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■心を込めて花束を■

瀬戸太一
【2269】【石神・月弥】【つくも神】
「そろそろクリスマスかあ…」
 私は読んでいた本をばたんと閉じて、顔を上げた。
私の台詞を聞きつけたリックが、ばたばたと駆け寄ってきて嬉しそうな顔を見せる。
「え?パーティ?パーティすんのか?」
「……………。」
 多分今、この子の頭の中には、パーティで出される絢爛豪華なご馳走しか浮かんでいないんだろう。
「…パーティ、ねえ」
 無論、それも良いだろう。だってクリスマスなんだから。
………でも。
「パーティじゃなくてね。私たちにしかできないことが、あると思うの。どう?」
 私は首を傾げて尋ねてみた。
「えー、それじゃ食い物くえねーじゃん」
 つまんねぇ、とぶーたれるリックは放っておいて、銀埜に声をかける。
「銀埜はどう思う?」
「そうですね…まがりなりにもうちの店は雑貨屋なのですから。
クリスマスフェアというものは如何でしょう?
中々嬉しいと思いますよ、魔女の祈りが込められた品物というものも」
 くす、と笑って銀埜が言う。
私は目を丸くした。さすが銀埜、歳食ってるだけあるわ。
「そうね、それ、いいかも。
ふふ、腕が鳴るわね。忙しくなりそうだから、リックもちゃんと店番してね?」
「へーへー、了解しましたっと」
「あと、お客さんに食べ物ねだっちゃだめよ?」
「……へーへーへー」
 びくっと一瞬固まるリック。
…やっぱり図星だったか。

心を込めて花束を〜僕と君のビューティフル・デイ

「ねえ銀埜、リックは何処にいったの?」
「足りない飾り付けを買いに出させました。こんなときこそ、あの羽根を有効活用してもらわなければ」
「誰かに見られたりしないかしら?見つかったら研究所行きよ」
「この辺りはそう人通りが多くないので大丈夫でしょう。
大体あいつはいつもウロチョロ飛んでばかりいるのですから、連行されるのならとっくにされてますよ」
「…それもそうよね」
 私と銀埜は、店の壁に光の反射で七色に光る飾りを取り付けながら、そういう話をしていた。
今日はクリスマス・イブ。日本では恋人と過ごすことが一般的になっていて、
シングルの人は大変さびしい想いをしているようだけども。
私たちは勿論、家族と過ごす。本来ならイングランドに帰って、婆様たちとシャンパンでも開けたいところだけど、
生憎、向こうのほうから帰ってこなくても良いと言われてしまっていた。
修行中…それに今は試験の真っ最中だもの、仕方ないわね。
試験が無事に終って、魔女の資格をもらえたら、休暇を取って実家に帰ろう。
婆様の焼くミートパイが懐かしい。
「…うん、こんなものでいいかしら」
 私は懐かしい故郷の森を頭に浮かべながら、目の前の飾りを眺めた。
そして立っていた台代わりの椅子からよいしょ、と降り、全体を見上げた。
暖炉の上のレンガ造りの壁一面に、私がつけた飾りが華やかに光っている。
長い飾りを一定区間で壁に留めて、その周辺にきらきらと光る星をいくつも貼り付けた。
「ん、なかなか上出来。そう思わない?」
 私は少し離れたところにたって、同じように見上げている銀埜に声をかけた。
銀埜はにっこりと頷いて、
「ええ、良いと思いますよ。そろそろツリーを表に出しますか?」
 そう言って、銀埜の傍らにある中ぐらいのツリーに親指を向けた。
近所の花屋で買ってきたもみの木だけども、なかなか立派なものだ。
私の腰ぐらいまでの高さしかないが、まだ若い。これからどんどん育つだろう。
 私は、既に華々しく飾られているツリーを見て頷き、
「うん、お願い。ドアの横がいいわね。…大分重そうだけどいける?」
「これぐらい軽いものです。ルーリィは休んでいて下さい」
 銀埜はそう言って、両手でもみの木の鉢の部分を抱えると、それを担いで店のドアのほうに歩いていった。
私はドアを開けて出て行く銀埜の背中を見送りながら、紅茶でも淹れようかときびすを返した。
確か、まだダージリンの葉が残っていたはず。何か甘いものと一緒にー…。

