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■ひとやすみ。■

朱園ハルヒ
【4047】【古田・緋赤】【古田グループ会長専属の何でも屋】
 いつもは慌しくしている司令室も、今日は穏やかだった。
 早畝はナガレとともに備え付けのテレビを見ているし、斎月は自分に与えられたデスクで煙草を咥えながら新聞に目を通している。
 槻哉はいつもどおりに中心のデスクに座りながら、パソコンを弄っていた。
 今日の特捜部には、仕事が無いらしい。
 事件が無いのはいい事なのだが…彼らは暇を持て余しているようにも、見える。
「早畝、お前学校は?」
「創立記念日で休みって、昨日言ったじゃん」
 斎月が新聞から顔をのぞかせながらそんなことを言うと、早畝は彼に背を向けたままで、返事を返してくる。
 見ているテレビの内容が面白いのか、会話はそのまま途切れた。
「……………」
 そこでまた、沈黙が訪れた。
 聞こえるのはテレビの音と、槻哉が黙々とキーボードを叩く音のみ。
 穏やかだと言えば、穏やかなのだが。
 何か、欠落しているような。
 それは、その場にいる者たちが全員感じていること。
 それだけ、普段が忙しいということだ。今まで、こんな風に時間を過ごしてきたことなど、あまり無かったから。
「たまにはこういう日もあって、いいだろう」
 そう言う槻哉も、その手が止まらないのは、落ち着かないから。
 秘書が運んできてくれたお茶も、これで三杯目だ。

 今日はこのまま、何も起こらずに終わるのだろうか。
 そんな事をそれぞれに思いながら、四人はその場を動かずに、いた。
ひとやすみ。

 いつもは慌しくしている司令室も、今日は穏やかだった。
 早畝はナガレとともに備え付けのテレビを見ているし、斎月は自分に与えられたデスクで煙草を咥えながら新聞に目を通している。
 槻哉はいつもどおりに中心のデスクに座りながら、パソコンを弄っていた。
 今日の特捜部には、仕事が無いらしい。
 事件が無いのはいい事なのだが…彼らは暇を持て余しているようにも、見える。
「早畝、お前学校は?」
「創立記念日で休みって、昨日言ったじゃん」
 斎月が新聞から顔をのぞかせながらそんなことを言うと、早畝は彼に背を向けたままで、返事を返してくる。
 見ているテレビの内容が面白いのか、会話はそのまま途切れた。
「……………」
 そこでまた、沈黙が訪れた。
 聞こえるのはテレビの音と、槻哉が黙々とキーボードを叩く音のみ。
 穏やかだと言えば、穏やかなのだが。
 何か、欠落しているような。
 それは、その場にいる者たちが全員感じていること。
 それだけ、普段が忙しいということだ。今まで、こんな風に時間を過ごしてきたことなど、あまり無かったから。
「たまにはこういう日もあって、いいだろう」
 そう言う槻哉も、その手が止まらないのは、落ち着かないから。
 秘書が運んできてくれたお茶も、これで三杯目だ。

