■雪月花:1 当て無き旅人■
李月蒼 |
【0635】【修善寺・美童】【魂収集家のデーモン使い(高校生)】 |
ずっとずっと探していた……。
独りの旅が何時からか二人になった。
誰かが隣にいる、そのことはお互いの支えになった。
嬉かった。ただ…嬉しかった。それを声や態度に表すことは無かったけれど。
今はまだ当ての無いこの旅に、俺たちはただ『みちづれ』がほしかった――…‥
「ねぇ……柾葵(まさき)、先はまだ遠い?」
声に出すは一人の少年の声。声変わりは疾うに済んでいるはずだが青年と言うにはその声は高い。しかしその見かけは十分青年と言えるものを持っていた。表情にはまだ幼さを残してはいるが、身長は成人男性の平均を超えている。
ただ、サングラスの奥に見える目はその表情に似合わず冷ややかにも思えた。その理由と言えるのは恐らくそれが何も映し出さない瞳、光を感じない眼だからなのだろう。
そして、その少年の隣に立つ……彼よりも更に背のある一人の男性。柾葵と呼ばれた青年は、ただ少年の問いかけに首を縦に振る。しかし一瞬の後それが少年には見えていないことに気づき、そっと少年の右手を取った。
「洸(あきら)……、まだ 遠いよ……?」
掌に書かれた文字を読み取り、洸と名前を書かれた少年は苦笑する。
「うん、判ってるよ柾葵。でも俺、そろそろ疲れたんだ」
言うと同時、少年の膝が崩れ、青年がそれを必死で支えようとした。
しかし互いに体力は限界に達し、少年の体を受け止めた青年の体も、やがて膝からがっくりと落ち、冷たい冷たいアスファルトに突っ伏した。
目の前にはもう街明かりが見えるというのに、そこに手は届かぬまま。
そっと二人 意識は遠のいていく。
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[ 雪月花1 当て無き旅人 ]
秋の空の下
ずっとずっと探してた。
独りの旅が何時からか二人になった。
誰かが隣にいる、そのことはお互いの支えになった。
嬉かった。ただ…嬉しかった。それを声や態度に表すことは滅多に無かったけれど。
今はまだ当ての無いこの旅に、俺たちは多分『みちづれ』がほしかった。
そして何より自由で…ありたかった――
「ねぇ……柾葵、先はまだ遠い?」
声に出すは一人の少年の声。声変わりは疾うに済んでいるはずだが青年と言うにはその声は高く、しかしその見かけは十分青年と言えるものを持っていた。表情にはまだ幼さを残してはいるが、身長は成人男性の平均を超えている。
ただ、掛けたサングラスの奥に見える目は、その表情に似合わず冷ややかにも思えた。
そして、その少年の隣に立つ彼より更に背のある一人の男性。柾葵と呼ばれた青年は、ただ少年の問いかけに首を縦に振る。しかし一瞬の後それが少年には見えていないことに気づき、そっと少年の右手を取った。
「洸……、まだ 遠い……?」
掌に書かれた文字を読み取り、洸と名前を書かれた少年は苦笑する。
「うん、判ってるよ柾葵。でも俺、そろそろ疲れたんだ」
言うと同時、少年の膝が崩れ、青年がそれを必死で支えようとした。
しかし夕暮れ。ゆらぎ、やがて落ちゆく二つの影――…‥
二人が気づいたとき、辺りの様子は打って変わっていた。
見たことも無い天井の高さと、遠くに見える壁。ただっぴろいそこは豪邸の応接間か何かなのか、座り慣れないソファーに二人は座っていた。
「――な、に!?」
「――……」
最初、その異様さに目を覚ました少年が声を上げ起き上がると、隣で眠っていた青年が目を開けた。ゆっくりと辺りを見渡すその様子に言葉は無い。
しかしその時、二人の目の前で大きなドアが音を立て開いた。そこに立つのは少女にも見間違えるような色の白い少年。その肌の白さは白人よりも白いのではないかと思わせる。そんな少年の様子を真っ先に捉えたのは青年のようで、しかしその顔はどうしてか浮かばない。
「……誰? それに、此処は一体何処ですか。俺たちは確か外に居た筈じゃ……」
少年の視線が一瞬泳ぐ――尤もその眼はサングラスに隠され見えない――と、正面に立つ色白の少年を見た。その視線を受け、色白の少年は後ろ手にドアを閉め、二人を見ていた視線を少年側へと向ける。
