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■★鶴来理沙の剣術道場■

雛川 遊
【4134】【明智・竜平】【高校生】
剣神リアイアの巫女、鶴来理沙の剣術道場です。
理沙と一緒に武の道を極めたい人や、必殺技の修行をされたい人は修行をされて汗をかいてみませんか?
剣術道場では修練を積むお手伝いから戦いのアドバイスまで、手広くカバーしています。
なんとなく和みたい人も大歓迎!
ぜひ一度当道場の門をお叩きください。

★鶴来理沙の剣術道場

●ようこそいらっしゃいました! 〜オープニング〜

 あけましておめでとうです!
 当道場は剣神リサイアの巫女、鶴来理沙(つるぎ・りさ)の剣術道場になります。
(――――つまりこの私が道場主です!)
 場所はあやかし荘の大部屋を間借りして開いています。が、とある結界の力を用いて道場内に色んな修行の場を出現させたり、古の武術を伝える師範がいたりと、ふつーの道場ではないのです。
 武の道を極めたい人、必殺技の修行をされたい人、なんとなく和みたい人などは、ぜひ当道場の門をお叩きください。ビンボーですががんばりますので!
 あ、それと補足がひとつ。
 ただいま門下生希望者は、随時熱烈大歓迎☆

 それでは、今年も剣術道場をよろしくね!!


●本日の修行、開始です!

「すんません、誰かいますかー?」
 年も明けた1月上旬、 明智 竜平(あけち・りゅうへい) は剣術道場を訪れた。
 静寂に満たされた空気は澄み切った冷たさを感じさせ、白く吐き出した息でこすり合わせた手を温めながら、大きな扉の横に掛かった看板を見上げる。
 ふと、一人の女性の姿が脳裏をよぎった。
「ここがこずえの通ってる道場か‥‥」
 神崎こずえ――――竜平の幼なじみにして、超常の力を自在に駆使する退魔師という少女の一面を知ってしまった彼は、大きな壁にぶち当たった。そして、その二人を分け隔てる壁は解決してくれたとはとても言い難いのが現状である。
 こずえとの様々な経歴に思いを馳せていたところ、どたどたと騒がしい足音が響かせながらびゅーんと一陣の疾風がすぐ横を通り抜けて竜平の黒髪をぐしゃぐしゃにかき乱していく。
「何だよ、オイ‥‥」
「理沙、遊びにきてやったぞっ! あ、わんこいたー、えへへっ、あけましておめでとうなっ!!」
 新年早々の台風のように剣術道場に上陸した鎌鼬三番手 鈴森 鎮(すずもり・しず) は、道場奥の小部屋のひとつに突撃すると威勢よく扉を開けた。
「寒いけどコタツムリしてないかー! ちゃんと寒稽古しろよー!?」
「ひゃあぁっ! な、なんですかとつぜんーっ!?」
 鎮の奇襲に振り返った道場主・鶴来理沙は――――鎮の予言どおり首までコタツにずっぽりとうずもながら、手だけをちまちまと出して皮を剥いたばかりのみかんを美味しそうに食べようとしているポーズで硬直していた。
 ‥‥‥‥。
 目があってしまった。
 やばいやばい。このままでは道場主の威厳が丸つぶれだ!
 罰の悪いことに道場主にあるまじき現場を押さえられて赤面であたふた言い訳のようなつぶやきをごにゅごにゅと漏らしつつコタツから出ようとしない理沙。ある意味これはこれでいい根性をしている。
「あ。えと、これはですね、修行の一環のようでもありささやかな幸せの享受とでもいいますか‥‥」
「これ新年のお土産な! 修行の後にみんなで鍋に入れたりお雑煮にしたりして食べようぜっ。あ、そんじゃ俺わんこ抱きしめてくるー。新年初わんこ♪」
 頭をぐるぐるテンパらせる理沙を取り残して、山のように真空パックの餅を積み上げた鎮は、さっさとわんここと子狼のフュリースに駆け寄りぎゅ〜っと幸せそうに抱きしめに行った。
 ちなみにこのお餅、いわゆる鏡餅の中に入っている類の餅パックで、家で食べきれないので差し入れとして持ってきたものであった。

                             ○
「‥‥‥‥」
 一連のやりとりを見なかったことにして気を取り直した竜平は、黙って髪を撫でつけながら道場の中に入った。
 壁になにやら新品らしい掛け軸がかけられている。

