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■ファーストライン【後編】■

文ふやか
【2209】【冠城・琉人】【神父(悪魔狩り)】
 ――プロローグ

 TOKYO―CITYを取り巻く大仰な壁があるように、各都府県にも同じような物がある。なんにしろ閉ざされた空間が日本にいくつもあるというだけだ。NATもそれぞれが抱えている問題区域である。TOKYO―CITYの所有NATは汚染が酷い。それだけではない……が一般人はその程度としか認識していないだろう。
 TOKYO―CITYとNATを結ぶゲートは各方角に四つ設けられている。もちろん、好きこのんで行くバカはなかなかいない。NATへ入り行方知れずとなる重犯罪者、それを追いまた同じく行方をくらましてしまう賞金稼ぎがNATの主な住人だろう。生きているのか死んでいるのかを問題にしないのならば。
 NATとは腐敗したバイオテクノロジーが尚も進化を続ける恐るべき地域であり、過酷な状況にも関わらず静かに息を殺している重犯罪者が隠れ住む場所なのだ。

 深町・加門がSAITAMA―CITY西部飯能市にあるHAPPY・WEST・GATEにチップを含んだカードをかざして、埼玉所有のNATからSAITAMA―CITYへ入ったのは十六時八分だった。そのとき加門は、ゲートの管理者であるハッピーちゃんというアンドロイドロボにSAITAMA―CITYの見所名所案内マップをもらった。人肌を感知してホログラム映像が浮き上がる仕組みのマップは、加門の熱によって甲高い声で解説を始める。加門はアホくさ、とそのまま後部座席へそれを放った。しかし声は鳴り止まない。たしか、熱源を感知しなければ作動しない筈ではと後ろを振り返ると、ちょうどSAITAMA―NAT内で捕まえた賞金首の頭にマップが乗っていた。
 それにしても、NATへの入り口にハッピーを当てるとは。さすがダ埼玉県。
 
 現在各都道府県……つまり日本中を脅かしている事件がある。
 それは、全国のNATシステムをシャットダウンさせるハッキングマシンが各ゲートに取り付けられるという事件だった。利潤問題が起こらない事件である。各CITYの監視システムにより彼等は――なんと四十数件に及ぶ被害の犯人は二十人を越えるのだ!――警察庁司法局そして賞金稼ぎ達の手によって逮捕及び捕獲された。
 なぜ事件に司法局が関わっているかと言えば、NAT絡みだからだろう。
 NATの管理は事実上司法局が行っているに近い。
 その司法局員の一人、仁枝・冬也は勤勉にも捕獲された犯人達の引渡し所に立っていた。
 何かが起ころうとしているのは感じるが、何が起ころうとしているかわからない。例の柏原・一亜殺害に……関係しているような? しかしそういったことを考えるのは冬也の仕事ではない。だが、ベクトルが指している先がNAT開放を指している。そんな現実的ではない気がしている。
 冬也の意識の中ではいつまで経っても賞金首にすぎない深町・加門が、ゲートシステムを破壊した二人の犯人を仁枝・冬也に引き渡したのは十八時十二分だった。加門が本日四十二本目の煙草を灰皿へ突っ込み、冬也は記憶した二十四人の犯人像を鮮明に思い出しているその時である。
「大元が八百万ってのは、本当か」
 加門がかすかに後ろを振り返り訝しげに片目を細めた。
「ああ、本当に主犯ならばな」
 冬也がそっけなく言い返す。
 二人の頭の中で、柏原殺害事件を引き起こした未だ謎の犯人が浮かんでいた。
 

 ――next

ファーストライン【後編】


 ――プロローグ

 TOKYO―CITYを取り巻く大仰な壁があるように、各都府県にも同じような物がある。なんにしろ閉ざされた空間が日本にいくつもあるというだけだ。NATもそれぞれが抱えている問題区域である。TOKYO―CITYの所有NATは汚染が酷い。それだけではない……が一般人はその程度としか認識していないだろう。
 TOKYO―CITYとNATを結ぶゲートは各方角に四つ設けられている。もちろん、好きこのんで行くバカはなかなかいない。NATへ入り行方知れずとなる重犯罪者、それを追いまた同じく行方をくらましてしまう賞金稼ぎがNATの主な住人だろう。生きているのか死んでいるのかを問題にしないのならば。
 NATとは腐敗したバイオテクノロジーが尚も進化を続ける恐るべき地域であり、過酷な状況にも関わらず静かに息を殺している重犯罪者が隠れ住む場所なのだ。