 今日はこのまま、何も起こらずに終わるのだろうか。
 そんな事をそれぞれに思いながら、四人はその場を動かずに、いた。




 一つの番組が終わったところで。
 早畝がふぅー、とため息をもらしていると、廊下のほうからバタバタと足音が聞こえて、『ん?』と視線を持っていく。
「うりゃー!」
 バターン、と勢い良く音を立てて開かれたのは司令室の扉。それと同時に発せられた声に、その場にいたメンバーは聞き覚えがあり、驚き視線を上げる。
「…緋赤?」
 ソファから顔を覗かせた早畝が、その人物を目に留めて、名前を呼ぶ。
「クライアントからドタキャンされて、一日暇になったから遊びに来たよー!ってわけで、誰か遊んでくれっ」
 その早畝の言葉には返事もせずに、彼女は元気いっぱいで指令室内へと入り込んでくる。
 前から何かと遊びに来る、所謂『同業者』の古田緋赤だ。
 いつも忙しそうにしている彼女だったが、今日だけは違うらしい。仕事が急に無くなり、少しだけ憤慨しているのか勢いもいつもの倍あるように見えた。
「いらっしゃい、緋赤くん。見てのとおり、僕らも今日は時間があるから、好きに過ごしてもいいよ」
 そう言うのは、パソコンから離れようとしない槻哉だ。にっこりと笑って、早畝のほうへと導くように視線をやる。
「あ、そうなんだ、ラッキー。あたし的希望としてはゲーセンに行きたいんだ。あたし、ゲーセンって行ったことないのね。だから連れてって」
 そういう彼女の語尾には、ハートが付いているように見える。
 流れ的に、こういう状況を担当できるのは早畝だ。緋赤もそれを解っているのか、早畝のみに視線を向けて、言葉を発しているようだ。
「ね、ね、早畝とかゲーセンで遊んでそうじゃん。エスコートして」
「う、うん、まぁ……いいよね? 槻哉」
 緋赤の勢いに押されつつ、早畝がようやく口を開いて槻哉へと視線を持っていく。
 すると彼はにっこりと笑って頷いてくれている。
「よっしゃー決まりっ 早速遊びに行こう!」
 槻哉の頷きを見て、緋赤は嬉しそうにそう言った。そんな彼女は、いつもより明るいように見える。
「じゃあ、出かけてくる」
「気をつけてな」
 半ば引きずられる形で、早畝はジャケットを着込んで司令室を後にした。見送ってくれた斎月が、にやにやと笑っている。
 それを見ながら、緋赤と早畝は、ゲームセンターへと足を運んだ。

