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■温泉へ行こう!■

朱園ハルヒ
【3448】【流飛・霧葉】【無職】
「大変、大変だぁーーーーっ!!!!」
 バターン、と勢いよく開け放たれた扉。中にいた槻哉たちは当然それに驚き、斎月などは煙草を床に落としていた。
 扉を開けたのは、外から戻ってきた早畝だったのだ。
「……早畝、小さい子供じゃないんだから、もう少し落ち着きを…」
「それどころじゃないんだって!! 当たっちゃったの!!」
 槻哉が溜息を吐きながら、早畝の行動を窘めようと口を開けば、それを彼が遮って詰め寄ってくる。
「…なにが当たったんだい?」
 多少、引き気味になりながら。
 槻哉のデスクの上に右ひざを乗り上げている早畝を降ろして、話を促す。
「じゃーん! 温泉チケット!! そこの福引きやったら当たった!!」
「……………」
 びら、と槻哉の目の前に突きつけられたもの。
 そこには『一泊二日湯けむりの旅』と書かれた一枚のチケットがあった。
「な、なっ、俺凄いだろーー? だからさー、皆で温泉いこうぜ!」
「……まぁ、いいんじゃねーの? 休暇の話の途中だったんだしさ…」
 一人、自慢げに話す早畝に苦笑しながら、斎月が槻哉にそう言ってくる。
 実は早畝が此処にたどり着く前に、槻哉と斎月で休暇の打ち合わせをしていたのだ。早い話が忘年会のようなものだ。
「何の話?」
 斎月の話の内容がよく飲み込めていない早畝は、槻哉に小首をかしげながら問いかける。
「…斎月の言ったとおりだよ。休暇をとって温泉でも行こうかと話をしていたところだったんだ……」
 槻哉はそう応えて、早畝からチケットを受け取った。そして何か思いついたのか、顔を上げて早畝たちを見る。
「?」
「…僕らはもともと温泉へ行くという予定はあったんだ。このチケットは普段からお世話になっている協力者の人たちへのプレゼントとして、誘ってみる…と言うのはどうだろうか?」
 槻哉の提案にしては、珍しいとも取れる内容ではあるが。
 それでもこの場にいるもの達からは反対の声はあがらないようだ。
「俺も賛成だな」
 暖房の前で丸くなっていたナガレも、しっかり会話は聞いていたようでぴょん、と地を蹴って早畝の肩へと飛び移り、そう言った。
「じゃあ決まりだな。どうせ大人数で移動ってことになるだろうし、俺と槻哉で車出そうぜ」
 意外と乗り気なのは、斎月だった。実は温泉行きの話を最初に持ちかけたのは、彼だったのである。
 このメンバーの中で車を自由に動かせるのは、斎月と槻哉だけ。
 斎月の言葉に槻哉は黙って頷き、立ち上がる。
「楽しい旅行にしたいね。皆が予定が合えばいいのだが」
「…やっりぃ! 久しぶりの温泉だーー!!」
 槻哉の話を聞いているのかいないのか。早畝はもう早旅行気分になり、その場でぴょん、と跳ねている。
 斎月もナガレもそれを呆れ顔で見てはいるが、その胸のうちは休暇の嬉しさでいっぱいなのか、何も言わずにいる。
 今月は立て込んだ仕事も無い。
 一泊であるが、楽しい旅行が出来そうだ。
温泉へ行こう!


