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■Blue Butterfly〜第一夜目、蕪木〜■

雨音響希
【2290】【坂乾・透憶】【女子高校生&???】

 『Blue Butterfly』〜第一夜、蕪木〜

 夜見る夢、青い蝶々に連れて行かれる夢・・。
 行き着いた先には白い着物を着た女の子。とても悲しそうな瞳で呟くのはたった一言。

 『Blue Butterfly』

 それがなんなのか、どうしてこうも毎夜毎夜と夢の中に現れるのか・・きけずに消える。
 そして・・目が覚めると朝日。
 窓から降り注ぐ朝日は部屋を明るく染め上げる。

 □■

 東京下町、夢幻館。
 「そうなのですか・・・それは多分夢が貴方を呼んでいるのですよ。」 
 夢幻館の総支配人、沖坂奏都はそう言うと人のよさそうな笑みを浮かべた。
 「夢が貴方様を呼んでいると言う事は・・何かあると言う事ですね。どうですか?呼ばれる前にこちらから行ってはみませんか?」
 奏都の案内で、豪華な装飾のついた扉の前へとやってきた。奏都がそっと扉を開ける。
 「ようこそいらっしゃいました。あら?奏都様、今日はお客様もご一緒ですか?」
 「そうなんです。どうやらこの方が夢から呼ばれているようで・・。」
 「まぁ、それは大変ですね。さ、どうぞこちらにお入りくださいませ。わたくしが夢を垣間見て差し上げましょう。」
 少女はそう言うと、中に招き入れた。・・扉が閉まる。
 神秘的な色彩に彩られたこの部屋の奥には、天井まで伸びる巨大な扉があった。
 「まぁ、貴方様は望月村に御呼ばれですわ・・。」
 “望月村?”
 「はい。数百年前に世界から消えた村。今やどこに掻き消えたのか分からなくなっておりましたが・・まさか夢の世界へ行っているなんて・・。」
 “それで、望月村って・・?”
 「小さな村で御座いますわ。山奥にひっそりと構えていた村。けれどもその村には朝が来ないのです。見えるは闇夜と青い月、そしてBlue Butterfly。」
 “Blue Butterfly・・・”
 「何でも村には屋敷が三つありそれぞれ蕪木家、楠木家、立木家が所有しており、あわせて三木家と呼ばれておりました。」
 少女がにっこりと笑う。
 「何故、朝が来ないのか貴方様にはお分かりになられますか?」
 首を横に振る・・。
 「望月村はなんでも禁断の儀式を行っていた村なんです。そう・・とても残酷な・・。」
 “・・・残酷な・・・?”
 「その詳細はご自分の目で確かめられてはいかがですか?夢への扉ならばいつでも開いて差し上げますよ。」
 そう言うと、少女は奥の棚から何かを取り出した。
 テーブルの上に置く・・・。


 ・・青い蝶々“Blue Butterfly”

