コミュニティトップへ



■Blue Butterfly〜第一夜目、蕪木〜■

雨音響希
【3620】【神納・水晶】【フリーター】

 『Blue Butterfly』〜第一夜、蕪木〜

 夜見る夢、青い蝶々に連れて行かれる夢・・。
 行き着いた先には白い着物を着た女の子。とても悲しそうな瞳で呟くのはたった一言。

 『Blue Butterfly』

 それがなんなのか、どうしてこうも毎夜毎夜と夢の中に現れるのか・・きけずに消える。
 そして・・目が覚めると朝日。
 窓から降り注ぐ朝日は部屋を明るく染め上げる。

 □■

 東京下町、夢幻館。
 「そうなのですか・・・それは多分夢が貴方を呼んでいるのですよ。」 
 夢幻館の総支配人、沖坂奏都はそう言うと人のよさそうな笑みを浮かべた。
 「夢が貴方様を呼んでいると言う事は・・何かあると言う事ですね。どうですか?呼ばれる前にこちらから行ってはみませんか?」
 奏都の案内で、豪華な装飾のついた扉の前へとやってきた。奏都がそっと扉を開ける。
 「ようこそいらっしゃいました。あら?奏都様、今日はお客様もご一緒ですか?」
 「そうなんです。どうやらこの方が夢から呼ばれているようで・・。」
 「まぁ、それは大変ですね。さ、どうぞこちらにお入りくださいませ。わたくしが夢を垣間見て差し上げましょう。」
 少女はそう言うと、中に招き入れた。・・扉が閉まる。
 神秘的な色彩に彩られたこの部屋の奥には、天井まで伸びる巨大な扉があった。
 「まぁ、貴方様は望月村に御呼ばれですわ・・。」
 “望月村?”
 「はい。数百年前に世界から消えた村。今やどこに掻き消えたのか分からなくなっておりましたが・・まさか夢の世界へ行っているなんて・・。」
 “それで、望月村って・・?”
 「小さな村で御座いますわ。山奥にひっそりと構えていた村。けれどもその村には朝が来ないのです。見えるは闇夜と青い月、そしてBlue Butterfly。」
 “Blue Butterfly・・・”
 「何でも村には屋敷が三つありそれぞれ蕪木家、楠木家、立木家が所有しており、あわせて三木家と呼ばれておりました。」
 少女がにっこりと笑う。
 「何故、朝が来ないのか貴方様にはお分かりになられますか?」
 首を横に振る・・。
 「望月村はなんでも禁断の儀式を行っていた村なんです。そう・・とても残酷な・・。」
 “・・・残酷な・・・?”
 「その詳細はご自分の目で確かめられてはいかがですか?夢への扉ならばいつでも開いて差し上げますよ。」
 そう言うと、少女は奥の棚から何かを取り出した。
 テーブルの上に置く・・・。


 ・・青い蝶々“Blue Butterfly”