 深町・加門がSAITAMA―CITY西部飯能市にあるHAPPY・WEST・GATEにチップを含んだカードをかざして、埼玉所有のNATからSAITAMA―CITYへ入ったのは十六時八分だった。そのとき加門は、ゲートの管理者であるハッピーちゃんというアンドロイドロボにSAITAMA―CITYの見所名所案内マップをもらった。人肌を感知してホログラム映像が浮き上がる仕組みのマップは、加門の熱によって甲高い声で解説を始める。加門はアホくさ、とそのまま後部座席へそれを放った。しかし声は鳴り止まない。たしか、熱源を感知しなければ作動しない筈ではと後ろを振り返ると、ちょうどSAITAMA―NAT内で捕まえた賞金首の頭にマップが乗っていた。
 それにしても、NATへの入り口にハッピーを当てるとは。さすがダ埼玉県。
 
 現在各都道府県……つまり日本中を脅かしている事件がある。
 それは、全国のNATシステムをシャットダウンさせるハッキングマシンが各ゲートに取り付けられるという事件だった。利潤問題が起こらない事件である。各CITYの監視システムにより彼等は――なんと四十数件に及ぶ被害の犯人は二十人を越えるのだ!――警察庁司法局そして賞金稼ぎ達の手によって逮捕及び捕獲された。
 なぜ事件に司法局が関わっているかと言えば、NAT絡みだからだろう。
 NATの管理は事実上司法局が行っているに近い。
 その司法局員の一人、仁枝・冬也は勤勉にも捕獲された犯人達の引渡し所に立っていた。
 何かが起ころうとしているのは感じるが、何が起ころうとしているかわからない。例の柏原・一亜殺害に……関係しているような? しかしそういったことを考えるのは冬也の仕事ではない。だが、ベクトルが指している先がNAT開放を指している。そんな現実的ではない気がしている。
 冬也の意識の中ではいつまで経っても賞金首にすぎない深町・加門が、ゲートシステムを破壊した二人の犯人を仁枝・冬也に引き渡したのは十八時十二分だった。加門が本日四十二本目の煙草を灰皿へ突っ込み、冬也は記憶した二十四人の犯人像を鮮明に思い出しているその時である。
「大元が八百万ってのは、本当か」
 加門がかすかに後ろを振り返り訝しげに片目を細めた。
「ああ、本当に主犯ならばな」
 冬也がそっけなく言い返す。
 二人の頭の中で、柏原殺害事件を引き起こした未だ謎の犯人が浮かんでいた。
 
 
 ――エピソード
 
 1
 
 ツルハシを片手に持っていた、ウェバー・ゲイルは痛みに耐え切れず片膝をついた。
 たしか、ウェバーはNATに温泉に浸かりにきた筈だった。……それなのになぜツルハシを持っているかというと、理由は感嘆明瞭、温泉を掘ろうと思ったのである。しかしその願いは叶えられないようだ。
 ウェバーは不治の病にかかっている。いつ死んでもわからない状況だ……。
 こうしてNATへ入って一週間が経とうとしていた。謎の病原菌におかされもう三日、ウェバーの命も長くはあるまい。
「ウェバーさん!」
 シオンが驚いて近付いてくる。ウェバーはゆっくりとシオンを見上げる。あちこちヒゲがもしゃもしゃに生えているシオンは、微妙に現代ちっくな洋服を除いて現地住民そのものだった。寄って来るならカワイイ姉ちゃんがいい、とウェバーが心の端で思ったのは内緒である。
「俺ぁもう……ダメみたいだ」
 ウェバーは倒れて空を見た。白い雲が一つ、浮かんでいる。青い空はどこかよそよそしげな色をしているように見えた。
「そんなことないです、大丈夫です」
「……気休めはよしてくれ」
 ウェバーの身体を揺するシオンの手にウェバーが手を乗せる。それからまた白みがかった青空を見上げた。天使が……迎えにきたようだ……。
 ――と、思ったら。
 ウェバーは突然の腹痛と便意にシオンの手を振り払い、立ち上がった。この寒いのに脂汗が滲んでいる。そして彼はお泊りセットの中からティッシュペーパーを踏んだくり、木陰へと走って行った。
「変なものを食べるからですよ」
 シオンは眉根を寄せる。
 シオンとウェバーが会ったのは四日ほど前の話だ。シオンには記憶がなかった。NATで生きる術を身につけ、一人で生きていたのだ。そこへ、謎の派手な外人ウェバーがキャンプ兼穴掘りにやってきて、お互い日本語がしゃべることができたことから意気投合し、共に生活することになっていた。
 ウェバーの車はガス欠で動かない。
 NAT生活に慣れないウェバーが、くだすのは当たり前の道理である。
 だが実は、ツタを伝って移動をしたり裸足で獲物を追ったりしているシオンも、ずいぶん前から便秘であった。お腹の具合がおかしい、とシオンは腹をさすった。
 そのうちに、すっきりした表情のウェバーが帰ってきて、ツルハシでの温泉発掘作業は進められた。
 ついでにシオンが隣で火を起こしている。気分はキャンプファイヤーである。