『Blue Butterfly』〜第一夜、蕪木家〜


 ☆プレイヤー選択  
 
  → 坂乾 透憶
  → 梶原 冬弥

 ☆モード
 
  → 学者モード ON →Hard Normal Easy
    戦闘モード OFF
  牧師モード OFF


□■□■□■ 【Start】 ■□■□■□


 □ scene T
 
 降り立ったそこは淡く青い世界。
 月がぬらぬらと村を青く染め上げ、青く光る蝶々がヒラリヒラリと舞い遊ぶ。
 その村の入り口には小さな地蔵が三つばかり鎮座して、村に入り来るものを待ち望む。
 透憶はすっとその入り口に近づいた。
 地蔵が僅かばかり動いたかと思うと、笑い出す。
 静まる世界に木霊する、地蔵の笑いは甲高く、震える月が涙する・・。
 『ようこそ、ようこそ、望月村へ。』
 『青一色に染め上げられた、光と影の世界へようこそ。』
 『歓迎いたす、この静まりきった望月村へようこそ。』
 カタリカタリと揺れ動く、地蔵の顔が微笑んで、月の光を反射する。
 『青一色で、光と影。光も青く、影も青い。』
 『ぬらぬらぬらぬら揺れる月さえほの青い。』
 『飛び舞う蝶々も、青い麟粉を撒き散らし。』
 『世界全体が青の中に落ち込みなさる。』
 『ぬらぬらぬらぬら』
 『ひらひらひらひら』
 透憶は、あまりに甲高い地蔵の声に耳を塞いだ。
 背後から冬弥が透憶の頭をぽんと叩く。
 「おい、俺だ。知ってるよな?いいから早くこの村に入れろや。」
 『冬弥がいるとは知らなんで。』
 『お主に任せば話は早い。』
 『この村意外と危険な村で。』
 『これに着替えなんど、大変で。』
 『入って直ぐにあの世へ旅立つ。』
 「・・つまり、服を着替えないと入って直ぐに死んじゃうって事・・?」
 『そうさそうさ、飲み込み早い。』
 『お嬢さんは、理解力が良い良い。』
 『ところで主の、名前は何だ?』
 「我輩の名前は坂乾透憶。」
 『そうかそうか、透憶、透憶。』
 『さぁさ、これにお着替えなされ。』
 『あっちの茂みでお着替えなされ。』
 地蔵はそう言うと、ガタリガタリと動き出した。その下からは、真っ白な浴衣が見えた。
 男物と女物・・。
 浴衣の生地が白く、帯まで白い。
 それが月明かりに照らされて、ぬらりぬらりと青く染まる。
 「これ・・真っ白な・・。」
 「死に装束みてぇじゃねぇか・・。」
 『それがここの客人たる者の正装で。』
 『それに着替えなんと、直ぐに消える。』
 『あの世の世界へこんにちは。』
 透憶は、仕方なく茂みに隠れるようにして着替えた。
 真っ白な浴衣を着て、真っ白な帯で締める。
 脱いだ洋服を持っていたバッグの中に仕舞う。
 『それを持ったままは入れぬは入れぬ。』
 『主のバッグは預かりおる。』
 『麗夜のところに届けておく。』
 ・・また、即死なのかも知れない。
 透憶はそう思うと、バッグを素直に地蔵に渡した。
 『代わりに主にはこれを授ける。』
 地蔵がガタゴトと動く。その下には、コバルトブルーの鍵があった。
 『蕪木の中、その色と同じ宝石のあるドアは、それで開く開く中に入れる。』
 「・・ありがとう。」
 透憶は礼を言うと、鍵を懐に仕舞った。
 「それじゃぁ、行くか。」
 冬弥の声に頷くと、村の入り口へと歩を進めた。
 『ヌラリヌラリと輝く月と。』
 『ヒラリヒラリと舞う蝶々。』
 『ようこそようこそ望月村。』
 背後で、地蔵が言った。
 しかし振り向きはしなかった・・・。


 ■ scene U

 青の花畑。
 しかしそれは全て蝶々だった。ユラユラ揺れるは蝶々の花。
 輝く麟粉撒き散らし、舞い揺れるは青の蝶々。
 「青一色の世界だな・・。月も青、蝶々も青・・。」
 「そうだね・・。」
 しばらく歩くと、先に見えるは大きな屋敷。白い壁に、月明かりが反射して青く揺れるは白の扉。
 翔子はその扉をすっと内側に押した。
 ゆっくりと開くそこには大きな玄関が構えている。
 『ようこそいらっしゃいまして。』
 声をかけてきたのは美しい女の人。
 漆黒の髪を後で束ね、微笑む姿は透けている。
 けれども彼女からは何の気も感じられない。
 そう、ただそこにいるのが役目の女性・・。
 『わたくしの名は浮夜(うきよ)と申します。お客人様方。本日はどのようなご用件で?』
 透憶は、持っていたコバルトの鍵を浮夜の前にすっと出した。
 浮夜はそれを見ると、全て心得たかのように微笑んだ。
 玄関には三つの扉がある。
 右の扉、真ん中の扉、左の扉・・。
 浮夜は右の扉を指差すと、懐から小さな鍵を取り出した。
 それは夜のように暗く、それでいて淡い水色に光っていた。
 『どうぞ、これを持って行って下さいまし。きっと何かのお役に立つことでしょう。』
 透憶は短く礼を言うと、右の扉に歩んだ。
 鍵穴の上には、持っている鍵と同じ宝石がはめ込まれている。ゆっくりと鍵穴にすべりこませる・・。

    カチャリ

 小さな音と共に、錠の外れる音がする。
 ノブを回し、すっと内側に押す・・。
 『行ってらっしゃいまし。』
 浮夜の言葉を背後に聞きながら、透憶はドアをパタリと閉めた。


 開いた先は、長い廊下。
 廊下の左右には5つの扉。
 右側5つにに左も5つ。左右対称にならぶドアドアドア・・。
 「なんだこりゃぁ・・。」
 冬弥が思わず呟きを漏らす。
 「こんなに部屋数があるなんてね・・。」
 透憶は、すっと来た扉を振り返った。
 ・・そこに扉は無かった。跡形も・・。
 「・・タダでは帰れねぇって事か・・。」
 「とりあえず・・。ねぇ、ここはなんなのかな・・?」
 透憶はそう言うと、コバルトの鍵を取り出した。
 (これはこれは・・貴方は私の声が聞こえるのですか?)
 「うん、分るよ。・・教えて欲しいんだ。儀式の事とか・・。」
 (儀式ですか・・それは私にもよく分りません。)
 「そっか・・。」
 (私はただの鍵です。部屋と部屋とを繋ぐもの・・。ですから・・知りたい事があるのでしたら鏡に訪ねなさい。鏡ならばいろいろなものを映し、知っていますでしょうから・・。)
 「分った。ありがとう。」
 透憶は礼を言うと鍵を袖元に滑り込ませた。
 「・・あんた・・透億っつったか・・?ものと会話が出来んのか?」
 「え・・?そうだけど・・。」
 一瞬だけ透憶の心に嫌な思い出が掠める・・。
 「・・なんか良いな。」
 「・・え・・?」
 「チッセー世界が広がんじゃん。良いよな、そー言うの。」
 冬弥はそうとだけ言うと、透憶の頭を軽く叩いた。
 「この辛気クセー村で、あんたの能力、期待してんぜ?」
 「・・分った・・。」
 透憶は頷くと、左右に並ぶ扉を一つ一つ見ていく・・。
 よくよく見ると、扉には番号がついている。
 右の手前から1,2,3,4,5。左の手前から6,7,8,9,10。
 透憶はとりあえず1の扉から調べた。