    …カラン、カラン…。

 私は背後で鐘の鳴る音を聞き、振り返った。
「銀埜、ご苦労様。紅茶でもー…」
 あら?と私は首を傾げた。
戸をあけて入ってきたのは、銀埜と、あともう一人。
銀埜の頭二つ分程背の低い、中学生ぐらいの少年だった。右手に白い紙袋を持っている。
どこかで見たような風貌だけどー…誰かしら。喉のあたりまで出ているけども、口をついては出てこない。
 銀埜は音を立てずにドアを閉め、
「ルーリィ、お客様です。…何をぼんやりしてるんですか?」
「え、あ。いらっしゃいませ!」
 少年は、店の中をきょろきょろと眺めながら、私のほうに向かって歩いてくる。
そして私の言葉に気がつき、首をかしげてにっこりと笑った。
「こんにちは、ルーリィさん。今日はお客としてお邪魔しました」
「え、ええ。それはどうもありがとうー…って、何で私の名前知ってるの?」
 私は頭上にクエスチョンマークを浮かべ、銀埜のほうを見た。
久しぶりのお客様とあって、少々張り切り気味の銀埜は、私の視線を受けて、ぷるぷると首を振った。
…銀埜が教えてないとすると。
「…御免なさい。失礼だけどー…どこかでお会いしたことあったかしら?」
 私はおずおずと少年に言った。
…記憶力はそんなに悪くないはずなんだけども。どうしても、少年の名が出てこない。
少年は、ああ、と笑って頷き、
「すいません、この前と姿が違うから分からないのも当たり前ですよね。
俺、石神月弥です。先生と一緒に、露店にお邪魔しましたよね」
「……………ええ!?」
 私はかっきり3秒固まって、驚愕の声をあげた。
だってだって、私の知っている月弥くんは、5歳ぐらいの可愛らしいお子さんで…。
でも言われてみると、月弥くんと面影がとてもよく似ている。それに雰囲気も。
黒い艶やかな髪も、青い瞳も彼と同じものだ。
…でも。
「あ…ご、ごめんなさい。あの月弥くんなの?
…失礼だけど…何で一気に成長しちゃったの?成長期だからってわけでもないわよね」
「あはは、まさか。俺、人間じゃないから。この姿は仮のものなんです」
 月弥は笑って自分の胸に手を置いた。
…なるほどね、さしずめ、自由に姿を変えられるってことかしら?
ううん、姿というか年齢ね。
「うん、よく分かったわ。じゃあ改めましていらっしゃいませ、大きな月弥くん」
 私はうん、と頷き、彼に笑顔を向けた。
カラクリが分かればどうってことないことだ。それに小さい月弥くんも可愛らしかったけども、大きいのもそれはそれで魅力的だ。
…あの保護者さんが惹かれるのも無理ないことね。
 私は心の中でそう呟き、思わずクスクスと笑みを浮かべながら言った。
「お客様ということは、何かお求めかしら?何でも相談に乗るわよ」
「はい、お願いします。あ、そうそう。これターキーなんですけど、おすそ分けです。
どうぞ皆さんで食べてください」
 月弥はそう言って、白い紙袋を掲げた。私は思わず目を輝かせる。
「あら、いいのかしら?ありがとう!早速今日の晩頂くわね」
 私は紙袋を受け取り、そのまま銀埜に渡した。銀埜はにっこり微笑んで、
「どうも有り難う御座います。従業員一同、感謝して頂きます」
 保存庫に入れてきますね。
そう言って、紙袋を抱えてカウンターの裏に向かった。
 私はその背中を見送りながら、月弥のほうに振り返った。
「さてと、じゃあ早速見繕いましょうか。何かご希望はある?」