『Blue Butterfly』〜第一夜、蕪木家〜


 ☆プレイヤー選択  
 
  → 神納 水晶

 ☆モード
  → 学者モード ON →Hard Normal Easy
  → 戦闘モード ON →Hard Noemal Easy
  牧師モード OFF


□■□■□■ 【Start】 ■□■□■□


 □ scene T
 
 降り立ったそこは淡く青い世界。
 月がぬらぬらと村を青く染め上げ、青く光る蝶々がヒラリヒラリと舞い遊ぶ。
 その村の入り口には小さな地蔵が三つばかり鎮座して、村に入り来るものを待ち望む。
 神納 水晶はすっとその入り口に近づいた。
 地蔵が僅かばかり動いたかと思うと、笑い出す。
 静まる世界に木霊する、地蔵の笑いは甲高く、震える月が涙する・・。
 『ようこそ、ようこそ、望月村へ。』
 『青一色に染め上げられた、光と影の世界へようこそ。』
 『歓迎いたす、この静まりきった望月村へようこそ。』
 カタリカタリと揺れ動く、地蔵の顔が微笑んで、月の光を反射する。
 『青一色で、光と影。光も青く、影も青い。』
 『ぬらぬらぬらぬら揺れる月さえほの青い。』
 『飛び舞う蝶々も、青い麟粉を撒き散らし。』
 『世界全体が青の中に落ち込みなさる。』
 『ぬらぬらぬらぬら』
 『ひらひらひらひら』
 水晶は、あまりに甲高い地蔵の声に耳を塞いだ。
 背後から冬弥が水晶の頭をぽんと叩く。
 「おい、俺だ。知ってるよな?いいから早くこの村に入れろや。」
 『冬弥がいるとは知らなんで。』
 『お主に任せば話は早い。』
 『この村意外と危険な村で。』
 『これに着替えなんど、大変で。』
 『入って直ぐにあの世へ旅立つ。』
 「・・つまり、服を着替えないと入って直ぐに死ぬって事か・・?」
 『そうさそうさ、飲み込み早い。』
 『お坊ちゃんは、理解力が良い良い。』
 『ところで主の、名前は何だ?』
 「俺の名前は神納 水晶。」
 『そうかそうか、水晶、水晶。』
 『さぁさ、これにお着替えなされ。』
 『あっちの茂みでお着替えなされ。』
 地蔵はそう言うと、ガタリガタリと動き出した。その下からは、真っ白な浴衣が見えた。
 男物・・。
 浴衣の生地が白く、帯まで白い。
 それが月明かりに照らされて、ぬらりぬらりと青く染まる。
 「これ・・真っ白な・・。」
 「死に装束みてぇじゃねぇか・・。」
 『それがここの客人たる者の正装で。』
 『それに着替えなんと、直ぐに消える。』
 『あの世の世界へこんにちは。』
 水晶は、仕方なく茂みに隠れるようにして着替えた。
 真っ白な浴衣を着て、真っ白な帯で締める。
 脱いだ洋服を持っていたバッグの中に仕舞う。
 『それを持ったままは入れぬは入れぬ。』
 『主のバッグは預かりおる。』
 『麗夜のところに届けておく。』
 ・・また、即死なのかも知れない。
 水晶はそう思うと、バッグを素直に地蔵に渡した。
 『代わりに主にはこれを授ける。』
 地蔵はそう言うと、またガタゴトと動いた。その下には、スカイブルーに輝く小さな短剣があった。
 水晶はそれを受け取ると、数回素振りをした。
 ・・悪くは無い。
 不思議と、手に馴染んで来る・・。
 『主にはこれも授ける。蕪木の中はいっぱい鍵だらけ。』
 また別の地蔵がガタゴトと動く。その下には、オーシャンブルーの鍵があった。
 『蕪木の中、その色と同じ硝子細工のあるドアは、それで開く開く中に入れる。』
 「・・さんきゅ・・。」
 水晶は礼を言うと、鍵を懐に仕舞った。
 「それじゃぁ、俺はここで待ってるから、行って来いよ。何かあったら直ぐに呼べよ?」
 「あぁ、わかった。」
 冬弥の声に頷くと、村の入り口へと歩を進めた。
 『ヌラリヌラリと輝く月と。』
 『ヒラリヒラリと舞う蝶々。』
 『ようこそようこそ望月村。』
 背後で、地蔵が言った。
 しかし振り向きはしなかった・・・。


 ■ scene U

 青の花畑。
 しかしそれは全て蝶々だった。ユラユラ揺れるは蝶々の花。
 輝く麟粉撒き散らし、舞い揺れるは青の蝶々。
 しばらく歩くと、先に見えるは大きな屋敷。白い壁に、月明かりが反射して青く揺れるは白の扉。
 水晶はその扉をすっと内側に押した。
 ゆっくりと開くそこには大きな玄関が構えている。
 『ようこそいらっしゃいまして。』
 声をかけてきたのは美しい女の人。
 漆黒の髪を後で束ね、微笑む姿は透けている。
 けれども彼女からは何の気も感じられない。
 そう、ただそこにいるのが役目の女性・・。
 『わたくしの名は浮夜(うきよ)と申します。お客人様方。本日はどのようなご用件で?』
 水晶は、持っていたオーシャンブルーの鍵を浮夜の前にすっと出した。
 浮夜はそれを見ると、全て心得たかのように微笑んだ。
 玄関には三つの扉がある。
 右の扉、真ん中の扉、左の扉・・。
 浮夜は左の扉を指差すと、懐から小さな鍵を取り出した。
 それは夜のように暗く、それでいて淡い水色に光っていた。
 『どうぞ、これを持って行って下さいまし。きっと何かのお役に立つことでしょう。』
 水晶は短く礼を言うと、右の扉に歩んだ。
 鍵穴の上には、持っている鍵と同じ硝子細工がはめ込まれている。ゆっくりと鍵穴にすべりこませる・・。

    カチャリ

 小さな音と共に、錠の外れる音がする。
 ノブを回し、すっと内側に押す・・。
 『行ってらっしゃいまし。』
 浮夜の言葉を背後に聞きながら、水晶はドアをパタリと閉めた。


 開いた先は、長い廊下。
 廊下の左右には5つの扉。
 右側5つにに左も5つ。左右対称にならぶドアドアドア・・。
 「なんだ・・これは・・・。」
 水晶は、すっと来た扉を振り返った。
 ・・そこに扉は無かった。跡形も・・。
 「・・タダでは帰れないって事か・・?・・・とりあえず、何処かの部屋に入ろう。」
 水晶はそう言うと、リオブルーの鍵を取り出した。
 一つ一つの扉を見ていく・・。
 よくよく見ると、扉には番号がついている。
 右の手前から1,2,3,4,5。左の手前から6,7,8,9,10。
 水晶はとりあえず1の扉から調べた。