 1の扉にはコバルトの宝石がはめ込まれている。
 2の扉は扉が破壊されてしまっている。・・コレでは開かない。
 3の扉にはコバルトの宝石がはめ込まれている。
 4の扉には“双子人魚のレリーフ”が飾られている。
 5の扉には“水のレリーフ”が飾られている。
 6の扉には“海のレリーフ”が飾られている。
 7の扉にはドアノブが無い。
 8の扉には“空のレリーフ”が飾られている。
 9の扉には“双子人魚のレリーフ”が飾られている。
 10の扉にはドアノブが無い。

 「へぇ〜。コバルトの鍵では入れるのは1か3ってワケか。で、どっちから行くんだ?」
 透憶は少しばかり考えた後で、1の扉に鍵を差し込んだ。
 カチャリと錠の外れる音がして、扉が自動的に内側に開く・・。


 開いたそこは畳と障子の間。
 月明かりが障子越しに部屋の中を染め上げる。
 まるで水中・・。
 ふっと、透憶の目に赤いものが飛び込んできた。
 点々と、畳につく赤い点・・。
 血だ・・。
 「これは・・。」
 「誰かが怪我しているか・・それとも・・。」
 透憶は、その後を追って行った。
 点々と続く赤は目に痛く、長い廊下にポツリと続く・・。
 追った先は廊下の終着点だった。
 壁にかけられている掛け軸に、血で書かれるは『同じ年』の文字・・。
 その下で蹲る少女。翔子と同じ真っ白な浴衣・・それが深紅に染まっている。
 透憶はそっと、呼吸と脈を取った。・・事切れている。
 「よく見りゃぁ、心臓だな・・。」
 冬弥が少女の身体を起こしながら言う。
 小さな少女・・年の頃は7つか8つ。
 その掌から、チリリと1つ鈴が零れ落ちた。
 透憶はそれを拾い上げると、1回だけチリリとならした。
 すると背後で・・

 “ニャー・・”

 と猫が鳴いた。
 透憶が振り返った。そこにはプルーの猫。
 瞳だけが黄色く輝いている。
 「おいおい、猫かよ・・。しっかしよぉ、こいつどっから入ってきたんだ・・?」
 ・・どっから入ってきたのか・・?
 障子はピタリと閉まり、どこにも隙間は無い。入ってきた扉もきちんと閉まっている。
 猫がもう一声鳴いた。
 その首にも、同じ鈴がついている。
 猫は鈴を鳴らすように首を振った。
 すると、透憶の背後で何かが落下する音がした。
 そちらに振り返る。・・掛け軸だ。
 掛け軸が落ちている。掛け軸のかかっていたところには小さな棚があった。
 一輪挿しの花瓶には白い可憐な花が咲いている。その隣には・・鍵。
 透憶は猫の方を振り返った。
 しかし、そこに猫はいなかった・・。
 しばらく部屋の中を探してみたが、どこにも猫の姿は無かった。
 透憶は気を取り直して棚にある鍵をとった。
 鍵には“水”が描かれている・・。

 『水の鍵』を入手。

 「水の鍵・・か。っつーことは5の部屋がそれで開くな。」
 「そうだね。」
 透憶はそれを袖に入れようとした・・その時、挿してあった花がボトリと落ちた。
 花は少女の上に落ち、白い花弁を赤く染め上げる・・。
 残った茎を見てみる。そこは・・カッターか何かで切ったかのような切り口だった・・。
 「これは・・?」
 「さぁな。ただ落ちた・・ってわけじゃねぇな。なんかで切られた様な・・。」
 透憶はしばらくそれを見つめた。そして・・懐からあるものを取り出した。
 四角いもの・・それは・・。
 「カメラ・・??」
 「そう。過去を写すカメラなんだ。我輩が作ったんだよ。」
 透憶は冬弥にそう説明すると、部屋の中をカメラにおさめた。
 直ぐにポラロイド写真が吐き出される・・・。
 冬弥がそれを取り、パタパタと振る。
 徐々に出てくる写真を透憶に手渡すと、ついと部屋の奥へと歩んで行った。
 「・・これは・・?」
 そこに映し出されているものは、蝶々だった。真っ青な蝶々が一面にびっしりと・・。
 「ねぇ、この部屋で昔何があったのかな・・?」
 そう透憶が語りかけたのは小さな壺だった。
 部屋の壁際に取り付けられている小さな棚の上に置かれた小さな壺・・。
 (古の時、この部屋は蝶々の部屋として使われた。儀式によって染まる前の不完全な蝶々を閉まっておく部屋。)
 「不完全な蝶々って・・?」
 (富をもたらす事のない、ただの蝶々。この村に来た魂が残した言葉。Blue Butterflyの名を持つ蝶々。)
 壺はそう言うと、カタカタと笑い出した。
 カタカタクスクス・・・。
 透憶は一応小さくお礼を言った後で、その場を後にした・・・。