「ボクは修善寺・美童、キミ達は今ボクの邸に居るんですよ」
「――邸?」
「まぁ、ボクの気まぐれと他にもあるんですが……倒れていたキミ達をお客人として案内したまでです。良ければ少しの間でも食客として滞在していってくださいよ。この屋敷周辺も案内しますし、どうぞ楽にしていって欲しいと思います」
少年の問いに色白の少年――美童――はその小さな口元をそっと上げ、微笑んで見せた。しかしその誘いに少年はソファーから立ち上がり、冷たい拒否の言葉を紡ぐ。
「俺たち急いでるから、……助けてもらっておいて悪いけどそれは」
「じゃあせめて一日。外はもうすぐ暗くなるから、朝まで休んでいくと良いです。それなら…良いでしょう?」
しかし少年の声に美童は間髪入れない台詞と同時、青年を見た。青年はその視線を受け僅かな戸惑いをその顔に浮かべると、立ち上がっている隣の少年を見上げる。
「――どうした?」
少年の声に青年は、少年の手を取りそこに指で何かを書き示していく。その様子を見ていた美童の片眉が僅かに上がった。それは一瞬、彼の顔が引き攣ったようにも見える。しかしそれに気づかぬ二人は、まるで内緒話のように頷いたり頭を振ったりを繰り返す。そして青年の手は少年から離れ、同時少年から了承の言葉が出た。
「……あぁ、そうだな――判った、それじゃあ一晩だけ」
「そうですか、それはよかった。それで……一晩限りとは言え、良ければ名前を教えてくれますか? 呼ぶのに少し不便かと」
少年の声を受け美童は笑顔で、同時に右手を差し出し言う。本人にとっては握手の意味を込めているものの、少年はただ簡潔にそれを告げた。
「俺は洸、こっちは柾葵……それじゃ、お世話になるよ」
その後美童は、食事の前に邸を案内すべく二人を連れ出した。
応接間から外へと出ると、広い通路にたくさんのドアが目に入る。そうして最初は邸内を案内すると、やがて美童は二人を外へと連れ出した。敷地が広い為離れのような建物も多くあり、洸と柾葵はただ美童の一歩後ろを追う。
「あぁ、そうそう……」
やがて敷地内を一周する頃、美童の足が一つの建物の前で止まった。そしてゆっくりと、声に出しながら二人を振り返る。
「滞在中は自由にしてて良いのですが、此処だけは……決して近づかないで下さいね。少し、危ないので」
そう、微笑を浮かべながら美童は言い、洸は「あぁ」と頷き、柾葵はただ頷いた。
二人とも他人の事には無頓着なことも有り、加えてそう言われてまで見たいと思うような性格でもなく。素直にそれを受け止めたようにも見えたが、ただ一人……洸の表情は優れずにいた。その忠告ともいえる言われ方が気になったのではない。ただ今目の前にしたその建物自体に漠然とした不安を抱え、それを言葉に出来ずにいる。否、建物というよりも、その中から何か異様な気配を感じた。
そんな洸に気づかぬ美童は「食事にしましょう」と、足早に母屋へと戻っていく。それに続こうと柾葵が一歩を踏み出すが、隣で先ほどの建物をジッと見つめたまま動かぬ洸にその表情を強張らせた。
「――――」
「ん、あぁ……ごめん。大丈夫だよ。と言っても――柾葵も何か、気づいたのだろうね?」
苦笑いを浮かべた洸に、柾葵は頷きも頭を振ることも無く、ただ目の前の建物を見上げた。この敷地内の一隅にあり、どことなく孤立した印象を持つその建物は、それ以外ではこれといっておかしい物ではない。
やがて柾葵は、その視線を既に消えかかっている美童の背中へと移動させた。それを追う様に、洸の視線も母屋の方へと向く。
風が吹き、辺りはざわめいていた。邸内で見た時計ではまだ夕暮れ頃だったこの時刻。辺りが暗い理由は見上げた空に広がる厚い雲のせいだろう。邸を出た時から僅か十数分、それでも出たばかりの頃より確実に下がり始めている気温に吐く息は白い。
それはまだ、一つの始まりに過ぎない――…‥
夕食は横長のテーブルにただ三人腰掛執り行われた。そのテーブルの片側に美童が、その向かい側に洸と柾葵が座る。カチャカチャと食器やフォークにナイフの音が響く中に会話は無く、ただ黙々とした食事風景が広がっていた。
「ん? やっぱり雨……か」