「大変、大変だぁーーーーっ!!!!」
 バターン、と勢いよく開け放たれた扉。中にいた槻哉たちは当然それに驚き、斎月などは煙草を床に落としていた。
 扉を開けたのは、外から戻ってきた早畝だったのだ。
「……早畝、小さい子供じゃないんだから、もう少し落ち着きを…」
「それどころじゃないんだって!! 当たっちゃったの!!」
 槻哉が溜息を吐きながら、早畝の行動を窘めようと口を開けば、それを彼が遮って詰め寄ってくる。
「…なにが当たったんだい?」
 多少、引き気味になりながら。
 槻哉のデスクの上に右ひざを乗り上げている早畝を降ろして、話を促す。
「じゃーん! 温泉チケット!! そこの福引きやったら当たった!!」
「……………」
 びら、と槻哉の目の前に突きつけられたもの。
 そこには『一泊二日湯けむりの旅』と書かれた一枚のチケットがあった。
「な、なっ、俺凄いだろーー? だからさー、皆で温泉いこうぜ!」
「……まぁ、いいんじゃねーの? 休暇の話の途中だったんだしさ…」
 一人、自慢げに話す早畝に苦笑しながら、斎月が槻哉にそう言ってくる。
 実は早畝が此処にたどり着く前に、槻哉と斎月で休暇の打ち合わせをしていたのだ。早い話が忘年会のようなものだ。
「何の話?」
 斎月の話の内容がよく飲み込めていない早畝は、槻哉に小首をかしげながら問いかける。
「…斎月の言ったとおりだよ。休暇をとって温泉でも行こうかと話をしていたところだったんだ……」
 槻哉はそう応えて、早畝からチケットを受け取った。そして何か思いついたのか、顔を上げて早畝たちを見る。
「?」
「…僕らはもともと温泉へ行くという予定はあったんだ。このチケットは普段からお世話になっている協力者の人たちへのプレゼントとして、誘ってみる…と言うのはどうだろうか?」
 槻哉の提案にしては、珍しいとも取れる内容ではあるが。
 それでもこの場にいるもの達からは反対の声はあがらないようだ。
「俺も賛成だな」
 暖房の前で丸くなっていたナガレも、しっかり会話は聞いていたようでぴょん、と地を蹴って早畝の肩へと飛び移り、そう言った。
「じゃあ決まりだな。どうせ大人数で移動ってことになるだろうし、俺と槻哉で車出そうぜ」
 意外と乗り気なのは、斎月だった。実は温泉行きの話を最初に持ちかけたのは、彼だったのである。
 このメンバーの中で車を自由に動かせるのは、斎月と槻哉だけ。
 斎月の言葉に槻哉は黙って頷き、立ち上がる。
「楽しい旅行にしたいね。皆が予定が合えばいいのだが」
「…やっりぃ! 久しぶりの温泉だーー!!」
 槻哉の話を聞いているのかいないのか。早畝はもう早旅行気分になり、その場でぴょん、と跳ねている。
 斎月もナガレもそれを呆れ顔で見てはいるが、その胸のうちは休暇の嬉しさでいっぱいなのか、何も言わずにいる。
 今月は立て込んだ仕事も無い。
 一泊であるが、楽しい旅行が出来そうだ。



「待たせたか?」
 そう言いながら、自分の車から降り、姿を見せたのは斎月だった。
 彼の目の前には、霧葉が相変わらずの和服姿で立っている。手荷物といえば、いつもの無銘刀のみだ。
「…いや、別に…少し寒いだけで」
「……わかった、結構待ったなんだな…。いいから早く乗れ」
 とくに表情も変えずに、淡々と斎月の言葉にそう答える霧葉に、彼はため息を吐きながらそう言った。
 槻哉から選択権を貰った斎月が、誘った相手は、度々協力してもらっている霧葉だった。彼はアッサリと言葉二つで返事をし、今こうして斎月の車へと乗り込んでいる。
 いつも何を考えているのかいまいちよく理解できずにいる斎月だが、それでも霧葉を気に掛けているのは紛れもない本当のこと。だから今回の旅行にも、誘おうと思ったのだ。
「槻哉サン達は…?」
「あー、先に行かせた。向こうで落ち合うことにしたんだよ。そのほうが気楽でいいだろ?」
 自分もそそくさと運転席へと乗り込み、ドアを閉めながら、霧葉の問いにそう答える斎月。
 そして一呼吸してから、彼は自分の車を発進させた。
「飲みモン買ってあるから、好きなの飲んでいいからな。あ、ついでに俺にコーヒー取ってくれ」
「……………」
 ハンドルを握り締め、前を見ながらそう言う斎月に、霧葉は黙って足元に置かれていたビニール袋を手に取った。そして言われるままに、彼へと缶コーヒーを取り出し、ドリンクホルダーへと入れてやる。
 霧葉自身は緑茶を選び、それを手にした。
「…やっぱりなぁ。お前なら茶だろうって思って、買ってきたんだよ」
 横目でその霧葉の行動を見ていた斎月は、満足そうに笑いながら、そう言う。
 霧葉はそれに返事は返さずに、黙って緑茶を開けて、口へと運んでいた。
 そこで、ぷつりと会話は切れた。
 解っていたこととは言え、何となく場持ちがしないように思えて、斎月は徐にラジオを合わせてみたりする。
「……それ、聴きたい」
 そうしていると、斎月普段から車の中に置いてあるらしいCDに目が行ったのか、霧葉が呟くように言ってくる。
「………洋楽でもいいのかよ」
「別に…何聴いても、同じに聴こえるから…」
「…そうかよ…」
 淡々とした口調は、変わらずに。
 斎月ははぁぁ、と深いため息を吐きながら、霧葉が指差したCDをオーディオに差込み、再生を押した。
 その後は弾む会話が生まれるわけも無く。気がつけば霧葉はシートを倒して眠ってしまい、斎月はその彼に気を使いCDのボリュームを下げて、ひたすら温泉宿へと続く道を、走らせ続けていた。