 1の扉にはオーシャンブルーの硝子細工がはめ込まれている。
 2の扉は扉が破壊されてしまっている。・・コレでは開かない。
 3の扉にはオーシャンブルーの硝子細工がはめ込まれている。
 4の扉には“青い瞳の双子のレリーフ”が飾られている。
 5の扉には“青の魚のレリーフ”が飾られている。
 6の扉には“ブルームーンのレリーフ”が飾られている。
 7の扉にはドアノブが無い。
 8の扉には“桔梗のレリーフ”が飾られている。
 9の扉には“青い瞳の双子のレリーフ”が飾られている。
 10の扉にはドアノブが無い。

 「オーシャンブルーの鍵では入れるのは1か3か。どっちから行こうか・・・。」
 水晶は少しばかり考えた後で、1の扉に鍵を差し込んだ。
 カチャリと錠の外れる音がして、扉が自動的に内側に開く・・。


 開いたそこは畳と障子の間。
 月明かりが障子越しに部屋の中を染め上げる。
 まるで水中・・。
 ふっと、水晶の目に赤いものが飛び込んできた。
 点々と、畳につく赤い点・・。
 血だ・・。
 「これは・・?」
 水晶は、その後を追って行った。
 点々と続く赤は目に痛く、長い廊下にポツリと続く・・。
 追った先は廊下の終着点だった。
 壁にかけられている掛け軸に、血で書かれるは『同じ年』の文字・・。
 その下で蹲る少女。水晶と同じ真っ白な浴衣・・それが深紅に染まっている。
 水晶はそっと、呼吸と脈を取った。・・事切れている。
 よく見ると、心臓の辺りが赤黒く染まっている。
 小さな少女・・年の頃は7つか8つ。
 その掌から、チリリと1つ鈴が零れ落ちた。
 水晶はそれを拾い上げると、1回だけチリリとならした。
 すると背後で・・

 “ニャー・・”

 と猫が鳴いた。
 水晶は驚いて振り返った。そこにはプルーの猫。
 瞳だけが黄色く輝いている。
 ・・どっから入ってきたのか・・?
 障子はピタリと閉まり、どこにも隙間は無い。水晶が入ってきた扉もきちんと閉まっている。
 猫がもう一声鳴いた。
 その首にも、同じ鈴がついている。
 猫は鈴を鳴らすように首を振った。
 すると、水晶の背後で何かが落下する音がした。
 咄嗟にそちらに振り返る。・・掛け軸だ。
 掛け軸が落ちている。掛け軸のかかっていたところには小さな棚があった。
 一輪挿しの花瓶には白い可憐な花が咲いている。その隣には・・鍵。
 水晶は猫の方を振り返った。
 しかし、そこに猫はいなかった・・。
 しばらく部屋の中を探してみたが、どこにも猫の姿は無かった。
 水晶は気を取り直して棚にある鍵をとった。
 鍵には“青の魚”が描かれている・・。