 2
 
 大きな木の枝に座りながら、その様子を冠城・琉人が見ていた。彼は相変わらずの黒装束だった。ひらりと裾が風に舞っている。ドームの外に出てしまうと、気温は0度近くなる。ドーム内とNATの気温差から生じるつむじ風が辺りの落ち葉を蹴散らしていった。
 彼は、情報を一切持っていなかった。
 彼の得意とする霊力を辿る逆探知が、まるで通じなかったのである。
 なぜかと言えば、CITY内へ入った犯人の誰一人としてNATへ帰ることがなかったのだ。相当な術の使い手ならば、霊力の痕跡がなめくじが這った後のように残るものだが、彼等はただの人間だった。霊力は微弱にあるとはいえ、その後を追えるほどではない。
 仕方がないので、琉人は深町・加門達と仁枝・冬也達の両方に浮遊霊で見張りをつけた。
 深町・加門達はジープに乗り込んで一途西へ向かっていた。その先には、シオンとウェバーが野生生活を送っている。やがて二組は合流し、一括りになるだろう。あの二人がなぜNATでそんな生活をしているのかは謎だったが、琉人の求める真実には関係なかろう。
 一方冬也の方は……慌しかった。
 ゲート破壊犯は相次いで自殺している。突然体内の血液が沸騰し、死に至っているのだ。であるから、事故である可能性もあるし殺人である可能性も否定できない。
 ゲート破壊犯の一人吉岡・才気は、捕らえられ溶液につけられてさまざまな取調べを受けている間に、身体中から熱を発し死亡した。そこへ闇医者としてその道では名高い十里楠・真雄が登場し、吉岡を蘇生させた。その結果、足立区の枡田ビルが彼等の本拠地と判明……。
「……いやあ、来るところを間違えましたね」
 ぼんやりとつぶやきながら、なにやら後ろ暗いものを感じていた。
 枡田ビルが本拠地……ということは、麗子の情報通りに動いている加門達が行き着くのは一体どこなのだ? NATでの彼等の本拠地だろうか。主犯がどちらにいるかなど、どうしたらわかるだろう。
 つまり、今の段階ではどちらが正しいかわからないのだ。
 今からCITY内に入ったとしても、司法局や警察庁に遅れを取ってしまっている。ならば、NATに望みをかけることにしよう。加門達ならば……出し抜けるだろう。
「なあんて」
 と自分の思考を冗談めかして笑い、琉人は水筒からお茶を注いだ。
 