 『寒稽古』

「そっか。今日は寒稽古の日なのか」
「はい。新たな年に冬の冷厳な気の力をお借りして心身ともに清める修練です」
 先程までの慌て振りはどこへやらといった風情で、修行要の着物に着替えた理沙が落ち着いた声で竜平に声をかける。
 しかし。なんというか。
「――――あのさ。それは、よく神社なんかで見かける着物の気がするんだけど」
「そうですか?」
 ニッコリと答える道場主。
 このニコニコ笑顔は「気にしないでください。」と暗に強く、マリアナ海溝よりも深く込められたメッセージであると古典的比喩を用いてみたりするも、だがしかし、白い着物に赤袴というのはどう見ても何か狙っているとしか思えないような思っちゃいけないというか、まああれだ。アレだな、うん。そういえばこずえもこの道場は経営も赤いとか言ってたし――気にしないでおこう。
 ‥‥泣ける話だ。
「当道場は練習生の方の事情にあわせた修行内容を行えるようになっています。それで、どのような修練をお望みでしょうか?」
「――――強くなりたい」
 一言だが、竜平の強い意志を感じられた一言。そこにどれほどの想いが込められているのかは理沙には計り知れない。
 だが強さを求めようと色々な人がこれまでもこの道場を訪れてきたので、理沙はよく知っていた。
 自分のこの場所での役目は、強さを求める人を導くと共に、その力が正しく使われるよう教え説くだけであると。
「俺なりのやり方でこずえの力になるって言ったけど、今のところ具体的な方法は掴めてないんだよな」
「こずえさんの、お知り合いなのですね‥‥」
「ああ。だからこそ、こずえの話に出てきたこの道場に来たんだが‥‥」
「あぁ、『が』って逆接された! されちゃったーっ! どうせこんな道場のこんな私なんかー、あうあうぅ〜」
 先程までの厳粛さからうって変わって頭を抱えて身悶える理沙。しかし竜平の視線に気がついて、ピタッと停止した状態からすっくと立ち上がると、一瞬にして元の状態に戻り話を再開する。
 ‥‥今の一瞬はなかったことにするつもりらしい。
「わたくしたち当道場はあらゆる人のご要望に対応できるよう日々修練を積んでおります。ご安心を」
 安心できないって。
 ――とはいえ、彼女も通っている道場でもあることだし、ここはどうにか自分を信じ込ませて修行を受けてみるしかない。踏ん張りどころだな、と竜平は苦笑した。これ自体が精神修行になっているともいえなくもない。別の意味でだが。
「俺は精神修練を含めて、基本コースを希望したい。できれば、こずえの事を知ってる人から習いたい。その人から話を聞ければ、そこから何かを掴めるかもしれないからさ」
「まあ、それは丁度よかったです」
 一人の少女が音も無く背後に立ち、彼女のすでに着ている白い着物を差し出した。
「本日の師範代を務めさせていただきます村雨汐(むらさめ・しお)です。まずはこちらを身に付けられて下さい‥‥」
 この身のこなしは忍びの者、くのいちという奴か――。
 いや。それ以上に気になる異常が道場内に現れていた。汐に案内されて道場の片隅にできた異空間を通って現れた風景は、深い森に囲まれた清流と‥‥。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ‥‥

 巨大な滝だった。
 目の前の死ぬほど冷たそうな大滝と、白い着物一枚の自分と、もう1回膨大な水量の雪崩落ちる圧力で轟音が奏でられる大滝を見比べてから、理沙を見つめた。
「基本コース?」
「いえす。基本コース♪」
 巫女っぽい何かは鬼のような笑顔でうなずいた。


「たき!」
 イタチ化した鎮は、目の前にある巨大なそれを見上げてもう一回叫んだ。
「滝だッ!!?」
 そう、自称「いちりゅー」(一流)を自認する回避技能をさらに高めるためるべく今日の修行に臨んだのだ。ここで逃げては帰れない!
 うわ、冷たいっ。いや冷たいどころか、氷のように低温の水流に晒された肌は針で刺されるかのように感じられ、痛みを覚えるくらい冷たい。
 冷たさにどうにか耐えながら鎮は理沙に大声で呼びかけた。
「攻撃をひたすら回避しつづける特訓をしたいんだ! だからなるたけ手数の多い師範代を希望するぞっ!」
「そうなんですか。鎮さんは回避の修行? ‥‥だったら今日はうってつけの修練がありますよ〜」
 なにやら理沙はムフフと裏がありそうに楽しげな笑顔でどこかへ行ってしまったので、鎮はじわりと不安を覚えた。が、効果があるなら挑戦しなければなるまい。それにしても今の話だと修行相手は理沙が務めてくれるのだろうか、と疑問に思いながら考えていると、すぐ横を何か巨大なものが通過した。恐ろしい音を立てて。
 ――――。
 当たったら死。確実に死ぬ。
 そう直感せざる得ないくらい圧倒的な恐怖。
 ‥‥それじゃもっと行きますから、頑張って避けてくださいね‥‥
 理沙の声ははるか上空から聞こえた。滝の上だ。理沙はそこから次々と――

 巨大な流木を落としてくる!