ふと顔を上げた美童はカーテンの向こう、窓を叩く雨に憂鬱そうな表情を見せる。とは言え、彼自身も先ほどの雲行きではそれは予想したことだろう。ゆっくりと顔を戻すと、フォークを置き水の入ったグラスを片手、前の二人を見た。
「所で、お二人には一部屋ずつ用意しましたから、食事が終わったら案内しますね」
頷いた二人を確認するとコクリと、美童は一口クラスの中身を口にし食事は再開され、揃って夕食が済むと美童は二人を客室へと案内する。美童が言ったとおり、二人には隣同士の部屋が一人一つ用意されており、まず洸の部屋に彼を案内した。
「荷物はさっき運ばせてしまったのだけど……アレで良いですか?」
「ん、荷物……悪いけどどの辺にあるのか教えてくれるかな?」
入り口で美童に掛けられた言葉に、洸は彼を振り向き問い返す。その様子に美童は不思議そうな表情を見せた。
「どの辺りって、ベッドの上に……」
言いながら美童はなんとも豪華なベッドを指差す。
「……そう、有難う。まぁ、違っていても大した物もないし後で交換するから良いよ」
美童の仕草言葉に返した洸の淡々とした言葉、それに美童は腑に落ちないと言った様子だったが、「それではごゆっくり」と早々にドアを閉めると今度は柾葵の部屋の案内を始めた。
ドアを閉められた向こう側の洸は、過ぎ去る気配に視線を窓の外へ移動させる。雨は依然降り続き、窓を激しく叩いていた。此処からは数時間前案内された、近づくなと言われた建物が良く見える……
「それでは、遠慮なく寛いでいって下さいね」
一方の柾葵は、美童に部屋を案内され、荷物も確認するとコクンと頷いた。
しかし、そこからの美童は先ほどとは明らかに対応が違う。自分に背を向けた柾葵のコート、それをギュッと握り引っ張った。そして振り返る彼を見上げ、美童は彼を大浴場へと誘う。その言葉に柾葵はそっと、ただ小さな苦笑いを浮かべた。
嫌なのかと問えば首を横に振る。ならば「良いのだろ?」そう聞いても、柾葵が首を縦に振ることはない。その内心は何を抱えているのか、さっぱり判らなかった。何よりも、出会ってから一度も開かぬその口……否、発せられることのない声。
「……判りました、無理にとは言いませんが今夜は冷えますから…気が向いたらご利用ください。場所、判らなくなったらその辺りにいる人に聞くか、ボクの部屋まで来てくださいね」
そう、丁寧に言うと美童は自分の部屋の位置を教え部屋を出た。
パタンとドアの閉まる向こう側、柾葵は隣の部屋に視線を向ける。
そしてドアのこちら側、要するに美童はドアに背を預け小さく舌打ちした。
外ではやがて雷鳴が響く。窓ガラスから差し込む光が邸内を寄り一層明るく照らしていた。
しかし――結局来てしまったと……そんな顔で柾葵は今目の前を見つめていた。
確かに大浴場というだけのことはあり、そこは一般家庭の風呂とは掛け離れている。
コートは部屋に置いてきた為、その他の衣類をそれなりに畳むと籠に入れ中へと入った。大浴場とは言われているものの、無人であり物静かな場所だった。
体に髪を洗い終え湯船に浸かると、カラカラとドアの開く音と一緒に美童が姿を現す。
「あれ、結局来てたんですね」
偶然ですねと美童は言うが、実のところずっと彼の様子は伺っていた。ただし、既に湯船に浸かっていたのは計算外である。
「ボクが背中流してあげたかったのになぁ……」
小さくぼやきながらも蛇口を捻るとシャワーを浴び、体と長い髪の毛を洗っていく。その間柾葵はただ浴槽の中でジッと窓の外を眺めていた。美童の台詞がその耳に入っていたかどうかも定かではない。
そう、ジッと外を見ていた柾葵だったが、次の瞬間反射的にその手が動く。
「――っ!?」
「……えっ!?」
パシャッと、雫の音。水面と水平にされた掌は美童の目前でピタリと止められた。瞬間ブワッと音がした気がした。手が空気を切る音が……美童自身何が起こったのか、理解できぬまま、ただ自らが柾葵の背中へと伸ばした手をゆっくりと下げていく。
「…………」
言葉を失った美童に、柾葵は強張った表情を元へ戻し、掌を合わせ頭を下げた。その様子からはわざと、という様子は伺えない。言うならば反射的に、若しくは人から見れば何かしらの防衛本能が働いた、そんなところだろう。その謝罪の姿がとても哀しく見え、美童は言うべき言葉が見つからなかった。