 水色の鍵を持って、透憶は5の部屋の前に立った。
 その姿を“水のレリーフ”が静かに見つめる。
 透憶はそっと鍵穴に鍵を差し込んだ・・錠の落ちる音と共に、扉がすっと開いた。
 入った中は小さな書斎部屋のようだった。
 木で出来た机がぽつんと置いてある。
 透憶は引き出しに手をかけた・・。
 ・・開かない。
 どうやら鍵がかかっているようだ。
 小さな鍵穴は、今もっているコバルトの鍵でも、水の鍵でも開きそうにない。
 ・・そうだ。
 透憶はふと思い出すと、懐を漁った。
 浮夜から貰った“小さな夜の鍵”・・。鍵穴は丁度あのくらいだ。
 透憶は鍵を取り出すと、鍵穴に差し込んだ。
 鍵穴は難なく鍵を飲み込むと、錠が落ちた。
 透憶は引き出しをスライドさせた・・。
 中に入っていたのは表紙に青い鳥が飛んでいる手帳。それと小さなメモ、そして鍵だった。
 鍵には“空”が描かれている・・。

 『空の鍵』を入手。

 今度は手帳を手に取った。
 薄い手帳はどうやら日記のようだった。一日一日が、丁寧に記されている。 
 と、途中でプツリと文章が途切れた。
 代わりに赤いペンで殴り書きがしてあった。

 “我が子の命、富へと変えん。一つ幼子、あられよ”

 「一体何の事だろう・・?」
 「さぁな。だが・・良い事が書いてあるってわけじゃねぇのは確かだな。」
 子供の命を富へと変える・・?なんだか恐ろしい事だ。けれど、意味は分からない。
 一つ幼子、あられ・・?“あられ”が子供の名前なのだろうか?
 透憶は手帳のその部分だけをちぎって懐に入れた。
 『青い鳥の手帳のメモ』を入手。
 透憶は、最後に残った小さなメモを手に取った。

 “生み出すは望月の“赤” 真紅の富よ・・。”

 望月の赤・・?真紅の富・・?
 「まったわっけわかんねぇ・・。」
 「さっきのメモの富というのは、この富の事なのかも知れないね・・。」
 「けどよ、意味が分かんねぇじゃねぇか・・。」
 けれど・・何故だか重要な文章な気がする。 
 透憶はそれも懐に納めた。
 『Fのメモ』を入手。
 他にはもう何も無い。
 「こんにちは・・ここではこんばんはかな・・?」
 透憶はそう言って微笑むと、気の机に話しかけた。
 (ここではそんな挨拶ですらもないよ、お嬢ちゃん。)
 「そうなんだ・・?」
 (ここには朝も昼もないからね。夜ですらも、毎時毎時があの調子だとない。区切りがない世界には、区切りごとの挨拶はいらない。)
 「そうだね。それじゃぁ、ここではなんて言えば良いの?」
 (・・・Blue Butterfly・・。)
 「え・・?」
 (最初の魂が言った言葉だよ。それ以来ここではそう言う事によって存在を確かめ合う。)
 「Blue Butterfly・・・?それが、挨拶なの・・?」
 (正確には違うな。存在を確かめ合う時に使う言葉。挨拶でもなんでもない。ただ、確かめ合う時の言葉・・・。)
 「・・机さん・・?」
 (さぁ、蝶に気付かれる前にこの部屋から出るんだ。さぁさぁ、あの忌まわしい儀式が行われる前に・・さぁさぁ・・。)
 「机さん・・?机さん・・??」
 机はそれ以上は何も答えてくれなかった。
 「・・それじゃぁ、また・・。」
 透憶はもう一度だけ部屋の中を見渡すと、背を向けた・・。


 透憶は空の鍵を持って8の部屋の前に来ていた。
 扉にかかる“空のレリーフ”を確認した後で、鍵穴に差し込む。
 錠の落ちる音がして、ドアが自動でスライドする。
 開いた先は小さな庭園だった。 
 小さな池に、小さな花壇。それから盆栽を置いてある小さな棚。
 池の脇にある獅子脅しがカツリ、カツリと音を立てる。
 部屋中に湿った水の匂いが充満している。
 透憶はつと、池に近寄った。
 池の水は清らかで、底が見える・・。
 「えっ・・!!」
 透憶は思わず声を上げた。
 ユラリユラリ、水面に浮かぶは白い影。
 真っ白な着物を着た男の子が一人、池の底で眠っている。
 水面に影が揺れる・・ユラリ、ユラリ・・。
 「こんどは水の中・・。」
 冬弥の呟きを聞く。
 透憶は思わず池から離れた。
 少し離れれば、底は見えなくなる。
 と、足元に何か文字の様なものが見えた。しゃがみこんで確認する・・。