 『青の魚の鍵』を入手。

 「青の魚の鍵・・か。」
 水晶はそれを袖に入れようとした・・その時、挿してあった花がボトリと落ちた。
 花は少女の上に落ち、白い花弁を赤く染め上げる・・。
 残った茎を見てみる。そこは・・カッターか何かで切ったかのような切り口だった・・。
 「これは・・・。」
 『貴方、だれ・・・?』
 切り口をマジマジと見つめている水晶の耳に、少女の声が聞こえてきた。
 水晶は咄嗟に声のした方を振り返った。
 真っ白な着物を着た、青白い少女・・・その瞳は赤く燃えている。
 水晶は畳の上に横たわること切れた少女を見つめた。同じ顔・・・いや、もっと年上か・・・?
 『貴方も、私を殺すの?また、胸を一突きするの・・・?いやよ・・いや・・もう死にたくない・・!!いやっ・・イヤー!!!!!』
 少女は絶叫する。何か大きな波動が水晶を後方へと飛ばす。
 “イヤ”“助けて”“お願い”“殺さないで”“怖い”
 うわ言のように繰り返される言葉は、段々と殺意を含んでいく。
 カタカタと震える肩は・・徐々に徐々に・・笑い声を伴う・・。
 『あはは、あはは!私ね、死んじゃったの!あはは!あのね、死んじゃったの〜!!』
 狂ったような笑う少女の瞳は赤く、殺意を含む。
 青く染まる町の中、ぽっと染まった炎があったならば・・それはきっと殺意の炎、殺意の瞳。
 『貴方綺麗ね〜。とっても綺麗。その髪も、その瞳も・・ねぇ、一緒に逝こう。ねぇ、ずっとここで儀式のたびに死のうよ・・一緒に・・・。』
 少女が襲い掛かる。
 水晶はそれを難なく避けると、左掌より日本刀を取り出した。
 ぬらりと障子越しに入り込む月明かりの世って染め上げられる刃は艶かしく、見入っていれば引き込まれてしまいそうなほどだった。
 漆黒の瞳が灰色へと変化する。段々と変化して行く水晶の様子を楽しむように、少女は見つめながらキャッキャと声を上げた。
 『貴方、本当に綺麗!瞳も黒くなって・・ふふ。本当に綺麗。殺しちゃうのがもったいないくらい!・・でも・・そうね・・死んでしまった方が、貴方は美しいかもしれないわ!』
 「・・我が主ごときに切られると思うな。滅びるのは我ではなく主の方・・!」
 水晶は軽く畳を蹴ると少女の方に刀を振りかざす。
 少女は難なくそれを避けると、刀の上にひょいと乗った。
 無論重さはない。しかし、その赤い瞳が水晶の灰色の瞳を間近に見つめる。
 『こぉわぁい〜!レディーは粗野に扱っちゃダメなのよぉ〜!・・そうねぇ・・今の貴方も素敵だけど・・さっきの貴方の方が私は好きね。その灰色の瞳は惜しいけど、こんなに凶暴じゃ、先が思いやられるもんね。』
 少女はそう言うと、ふわりと水晶に手をかざした。
 赤い粉がフラフラと彷徨い、水晶の身体に付着する。
 鈍い痛みを伴うそれは段々と水晶の意識を闇へと飲み込もうとする・・。
 『これはね、儀式の時に舞う蝶の麟粉よ。とぉっても強い毒になるの。でも大丈夫よ!コレくらいじゃ死なないから!貴方は私と一緒に逝くんだもの。儀式が終わるその時まで、貴方は私が監禁してあげる。』
 水晶は刀の先を畳に下ろした。
 片膝をつき、ダルそうな瞳を少女へと向ける。
 少女は軽やかに刃の上から飛んだ・・。
 『そんな瞳しないで。まだ死なないって言って・・・』
 クスクスと笑う少女の胴の部分に、青白い光が食い込む。
 風を切る短い音と共に少女の身体を割ったのは、他でもない水晶の刃だった。
 驚いたような瞳が水晶を見つめる。・・血は、出なかった・・。
 「我にそのような子供だましが通じると思うな。主の敗因は我の力を見くびった事。」
 『・・貴方、人じゃないでしょう・・?あれは人には絶対にきくはずなのに・・・。』
 少女はそう言うと、そっと瞳を閉じた。
 先ほどの水晶の行動は全て演技だった。
 少女を刃の上から下ろすためだけの、演技・・・。
 『・・・贄と魂は、三木家のため・・・。そして、蝶は村の富のため・・。』
 窓の外、揺れる青の色彩の向こうにヒラリと一羽の蝶々が舞い踊る。
 青の麟粉を撒き散らしながら、ヒラリユラリと踊るは小さな花蝶。
 『真紅の富よ、村のため。贄の血は地面に溶け込み、魂の血は空に溶け込む。蝶の血は村の繁栄と引き換えに月と蝶を濡らす・・・。』
 少女が水晶に少しだけ微笑んだ。
 切なさと諦めと・・僅かの希望を含んだ笑みだった。
 『赤の富に染まる前に・・・逃げて・・。』
 そう言った少女の瞳は白く濁っていた。
 もう殺意はない・・・。
 水晶はそう思うと、刀をしまった。
 『貴方は生きて・・。綺麗な瞳の男の子・・・。』
 穏やかな笑みを最後に、少女は畳の上から姿を消した。
 窓から入ってきた青の蝶々が舞い遊ぶ。
 水晶はしばらく部屋の中を飛び回る蝶々を見つめた。そして・・少女の遺体を僅かばかり見つめた後で、畳の部屋を後にした。


 青の魚の鍵を持って、水晶は5の部屋の前に立った。
 その姿を“青の魚レリーフ”が静かに見つめる。
 水晶はそっと鍵穴に鍵を差し込んだ・・錠の落ちる音と共に、扉がすっと開いた。
 入った中は小さな書斎部屋のようだった。
 木で出来た机がぽつんと置いてある。
 水晶は引き出しに手をかけた・・。
 ・・開かない。
 どうやら鍵がかかっているようだ。
 小さな鍵穴は、今もっているオーシャンブルーの鍵でも、青の魚の鍵でも開きそうにない。
 ・・そうだ。
 水晶はふと思い出すと、懐を漁った。
 浮夜から貰った“小さな夜の鍵”・・。鍵穴は丁度あのくらいだ。
 水晶は鍵を取り出すと、鍵穴に差し込んだ。
 鍵穴は難なく鍵を飲み込むと、錠が落ちた。
 水晶は引き出しをスライドさせた・・。
 中に入っていたのは表紙に水の挿絵がある手帳。それと小さなメモ、そして鍵だった。
 鍵には“桔梗”が描かれている・・。

 『桔梗の鍵』を入手。

 今度は手帳を手に取った。
 薄い手帳はどうやら日記のようだった。一日一日が、丁寧に記されている。 
 と、途中でプツリと文章が途切れた。
 代わりに赤いペンで殴り書きがしてあった。

 “我が子の命、富へと変えん。一つ幼子、あられよ”

 子供の命を富へと変える・・?もしかして、これが・・・。
 一つ幼子、あられ・・。
 これはもしかしてさっきの少女の事か・・・?
 水晶は少し考えた後で、手帳のその部分だけをちぎって懐に入れた。
 『水の手帳のメモ』を入手。
 水晶は、最後に残った小さなメモを手に取った。