「うっわーっ すごい! 色んな種類があるんだねぇ!」
 早畝が連れてきたところは、一番大きなゲームセンターだった。特捜部のビルから近い、と言うこともあったのだが、ゲームセンターに言ったことが無いと言う彼女を喜ばせてあげたいと言う思いのほうが強く、ここを選んだのだ。
「何が一番面白いの? あ、あれ何?」
 表情をクルクルと変えながら、子供のようにはしゃぐ緋赤。
 早畝は苦笑しつつも、彼女に負けていられないとばかりに、前を進んだ。
「あれやろうか?」
「敵を銃で撃つの? 面白そう! やろう! 勝負だ! 負けた方はアイス奢りね」
 緋赤が最初に興味を示したゲーム機で早畝がそういうと、緋赤はやる気満々で、返事を返してきた。
「俺、強いよ?」
「あたしだって負けないよーっ」
 にか、と自信たっぷりに言う早畝にも、緋赤は負けない。握りこぶしを彼に突きつけて、瞳をギラギラとさせていた。
「よーーっし! やるぞーー!!」
 緋赤の元気いっぱいの掛け声で、早畝とのゲーム対決は始まった。
 ガンシューティングゲームでは早畝がギリギリで勝ち、レーシングゲームでは緋赤が勝った。ゲームセンターが未経験とは言っても、頭の回転が速い彼女は飲み込みも早いようで、初めてのゲームもコツさえ掴んでしまえば苦では無い様だ。音感重視の流行のゲームもあっという間に理解し、記録更新を出していく。
 次々とゲームをやり込んでいくうちに、早畝も本来の本気モードになってしまい、手加減など忘れてしまっていた。…否、最初から手の抜けない相手だとは解っていたのだが…。
 そんなこんなでそのブース内のゲームを殆ど制覇するころには、人だかりが出来てしまうほどになっていた。
「ああああっ 負けたーーーー!!!」
 格闘ゲームを大画面で対戦していた早畝が、頭を抱えてそんな叫び声をあげる。自慢ではないが、この手のゲームでは今まで負けなしでいた為に、ショックを隠しきれないようだ。
 軍配は、緋赤に上がったようである。
「早畝ってやっぱり強いねーっ」
「…その『強い』って言ってるヤツを負かす緋赤のほうが、すごいと思うけど…」
 ガックリと肩を落としている早畝に向かい、緋赤は実にスッキリした顔で、そんなことを言ってきた。
 早畝はどんよりとしながら、返事をしている。
「あははっ 何か久しぶりに夢中になっちゃってさ〜。…あ、最後にあれやろうよ♪」
 そんな早畝の背中をポンポンと叩き、緋赤は上機嫌だ。そして目に付いたものを指差して彼を引っ張っていく。
 緋赤が立った場所は、クレーンゲーム機の前だった。大きなぬいぐるみを目の前に、にっこりと笑っている。
「……俺に、取れって?」
「こーゆーのって、オトコノコの役目じゃない?」
「………まぁ、コレも得意だけどさ…」
 緋赤には、どうやっても勝てないような気がする。
 そんなことを心の中で呟いた早畝は、コインを入れて素直にゲームを開始する。
 クレーンゲームも何度も制覇している早畝は、たったの一回で緋赤が希望した大きなぬいぐるみを取り、彼女へと手渡した。
「うっわぁー凄いよ早畝! ありがとう」
 ぬいぐるみを手にした緋赤は、本当に嬉しそうにそう笑った。
 早畝もその笑顔を見て、気を良くしたのか笑顔を取り戻す。
「あー、楽しかった! ゲームって楽しいね!」
 店員にぬいぐるみを袋に入れてもらい、ゲームセンターを後にした二人は早畝の奢りでアイスを買い、近くの公園へと足を運ぶ。
 そこで彼女は軽く伸びをして、早畝へと向き直った。
「あたし、家でやるゲームもあんまりやったことないんだ。仕事、仕事でそんな暇ないしさ」
「…そっか…」
 空いているブランコに腰を下ろした早畝が、彼女の言葉にゆっくりと返事をした。自分も似たような境遇だが、まだ良い方なのかもしれない、と思いながら。
「…小さいときも勉強に戦闘訓練ばっかりで、あんまり遊んだ記憶もないんだ」
「…………」
 いつも元気な緋赤。
 その元気の裏には、どんな思いがあるのだろう。それを早畝は知ることも適わないが、似たような立場でいる為か何となく状況が読めてしまう。それでもそれは、早畝の口からは訊こうとは思わない。
「あー…そこで暗くなったらダメじゃんっ せっかく楽しい時間だったのにさ!」
 黙ったままの早畝の顔を見た緋赤が、困ったように笑いそんな事を言ってくる。そしてアイスを頬張り、また彼の背中をバンバン、と叩いてきた。
「…いてて…ごめんごめん」
 早畝が苦笑しながら、謝る。
 緋赤はそれを見て『解ればよろしい』と言うと、二人はどちらからとも無く、笑い出した。
「……だから今日は、すっごい楽しかった。ありがと!」
 一通り笑った後、緋赤は自分の言葉を繋げるかのように、そういった。
 それを受けて、早畝もにっこりと笑って
「俺も久しぶりに遊べて楽しかった。また時間出来たら、勝負しよう!」
 と言う。ガッツポーズをおまけにしながら。
 すると緋赤は、また嬉しそうに笑った。その笑顔が、とても良いものに見えたのは、早畝の気のせいではないのだろう。
 その後も談笑を2、3した二人は、その場で解散となり緋赤は大きなぬいぐるみを抱えながら元気良く走り去って行った。おそらく、職場へと戻るのだろう。
 早畝は彼女の後姿が見えなくなるまで見送り続けてから踵を返し、自分も特捜部へと帰るために歩みだす。
 現実へと目を向けるために。







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            登場人物 
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【整理番号 : PC名 : 性別 : 年齢 : 職業】

【4047 : 古田・緋赤 : 女性 : 19歳 : 古田グループ会長専属の何でも屋】

【NPC : 早畝】

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           ライター通信           
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 ライターの桐岬です。今回は『ひとやすみ。』へのご参加、ありがとうございました。
 

 古田・緋赤さま
 ご参加くださりありがとうございました。とても楽しく打たせていただきました。
 そして今回は納品が遅くなってしまい、大変申し訳ありませんでした(平謝)。
 今後同じ事を繰り返さないように努力してまいります。
 緋赤さんが少しでも楽しんでいただければ、幸いに思います。

 ご感想など、お聞かせくださると嬉しいです。今後の参考にさせていただきます。
 今回は本当に有難うございました。

 誤字脱字が有りました場合、申し訳有りません。

 桐岬 美沖。