 『の道を』

 ・・何の事だかさっぱり分からない・・。
 冬弥が池に近づいて、男の子の身体を引っ張り上げる。
 軽々と持つと、砂利の上に寝かせる。
 なにか・・何かかけるものでも・・。
 そう思い、部屋の中へと戻ろうとした透憶に冬弥が声をかける。
 「おい、透憶。こりゃぁ水死じゃねぇ。」
 「・・どういう事なの・・?」
 「凍死だ。このガキの身体もそうだが、池の水があり得ねぇくれぇに冷てぇ。凍ってねぇのが不思議なくれぇだ・・。」
 凍死・・。池の中で・・?
 あどけない・・男の子の顔は10か11くらいだった。
 ふと、あの鈴の音が一つ鳴った。
 チリリと、一つ・・。
 振り返る先には、あの猫がいた。青い蝶々を銜えた猫・・。
 その隣には、いつの間にか真っ白な着物が置かれていた。着物に、月が反射して青く青く染め上げる・・。
 つまり、これを男の子の上にかぶせろと言うことなのだろうか・・?
 透憶は猫の方に歩み寄った。
 猫はするりとその横を抜けると、男の子の上に蝶々を乗せた。
 蝶々は動かない。
 透憶は白い着物を拾うと、パラリと広げた。
 真っ白な着物が目に痛い・・。透憶はそれを蝶々を乗せた男の子の上にかぶせた。
 どうやら蝶々は死んでしまっているらしい。ピクリとも動く気配は見られない。
 「また・・この猫か・・。」
 「そうだね。不思議な猫・・。」
 透憶はそっと手を合わせて、男の子に祈った。
 猫も、男の子に擦り寄って二度三度声をあげた。
 「ねぇ、猫さんはここで何をしてるの?」
 「おいおい、猫と会話かよ・・。」
 そう言う冬弥の言葉をよそに、透憶の質問に猫は一つだけ鳴いた。
 まるで言葉が分かっているかの様子に、透憶は目を丸くした。
 「禁断の儀式ってなんなのかな?」
 『ニャーン』
 「この子達は、どうして亡くなっているの?」
 『ニャーン』
 「どうしてここでは月が青いの?」
 『ニャーン』
 「・・っつーか、ニャーンしか言わねぇしな。」
 「・・そうだね。」
 透憶は立ち上がった。
 と、猫が庭の奥の方へ駆けて行った。首の鈴がチリリチリリと音を上げる。
 そして、透憶のほうを振り返ると一度だけ鳴いた。
 サヨナラの挨拶なのだろうか?
 透憶はわずかに手を振った。そして・・猫は庭の奥へと駆けて行った。
 その後姿を見つめた後で、透憶はカメラを取り出した。
 池を・・写す・・。
 「おい、なんで池なんか・・?」
 「なんかね、ちょっと・・気になるんだ・・。」
 透憶は写真を表に返した。
 浮かび上がる写真・・池の側に佇む1人の少女。
 白い着物が月に青く染め上げられる。その右手に持った刀の刃も、青白く輝く。
 ヌラリと光る血と共に・・・。
 「これは・・あの夢の中で見た子・・??」
 後姿だけの少女。髪がダラリと地面に垂れている。
 よく見ると、少女の立っている周りの地面にも赤い血が点々と続いている。
 「・・これが、儀式なんじゃねぇのか?」
 「でも、一体何の・・?」
 「さぁ、そこまでは分らんねぇよ。」
 冬弥はそう言うと、写真に触れた。・・すると、写真の中の少女が僅かにこちらを振り向いた気がした。
 その赤い唇が、僅かに微笑んだような・・・。


 □ scene V

 透憶と冬弥は庭を後にした。
 「とりあえず、次の部屋に進むか。次は・・。」
 透憶が3の部屋の前で歩を止めた。
 扉にはコバルトの宝石がはめ込まれている。コバルトの鍵を取り出し、そっと鍵穴に差込・・錠を落とす。

 自動で開いた先は、小さな小部屋だった。
 雛壇の上に人形が飾られている・・。
 4段の一番上には白い着物を着た美しい女の子のお人形が3対すまして座っている。
 2段目には3人の少女の人形が飾られている。一番左のお人形だけ、赤いインクで染め上げられて後に倒れている・・。
 3段目には3人の女性の人形が飾られている。これも、一番左のお人形だけ、赤インクで染め上げられて倒れている。
 一番下の段には3人の男の子の人形が飾られている。3体のうち真ん中の1対以外は赤インクで染め上げられて倒れている。
 「・・なんだこりゃぁ・・。」
 「さぁ・・。何か意味でもあるのかな?」
 透憶はそう呟くと、雛壇の前に置かれている鏡台に近づいた。
 豪華な縁の大きな鏡台は雛壇を写しており、その前に立っている透憶と冬弥も仲良くフレームの中に収める。
 鏡台の引き出しにも、鍵がかかっている。鍵穴は、小さい。
 透憶は小さな夜の鍵を取り出すと、鍵穴に差し込んで錠を落とした。
 中には鍵が1つだけ入っていた。
 それを手に取る・・鍵には“水”が描かれている。

