何枚か移っている本を見て思わずぼやいてしまう。

「ま、これだけあれば、目的の本もあるかもしれないな。」

 そう思って写真集を見ていくが、どうにも見つからない。
あらかたの写真集らしき本は手にとってみてみたが、目的の『楽器の写真集』というのは見つからなかった。

「仕方ないな、店員さんの邪魔はしたくなかったんだが…。」

 悠宇はその一角を離れカウンターまで歩いていく。
店員は先ほどと同じ本を一生懸命に読んでいたが、悠宇は仕方ないと思い声をかける。

「あの、すみません…。」

 店員の少女はその声に驚き、思わず椅子から転げ落ちてしまう。

「いたた…。」
「だ、大丈夫ですか?」

 少女のその様子に思わず悠宇はカウンターの中を覗き込んで心配してしまう。
少女は慌てて立ち上がって、恥ずかしそうな照れ笑いを浮かべる。

「あ、い、いらっしゃいませ。急に驚かさないでくださいよ。」
「さっきからずっと店内にいたんだけどな、全く気がついてなかったとは思わなかったんで、すみませんでした。」
「あ、そ、そうなんですか?また夢中になりすぎちゃったか…。」

 後半はほとんど独り言のように少女、佐伯紗霧(さえき・さぎり)が悠宇の言葉に答える。
その言葉を耳ざとく悠宇は聞きつける。

「またっていつもこういう感じなの?気をつけた方がいいと思うよ。」

 悠宇は改めて紗霧のことを見て見る。
最初はもっと大人の様に思えたが、近くで見てみるとどうやら自分とあまり変わらない年代の様だというのに思わず拍子抜けしてしまう。

「なんだ同い年位だったのか、最初はもっと大人びて見えたけどな。」

 ついつい、先ほどの一軒で緊張の糸が切れたのか悠宇は軽口を叩いてしまう。
その悠宇の言葉にむっとした表情で紗霧は答える。

「どうせ私は大人っぽくありませんよ!!」
「ああ、ごめん、そういうつもりじゃなかったんだ。」

 調子に乗りすぎたと思った悠宇は素直に紗霧に謝る。
悠宇のその言葉に紗霧は仕方ないか、といった表情を浮かべる。

「えーと、それでどのような本を探しているんですか?
それとももう見つかりました?」
「ああ、まだ残念ながら見つからないんだ、ちょっと珍しい写真集を探してて…。」

 そう言ってから悠宇は自らが探している本の説明を紗霧にする。
紗霧はその説明を聞いた後、しばらく考え込む。

「写真集ならそこの写真集の所にあると思うんだけど…。」
「そこは一通り見てみたよ、でもなかった。」
「なかったですか、じゃあ後は…。」

 カウンターから出てきた紗霧はあまり人が来てそうにない一角に悠宇を案内する。

「ここの音楽関連のコーナーにならあるんじゃないかな?と思うんだけど…。」
「音楽の本の所か、ここは考えてなかったな、それじゃちょっと探してみるよ。」
「私も手伝いますよ、一人よりも二人で探した方が早いですから。」
「え?いいのにそんな…。」
「その代わりさっき転んだこと秘密にしててくださいね?」
「ああ、そういう事か、分かったよ。」

 悠宇は紗霧にそう答えると目の前の本の山に取り掛かる。
紗霧は踏み台を持ってきて上の棚を探し始める。
しばらく探していた二人だったが、悠宇の頭の上から紗霧の嬉しそうな声があがる。

「あ、この本じゃないですか?
………きゃぁ!!」

 そう言って紗霧は手に持った本を悠宇に見せようと姿勢を変えようとして、バランスを崩す。
バランスを崩して倒れそうになる紗霧を慌てて悠宇は抱きかかえて支える。
紗霧のその手に持った本を見て悠宇も嬉しそうな微笑を思わず浮かべる。

「ああ、この本だ、ありがとう。」

 思わず抱きかかえた姿勢のままお礼をいう悠宇であったが、今の状態に気がつきあわてて狭霧から手を放す。

「……やっぱりこの本でよかったんですね。
見つかってよかったですね。」

 少しばかり顔を赤らめながらも、紗霧も祝いの言葉を続ける。

「まさか本当に見つかるとは思わなかったからありがとう、ええっと……。」
「紗霧です、佐伯紗霧、たまにこのお店でお手伝いをしてるんですよ。」
「俺は羽角悠宇、このお店は結構気に入ったからまた今度寄らせて貰うよ。」
「ありがとう、そうしてもらえると嬉しいよ。」

 そう言って代金を払った後、先ほど見つかった本を嬉しそうにもって、同じように嬉しそうな紗霧の笑顔を背にして、満足げに悠宇は外に出て行く。
そして悠宇は走り出す。

『これを早くあいつにプレゼントしないとな。』

 そう心に想いながら…。


Fin

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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≪PC≫
■ 羽角・悠宇
整理番号:3525 性別:男 年齢:16
職業:高校生

≪NPC≫
■ 佐伯・紗霧
職業:高校生兼古本屋

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■         ライター通信          ■
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 どうも初めまして、新人ライターの藤杜錬です。
この度は『文月堂奇譚 〜古書探し〜』にご参加頂きありがとうございます。
今回の作品は如何だったでしょうか?
羽角さんの優しさがちょこちょこ顔を出しているプレイングで、いろいろ楽しかったです。
羽角さんが楽しんでいただけたら幸いです
それではご参加ありがとうございました。

2004.10.03
Written by Ren Fujimori