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■文月堂奇譚 〜古書探し〜■

藤杜錬
【4521】【バザイア・―】【クローン/赤き竜の崇拝者】
とある昼下がり。
裏通りにある小さな古い古本屋に一人のお客が入っていった。

「いらっしゃいませ。」

文月堂に入ってきたあなたは二人の女性に迎えられる。

ここは大通りの裏にある小さな古本屋、文月堂。
未整理の本の中には様々な本が置いてある事でその筋で有名な古本屋だ。

「それでどのような本をお探しですか?」

店員であろう女性にあなたはそう声を掛けられた。
文月堂奇譚 〜古書探し〜

バザイア編

●バザイアのはじめてのおつかい
 それは唐突な思い付きがきっかけであった。
 バザイア(ばざいあ・−)はマスターに呼ばれ、自分が求める物を買って来るように言われ館を出たのは。
 バザイアに託されたのは本を買ってくること、そして本屋の店員とコミュニケーションをとる事、であった。
「マスターは何を考えて私にこんな事を頼んだのだ?」
 何処か釈然としない様子でバザイアはマスターから渡された自分の所持する物を確認する。
 バザイアが渡された小さな鞄の中には文月堂という古書店への地図、小銭入れに入った千円札、探している本のリスト、携帯電話が入っていた。
 そしてその中から携帯電話を取り出し確認する。
「マスターはもし本があったらこれで連絡しろといっていたな。」
 教わったとおりに携帯電話のボタンを確認すると、続いて地図を取り出す。
 街中で見るように携帯し易い様に折り込まれた地図を開き自分の位置を確認する。
 そして、自らの位置を確認すると、目的地へ向かうためにゆっくり歩き出す。
「確かここへ行くには『バス』というものに乗ると良いと地図には書いてあったな。」
 地図を見ながらそう言って確認をしながらゆっくりとバザイアは街を歩いて行く。
 地図に書いてある行き先のバス停と、たどり着いたバス停の名前を確認して、満足そうに頷くとバス停の横でバスを待つ事にする。
 地図を見て『バス』という物を使った方が良いと云う事がわかっていたが、実際に『バス』がどういう物かよく判っておらず、それで正しいのか少し不安であった為に緊張した面持ちでバザイアは『バス」を待っていた。
 しばらくバス停にて待っていると、音を立てて一台の四角い大きな車がやってきてバス停に止まり、その扉をあける。
 バス停で待っていたバザイアをその四角い車の運転手が怪訝そうな目で見る。
「君君、乗るの?乗らないの?」
「これは『バス』というもので良いのか?」
 真顔でバスの運転手にそう聞いているバザイアを見て「はぁ?」という狐につままれた様な顔で運転手はバザイアを見返す。
「これはそのバスだけど……、お嬢ちゃん乗るの?乗らないの?」
 そうバザイアの事を急かす運転手であったが、バザイアはそれに対ししばらく考え運転手に答える。
「……○○○というバス停には行くか?」
「○○○?ああ行くよ?それで乗るのかい?」
「……だったら乗る。」
 ぶっきらぼうにバザイアはそういうとゆっくりとバスに乗って行った。
 バザイアは乗ってそのまま奥に行こうとしたところ、運転手に止められる。
「お嬢さん、お金、払ってくださいよ。」
 運転手はそういって自分の横にある支払機を指差しながらバザイアを引き止める。
 一瞬きょとんとした様子で支払機を見ていたバザイアだったが、運転手の言いたい事がようやくのみこめたのか、小さくコクリと頷き支払機のところまで歩いて行く。
「これはどうやって使うのだ?」
 バザイアは運転手に支払機の使い方を聞くとそのやり方にそってお金を支払った。

バザイア:残り金額八百円

 しばらくバスに揺られていたが、目的のバス停につき運転手が親切にバザイアに到着した事を知らせてくれる。
 バザイアは小さく運転手に礼をいうとゆっくりとバスを降りて行った。
 バスを降りたバザイアは、再び地図を取り出し自分の位置を確認する。
 自分の場所を確認するとバザイアはゆっくりと歩き出す、そしてしばらく歩いた所で目的の古書店『文月堂』へとたどり着いた。
「このお店であってるな……。」
 メモに書かれた名前と看板に書かれた名前を見比べたバザイアは意を決したように文月堂の扉を開けゆっくりと中に入って行った。