 『水の鍵』を入手。

 透憶は引き出しをしまうと、鏡を覗き込んだ。
 雛壇の上に座る12体の人形のうち5体が赤インクで染め上げられて・・。
 「あれ・・?」
 透憶はじっと鏡を見つめた。
 確かさっきは4体だったはずだ・・。2体染まっているのは一番下の段だけで・・。
 しかし、いつの間にか2段目の真ん中の人形が赤く染まって立っていた。
 透憶は振り向いた。

 『コトリ・・』

 音を立てて後に倒れた人形は、確かにさっきまで他の人形と同じく立っていたものだった。
 「ひとりでに・・赤く染まって倒れた・・?」
 呟く透憶の顔を、まだ立っている7体の人形がじっと見つめる・・。
 「あー・・マジックでぇす・・。ってか・・?」
 「冬弥さん、無理に盛り上げようとしなくても大丈夫だから。・・それより・・鍵さんが言ってたのって、この鏡台の事かな・・?」
 「・・さぁな・・ってか、俺には聞こえてなかったしなぁ。とりあえず、語りかけてみれば?」
 「えーっと、こんにちは、鏡さん。こんばんわ・・かな・・?」
 しかし鏡は沈黙を守っている。
 「・・あれ・・?」
 「なんだ、だんまりか?」
 「もしもし?鏡さん・・?」
 依然黙秘を続ける鏡は、ただ透憶と冬弥の姿を映し出している。
 「・・Blue Butterfly・・?」
 (Blue Butterfly・・主は・・その言葉を知っておる者・・贄か蝶か魂か・・その声、蝶にはあらず。贄にもあらず・・然るに・・魂・・。)
 「鏡さん・・?それはなんなのかな・・?」
 (儀式の主軸の者達よ。そうか・・主は外の者よの・・?あの者と同じ。外の者・・。さぁさ、悪いことは言わない。はやくここから出るのじゃ。)
 「でも、我輩はこの事を調べに来て・・。」
 (今宵は良い。第二夜も良い。しかし・・第三夜だけは来てはならぬ。あの・・忌まわしい儀式・・。さぁさ、帰りなされ。早くココから、この部屋から・・。)
 「おい、透憶・・出るぞ!」
 冬弥は切羽詰った声でそう言うと、透憶の腕を掴んだ。
 「どうしたの・・?」
 「アレを見ろ!」
 指差す先、小さな窓にびっしりと張り付くは青の蝶々・・。
 硝子に段々と日々が入る様は、さながら川の形成のよう。
 透憶は出る間際に写真を一枚だけ撮ると、ドアを閉めた。
 

 「なんだってあんな・・蝶の力が強えーんだよ!信じらんねー・・!!」
 「・・とりあえず、先に進もう。」
 透憶はそう言うと、6の部屋の前で止まった。
 水のレリーフの飾られてある扉に、水の鍵を差込み・・錠を落とす。
 扉が自動で開いた先・・そこは何故か水浸しになっていた。
 水浸しの畳の上に、写真がばら撒かれている・・。
 「おい、随分汚ねぇ部屋だな・・。」
 冬弥はそう言うと、顔をしかめた。
 透憶は扉の直ぐ近くにあった一枚を手に取った。
 写っているのは白い着物の女の子・・。
 「この子・・。」
 白い着物、長く伸びた漆黒の髪、着物と同じくらいに白い肌、愁いを帯びた琥珀の瞳・・。
 「夢の子・・?」
 到底別人だとは思えなかった。
 今にもその真っ赤な唇からあの凛と通った声が聞こえてきそうだった・・。

 『Blue Butterfly』と・・。

 「おい透憶、これ・・。」
 冬弥が白い紙を透憶に差し出す。
 透憶は少女の写真を懐にしまうと、それを手に取った。
 『少女の写真』を入手。
 四角く折りたたまれた紙を、開く・・。
 手帳か何かから引きちぎったような紙に、繊細な文字が並んでいる。

  一つ男子は氷となり
  二つ男子は火となり
  三つ男子は形となる

 またもや、謎の文面・・。
 「なんか、まどろっこしい内容だな・・。しかも意味わかんねぇし。」
 冬弥の呟きに、透憶は小さく頷くとそれを懐に閉まった。
 『Cのメモ』を入手。
 「あれ・・。」
 透憶は水浸しの中にあるものを見つけた。
 写真の中に沈むそれを拾い上げる・・。
 双子の人魚が描かれた鍵・・。
 
 『双子人魚の鍵』を入手。

 「ってー事は、4か9に入れるつー事か。」
 「そうだね・・。4と9で最後だね。」
 「まぁ、わけわかんねぇ所だっつーのはよぉ〜っく分かったな。んで、どっちから行く?いきなしボス戦っつーのはなしな。」
 「そうだね・・。」
 「どうせだったら、9から行こうぜ。丁度同じ並び沿いだし。」
 透憶は頷くと、水浸しの部屋を後にした・・。