 
 3
 
 加門達は倒れている人にジープを止めた。近付いてみると、それは黄色いジャケットを着たアメリカン野郎、ウェバー・ゲイルだった。
 CASLLが彼の名前を呼ぼうとしたとき、加門は冷たい声で言った。
「先を急ごう」
 どきっぱりと言い切ったので、CASLLは穴が開くほど加門を見つめて小声で言った。
「え? でも……」
「いいんだ」
 こういう奴は放っておくに限るんだ、と加門がCASLLに無言の視線を送る。CASLLはウェバーの方へ手を伸ばし、それから握ってジープに戻った。ウェバーの近くまで歩いてきていた加門がさっときびすを返す。ウェバーに背を向けた瞬間、加門は肩を叩かれた。
「つれねぇじゃねえか、相棒。困ったときは竹馬の友だろう」
 ウェバーは加門の肩に手を回して、ニヤニヤと口許を笑わせる。加門は煙草をくわえたまま顔を俯かせ、額に青筋を立てている。
 加門がウェバーの側の右腕を曲げて、彼の鼻をへし折ろうとした瞬間、ウェバーは身を引いてそれをかわした。
「ずいぶんな挨拶だな」
「こっちの台詞だ」
 加門とウェバーが睨み合っている。CASLLは慌ててジープから降り、二人の間に割って入った。
「喧嘩両成敗です」
 とCASLLの両腕が振り上がったが、もちろん喧嘩慣れをしている二人はそれをひらりと避けた。
 ウェバーは腹をさすりながら、困ったように言う。
「腹が痛いは腹はくだるわ散々なんだぜ、なんか食い物ねえか」
 CASLLが首を横に振る。ウェバーは視線を加門に移した。加門は吸いかけの煙草をぺっと吐き捨て、懐から一本のバナナを取り出した。ウェバーに渡すかと思いきや、彼はそれをおもむろに剥きはじめ、CASLLとウェバーが見守る中大口を開けてバナナを食べようとした。
 刹那、突然木のツタを使って空中から現れた何者かに、そのバナナは奪い取られた。
 全員が呆気にとられ、加門の手元を見ている。盗られた加門は、気付かず思い切り租借して舌を噛んでいた。
「……! あ、あれはっ」
 黒髪のなびく後姿が木の上に見える。
 ウェバーが納得したようにうなずきながら言った。
「あいつはここNATに住んでる奴でな、名前は……聞いてなかったな、おい、お前」
 すると彼は振り向いた。口許がヒゲで毛むくじゃらになってはいるが、加門もCASLLも彼には見覚えがあった。
「シオン!」
 二人が同時に叫ぶ。それと同時に、シオンは木を器用に伝って大地に降り、ゆっくりと加門達に近付いてきた。
「ひい、宇宙人がっ」
 シオンはCASLLを見て腰を抜かす。逃げ出そうとしたシオンを、加門ががっちりと捕まえた。
「お前、ジャングルの王者にでもなったのか?」
「あなた誰なんです? 柿の種皇子なんですね、それからその……宇宙人がピーナッツ星の皇女」
 シオンは人に名前を聞きながらまったくこちらの話を聞く気がないらしい。
 加門は一発彼の頭をぶん殴って、もう一度聞いた。
「どうしたんだ、お前は」
 ショック療法で治るだろうと思ったらしい。
「痛い! やめさせてください、ピー皇女!」
 シオンがCASLLに抗議する。CASLLは全身アーミールックをきめていて、とてもではないが皇女には見えない。いや、そもそも普段の格好でも悪代官に見えることはあっても、皇女には見えない。
 しかも『ピー皇女』ではなんだか『ピー』の部分が放送禁止用語のようで嫌な感じだ。
 ピー皇女は……もといCASLLは慎重に顎を撫でながら言った。
「どうやら記憶喪失のようですね」
 そうらしいが、こんな場所ではどうしようもない。
 ウェバーは一気に話を戻した。
「それで? お前等何してんだ、こんなとこで」
「ウェバーさんこそ、どうしたんです?」
 CASLLが訊くと、ウェバーは傍らにあるツルハシを指した。
「今度日本に娘が遊びにくるって言うんで、温泉でも」
 CASLLが怖い顔を微笑ませて、尚怖い顔になりながら答える。
「浸かりにきたんですね」
「いや、掘りに」
 温泉を掘りに? CASLLは恐ろしい笑顔を張りつかせたまま小首をかしげた。
 シオンはもぐもぐとバナナを食べている。加門はバナナの代わりに煙草を取り出して、一本くわえた。
「この辺りに人が住んでるとこねえか」
 すなわち、重犯罪者が潜んでいる隠れ家のことだ。麗子のあまりにも大雑把な地図によると、どうやらウェストゲートを出て北西の方角に、彼等のアジトはあるらしい。麗子の情報の正確さはいつもピカ一だったので、今回の場合も間違いはないだろう。
 ウェバーが首を捻るのに対し、シオンは元気よく言った。
「ハイハイ、カキピー皇子! 私この先の森の奥の奥にヒトがいるのを知ってます」
「ビンゴだ」
 加門は人差し指をシオンのおでこに突きつけて叫んだ。柿の種とピーナッツが混ざったことには、この際突っ込まない。
「案内しろ」
「ですがー、一人でないと色々な問題が起こるのです。ああ、まず最初に……」
 CASLLと加門、ウェバーでシオンを囲むように立っていた。そしてその後ろをシオンは指差して、しかめつらしい顔で言った。
「こわーいこわーい、食人植物が……あそこに!」
 言われて、三人は顔を見合わせた。それからゆっくりと後ろを振り返る。大きな赤い花びらを持ち、花粉のある部分に大きな口を持った謎の生物が、そこにはうごめいていた。太いツタが、四人を襲う。
 全員が咄嗟の判断で跳び退った。だが、ジープはバチバチと破壊音をあげている。
 
 
 4
 
 CASLLが破壊されかけているジープから素早くチェーンソーを取り出した。
 キイイインという甲高い音がする。しかし、チェーンソーでは近付かなければ撃退できそうもない。加門は頼みの綱のウェバーを見た。ウェバーは胸のホルスターからマグナムを抜き出して構えようとしている。
 しかし構えず、片手に銃を持ったまま加門に言った。
「一週間は掃除してねぇんだわ。暴発すると思う?」
「いいからぶちかませ」
 武器を持たない加門が叫ぶと、ウェバーは渋々銃口を食人植物へ向けて構えた。ダウン、ダウンと銃弾がして苦しむように太いツタがうごめく。それらを全員は必死で避けている……ように思えた。が、正しくはシオンを除く全員がそうしているだけであった。
 CASLLにチェーンソーでツタを切られ、ウェバーの銃で撃たれた食人植物の花びらの横には、ツタを登っていったシオンがいた。シオンは食人植物の口の中に顔を突っ込み、花びらを優しく撫でている。
「……」
 大人しくなった食人植物の前に、全員茫然自失だった。
「よーしよしよし、いい子ですねえ」
 シオンに言われて食人植物はツタをぬらぬらと回収し、静かになった。