 “生み出すは望月の“赤” 真紅の富よ・・。”

 望月の赤・・?真紅の富・・?
 先ほど少女が言っていた赤とは、この事なのか・・?
 分らない。けれど・・何故だか重要な文章な気がする。 
 水晶はそれも懐に納めた。
 『Fのメモ』を入手。
 他にはもう何も無い。
 水晶はもう一度だけ部屋の中を見渡すと、背を向けた・・。


 水晶は桔梗の鍵を持って8の部屋の前に来ていた。
 扉にかかる“桔梗のレリーフ”を確認した後で、鍵穴に差し込む。
 錠の落ちる音がして、ドアが自動でスライドする。
 開いた先は小さな庭園だった。 
 小さな池に、小さな花壇。それから盆栽を置いてある小さな棚。
 池の脇にある獅子脅しがカツリ、カツリと音を立てる。
 部屋中に湿った水の匂いが充満している。
 水晶はつと、池に近寄った。
 池の水は清らかで、底が見える・・。
 「なっ・・!!」
 水晶は思わず声を上げた。
 ユラリユラリ、水面に浮かぶは白い影。
 真っ白な着物を着た男の子が一人、池の底で眠っている。
 水面に影が揺れる・・ユラリ、ユラリ・・。
 水晶は思わず池から離れた。
 少し離れれば、底は見えなくなる。
 と、足元に何か文字の様なものが見えた。しゃがみこんで確認する・・。

 『の道を』

 ・・何の事だかさっぱり分からない・・。
 少し躊躇した後で、水晶は池の中に手を入れた・・冷たい。
 凍っていないのが不思議なくらいに・・。水晶は池の底で揺れる白い着物を引き上げた。
 冷たすぎる身体が痛ましい。軽い身体を、そっと砂利の上に寝かせる。
 水晶は男の子の顔を見た。
 あどけない表情・・歳は10か11だろうか・・?青い唇が、ある一つの考えにたどり着く。
 水死ではなく、凍死だ・・。しかも、池の中で・・・。
 でも、何故・・?
 ふと、あの鈴の音が一つ鳴った。
 チリリと、一つ・・。
 振り返る先には、あの猫がいた。青い蝶々を銜えた猫・・。
 その隣には、いつの間にか真っ白な着物が置かれていた。着物に、月が反射して青く青く染め上げる・・。
 つまり、これを男の子の上にかぶせろと言うことなのだろうか・・?
 水晶は猫の方に歩み寄った。
 猫はするりとその横を抜けると、男の子の上に蝶々を乗せた。
 蝶々は動かない。
 水晶は白い着物を拾うと、パラリと広げた。
 真っ白な着物が目に痛い・・。水晶はそれを蝶々を乗せた男の子の上にかぶせた。
 どうやら蝶々は死んでしまっているらしい。ピクリとも動く気配は見られない。
 猫が庭の奥の方へ駆けて行った。首の鈴がチリリチリリと音を上げる。
 そして、水晶のほうを振り返ると一度だけ鳴いた。
 サヨナラの挨拶なのだろうか?
 水晶は思わずわずかに手を振った。
 もう一度声を上げると、猫は庭の奥へと駆け出して行った・・・。
 『寒いよ・・。ねぇ、冷たいよ、暗いよ、寂しいよ・・。』
 背後から声が聞こえてきた。まだ高い感じのする少年の声・・。
 水晶は振り返った。少女の時と同じ、真っ赤な殺意をたたえた瞳をじっと水晶に向けている。
 『お兄さんはどうして生きているの?贄じゃないの・・?・・そうか、魂なんだね。だから・・。』
 少年はそう言うと、弱弱しく微笑んだ。
 『それじゃぁ、僕と同じだね・・。僕は薺(なずな)お兄さんは・・?』
 「神納 水晶・・。」
 『そうか、水晶お兄さん。お兄さんはどうしてココに来たの?この・・朝の来ない赤の富が支配する村に・・。』
 「夢で、呼ばれたんだ。」
 『呼ばれた・・!?一体誰が・・?この村からは誰も出られな・・あぁ、胡だ。胡なら、もしかしたらこの村から出られる・・。』
 「胡?それは一体・・。」
 『三木家の胡だよ。この村の赤の富の最高“蝶”・・ねぇ、この村には何で朝が来ないのか知ってる?』
 「いや・・知らない。何でだ・・?」
 『朝って、赤いんでしょう?明るいんでしょう?・・この村は明るい時は富の時だけで良いんだよ。だから・・この村はいつも青の夜しか来ないんだ。』
 薺はそう言うと、うっとりとした表情で空を眺めた。
 青い月がぬらぬらと地上を照らし染める。
 恍惚な笑みを浮かべる瞳は、何も見えてはいないかのように、鈍い光を発してる。
 『ねぇ、青の夜の世界・・気に入ってくれた?だったらさ、どうせ水晶お兄さんは魂なんだから一緒に逝こうよ。僕1人じゃ寂しいんだ。』
 薺はそう言うと、僅かに笑みをたたえた瞳を水晶に向けた。
 先ほどの少女同様・・明らかな殺意。
 それはきっと生きている者全てに向けられる殺意なのだろう・・!!
 水晶は左掌から刀を取り出そうとしたが、いつの間にか背後に回りこまれ、左手を捕らえられる。
 「なっ・・!」
 『だぁめだって、ワンパターンは。僕見てたんだ。あられが水晶お兄さんにちょっかい出したところ。』
 冷たい掌が水晶の手首を力を入れて握る。
 血が止まるのが分る。段々と、冷たいのか熱いのかですらも分らなくなってくる・・・。
 『そうだなぁ・・水晶お兄さんは僕の力で殺してあげる。』
 薺が微笑みながら水晶の手首を放した。
 そして・・・細い首に、その冷たい手の絡ませ・・・締め上げる・・!!
 尋常ではない力に、水晶は僅かに顔を歪ませた。
 依然左手に感覚はない。
 どうすれば・・・。
 そう思った時、ふと袖元に入れておいたスカイブルーの短剣を思い出した。
 地蔵達から貰った・・・。
 水晶は素早く袖元を漁ると、短剣を薺の背中につきたてた・・・。
 手の力が弱まり、水晶の口から大量の空気が入ってくる。
 薺を突き飛ばすと、水晶はむせながら新鮮な空気を吸った。
 『な・・なにこれ・・・。短剣・・?だってさっきはそんなの・・・。』
 「悪いが、こっちは別にワンパターンが好きって言うわけじゃないんでね。」
 水晶が黒色の瞳を薺に向ける。
 空から1匹の青い蝶々が薺の頭の上に舞い降りた。
 花の蜜を吸っているかのように、頭の上で数度羽を羽ばたかせる・・・。
 『・・・僕、もう行かなくちゃ・・。でもね水晶お兄さん。また次も、その次も・・この村に来るようなら・・きっと水晶お兄さんも僕達のようになるんだよ・・・。』
 薺はそう言うと、ふっと掻き消えた。
 その場に一つの言葉を残して・・・。
 『待ってるからね、水晶お兄さん・・・。』
 カツリと、獅子脅しだけが乾いた音を上げた。