              ★










「表のツリー見ましたよ。小ぶりだけど良い木ですね」
 月弥は暖炉の前の椅子に腰掛けてながら、そう言った。
私は満足気な笑みを浮かべ、
「でしょう?近所の花屋さんで買ってきたの。最近の花屋さんは、樹木も売ってるのね」
「そういうところも多いですね。観葉植物とかも置いてるし。
最近だとポインセチアも多かったんじゃないですか?」
「ええ、それはもう。赤い花一色でとても綺麗だったわ」
 私はこう見えても、クリスマスが好きだ。
最近のクリスマスは半ばイベントと化しているけれど、それでも。
日頃味気の無い街が彩られ、華やかになっているのを見ると、心がうきうきしてくる。
プレゼントを抱え、家路を辿る人の顔を見るのも好きだ。
 私はそう思い、ふと月弥の顔を見た。
この子も、誰かへのプレゼントを買いにきたのかしら?
「ねえ月弥くん。今日はどんな用事で来たの?」
「はい、クリスマスの贈り物を買いに。今フェアーをやってるんですよね」
 表の張り紙で見ました。
月弥はそう言って、楽しそうな笑顔を浮かべた。
 うん、やっぱり。
となると、贈り先はー…。
「ふふ、じゃあ贈り先も当ててあげようか。…ツムギさんでしょう?」
「…!分かっちゃいましたか」
 月弥はそう言って、照れたような笑みを浮かべた。
いいわねえ、やっぱり。この笑みを見てると、つつきたくなっちゃうわ。
「そうじゃないかな?と思ったの。ツムギさんにならー…何が良いかしら。
女性向けの雑貨が多いのよね。何かもう考えてる?」
「ですよね。実は少し考えてたんですけど」
 月弥はそう言って、一呼吸置いた。
そして改めて口を開いた。
「ここ、西洋万華鏡ってありますか?お土産のようなものじゃなくてー…本格的な。
オイルタイプがいいんですけど…」
「万華鏡?カレイドスコープね」
 私は月弥の言葉を聞いて、顎に手をやった。
そして頭の中で、倉庫代わりの一室の中の在庫を思い浮かべる。
…カレイドスコープ、か。あったかしら?
確か、イングランドで買ったものが、まだ一つか二つ残ってた気もするけど。
 でも。
「あるにはー…あるんだけどね」
「?」
 月弥は私の言葉に、首をかしげた。
「高価なんですか?構いません、俺、お小遣い全部持ってきましたから。
それでも足りなかったら…ええと…いつか絶対払いますから!」
 月弥は何処か意気込んで言った。
私は慌てて首を振り、
「そういうことじゃないのよ!そりゃあ確かに高いけど…うん、でもおまけはするし。
そういうのじゃなくてー…ちょっとね。ずいぶん前に仕入れたものだからー…」
「違うんですか?じゃあ、古いってことなのかな。アンティークですか?」
「ううん、違うの。ちょっとね…細工、しちゃったのよね。私の趣味で…。
いわば、実験台みたいなものかしら」
「…実験?」
 月弥は私の言葉に、眉を寄せた。
確かに何のことやら意味が分からないだろう。
私自身、何を言っているんだか分からなくなってきてしまった。
 私が困って、はぁとため息をついて肩を落とすと、見兼ねた月弥が私の顔を覗き込んで、
「とりあえず、あるのなら見せてもらえます?ほら、百聞は一見に如かずって言うし。
実際に見たほうが早いと思うよ」
 私は顔を上げ、手をポン、と叩いた。
確かに、月弥くんの言うとおりね。
「そうよね、確かにそうだわ。じゃあちょっと待っててね、今発掘してくるから!」
「はい、分かりました。いってらっしゃい」
 私はガタッと音を立てて立ち上がり、パタパタとカウンターの奥に向かった。
そして背中越しに、月弥の訝しげな声を聞く。
「………発掘?」


