 5
 
 シオンの案内により歩いて行くと、今度は行く手をツタに阻まれた。シオンは木を上ってツタを避けて行こうと言うのだが、他のメンバーにしてみればそれは無駄に思われた。
 加門はシオンの忠告を聞かず、ツタを持っていたサバイバルナイフで切り裂いた。
 するとそこから赤い……いやピンク色に近いものが噴射した。加門はもろに顔に浴び
「うおっ」
 そう言って後退った。
 次の瞬間、加門はゆらゆらと後ろへ下がって行き、足場を取った。そして俯いた顔をあげ、目の前にいるCASLLに向かってサバイバルナイフを突き出した。まさか加門に斬りつけられると思っていなかったCASLLは、ウェバーに押されて頬をチクリと切られた程度で済んだ。
 しかし……加門は……。
 今度はウェバーの頭に肘鉄を繰り出した。ウェバーが素早く避け、足払いを掛ける。トンと跳躍して逃げた加門に、ウェバーは腕を薙いだ。しかし、その腕は空を切った。
「CASLL、応戦しろ」
 ウェバーが叫んだ。
 対加門戦になったら、銃を撃つしかない。
 CASLLがようやく状況を理解して、加門の背に回り羽交い絞めにした。しかし、加門はその体制のままCASLLの膝を力いっぱい蹴りつけた。CASLLがうめいて背を屈める。だが、CASLLは腕は離さなかった。加門は身動きが取れない。
 ウェバーがCASLLと目を合わせる。
 すると、上からシオンが重力にしたがって落ちてきた。手にはどこにあったのかヤシの実を持っている。そしてそのヤシの実で、重力と体重とありったけの力を込めて、シオンは加門の頭を殴りつけた。
 加門は昏倒した。
 シオンはすとんと上手に着地して、ふうと大きな溜め息をついてみせた。
「まったく、だからツタを切ってはいけなかったのです」
 腕の中に落ちた加門をCASLLは下へ寝かせながら、加門の頭を撫でた。
「大丈夫でしょうか、加門さん」
「死ぬのか、こいつは」
 ウェバーは加門のシャツのポケットに手を突っ込んで、煙草の箱を取り出し一本口にくわえ箱の中に入っていたライターで火をつけた。
「ツタから出る毒で、混乱するんです。一人ならば誰にも被害は及びませんが」
 シオンはそう言って、加門の頭で割れたヤシの実の汁をおいしそうに飲んだ。
 
 
 6
 
「頭ガンガンする……」
 加門はぶつぶつ言いながら、廃屋と化した洞窟の中を歩いていた。
 CASLLが懐中電灯を顔の下から当てて、加門を振り返る。
「大丈夫ですか、加門さん」
「っつか、お前の顔今見たくねえよ」
 シオンも中までは入ったことがないらしく、暗闇の中加門のコートの裾を持って進んでいた。あちこちに、カップラーメンのカスや缶ビールの空き缶が転がっている。重犯罪者のアジトにしては、何一つ武器がない。見つけられたのは、缶きりと小さなナイフだけだった。
 ウェバーは奥まで調べてから三人を振り返って言った。
「もぬけの殻……だ」
「ちっ、情報が古かったか」
 加門が舌打ちをする。CASLLと加門はひやりと気配を感じて振り返った。CASLLが右目の眼帯を外して後ろを見ると……そこには幽霊が……。
「ぎゃぁぁ!」
 叫んで幽霊をぶん殴る。幽霊は一発KOされて、消えてなくなった。
 霊感が強い加門にも幽霊が見えたのか、幽霊の死に様(死んでいるのだが)に少し気の毒そうに言った。
「お前、幽霊殴って成仏させんなよ……」
「こ、怖かったんです」
 CASLLが両手を胸の前に組んで言うと、シオンが今更ながらに騒ぎ出した。
「ぎゃぁ、幽霊さん、こないで祟らないで、こないだウェバーさんに『ヤマタノオロチを倒したのは私です』って嘘をつきました、ごめんなさい」
 シオンはなむなむと両手を合わせて土下座をしている。ウェバーはそれを見下ろしながら冷静に言った。
「信じてないし」
 しんじてないし、しんじてないし、しんじてないし、とウェバーのつぶやきが洞窟にこだましていた。