ただ柾葵は何か言いたそうに……しかしそれを声にすることは出来ぬまま、美童を残し大浴場を後にする。
カラカラとドアの開く音、そして閉まる音。服を着る音、時折風が窓を叩く音。パシャンと湯船で水を弾く音。それはやけに五月蝿い夜。何かが始まろうとする――その予兆。
外の雨は何時しか小雨へと変わっていた。
打って変わって訪れた静寂に、邸内を歩いていた柾葵はそっと窓から外の様子を伺う。
しとしとと降り注ぐ雨は好きだった。その中を傘も差さず歩くのが好きだ。そう言うと洸には「だからお前はお子様なんだ…」と言われるが。
しかし、ふとその視界に入り込む見慣れた姿。紛れも無い、それは洸の姿だった。小降りになったものの雨の降る中、洸はやはりジャケット姿で、傘も差さず歩いている。その姿に柾葵は慌てて踵を返すと、コートの存在など忘れたまま邸を出た。
「……っ!!」
「――まさ、?」
邸を出てすぐ、柾葵は洸の姿を見つけ駆け寄った。その足音に洸は気づき振り返るが、すぐさま柾葵がその右手を取り何か書き示していく。
「近づかない…方がいい――? 俺がアイツに危険を感じたよう、……お前…は、此処に危険を感じたんだろ? ――っ、そう……だね。でも、だからこそ調べておきたいんだよ。此処自体に何があるかなんて興味はない、でも危険ならばこれ以上あの美童って奴にも関わらない方がいい」
言うと洸は柾葵の手を振り解く。正直、此処まで内心を読まれているとは思わず、素早く美童が近寄ることを禁止した建物の扉に駆け寄ると手を伸ばす。柾葵の静止の手は届かず、ギィッとドアは思いの外あっさりと開いた。鍵位は掛かっていると思った洸は、一瞬自分の掌を見つめながらも素早く中へと神経を集中させる。
「……なん、だ…此処は? 柾葵…何が見える!?」
その異常さに洸は柾葵の答えを待つ。
「!?」
「柾葵?」
しかし返事のない柾葵に洸は振り返ろうとするが、そこで……今まで気づくことの出来なかった複数の気配に、その背を凍らせた。
「近づかないでって……ボクは言いましたよね?」
すぐさま振り返ることは出来なかった。その氷のように冷たい声に。そして、近寄る複数の足音に。ただ、右手を取られた瞬間その反対側に体を向け、その手を振り払うよう振り向いた。そこには武装した部下を引き連れる美童の姿。
「ボクの秘密を知ったからには――仲間になるか死か」
「っ……秘密って――なっ!?」
僅かに取り乱す洸を、美童の部下達が取り囲んだ。一人が右手を、もう一人が左手を…その両方を洸はすぐさま振り払うが、後から後から伸びる手が徐々に洸の立ち位置を変えていく。
「そっちは連れて行け。こっちは、少し話したいことがある……」
そう、美童は洸を連行させ柾葵をその場に残すよう指示を出す。
傘が雨を弾く音が頭上で響いていた。勿論傘は部下の一人が差している。
「ねぇ柾葵、ボクの部下になりませんか? 悪い話じゃない、欲しい物は何でも手に入る。それに今日一晩、ボクの言い成りになれば……アイツ、洸を解放しても良いですよ」
それは一体何の意味を含んでいるというのか……言葉を口にし笑みを浮かべる美童に、柾葵は顔をしかませると同時首を横に振る。
「どうして!? ボクの部下になればもう行き倒れることもない。思いのままだ! それに、洸がどうなっても良いのか!?」
全く判らないという形相の美童に柾葵はポケットをごそごそと漁り、そこからメモ帳とペンを取り出した。その一枚に何かをさらさらと書くと、破り美童に手渡す。そこに並べられたのは、走り書きにしては綺麗な文字の羅列。
『俺らには目的がある。それは決してお前が手に入れられるものじゃない。だから此処に留まる理由も無い。だからと言って、洸が捕らわれても俺に不都合はない。あいつはただのみちづれだ‥居ても居なくても俺は俺の道を歩くだけ。ただ一つだけ、手荒な事だけはよしといてくれ。後さっきは悪かった、わざとじゃないんだ‥許して欲しい。』
メモを読み終えた美童は、それをくしゃりと手中で丸めると、近くの部下を振り返り言う。
「……おい、アイツを戻して来い。後部屋の荷物を此処まで」
そして柾葵に視線を戻すと、美童は溜息を一つ吐く。