 □ scene V


 水晶は再びあの廊下に引き返すと、3の部屋の前で歩を止めた。
 扉にはオーシャンブルーの硝子細工がはめ込まれている。オーシャンブルーの鍵を取り出し、そっと鍵穴に差込・・錠を落とす。

 自動で開いた先は、小さな小部屋だった。
 雛壇の上に人形が飾られている・・。
 4段の一番上には白い着物を着た美しい女の子のお人形が3対すまして座っている。
 2段目には3人の少女の人形が飾られている。一番左のお人形だけ、赤いインクで染め上げられて後に倒れている・・。
 3段目には3人の女性の人形が飾られている。これも、一番左のお人形だけ、赤インクで染め上げられて倒れている。
 一番下の段には3人の男の子の人形が飾られている。3体のうち真ん中の1対以外は赤インクで染め上げられて倒れている。
 「・・なんだ・・これは・・・?」
 水晶はそう呟くと、雛壇の前に置かれている鏡台に近づいた。
 豪華な縁の大きな鏡台は雛壇を写しており、その前に立っている水晶も仲良くフレームの中に収める。
 鏡台の引き出しにも、鍵がかかっている。鍵穴は、小さい。
 水晶は小さな夜の鍵を取り出すと、鍵穴に差し込んで錠を落とした。
 中には鍵が1つだけ入っていた。
 それを手に取る・・鍵には“ブルームーン”が描かれている。

 『ブルームーンの鍵』を入手。

 水晶は引き出しをしまうと、鏡を覗き込んだ。
 雛壇の上に座る12体の人形のうち5体が赤インクで染め上げられて・・。
 「え・・?」
 水晶はじっと鏡を見つめた。
 確かさっきは4体だったはずだ・・。2体染まっているのは一番下の段だけで・・。
 しかし、いつの間にか2段目の真ん中の人形が赤く染まって立っていた。
 水晶は振り向いた。

 『コトリ・・』

 音を立てて後に倒れた人形は、確かにさっきまで他の人形と同じく立っていたものだった。
 「ひとりでに・・赤く染まって倒れた・・?まさか・・。」
 呟く水晶の顔を、まだ立っている7体の人形がじっと見つめる・・。


 水晶は人形のある部屋を出ると、6の部屋の前で止まった。
 ブルームーンのレリーフの飾られてある扉に、ブルームーンの鍵を差込み・・錠を落とす。
 扉が自動で開いた先・・そこは何故か水浸しになっていた。
 水浸しの畳の上に、写真がばら撒かれている・・。
 「なんだ・・。」
 水晶は扉の直ぐ近くにあった一枚を手に取った。
 写っているのは白い着物の女の子・・。
 「この子・・。」
 白い着物、長く伸びた漆黒の髪、着物と同じくらいに白い肌、愁いを帯びた琥珀の瞳・・。
 「夢の子か・・?」
 到底別人だとは思えなかった。
 今にもその真っ赤な唇からあの凛と通った声が聞こえてきそうだった・・。