 宿へと着くと、ロビーに槻哉たちの姿があった。斎月たちの到着を待っていたようだ。
「お疲れ様。宿泊手続きはもう済んでるから、荷物を置いてくるといい。…これが流飛君の部屋の鍵、そしてこれが斎月の部屋の鍵だよ」
 にっこりと微笑みながら、槻哉が霧葉へと部屋の鍵を手渡す。それに彼は軽く頭を下げて、答えていた。
「結構早かったね。また凄いスピード出したんでしょ」
「んなわけねーだろ。人聞きの悪いこと言ってんなよ、早畝」
 槻哉から鍵を受け取った斎月が次に声を掛けられたのは、早畝だった。からかい口調の彼に、斎月は軽く額を小突いてやっている。
 そんな姿を黙って霧葉が見ていると、斎月がその視線に気がついて、
「そんじゃ、俺らも部屋に行ってくるか」
 と声を掛けてきた。
 霧葉は黙ったままでゆっくりと頷き、先へ進んで斎月の後を追うように、足を進める。
「俺らの部屋、隣同士だってよ。向かい側に早畝たちの部屋があるみたいだけどな」
 チャラチャラ、と鍵を鳴らしながら、斎月は独り言のように言葉を霧葉にかける。長い廊下を進み、暫く歩くと彼らの部屋の前に辿り着く。部屋には名前が付けられており、いかにも温泉宿、と言った感じであった。
「そんじゃ、夕食の時間までは自由行動みたいだし、温泉でも行ってゆっくりしてこいよ。何かあったら部屋ん中の内線使え」
 口早にそう言った斎月は、霧葉が自分の部屋へと入って言ったのを確認してから、自分も用意された部屋へと入る。
 その途端に、部屋の内線が鳴り響き、驚きつつも慌てて電話機へと駆け寄り、受話器をとった。
「はい」
「………………」
 斎月の言葉に、向こうは何も言ってこない。
 それで、斎月は相手が誰だかわかってしまったようだ。
「…霧葉だな。…また用も無く掛けてきただけなんだろ…」
「…良く、わかったな」
「……………」
 ぽつり、と斎月の言葉にそう返してくる霧葉に、彼はガックリと肩を落とした。
「……まぁ、いい…それが『お前』なんだろうしさ…」
 ため息を漏らしつつ、斎月がそういっても、霧葉は大しての反応を見せずにいる。おそらく、無表情のままで受話器を耳に当てているのだろう。
「…あー…。その…なんだ…、俺はこれから温泉に行くけどよ…」
「……じゃあ、俺も行く」
 場繋ぎに言った言葉には、ちゃんと答えが返ってくる。斎月が行動を起こそうとすれば、霧葉もそれに習うと言った感じなのだろうか。その言葉に斎月は『わかった』と言うと、ゆっくりと受話器を戻して、そこでもう一度深いため息を吐くのだった。