 歩を止めたのは9の部屋の前。
 双子人魚のレリーフがそっと冬弥と透憶を見下ろしている・・。
 透憶は双子人魚の鍵を鍵穴に差し込むと、錠を・・。
 「あれ・・?」
 透憶は首をひねった。
 確かに、鍵はすっと中に入るし・・回る。けれども錠が落ちる気配は無い。
 数回カチャリカチャリとやってみるものの、鍵は回らない。
 「4から入れっつー事か・・。」
 「なにか罠が無ければ良いんだけどね。」
 「いや、でもさ・・これで4に入った途端に戦闘とかだったら、マジ勘弁だよな・・。」
 冬弥はそう言うと、盛大なため息をついた。
 透憶がクルリと身体をひねり、4の部屋に鍵を差し込む。
 錠は何の抵抗も無く落ち、扉が自動でスライドする・・。

 中は西欧風の小さな小部屋だった。
 それまでの日本風の畳ではなく、木の床だ。アンティークチェアーが中央に置かれ、その上に白い着物を着た人が座っている。
 「おい、あの写真のヤツじゃねぇか?」
 ・・確かに、後姿は似ていた。長い黒髪も、袖から見える白い肌も・・。
 「すみません・・。」
 透憶は小さく呼びかけた。・・反応は無い。
 もしかしたら・・そう思い、ツカツカと少女の人のほうに歩み寄るとその肩を叩いた。
 「すみま・・。」
 グラリ。身体がが傾いてアンティークチェアーから床に投げ出された。
 長い髪の毛が、バサリと床に広がる・・。
 「えっ・・。」
 透憶は咄嗟に人形の肩を掴んでひっくり返した。
 綺麗な硝子の瞳・・人形だ。それも、あの写真の少女そっくりの・・。
 人形の手から、何かが落ちた。白い紙だ。
 それを拾い上げて、広げる・・。

  一つ木は子を
  二つ木は華を
  三つ木は胡を

 「だぁ・・。またわっけわかんねぇ。っつーか、今までのよりも分からなさが飛躍的にグレードアップしてねぇか・・!?」
 「そうね。でも、これも何か関係が・・。」
 そう言って立ち上がった透憶の懐から、小さな鈴が落ちた。
 一番最初に会った少女が持っていた鈴だ・・。
 鈴は床に落ちると、チリリと可憐な音を上げた。
 すると、部屋のあちらこちらから無数の蝶が舞い上がった。
 壁からも、椅子からも、人形からも、天井からも、床からも・・!!
 無数の蝶々が舞い上がり、扉へと一直線に突進していく・・。
 いつの間にか扉が開き、向こう側・・9の扉も大きく開かれている。
 「なんなんだよ・・これは・・。」
 ヒラリヒラリと舞い踊る蝶々・・・その数は、百か千か・・。
 それが一瞬のうちに向かいの部屋に吸い込まれ、いなくなった。扉がパタリと閉じる・・。
 部屋には何もかもがなくなっていた。
 人形も、椅子も・・。
 「嘘だろ、全部蝶々で出来てたとでも言う気かよ・・・。」
 冬弥が信じられないと言うように、何もかもが無くなった部屋を見つめて言う。
 「つまり・・向かいの部屋に入れって事だよね・・。」
 透憶は落ちた鈴を拾った。
 それを・・鳴らさないようにそっと、懐に入れる・・。
 今度子の鈴が鳴ってしまったら・・自分達も蝶になってあの部屋に飛んでいってしまいそうだったから・・。
 「行こっか・・。」
 透憶はそう言うと、冬弥と共に向かいの部屋・・9の部屋に入った。