 7
 
 琉人はおかしくて腹がよじれそうだった。
 自分が送った浮遊霊が気付かれただけではなく、殴り倒されたのだ。幽霊を殴り倒すというのはどういうことなのだろう。仕組みが知ってみたい。いつかCASLLとやりあってみたいものだと、琉人は一人楽しくなっていた。
 どうやら司法局は天候管理システムLBWを守りに入った。NAT重犯罪者の反乱は、LBW占拠が目的らしい。しかし、あんなものを占拠したところで、雪や雨を降らせることぐらいしかできないではないか。
 ……それより、気になる情報がある。
 犯罪者達は生体実験をされていたそうなのだ。つまり、実験をした研究者がいる筈だ。研究者が政治側にいるとするならば、柏原の殺害及び殺害も納得できる。当てずっぽうで、国立研究施設工好学センターにリサーチをかけることにした。
 すると、重犯罪者である木場・洋輔の姿を見つけた。
 彼は研究施設の近くに止められたバンの中に潜んでいた。その表情は切迫している。鬼人の如くの顔、と言っていいかもしれない。
 その時点で、琉人は全てが合点がいった。
 それから、今回の八百万が流れるのを悟った。
 
 
 8
 
 何の収穫も得ないまま、加門達は徒歩で多摩コミューンまで戻った。
 コミューンの自動ドアが開かなかったので、故障かと思い無理矢理開けて中に入ると、突然機関銃の銃口を向けられた。
「へ?」
 三人は呆気にとられて行動を静止させた。
 場慣れをしている三人である。次の瞬間反撃に打って出ようと、全員が身構えようとしたとき、奥から十数人の人間が銃を三人に向けて近付いてきた。
「なんだお前等……まあいい、人質は多い方がいいからな」
 言われて三人は目配せをした。大人しくしておこうという合図だ。
 後ろについてきていたシオンも、煽りを食らって捕まってしまった。
 その上シオンは犯人にすぐに引っぱられ、窓際に立たされて銃口を向けられた。どうやら、人質の代表にされてしまったらしい。
 そしてシオンは、屁をこいた。
 ぷう、と音がしてコミューンが一瞬停止する。
「ああ、私はシオン、記憶が戻りました!」
 ……屁のせいで記憶喪失だったらしい。
 人質達と一括りにされてフロアーの真ん中にまとめられる。
 移動しながら、ウェバーは陽気に犯人達に話しかけた。
「お前等こんなジョークを知ってるか」
 緊迫した状況にも関わらず、特に緊張した様子のないウェバーに犯人達は訝しげな顔をした。
「娘の彼氏の話だ。『お前の新しい彼氏は俺は好きじゃない。下品だし、ごく普通の男だし、単に頭がいかれた奴だ』って俺が言ったら娘は「違うわ、お父さん。彼はものすごく頭が良いのよ。私たちは付き合ってからまだ9週間しか経ってないけど、既に私が1ヶ月に1回かかるあの病気を治しちゃったんだから」なんて言ったんだ……」
 ウェバーは急に低い声でうめいて続けた。
「信じられるか? アンビリーバブルだ、ありえん!」
 犯人達の雰囲気が少し変わる。
「あんた、娘がいるのか」
 と一人の男が訊いた。ウェバーは手足をしばられた格好でうなずいてみせる。
「俺にもいる……だが、もう会えないだろうな」
 加門とCASLLが目を合わせて顔をしかめる。
 すると突然銃声が聞こえた。犯人達のムードは一変し、銃声のした方向へ慎重に男達が動いていく。そしてすぐ女の声が言った。
「やめて、おとなしくするわ」
 その声はシュライン・エマのものだった。
「はやくお医者さんに診せてよ」
 神宮寺・夕日の声もする。
 二人は銃口を突きつけられてフロアーに現れた。後ろの男が、小さな少年を背負っている。血の気の引いた彼は、雪森・雛太だった。
 床に静かに下ろされた雛太は、腹と足から出血していた。
「……無茶しやがったな」
 ウェバーが渋い顔でつぶやく。
 

 9
 
 重犯罪者達の反乱である。
 反乱……というのだから、虐げていた側がいる筈だ。
 真雄は、腕を見込まれて彼等重犯罪者の治療を受け持っていた。もちろん、重犯罪者はCITY内に入れないので、真雄が出張することになっている。彼等の怪我や病気はCITYでは考えられないほどのものが多い。未知のウィルス、未知の細菌、未知の症状。つまりこの仕事は、真雄以外には受けられる者がいないのだ。
 もう一つ理由がある。重犯罪者達は、あるものは身体の一部をあるものは遺伝子レベルから、身体をいじられているのだ。
 彼等が反乱すべくはTOKYO―CITYではない。……もちろん、そういう思いも多少はあるだろうが。彼等が反乱を企てたのは、TOKYO―CITYにある国立研究施設工好学センターなのだ。
 柏原を殺害したのは、センターの研究が明るみに出るのを避けるため。
 ゲートを破壊したのは、CITY内に重犯罪者を送り込みダミーの中枢部を作るため。
 破壊犯人を殺したのはこの計画が明るみに出るのを避けるため。
 真雄を検死と称して送り込み、中枢部やLBWの情報を落とさせたのはなるべく多くの人員をそちらへ割かせるため。
 コミューンを制圧してみせたのは、尚多くの人員を押さえるため。
 真雄はコミューンへの中へ早々に突撃を決めたSITの手際を見ていた。
 重犯罪者とはいえ、少しの付き合いがある。SIT突入によってほぼ全員の犯人達が銃殺されるのは目に見えていたが、どうしようもない。
 心の端で、彼等の反乱が成功することを祈らずにはいられなかった。
 