 『Blue Butterfly』と・・。

 「これは・・。」
 水晶はその中に浮かぶ一枚の紙を拾い上げた。
 少女の写真を懐にしまう。
 『少女の写真』を入手。
 四角く折りたたまれた紙を、開く・・。
 手帳か何かから引きちぎったような紙に、繊細な文字が並んでいる。

  一つ男子は氷となり
  二つ男子は火となり
  三つ男子は形となる

 またもや、謎の文面・・。
 「また意味不明な・・・。。」
 水晶は小さく呟くとそれを懐にしまった。
 『Cのメモ』を入手。
 「あれは・・。」
 水晶は水浸しの中にあるものを見つけた。
 写真の中に沈むそれを拾い上げる・・。
 青い瞳の双子が描かれた鍵・・。
 
 『青い瞳の双子の鍵』を入手。

 「これで4か9に入れるって事か・・。」
 水晶は小さく呟くと、水浸しの部屋を後にした・・。


 歩を止めたのは9の部屋の前。
 青い瞳の双子のレリーフがそっと水晶を見下ろしている・・。
 水晶は青い瞳の双子の鍵を鍵穴に差し込むと、錠を・・。
 「あれ・・?」
 水晶は首をひねった。
 確かに、鍵はすっと中に入るし・・回る。けれども錠が落ちる気配は無い。
 数回カチャリカチャリとやってみるものの、鍵は回らない。
 「4から入れって事か・・?」
 水晶はクルリと身体をひねると、4の部屋に鍵を差し込んだ。
 錠は何の抵抗も無く落ち、扉が自動でスライドする・・。

 中は西欧風の小さな小部屋だった。
 それまでの日本風の畳ではなく、木の床だ。アンティークチェアーが中央に置かれ、その上に白い着物を着た人が座っている。
 「あれは・・・?写真の・・?」
 ・・確かに、後姿は似ていた。長い黒髪も、袖から見える白い肌も・・。
 「なぁ、ちょっとききたい事があるんだけど・・。」
 水晶は小さく呼びかけた。・・反応は無い。
 もしかしたら・・そう思い、ツカツカと少女の人のほうに歩み寄るとその肩を叩いた。
 「なぁ・・。」
 グラリ。身体が傾いてアンティークチェアーから床に投げ出された。
 長い髪の毛が、バサリと床に広がる・・。
 「なっ・・。」
 水晶は咄嗟に人形の肩を掴んでひっくり返した。
 綺麗な硝子の瞳・・人形だ。それも、あの写真の少女そっくりの・・。
 人形の手から、何かが落ちた。白い紙だ。
 それを拾い上げて、広げる・・。

  一つ木は子を
  二つ木は華を
  三つ木は胡を

 「・・これも何か関係があるのか・・?」
 呟きながら立ち上がった水晶の懐から、小さな鈴が落ちた。
 一番最初に会った少女が持っていた鈴だ・・。
 鈴は床に落ちると、チリリと可憐な音を上げた。
 すると、部屋のあちらこちらから無数の蝶が舞い上がった。
 壁からも、椅子からも、人形からも、天井からも、床からも・・!!
 無数の蝶々が舞い上がり、扉へと一直線に突進していく・・。
 いつの間にか扉が開き、向こう側・・9の扉も大きく開かれている。
 「なんなんだ・・これは・・。」
 ヒラリヒラリと舞い踊る蝶々・・・その数は、百か千か・・。
 それが一瞬のうちに向かいの部屋に吸い込まれ、いなくなった。扉がパタリと閉じる・・。
 部屋には何もかもがなくなっていた。
 人形も、椅子も・・。
 「嘘だろ、全部蝶々で出来てたとでも言う気かよ・・・。」
 水晶が信じられないと言うように、何もかもが無くなった部屋を見つめて言う。
 しばらく何もなくなった部屋を見つめた後で、水晶は落ちた鈴を拾った。
 それを・・鳴らさないようにそっと、懐に入れる・・。
 今度この鈴が鳴ってしまったら・・自分達も蝶になってあの部屋に飛んでいってしまいそうだったから・・。
 

