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■大仏交番【お世話になります】■

紫咲桂麻
【2980】【風宮・駿】【記憶喪失中 ソニックライダー(?)】
「オン・ソンバ・ニソンバ・ウンバサラ・ウン・ハッタ!」

…静かな大仏寺神社の朝。爽やかな風の中…重たい沈黙が流れた。
「あれぇ…何もおこらない…っすねぇ?」
道場の中心、マヌケな声をだし苦笑するのは仙狐の涼水だった。
彼は珍しく水干を纏った姿で、奇妙な形に手を組み合わせたまま座っている。
その彼の横で胴着姿の六刀は大きなため息をついた。
「……仙狐だったらもうそろそろ仙術も使えていいはずなのに…普通の術も使えないなんて…」
「う、そ、そんな諦めた声ださないでくださいよぅっ!オイラも一応ちまちまと練習してはいるんですから……お祓いだってできるようになったんですよ!」
「動物霊くらいなら、だろう?」
「………」

心底落ち込んだような顔をした涼水を見て、再びため息をついた阿修羅。
彼はいつもは涼水を邪険にしているように見えても、本心では少しでも早く一人立ちさせてやろうと思う親のような心境でいるのだ。
「まったく、いつもいつも悪戯に力を使ってるだけだから成長しないんだ。これから一週間道場を貸してもらうことにしたから、術の強化特訓をするぞ。」
「えー!一週間〜…もう三時間もこうやってるのにー!」
阿修羅よりも大きなため息が漏れた。

(めんどくさいなぁもう…オイラだって頑張ってるのに……う〜んしっかし…なんでできないんだろ……う〜ん…)
「じゃあ次、この札にかかってる雑鬼を調伏してみろ。これは俺が作った幻のものだから、俺に波長を合わせてそれから…」
(はぁ…だいたい人間界にいるんだから、そんなに必死にやらなくても安全は安全なんだよなー。焦らなくてもそのうちできるようになるってのに…)
「…おい、聞いてるか?」
「あ、はいはい、勿論聞いてますよ!」
「じゃあさっさとやる。あと一時間で交番に行かないといけないからな。」
涼水は渋々と手を組みなおし、ぶつぶつと言葉を唱え始めた。
(阿修羅さんが作った幻なんだから阿修羅さんを思い浮かべてー…えーと…なんだっけ…)

「オン・ベイシラ・マンダラヤ・ソワカ、オン・ベイシラ・マンダラヤ・ソワカ…」
「…ん?ちょっとまった!」
涼水は言葉を止められ、はっと我にかえった。
「涼水…おまえ今何か間違ってなかったか…!?」
「え?そーすかね?ちゃんと唱えたはずですけど…ちゃんと旦那を思い浮かべて旦那の方に向けて気を集中しました。」
「あのなぁ、おまえちゃんと聞いてなかったろ…それじゃあ術が俺にかかるだろうがっ!…まぁ調伏法がかかったところで何がどうなるわけでもないけど…」

「………あ、阿修羅の旦那…」
「…ん?」
「…な、な、なんか……その……いいにくいんですけど……おかしいことになってません…か?」