●文月堂
 店内に入ったバザイアはまず店内を見渡した。
 自分が言われた通り、まずは店員とコミュニケーションをとる為に店内を見渡したのだ。
 そして店内を整理している一人の女性の姿に気がつく。
 その黒髪の女性にゆっくりと近づいたバザイアであったが、作業をしているその女性にどう話し掛けるべきか迷いその作業を見ている事しかできなかった。
 しばらくそれが続いていたが、このままでは何も進まないと思ったバザイアはその女性に話し掛ける事にした。
「あの……本を探しているのだが。」
 ぶっきらぼうにそう話し掛けたバザイアの声に気が付いたのか黒髪の女性がその作業の手を止める。
「あら?いらっしゃいませ。どんな本をお探しですか?」
 今まで作業に集中していたためかその黒髪の女性、佐伯隆美(さえき・たかみ)は今バザイアに気が付いた、という感じでバザイアに返事をする。
「私が探しているのはこれから言う本だ。探して欲しい。ベアトゥス写本、シロス写本、ジローナ写本、ファクンドゥス写本、アローヨ写本、他に「偉大なる赤き竜」が登場する本、「バジリスク」が登場する本、「七つの頭と十の角を持ちたくさんの冒涜の名がつけられている赤い獣」が登場する本、「偉大なる赤き竜と獣」が登場する本、「サソリ」が登場する本、「巨大な海蛇(リヴァイアサン)」が登場する本だ。」
 そうメモを取り出して読み上げるように隆美に探している本のタイトルを伝える。
 一瞬隆美は面を食らったように目を見開いていたが、落ち着くとバザイアの言った本のタイトルを頭の中で反芻を始める。
「ごめんなさい、多分あなたが求めている本は無いと思うのよ。すぐでるのは普通の聖書くらいね。」
 隆美はそう言って棚から一冊の聖書を取り出してくる。
「あなたが言っていたのは聖書に出てくる黙示録の事よ。だからこれを、ね。」
 聖書を渡されたバザイアは少し考えたあと隆美に問う。
「この本はいくらになるんだ?余り高いならマスターを呼ばねばならないのだが。」
「そうね……、別に高い本では無いわよ?」
「これで足りるか?」
 そう言ってバザイアは現在持っている所持金八百円を小銭入れから出して隆美に見せる。
 しばらく隆美は考えた後そのお金の内百円玉一枚だけを受け取る。
「そうね、この本の値段はこのくらいかしら。」
「本当にそれだけで良いのか?」
「ええ、その本はあなたの所に行きたがっていたみたいだから、ね。」
「ありがとう。あなたがそういうならそうなのだろう。」
 バザイアは微笑みながら話す隆美をしばらく見つめていたが、ようやく納得したのかそっと小銭をしまう。

バザイア:残り金額七百円

 その様子を見ていた隆美であったが、ふと思いついたようにバザイアに話し掛ける。
「ねぇ、良かったら少し奥でお茶でも飲んでいかない?外は寒かったでしょ?」
 何処かバザイアの様子に危うい物を感じたのか、隆美はそっとそう誘う。
 しばらくバザイアは考え込んだが、ぎこちない笑みを小さく浮かべ隆美に答える。
「ありがとう、その気持ちだけ受け取らせてもらう。」
 そう言って、バザイアは受け取った聖書を鞄に入れて、小さく頭を下げると何処か名残惜しそうに文月堂を出て行った。

●エピローグ
「ありゃ、お嬢ちゃん、またあのバス停までかい?」
 再び乗ったバスには先ほど乗ったバスの運転手と同じ運転手であった。
「ああ、そうだ。さっきは色々教えてくれてありがとう、助かった。」
 バザイアはそう言って頭を下げる。
「良いよ、気にしなくて。それよりも目的は達成できたみたいだな?」
「え?何でそんな事が判る?」
「なんとなく顔にそう描いてあるよ、良かったってな。」
「そうなのか?」
「出てるよ、はっきりとね。」
 バスの運転手はそう言って笑う。
「っとそれじゃ出すよ。今度はお金を忘れるなよ?」
「ああ、大丈夫だ、それはもう覚えた。」
 バザイアはそう言いながら支払機に小銭を入れる。
 そしてバスは動き始めバザイアは自分が無事マスターの言いつけを守れた事を満足に思い、帰途へつくのであった。

バザイア:残り金額五百円


Fin

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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≪PC≫
■ バザイア・−
整理番号:4521 性別:女 年齢:2
職業:クローン/赤き竜の崇拝者

≪NPC≫
■ 佐伯・隆美
職業:大学生兼古本屋

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■         ライター通信          ■
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 どうも初めまして、ライターの藤杜錬と申します。
 この度は『文月堂奇譚 〜古書探し〜』へのご参加ありがとうございます。
 バザイアさんの初めてのお使いを任せて頂きありがとうございます。
 上手くバサイアさんらしさを表現できていればよろしいのですが。
 それではありがとうございました。

2005.01.20.
Written by Ren Fujimori