 ■ scene W

 
 かぐわしい、香の香りと黄色い灯り。
 それに映し出されるは青の蝶々。
 そして・・白い着物を着た妖艶なる少女・・。
 「なぁ、あんた・・夢に出てきた・・。」
 蝶々を人差し指に乗せながら少女が振り向いた。黄色い灯りに照らされて、ゾッとするほど幻想的な表情。
 「これはこれは、お客人。いかがなされた?」
 可憐な声とは裏腹に、口調は力強かった。その瞳には、色が宿ってない。
 「俺の夢に出てきた子か・・・?」
 「・・夢?私はここから出られない。この蝶の檻の中、儀式の日までは囚われの身。外に出ようものならば、すぐに蝶が飛び捕らえる。」
 つまり、この少女はあの夢の中の少女ではないと言うことだろうか?
 「それじゃぁ、夢の中に出てきた少女は・・。」
 「三木家の富・・。胡ならばあるやも知れぬ。外に助けを呼んで、なんとかと思っていたやも知れぬ。」
 富・・?胡・・?何のことだろうか・・?
 「それで・・Blue Butterflyってなんなんだ・・?」
 少女はニッコリと笑って右手を顔の前に掲げた。
 その指先には、一匹の青い蝶々は止まっていた。
 「Blue Butterfly・・青の蝶々・・。」
 少女は、ゆっくりと指先から蝶々を飛ばせた。
 「Blue Butterfly・・。ここを訪れた外の者が残して言った名前・・。儀式の、最初の犠牲者・・。」
 少女は、悲しそうに俯く。その仕草の全てが可憐で幻想的で・・人形のように艶かしかった。
 「青から赤へ移る時。蝶々が飛び舞い空を染め上げる。当主達は染まった剣を舞い回し、富と権力の喝采を浴びる・・。」
 少女はそう言うと、スっと立ち上がった。
 床に置いてある扇子を拾い上げると、舞い始めた。
 「胡は舞い華も舞い、子も舞い踊る。富と権力を確かなものにするために、遥か古より現に継がれる伝統の儀式。それは最も神聖で清らかで、死の神が光臨する儀式・・。」
 なんて幻想的な舞いなのだろうか。神秘的で妖艶で・・香の香りと合わさって眩暈がするほどに美しい・・。
 「贄の魂9つ。犠牲の魂18つ。そして蝶の魂3つ・・。」
 少女は、パチリと扇子を閉じた。
 はっと、現実に引き戻された気がして思わず少女の顔をマジマジと見つめる・・。
 「この儀式は確実に行われる。贄の魂はすでに5つになった・・。帰りあそばせ、客人方。時の止まったこの村に、古よりの伝統を捨てる機会は皆無。故に・・この村にもう来てはならぬ。例えそれが胡の導きであっても・・。」
 少女はそう言うと、二つ三つ手を叩いた。
 「・・この屋敷で亡くなっていた2人・・あれは・・?」
 「贄の子らよ。その身体も、既に蝶の城へ運ばれた。」
 背後の扉が開いた。そこには、浮夜が三つ指をついて座っていた。
 「お客人を御送りせよ。お帰りあそばれる。」
 「かしこまりました。」
 浮夜はすっと立ち上がると、手招きをした。
 「あんた、・・名前、なんて言うんだ・・?」
 水晶は最後にそれだけが聞きたかった。
 「蝶子。蕪木、蝶子・・。」
 蝶・・・。
 扉が閉まる。そして・・その扉は消えた・・。


 □ last scene

 水晶は冬弥の待つ村の入り口のところまで来ていた。
 富、胡、贄、犠牲、儀式・・そしてBlue Butterfly。
 何一つ分かることは無かった。唯一つ分かった事、それはこの村が幻想的なまでに艶かしく甘美な村だと言う事。
 そして、しっとりとした恐怖・・禁断の儀式が今もなお行われていると言う事・・。
 蝶子の顔が蘇る。瞳には色が宿っていなかった。けれども生きている・・。
 『水晶や水晶、どうだったか。』
 『望月村はどうじゃったか。』
 『その顔だと、まだまだなーんもわかっとらんの。』
 『この村は不思議が多い。』
 『そして全ては儀式へ繋がる。』
 『富と権力を手にすべく、三木家が行う大きな儀式。』
 『夢はあと二夜で終わる。』
 『夢はどんどん怖くなる。』
 『そしてどんどん妖艶になる。』
 『儀式まで、夢に飲まれる事なかれ。』
 『さぁさ、今日は起きなされ。』
 『青の色彩だけを抱いたまま、起きなされ。』
 地蔵達の声が、急に遠くなる。
 「じゃぁ、またな。」
 冬弥の声を聞いたが最後、水晶の意識は呑まれていった。

 地蔵達が言ったとおり、青の色彩だけを胸に抱きながら・・・。

  〈第一夜、終〉

 

 □■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
 ■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
 □■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
 【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 3620/神納 水晶/男性/24歳/フリーター


 □■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
 ■         ライター通信          ■
 □■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

 この度は『Blue Butterfly〜第一夜、蕪木〜』にご参加いただきありがとう御座いました!
 初めまして、ライターの宮瀬です。
 ゲームノベルと言う事で、ゲーム風にしてみました。・・そのまんまですが・・。
 青と赤、そして黒と白。その4つの色を基準に望月村は作られています。
 第一夜と言う事で、儀式の取っ掛かりの部分なのですが・・謎が多い限りです。
 今回は戦闘モードと学者モードという事でしたがm如何でしたでしょうか?
 第一夜目ですので、あまり激しくない戦闘でしたが・・・。
 今回集められましたアイテム(メモや鈴など。鍵以外のアイテム)はそのまま次の夜にも引き継がれます。
 もし宜しければ、第二夜、第三夜もご参加ください。

 それでは、またお逢いいたしました時はよろしくお願いいたします。