 大浴場は、平日なせいもあるのか先に来ていた早畝たちを除いては人もおらず、割とゆっくりと出来る感じであった。
「ふー……」
 3つほどある内湯の、熱めの温度の湯に身を沈めた斎月は、ゆったりと背を預けて、天を仰いでいる。
 一番端にある一番大きな浴槽では、早畝がナガレを頭の上に乗せて、平泳ぎをしていた。
 霧葉と言えば、一人露天風呂まで足を運び、そこでぼんやりと外の景色を眺めているようだ。
 斎月も湯に浸かりながら、ぼやける頭で水しぶきを上げてはしゃいでいる早畝を見つめて、『何をやってるんだあの馬鹿は…』とぼやいていた。
 それを暫く眺めていると、後から入ってきた槻哉が早畝のほうへと足早に進み、行動を注意しているのが目に入る。どうやらコッソリとナガレを連れて来た事にも、怒っているようだ。早畝にはいつも甘い槻哉が、珍しく眉根を寄せて声を荒げている。
 その光景に斎月は口元を緩めて、ふ、と笑う。
「……何か面白いものでも、いるのか」
「…ぅわっ…」
 いつの間にか斎月の背後に立っていた霧葉が、彼を覗き込むようにして、そう問いかけてきた。
 さすがに斎月も驚いたのか、かくん、とバランスを崩して溺れそうになってしまう。
「………潜るのは、止めておいたほうがいいと思うけど…」
 斎月のそんな姿にも、霧葉は動じることも無く、膝を折ってそう言う。
「お前ね…俺がいつもお前のペースについていけると思ったら、大間違いだぞ…」
「………?」
 体勢を立て直した斎月は、振り返りながら霧葉へと声を掛けた。
 霧葉は霧葉で、斎月の言葉が理解出来ていないのか、不思議そうな顔をしている。
 正論をぶつけても、仕方ない。
 斎月はそこで言葉を繋ぐことを諦めて、脱力しつつ、
「体冷えるぞ、ちゃんと湯に浸かれ」
 と別の言葉を彼に掛けて、自分もまた口の辺りまで、体を湯に沈めた。
 霧葉は斎月の言葉に素直に従い、その熱い湯へと体を浸ける。
 そして彼らは、その後ぽつぽつと会話を続けて、ゆったりと温泉を堪能していた。



 斎月たちが温泉から上がり、部屋へと戻った頃には夕食の準備が整っているようであった。
 霧葉の希望もあり、彼ら二人の食事は斎月の部屋へと用意され、浴衣姿の霧葉は、まっすぐ斎月の部屋へとあがりこんでいた。
「…早畝たちがいると、何かと落ち着けないしな……お前、酒は飲めるんだな?」
「ああ、それなりには」
 向かい合う形でテーブルの料理を囲んでいる二人は、一通りのメニューの説明を仲居から受けて、それぞれ手元の杯に酒を注いでもらい、軽くそれを合わせて、喉へと流し込んだ。
「日本酒なんて久しぶりだな…」
 上質な口当たりの酒は、槻哉が頼んだものだった。気を遣ってくれているらしい。
 斎月がその酒にゆっくりと味わっていると、目の前の霧葉は此処の自慢と言われる料理に早速手をつけていた。地元の味と言うのを、堪能したかったのだろうか。
 斎月もそれに釣られるように、箸を進め始めた。
「お、美味いな」
「…………」
 斎月の言葉に、霧葉が黙って頷く。
 料理を少しずつ摘みながら、斎月は霧葉の杯に酒を注いでやる。すると彼も習うかのように、空になった斎月の杯へと酒を注いでやった。
 それらをゆっくりと繰り返すように、二人はその後も食事と酒を、楽しんでいた。