 そして数十分後。
私はハァハァと息を荒くしながら、濃い緑色のカーテンを上げた。
店の中を眺めていたのだろう月弥は、物音に気づいて私の方を見る。
私は月弥に向かって笑顔を浮かべ、右手に抱えていた木箱を掲げた。
「あったわよ、お待たせ!」
 月弥はそれを見て、嬉しそうな笑顔でこちらに駆け寄ってきた。
私はカウンターの上に木箱を置き、その蓋をゆっくりとはずした。
そしてカウンターの前に立っている月弥に見えるように、箱を押し出す。
「へえ…すごい綺麗だね」
 月弥はそう言って、箱の中を覗き込んだ。
私は、ふふふと笑って、シルクの布の上に鎮座しているそれを手に取る。
そして月弥に手渡した。
「どう?イングランドで買ってきたものなんだけど、綺麗でしょう?
私、一目ぼれしちゃってね。思わず買っちゃったの」
「うん…気持ち、わかります」
 月弥はそう囁くように言って、手の中のそれをまじまじと眺めた。
それはアクリル製の筒状の西洋万華鏡だった。
本体部分の模様は、古い世界地図をモチーフにしていて、アンティークのような雰囲気を持っている。
筒の上部にはオイルが入っており、その中を大小様々なガラスや小石が漂っている。
「ご希望のオイルチェンバータイプよ。
ミラーは3ミラーシステムで、視野全体に広がるパターンを魅せてくれるわ。
…気に入った?」
 私は手の中の万華鏡に釘付けになっている月弥を見て、思わず笑みが浮かんだ。
月弥はこくこくと頷いて、
「…はい。これなら先生も喜んでくれると思います!
あれ?これ、石を使ってるんだ」
 月弥はオイルの中を漂う封入物を見て、声を上げた。
私は頷いて、
「ええ、小石が主なオブジェクトなの。あとはガラス玉とかかしら。…どうかした?」
 私は訝しげに月弥に尋ねた。
月弥はふっ、と口元に笑みを浮かべ、
「そうなんだ…うん。本当にぴったりだ」
 と言った。
私はよく分からず首をかしげていると、月弥がふと顔を上げ、不思議そうに言った。
「これ、何か不都合でもあるんですか?細工ってどこを?」
「ああ」
 そういえば、まだ言ってなかったっけ。
私は苦笑しながら、月弥に言う。
「ええと…とりあえず、アイホールから覗いてみて?オイルタイプだから、一度動かせばずっと漂ってるから」
「…?分かりました」
 月弥は私の言葉に素直に従い、筒の覗き穴に眼をつける。
そして、わぁと感嘆の声を上げる。
「すっごい綺麗!石でもこんなに綺麗な模様ができるんですね」
「でしょう?でもそれだけじゃないのよ。…耳を澄ましてみてね」
「え?」
 月弥はそう言って、覗き穴から目を離し、耳をそばだてた。
私も目を閉じて、耳を澄ましてみる。
一瞬無音の空間になった店内に、どこからか微かな音が聞こえてくる。
ポワァン、とまるで小さな銅鑼のような。
だが決して耳障りではなく、オルゴールのような優しさに満ちている。
 月弥は、その音に気がつき暫く眼を閉じていたが、やがてゆっくりと眼を開け、ぽつりと呟いた。
「…水琴窟だ」
「…ええ、そう言う人もいるわね」
 私は穏やかな笑みを浮かべて、月弥を見た。
月弥は音の出所に気がついたのか、手の中の万華鏡を、眼を見開いて見つめた。
「…ここから?」
「ええ」
 私はにっこりと微笑む。
「オイルの中をオブジェクトが漂うときに、音が聞こえるの。
ちょっとね、悪戯心で細工してみたのよ。万華鏡がオルゴールにもなるなんて、素敵じゃない?」
 そう、以前購入したときに、思いつきでかけた魔法だった。
そもそも売り物にする気はなかったから、実験代わりに作った品だったけれど。
でも何故だろう、私が持っているより、月弥の手にあるほうがしっくりくる。
まるで月弥に共鳴するように、石たちもいつもより楽しげに鳴いている様だ。
 そのとき私は思っていた。
もし月弥がこれを買わないといってもー…無料でいいから、これを上げよう。
道具だって、相応しい人のもとへ行くのが嬉しいものだから。
「私が既に手をかけちゃったものだからー…そのまま売るのもどうかと思ったのよ。
でも月弥くんが良いならー…」
 どうぞ頂いて頂戴な。
私はそう言って微笑んだ。
月弥は私の言葉に、驚いてか眼を丸くする。
「いいんですか?こんなー…珍しいの」
「良いのよ。それに月弥くんのほうがぴったり。…どうかしら?」
 月弥は暫し戸惑っていたが、やがて嬉しそうな微笑を浮かべて頷いた。
「…ありがとうございます。きっと、先生も喜んでくれると思います」
 そして、微笑を浮かべたまま万華鏡に眼を落とし、ぽつりと呟いた。
「…石が鳴いてる。綺麗な鳴き声だね、きみたち。
…先生の心を癒してあげられるといいな」
「きっと大丈夫よ」
 私もその微笑につられてにっこりと笑いながら、心の中で呟いた。