判らなかった。欲しいものは手に入る、それがダメ。人質として柾葵と共に居た洸を脅しの材料としても無関心。一体彼は何をされれば靡くのか、何をされれば自分に従うのか……ただ、間も無く運ばれてきた二人の荷物と洸を見ると、美童は最後吐き捨てるよう言った。
「――出ていけ」
その冷たい一言と同時、門は閉ざされる。
傘も持たず外へと放り出された二人。それには慣れているが、此処で過ごした時間の分、一体どれ程先に進めたかと思うと自分達の甘さに苛立ちが納まらない。救われたのは事実だろう、しかしその代償は大きかった。
やがて二人は歩き出す。一体何処までつれてこられたかは判らぬが、今はただ先に進むしかない…‥。
そんな二人の背を見送る美童は、部下達の言葉に家の方向へと足を向けた。外は依然寒く、このままでは風邪を引いてしまいそうだ。しかし、ふと止めた足が家とは逆の方向、そこにある大樹へと向く。
「……さっきから気になってたのですが、そこに居るのは誰ですか?」
美童の声に、大樹の葉がただ風に吹かれ揺れる。反応のない大樹の向こうを見つめ、美童は部下達に手で合図を出すと同時、彼らは一斉に懐から拳銃を取り出した。
「……随分と物騒ですね」
「キミは……あの二人を見張っているのか?」
そう、大樹の陰から出てきた一人の人物に美童は言葉を投げる。相手は、少年とも少女とも言える容姿を持ち、白の上着に黒のインナー・ズボン。その手には懐中時計を持ちただ美童を見る。
「――あの二人から目を離すな」
相手に向かい美童は言う。その言葉に、相手は失笑し背を向ける。
「あなたに言われなくとも僕は常に彼らを見てますよ。けれど、見張っているわけではない。これは僕の意思……あなたにとやかく言われる筋合いはないですよ」
「っ…そんなことを言ってただで済むと!?」
「済むと思っているから無闇やたらと吼える犬がいる……そうは、思いませんか?」
刹那、美童の手が相手へと向かう。その合図に、部下達が一斉に発砲を始め相手は蜂の巣――かと思いきや、そこには既にその姿など無く、ただ銃弾のめり込んだ大樹があった。
「ちっ……どいつもこいつも…」
悪態を吐くと美童は今度こそ踵を返し邸へと戻っていく。
――その後雨は強さを増し 再び雷雨となった
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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[0635/修善寺・美童/男性/16歳/魂収集家のデーモン使い(高校生)]
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■ ライター通信 ■
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こんにちは、亀ライターの李月です。このたびは雪月花1 当て無き旅人、ご参加有難うございました。
初めまして……というべきでしょうか。修善寺さんでのご参加有難うございます。
さて、先ずはもう相変わらずと言いますか…遅くなりましてスミマセンでした。加えましてご連絡させて頂きましたが、結果的にNPC行動部分は申し訳ありませんがほぼ割愛させていただきました。やはり此方のキャラ設定上との食い違いが出てきてしまいますので。あと一部は状況を変えて――となりました。
今回は今までとは違い、PC様が二人の間に入ってくるのではなく、二人が修善寺さんの中へというイメージでした。よって、二人メインと言うより修善寺さんがややメイン思考で動いております。
二人の拾い方、又二人の異変については触れておりませんでしたので、その辺りも特別な表現はしておりません。ご了承くださいませ。
邸内については一部勝手解釈で書かせて頂きました。色々違っていたら申し訳有りません。ただ日本家屋ではなく西洋である筈……と、ただの先入観かも知れませんが。何か問題ありましたらお申し付けくださいませ。
それでは又のご縁がありましたら…‥
李月蒼
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