 
 10
 
 SITは縄を伝い屋上へ一個小隊を置き、一階のそれぞれの窓から三人ずつの分配をして突入を決めた。プラスチック爆弾が大きな音を立てて、一斉に中に押し入る。一人、一人と目に映る犯人を脳天をぶち抜いて殺していく。
 長髪の中年男の人質のコメカミに銃口を突きつけている男の頭を撃ち抜き、犯人はずるりと後ろへ倒れこんだ。放心している人質が、ゆっくりと死体を見下ろす。
 一人の隊員がそして人質に紛れている男へ銃口を突きつけた。
「おい、銃を捨てろ」
 その男は両手をばんざいして首を横に振っている。
「あのー、そいつ人質だから」
 黄色いジャケットを着た男が言う。その隣で眠そうな顔をしている男も言った。
「そう、そいつは人質だから。それより、このチビ救護班に連れてってくれよ」
 犯人に間違われたのはCASLL・TO。指摘をしたのは、ウェバー・ゲイルと深町・加門である。人質の数は増えていて、加門の隣には青ざめた顔の神宮寺・夕日、それから死人のような顔の雪森・雛太がシュラインの膝枕で寝そべっていた。
「……貫通はしているようだな」
 隊員は言って仲間が伝達をする。
「姉御……俺天使が見えてきたみたいだぜ。いよいよお迎えかな」
 雛太が切れ切れの声で言う。
「持ち上げても何も出ないわよ」
 シュラインはふうと嘆息して言った。
 玄関が開き担架が運ばれてくる。
 乗せられた雛太を見て、ウェバーが笑った。
「いいとこ持ってったじゃねえか」
 雛太は口を開いたが、傷が痛んで声が出ないようだった。シュラインが雛太によりそって、救護班についていく。
 夕日は行くか行くまいか迷ってから加門達を振り返った。
「あんた達、何やってんのこんなところで」
「え? 人質」
 加門がしゃあしゃあと答える。それから加門はシオンの元へ歩いて行って、ペシペシと頬を叩いた。
「おっさん、平気かぁ」
「……び、び、び、びびび」
 シオンは目をパチパチ瞬かせながらそう言って、それから大声で叫びながら立ち上がった。
「びっくりしました! か、悲しいです」
 自分を撃とうとしていた死体にすがりついて、おいおい泣きはじめる。
 CASLLがシオンの隣に屈んで、シオンの頭を撫でた。CASLLも泣き出しそうな顔をしている。フロアーを見渡すと何人もの死体が担架で運ばれていった。
「悪い人でも死ぬのは嫌ですよ」
 ウェバーは何も言わずに煙草をくわえている。
 加門はポケットからハンカチを出してシオンに渡し、ウェバーの隣に立って煙草をくわえた。
「火ぃ、貸してくれ」
 無言でウェバーが加門の煙草に火をつける。
 
 
 11
 
 冠城・琉人はCITYのドームの中にいた。
 加門達が人質に取られた時点で、彼等を見限ってCITYに場所を移していた。枡田ビルは警官達に占拠されている。問題のLBWへ突っ込んだ六名の重犯罪者達は呆気なく取り押さえられた。
 さてここで問題だ、誰が、どうしてこんなことをしたのか?
 琉人はもう当たりをつけている。
 その男木場・洋輔はまっすぐにある施設へ向かっている。国立研究施設工好学センターへ、彼は向かっている。そこにはおそらく誰もいないだろう。足立区と気象庁、その上前代未聞のコミューン占拠事件が起きたのだ。誰もが事件解決に駆りだされている。
 木場・洋輔はサブマシンガンを持っていた。研究所に入った彼はまず警備員を撃ち殺し、インフォメーションガールに銃弾を浴びせ、施設中央へ向かった。しかし警備員は後から後から涌いて出て、彼の行く手を阻んでいる。
 その間にセンターの所長である本村・明彦と自然保護団体会長の森田・達郎は緊急用エレベーターと階段を利用して施設を出た。
 木場・洋輔が関係のない多くの警備員や研究員達を巻き込んで自爆をしたのが十九時十八分のことだ。警備員十三名、研究員八名、事務係一名の死者、他負傷者は五十余名に及んだ。
 琉人はただ、顔の前で十字を切った。
 木場・洋輔は何の為に自爆したのか。
 弄ばれ死にいたりまたは人ではない格好で生き残り、または狂人にされ、身体を半分以上機械にされ、多くの重犯罪者達がヒトではなくなった。実験材料になる代わりに得た、NAT内の平和がどれほどのものか。彼等の怒りは頂点に達していた。
 だから、だ。
 重犯罪者達はそれぞれの持ち場を決め、おそらく真雄に自爆装置まで作らせた。本当の目的を役人共にどうやっても知られないように。
 逆恨みと思うかもしれない。
 だがどうして、人間が人間を玩具にしてよいのか。
 人への制裁能力を司法局は持っている。どうして、人が人を裁くのか。
 どうして……?
 どうもこうもない。人はそれなりに生きるしかないのである。
 