 ■ scene W


 かぐわしい、香の香りと黄色い灯り。
 それに映し出されるは青の蝶々。
 そして・・白い着物を着た妖艶なる少女・・。
 「君、夢に出てきた・・。」
 蝶々を人差し指に乗せながら少女が振り向いた。黄色い灯りに照らされて、ゾッとするほど幻想的な表情。
 「これはこれは、お客人方。いかがなされた?」
 可憐な声とは裏腹に、口調は力強かった。その瞳には、色が宿ってない。
 「君、我輩の夢に出てきた人だね・・・?」
 「・・夢?私はここから出られない。この蝶の檻の中、儀式の日までは囚われの身。外に出ようものならば、すぐに蝶が飛び捕らえる。」
 つまり、この少女はあの夢の中の少女ではないと言うことだろうか?
 「それじゃぁ、夢の中に出てきた女の子は・・。」
 「三木家の富・・。胡ならばあるやも知れぬ。外に助けを呼んで、なんとかと思っていたやも知れぬ。」
 富・・?胡・・?何のことだろうか・・?
 「それで・・Blue Butterflyって言うのは・・。」
 少女はニッコリと笑って右手を顔の前に掲げた。
 その指先には、一匹の青い蝶々は止まっていた。
 「Blue Butterfly・・青の蝶々・・。」
 少女は、ゆっくりと指先から蝶々を飛ばせた。
 「Blue Butterfly・・。ここを訪れた外の者が残して言った名前・・。儀式の、最初の犠牲者・・。」
 少女は、悲しそうに俯く。その仕草の全てが可憐で幻想的で・・人形のように艶かしかった。
 「青から赤へ移る時。蝶々が飛び舞い空を染め上げる。当主達は染まった剣を舞い回し、富と権力の喝采を浴びる・・。」
 少女はそう言うと、スっと立ち上がった。
 床に置いてある扇子を拾い上げると、舞い始めた。
 「胡は舞い華も舞い、子も舞い踊る。富と権力を確かなものにするために、遥か古より現に継がれる伝統の儀式。それは最も神聖で清らかで、死の神が光臨する儀式・・。」
 なんて幻想的な舞いなのだろうか。神秘的で妖艶で・・香の香りと合わさって眩暈がするほどに美しい・・。
 「贄の魂9つ。犠牲の魂18つ。そして蝶の魂3つ・・。」
 少女は、パチリと扇子を閉じた。
 はっと、現実に引き戻された気がして思わず少女の顔をマジマジと見つめる・・。
 「この儀式は確実に行われる。贄の魂はすでに5つになった・・。帰りあそばせ、客人方。時の止まったこの村に、古よりの伝統を捨てる機会は皆無。故に・・この村にもう来てはならぬ。例えそれが胡の導きであっても・・。」
 少女はそう言うと、二つ三つ手を叩いた。
 「この屋敷で・・亡くなってる子供がいたんだが・・。ありゃなんだ・・?」
 「贄の子らよ。その身体も、既に蝶の城へ運ばれた。」
 背後の扉が開いた。そこには、浮夜が三つ指をついて座っていた。
 「お客人方を御送りせよ。お帰りあそばれる。」
 「かしこまりました。」
 浮夜はすっと立ち上がると、手招きをした。
 「君・・名前、なんて言うの・・?」
 透憶は最後にそれだけが聞きたかった。
 「蝶子。蕪木、蝶子・・。」
 蝶・・・。
 扉が閉まる。
 その直前に、透憶はその姿をカメラにおさめた。
 そして・・その扉は消えた・・。

 
 □ last scene

 透憶と冬弥は村の入り口のところまで来ていた。
 富、胡、贄、犠牲、儀式・・そしてBlue Butterfly。
 何一つ分かることは無かった。唯一つ分かった事、それはこの村が幻想的なまでに艶かしく甘美な村だと言う事。
 そして、しっとりとした恐怖・・禁断の儀式が今もなお行われていると言う事・・。
 蝶子の顔が蘇る。瞳には色が宿っていなかった。けれども生きている・・。
 『透憶や透憶、どうだったか。』
 『望月村はどうじゃったか。』
 『その顔だと、まだまだなーんもわかっとらんの。』
 『この村は不思議が多い。』
 『そして全ては儀式へ繋がる。』
 『富と権力を手にすべく、三木家が行う大きな儀式。』
 『夢はあと二夜で終わる。』
 『夢はどんどん怖くなる。』
 『そしてどんどん妖艶になる。』
 『儀式まで、夢に飲まれる事なかれ。』
 『さぁさ、今日は起きなされ。』
 『青の色彩だけを抱いたまま、起きなされ。』
 地蔵達の声が、急に遠くなる。
 「じゃぁ、またな。」
 冬弥の声が揺らめきながら耳に届く。
 透憶は手に持っていた写真を見た。
 涙をこぼしながら、赤く染まった刀を振る少女・・。
 その瞳には悲しみの色以外はない。
 何で泣いているのか、なんでそんなに悲しそうなのか、なんで刀に血が・・・。
 段々と、透憶の意識は呑まれていった。

 地蔵達が言ったとおり、青の色彩だけを胸に抱きながら・・・。

  〈第一夜、終〉


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 ■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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 【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

  2290/坂乾 透憶/女性/17歳/女子高校生&???

  NPC/梶原 冬弥/男性/19歳/夢の世界の案内人兼ボディーガード

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 ■         ライター通信          ■
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 この度は『Blue Butterfly〜第一夜、蕪木〜』にご参加いただきありがとう御座いました!
 初めまして、ライターの宮瀬です。
 ゲームノベルと言う事で、ゲーム風にしてみました。・・そのまんまですが・・。
 青と赤、そして黒と白。その4つの色を基準に望月村は作られています。
 過去を写すカメラや、モノと会話が出来る能力。
 とても素敵な能力とアイテムを使わせていただきました。如何でしたでしょうか?
 第一夜と言う事で、儀式の取っ掛かりの部分なのですが・・謎が多い限りです。
 今回集められましたアイテム(メモや鈴など。鍵以外のアイテム)はそのまま次の夜にも引き継がれます。
 もし宜しければ、第二夜、第三夜もご参加ください。

 それでは、またお逢いいたしました時はよろしくお願いいたします。