 …きっとツムギさんにとっての癒しは、月弥くんそのものだと思うけどね。










              ★












 そしてー…それから数日後。
「な・ん・で!あたしがこんなことしなきゃいけないのよ!?」
「まあまあ。だってサンタにトナカイはつきものじゃない?」
「あんたがトナカイになればいいでしょう!この寒空の下に…しかも折角のクリスマスだって言うのに。
ふッざけんじゃないわよ」
 私の傍らに立って、ブルル、と鼻息荒く地面の土を前足で蹴っている一匹のトナカイ。
その瞳は赤みがかかった金色だが、今は怒りに燃えている。
私はトナカイの首をぽんぽんと叩き、宥めるようにいった。
「私は変化術うまく使えないし、仕方ないじゃない。ね?3級魔女のエリートさん」
「…あんたもちょっとは、他の術の練習しなさいよね。だから全然うまくならないのよ」
「はいはい、わかりました。とりあえず今だけは辛抱しててね?」
 私はトナカイー…に変化した、幼馴染のリースの首から手を離し、
被っているファーつきの赤い帽子を被りなおした。
そして自分の格好を見下ろす。
帽子と同じ白いファーつきのケープと、その下の、膝丈ほどのワンピース。
そして、ふくらはぎを覆うブーツ。
帽子からブーツまで、赤ずくめの格好。
ケープから出た腕に、寒風が当たって少々寒いが、これも我慢だ。
 私はパンパン、とワンピースを手ではたきながらリースに言う。
「どう?中々似合ってるでしょ。一度やってみたかったのよね、サンタの格好」
「ふん、馬子にも衣装ってやつよね。言っておくけど、あたしのほうがずっと似合うんだから!」
「はいはい、リースもトナカイ似合ってるわよ」
 私はくすくすと笑ってそう言った。
そしてリースがまた憤慨して、足元の地面を掘らないうちに、と手にしていた紙袋を抱えた。
本当は白い大きな布袋にでも入れたかったけども、仕方が無い。
何せプレゼントは二つだけだし、そのうちの一つは割れ物だ。
「じゃあいくわよ。リース、変なこと喋らないでね」
 ブルル、と鳴くリースを無視し、私は目の前の呼び鈴を鳴らした。
住所は既に確認済み。さぁて、どちらが出てくるかしら?
 私がわくわくしていると、目の前のドアのノブがひねられ、扉が開かれた。
そして見知った顔が覗く。
「いらっしゃい。どなたですか?…ってルーリィさん?」
「メリークリスマス!サンタがお届けにきたわよ」
 私はそう言って、目の前の青年に笑いかけた。
青年ー…ツムギが扉に手をかけたまま、眼を丸くしていると、彼の後ろのほうからパタパタとスリッパの鳴る音が聞こえた。
そして、可愛らしい声がツムギの背中から届く。
「せんせー、だぁれ?」
「月弥くん。ほら、サンタさんが来てくれたよ」
 ようやく事態に慣れたのか、ツムギは身体をずらして、後ろにいる少年に笑いかけた。
少年ー…今度は10歳程度の容姿をしている月弥は、私の格好を見て、わぁと声を上げた。
「サンタさんだ!うわぁ、ルーリィさん?」
「ええそうよ、どうかしら?」
 私はにっこり笑って、一回転してみる。
月弥はうんうんと頷いて、
「すごい似合ってるよ!ねえ、先生」
「そうだね、とても可愛らしいですよー…そちらのトナカイさんも」
 微笑まれて驚いたのか、私の斜め後ろにいたリースが、ブルルと鳴いた。
そのトナカイのリースに驚いて、月弥が眼を丸くしている。
 私はその様子を見て、くすくすと笑いながら、手にしていた紙袋をごそごそと漁った。
そしてまずはツムギに、綺麗に包装した中ぐらいの箱を差し出した。
ツムギが眼を大きくしてそれを受け取っている間に、今度は月弥へ、大きめの包みを手渡す。
勿論、こちらも包装済みだ。
「お互いが、お互いのことを想って選んだ、最高のプレゼントよ。
中身は私が知ってるけども、今は秘密にしておくわね。
開けてからのお楽しみってことで。それから、お二人で愛を確かめ合うのも私が去っていってからにして頂戴ね?
でないと羨ましがっちゃうから!」
 残念なことに、サンタはシングルベルなの。
私はそう言って、ぱちりとウインクをした。
そして驚いている二人を見届け、バイバイ、と手を振った。