「………あれ、…寝てたのか…」
 時計に目をやると、もう23時近い。
 食事を終えた後、これから先は自由行動だと霧葉に言い、斎月は自分の部屋で窓際に置かれた椅子に座り、整えられた庭を眺めて一息ついていた。そしてそのまま、うたた寝をしてしまったらしい。座ったままの体勢で寝てしまったために、首を元に戻すのに少しの時間が掛かる。
 ゆっくりと斎月は立ち上がり、その場で大きく伸びをした。
「…月夜か…」
 天を仰いで目にしたのは、綺麗な半月。
 その月に誘われたのか、彼は徐に部屋を出て、散歩道へと繋がる廊下へと足を運んだ。
「………斎月サン」
 斎月の背中に、聞き覚えのある声が掛けられる。
「お、霧葉?」
 肩越しに振り向けば、そこには霧葉の姿があった。
「……お前、また温泉行ってたのか?」
「…もう一回くらい行こうかと思ってるけど。せっかく温泉宿に来たんだし、元は取らないと」
 斎月の問いに、霧葉はサラリと答えると、廊下の窓から見える夜空を見上げた。月明かりが彼を照らして、綺麗に見える。
「………暇なら、散歩、行かないか?」
 夜空を見上げながら、霧葉は斎月にそう誘いかけた。
 斎月は困ったように笑いながらも、その彼の誘いに、断る言葉が見つからない。
「しゃーねぇなぁ、お誘いに乗ってやるよ」
 そう言う斎月に、霧葉が僅かながらに表情を変えた。喜んで、いるのだろうか。
 そして二人は、そのまま夜の庭園へと、足を向けた。
 外の空気は、やはり冷たいものであったが、今はそれが心地いいと思える感じであった。頬をくすぐる風も、気持ちがいい。
 浴衣の袖に煙草を忍ばせてあった斎月は、言葉無くそれを取り出して、口へと運び、火を灯す。
 程なくしてゆらり、と昇る紫煙に、霧葉が視線を囚われていた。
「…何か不思議か?」
「アンタが不思議」
「……俺は、お前が不思議でならないぜ…」
 いまいち、会話がかみ合わない。しかし、これも今に始まったわけではない。
 斎月はそんな、少しだけおかしな間柄の自分たちを、別に嫌だとは思わないでいた。霧葉が、どう思っているのかは読めないでいるのだが、読めないままでもいいとさえ、思えてしまう。
「……………」
 静寂な空気の中で、斎月の少し前を歩く霧葉は、そこで足を止めて手に持っていた無銘刀をゆっくりと自分の前へと差し出す。そしてまたゆっくりとした動きで鞘を抜き、何も無い空間へと切っ先を突きつけた。
 斎月はそれを驚きもせずに、黙って見つめている。
 冷たく、澄んだ空気。そして空から降り注ぐ月明かり。そんな中で特に意味も無く、抜刀をしてみたくなるという気持ちが、何となくではあるが、彼も解らなくはないでいるからだ。
 霧葉はその場で二度ほど、空気を斬って見せた。彼が刀を振るうと、本当に『それ』が斬れた様な感覚に陥り、斎月は軽い眩暈を起こした。
 …本当に不思議な男だ、と思う。
 年に見合わない言動を繰り返す霧葉だが、そんな彼を、斎月は嫌いにはなれない。だから彼を、今回の温泉旅行へと誘ったのだ。
「………有難う」
 暫くの沈黙の後に、背を向けたままの霧葉の口から、漏れた言葉。
 それを聞き逃さなかった斎月は、それでも『うん?』と聴こえなかった素振りで聞き返す。
「…嬉しかった。此処に、来れた事。……だから」
「……そりゃぁ、誘った甲斐があるってもんだぜ」
 に、と笑いを作りながら。
 不器用な言葉に、斎月はそう答えた。
 その言葉を受けて、霧葉は静かに刀を鞘へと納める。そして振り向いた彼は、うっすらとだが、笑っているように見えた。
「…そろそろ戻るか。これ以上は、風邪ひくぞ」
 斎月がそう言うと、霧葉はこくりと頷いて見せる。
 それで二人は、ゆっくりと踵を返して、宿内へと戻っていくのであった。

 その後、霧葉は冷えた体を温めるため、と言い温泉へ。
 斎月も何もすることも無い、と言うことで流されるままに温泉へと足を運んだは良いものの、長風呂をしてしまい、湯あたりでダウンする羽目になるのだった。
 




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            登場人物 
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【整理番号 : PC名 : 性別 : 年齢 : 職業】

【3448 : 流飛・霧葉 : 男性 : 18歳 : 無職】

【NPC : 斎月】


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           ライター通信           
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 ライターの桐岬です。今回は『温泉へ行こう!』へのご参加、ありがとうございました。

 流飛・霧葉さま
 いつもご参加くださり有難うございます。そして納品が大幅に遅れてしまい、申し訳ありませんでした。
 メールでご連絡が行っていたかと思いますが、体調を崩してしまい、今まで思うように執筆が出来ずにいたのです。
 本当に申し訳ありませんでした。
 今回は霧葉くんの中で、いい思い出のひとつになれば…と思い書かせていただきました。
 少しでも楽しんでいただければ幸いに思います。

 ご感想など、聞かせていただけると嬉しいです。今後の参考にさせていただきます。
 今回は本当に有難うございました。

 誤字脱字が有りました場合、申し訳有りません。

 桐岬 美沖。