「ばっきゃろー!! 鼬を殺す気かよっ!!」
 化けて出るぞー! と訴えながら鎮の必死なサバイバルはこうして幕をあけた。


                             ○

「うぅ〜、今日の修練って厳しすぎだってばー」
 凍え死にそうな流木地獄の修練から(奇跡的に)無事生還して、鎮はお風呂に入り体を暖めることによりようやく生き返った体で休憩用の小部屋に戻ってきた。
 本当に、全身凍ってしまうかと思う寒さで、最後はほとんど体の感覚がなくなって逆に暖かく感じていたと思う。寒稽古はある寒さの一線を超えると体が通常の感覚を超えて身体を活性化する効果もある。だから、そういう状態にまで精神を持っていけるよう自分の精神を意識的にコントロールするきっかけを得る修練として有効なのだそうだ。
「なんて理沙は言ってたけど、そういうもんかな‥‥?」
 確かに修行慣れしてる理沙は、普段はあんなにも寒がりなクセに、いざ修練に臨んだらあの冷たい滝の中で平然と祈りを続けていた。
 鎮にはまだよくわからない境地ではあるが、ただ、修行後の温かいお風呂はこれまで入ったこともないくらい気持ちよかったので、それでいいか、と思うことにした。
 部屋の中ではすでに風呂を終えていた面々による、お餅パーティーの(とでも形容のしようがない)会場準備が終えられていた。部屋を暖めるストープの上にセットされた餅焼き用の金網と多種揃えられた味付けのタレ。
 コタツの上にはお雑煮の鍋と普通の鴨鍋が用意され、ミカンもすぐ横にダンボールで完全装備。
 鎮は幸せそうにコタツに潜り込んだ。
 隣では最近出番のない武芸者の剛陣(ごうじん)が美味しそうに餅を魚にお酒を飲んでいたので、本人は余り気にしていないのかもしれない。
 わんこ用のお持ちは喉につまらないよう小さくちぎって食べやすくする。
 コタツの向こう側では、竜平と汐が修行について話していた。
「力の無い人間が、力のある人間に近づこうと願うのは無謀な望みなのか――」
「でも、きっと力がない、そんな人なんていないから。自分の今持っている力を素直に認めて、誰もがそこから始めるのよ」
 弱さも醜さも引き受けて‥‥。
 汐は誰かのことを思い出したのか、少し悲しそうな顔をしているように見えた。
 鎮は、自分で持ち込んだキナコとノリで美味しそうにむにーと伸びる焼き餅をようやく噛み切ると、ふと思い出したように理沙をじーっと見つめた。
「ねえねえ、今日の修練っていつもよりきつくなかった?」
「あ、今日は基本コースはちょっとお年玉代わりに少しだけ奮発してみたんですけど‥‥」
 すこしかい!
「そんなお年玉いらないー!」
 鎮の叫び声に理沙以外の一同が深く心から頷いた。


 凍えるような夜に暖かい小部屋の中、鎮の持ってきた山のようなお餅は剣術道場の面々によってあっという間に消費されてしまったことは言うまでもない。
 ――――新年から騒がしい剣術道場の修練であった。


【本日の修行、おしまい!】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【2320/鈴森 鎮(すずもり・しず)/男性/497歳/鎌鼬参番手】
【4134/明智 竜平(あけち・りゅうへい)/男性/16歳/高校生】

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■         ライター通信          ■
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 新年明けましておめでとうございます。雛川 遊です。
 ゲームノベル『鶴来理沙の剣術道場』に御参加いただきありがとうございました。

 さて、独自の技がシナリオ内で習得できるという割りにあまり中身が進まんぞー! とお叱りをいただきましたもので、ローカルルールに少し変更を加えようかななんて予定してます。
 もうちょっとシステマティックに参加回数自体をポイント化して、それに比例して技の開発を申請できるみたいな感じかなーとか。詳しくはゲームノベルオープニングの方でそのうち説明できたらと。できたらいいなぁ‥‥。
 あと、本日の理沙の稽古着はよもや巫女さんですか? という神の恐れを知らない質問は全力で却下です。よろしくです。


 剣術道場はゲームノベルとなります。行動結果次第では、シナリオ表示での説明にも変化があるかもしれません。気軽に楽しく参加できるよう今後も工夫していけたらと思いますので、希望する修行やこんなのあったらいいなぁというイベントがあれば、雛川までご意見をお寄せください。

 それでは、あなたに剣と翼の導きがあらんことを祈りつつ。



>鎮さん
お久しぶりです。剣術道場へようこそ。
えーと、なんていうかあれですね。プレイングにもないのにフュリース抱きしめが基本でぎゅっと愛らしくとお約束になってしまった感のある今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。わんこ描写入れたいぞ病? それってどんな病気なのでしょう自分‥‥。
お年玉情報〜♪ 狼関係や剣の女神関係のシナリオはもう発表準備はあるのですが、また遅延などの事態を考えるともう少し様子を見たほうがいいようなー、と、そんな感じかもって全然お年玉になってないというオチでした。
このままでは理沙がギャグキャラで終わってしまい某剣の女神様も泣いてしまいそうです。

>竜平さん
ようこそ剣術道場へお越しくださいました。
一応、基本的な雰囲気を掴んでいただけるよう重点をおいて導入的な描写にしてみましたが、頼りない道場主で心より申しわけありません。
「頼りないいうなー!!」by理沙
あ。なんか聞こえた。
シリアス修行を望まれる場合には『シリアス希望!』と魂の一筆をお願いします。
それとなんていうか、能力を持たずに強い敵に立ち向かうというのは正統派主人公的な素敵ロマンだと個人的には思います。ジリ貧だけど。……えーと。
がんばれ竜平!(泣)