 背後でドアが閉まるのを感じ、私はううん、と背伸びをした。
その傍らにいるリースが、私の顔を見上げて言う。
「あんた、パーティに混じりたいとか図々しいこといってなかったっけ?」
「あはは、はじめはそのつもりだったけど…確かに図々しかったわね。
やっと気がついたわ」
 やれやれ、と肩をすくめる。サンタは所詮、お届け役ってことよね。
 その私に、リースは呆れ声で言う。
「何を馬鹿なこと考えてるんだか。あんたにはちゃんと、一緒に過ごす家族がいるでしょ?」
 ―…血は繋がってないし、人間じゃないかもしれないけどさ。
私はそう言うリースの言葉を聞いて、少し眼を丸くした。
「…リース、時々は良いことも言うのね」
「どういう意味よ、それ」


 クリスマスは好き。

 暖かい気持ちを持っている人の顔を好きだから。

 街中に溢れてる、無尽蔵な幸せを感じるのが好きだから。


 そして、大切な人がすぐ傍にいる幸せを、改めて感じることが出来るから。












       End.







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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【2269 / 石神・月弥 / 男性 / 100歳 / つくも神】

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■         ライター通信          ■
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月弥さん、こんにちは。ライターの瀬戸太一です。
はじめましての発注、有り難う御座います。
そして掲示板のほうではお世話になっております。
クリスマスノベルにもかかわらず、少々時期外れとなってしまい、申し訳ありません;
ノベルでは少々穏やかな雰囲気になりましたが如何だったでしょうか。
楽しんで頂けると大変嬉しいです。
そして、ノベルを書く際に水琴窟を調べている中で、
その音色に暫しうっとりして聞き惚れておりました。大変綺麗な音で素晴らしいですね。

今回はツムギさんと同時のご発注ということで、
ラストの部分だけリンクさせて頂きました。
一応リンク作品ということで、タイトルは同じになっております。
ツムギさんバージョンのほうも読んで下されば嬉しいです^^
そして今回、私の書くノベルでははじめての試みですが、
アイテムシステムのほうを利用させて頂きました。
プレゼント交換ということなので、ツムギさんノベルで登場したアイテムを、
納品時に一緒にお渡しさせて頂きました。
末永く使って頂けると幸いです。

それでは、良いお年を。
来年もよろしくお願いします。