 
 ――エピローグ
 
 シュラインの提案で、皆でピクニックをしましょう、ということになった。
 NATの比較的安全とされている山道を……である。どういうわけか、愛梨とシュラインは気が合ったのか、冬也と千尋も強制参加だった上、シオンとCASLLに無理矢理駆り出されて加門もいた。総勢十一人のピクニックは和やか……のように見えた。
「ふざけんな、捕まえたのは俺達じゃねえか」
 そう、本村を捕まえたのは事実上加門達だった。CASLLと加門と琉人は走り出した車の前に立ちはだかり、電柱へ突っ込んだ本村を捕獲した。しかしそのすぐ後に千尋が現れ、千尋が口八丁で換金所まで車で案内すると言い出し、乗ったが最後結局本村は司法局の管轄下に入ってしまったのだ。
「そんなことは報告されていない」
 前を行く冬也と加門は顔を近づけてそんな会話をし、猛烈な勢いで山を登っていく。
「やる気か」
「無駄な体力は使わない主義だ」
 ……という二人は怒涛の勢いで走っている。十二分に無駄な体力を使っている。
 後ろのシュライン達は白い息を吐きながら呆れ顔だった。
「雛太くんがこれなくて残念ねえ」
「そうだね」
 雛太の治療は真雄が受け持ったので、通常より回復ペースがいいらしい。
「元気ですねえ、お二人とも」
 琉人が庇を持ち上げながら笑う。
「おいお前、こんなジョークを知ってるか」
 琉人を捕まえて、ウェバーがアメリカンジョークを披露しようとしている。
「加門! 待ってよぉ」
 夕日はせかせか歩きながら、泣き出しそうな声で言った。山道であのスピードで走られたら、ついて行けるわけがない。せっかくピクニックなどという加門に不釣合いなものを、一緒に体験できるというのに……。彼女としては半泣き状態だ。
 一番後ろを歩いていた千尋がシュラインと夕日に声をかける。
「荷物、持ちましょうか、お嬢さん方」
 シュラインも夕日も微笑んで、重たそうなリュックを千尋に渡した。
 ずしりとした重みが千尋の両腕にかかる。
「……な、なに、入ってるんですか……」
 二人は手をぶらぶらさせながら言った。
「人数分のお弁当」
 そりゃあ、重たいはずだ。


 ――end


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086/シュライン・エマ/女性/26/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【2209/冠城・琉人(かぶらぎ・りゅうと)/男性/84/神父(悪魔狩り)】
【2254/雪森・雛太(ゆきもり・ひなた)/男性/23/大学生】
【3356/シオン・レ・ハイ/男性/42/びんぼーにん(食住)+α】
【3453/CASLL・TO(キャスル・テイオウ)/男性/36/悪役俳優】
【3586/神宮寺・夕日(じんぐうじ・ゆうひ)/女性/23/警視庁所属・警部補】
【3628/十里楠・真雄(となり・まゆ)/男性/17/闇医者(表では姉の庇護の元プータロ)】【4320/ウェバー・ゲイル/男性/46/ロサンゼルス市警刑事】

異界−境界線
【NPC/仁枝・冬也(きみえだ・ふゆや)/男性/28/TOKYO−CITY司法局特務執行部】
【NPC/高野・千尋(たかの・ゆきひろ)/男性/28/TOKYO−CITY司法局特務執行部】
【NPC/藤堂・愛梨(とうどう・あいり)/女性/22/司法局特務執行部オペレータ】

文ふやかWR異界−ビタミンレス
【NPC/深町・加門(ふかまち・かもん)/男性/29/賞金稼ぎ】
【NPC/如月・麗子(きさらぎ・れいこ)/男性/26/賞金稼ぎ】

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■         ライター通信          ■
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ファーストライン【後編】 をお届けしました。
【前編】は斎藤WRが執筆いたしました。
お気に召せば幸いです。
今回、司法・警察サイドと賞金稼ぎ・おまけサイドに分かれております。
気になればご確認ください。

文ふやか