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■はじめてのせふぃろと！■ |
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哉色戯琴 |
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【0580】【高桐・璃菜】【エスパー】 |
「何だ。新入りのビジターか。こんな所に迷い込むとはろくな運を持ち合わせていないと見える。さっさと人の居るところへ向かえ、とは言っても別に繁華街じゃない。俺はそんな場所には断じて興味が無い」
「何？ セフィロトに付いての事を知りたい？ そんなもの、自警団の詰め所にでも向かえば良いだろう。俺は案内しない。あんな汗臭い所は御免だし、ゲート破り常習犯で目をつけられているからな」
「……何故付いて来る」
「……………」
「判った、案内してやる。だが俺のガイドは、自分で言うのも何だが横暴かつ乱暴だ。覚悟と装備は出来ているか？ 脚は早いんだろうな。打たれ強さは？ まあ、そこそこか」
「さて。
――――何処まで連れて行ってやるとするかな……？」
■□■□■
そんなこんなでセフィロトツアーになります。
繁華街やラジオ局など、行ってみたいところをご明記下されば
考慮したツアーを組ませて頂きます(笑)
パックは勿論お一人様でも受付しておりますので、
どうぞご自由に巡って下さいませ☆
ちなみにゲート破りは必須イベントです…(ぽそり)
(ジャンクケーブはツアーに含まれません)
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□■□■ はじめてのせふぃろと！ ■□■□
「……ね、秀流」
ちょいちょい、と幼馴染の高桐璃菜に袖を掴まれ、ジャンク屋の店先で使えそうなパーツを探していた神代秀流は顔を上げた。目の前、すぐ近くに璃菜の顔があることにただ単純に驚くが、彼女は今更そんな事を気にするでもなく、少し真剣な眼をしている。だがその視線の先は秀流ではなく、商店街の一角――パン屋の店先に向けられていた。
なんだ、食パンの耳が特売かと彼もその視線を追おうとするが、顔を掴まれてぐきっとその動作が止められる。何しやがる今から地獄の門を通るってのに先に本物の地獄にご招待か、言いかけたところで璃菜は目の前にあったバックミラーを掴む。ＭＳ用のそれは手鏡ほどの大きさがある。
そこに、見た事のある青年が映っていた。
「……この人、ギルドとか自警団とかで、……」
「だな――どうする？ ゲート破りは現行犯じゃないと捕まえられないだろ」
ミラーの中の青年は、白髪に白いコートを羽織っていた。何度か自警団でも話題に出た事がある、ギルドに所属をしていないビジターの一人。ジャンクケーブに住み着いて、たまにゲートを無理矢理に突破していく無法者としてブラックリストにも載っている――葬師、とか言ったか。秀流は機械いじりの所為で少し荒れ、ささくれ立った指先で頬を掻く。
彼らが商店街に居るのは、ギルドへの登録が正式に済み、ゲートの通行証が無事発行されたからだった。マルクトで育ってはいたが、ゲートの内部は未知の世界と言っても過言ではない。トレーニングにも参加したし、ある程度の情報は叩き込んだが、まだ不安は多少ある――その為の装備を買いに来たところで、遭遇したのがお尋ね者とは。
ギルドの者達も、門番のＭＳが多少壊されるだけの損害ではそれほど強く動きはしない。同じようなゲートの強行突破常習犯としてジェダという男もいるが、そいつは他のビジターからも略奪行為をするからであって――葬師はただ、内部に入るだけなのだ。勿論強行突破を肯定するわけではない、が。
それに、ゲート破りは例外を除き現行犯でなければ連行は出来ない。だからと言ってここで見逃すのも少し気分が悪い――
「あ、い、行っちゃうよ！？」
「お――追い駆けるぞッ」
「ん、判った！」
不意に葬師がパン屋から出て踵を返す、二人は慌ててその後を追った。
■□■□■
彼が向かっている先は、方向から行ってどうやら繁華街のようである。璃菜は秀流と一緒に建物の陰に隠れながら、葬師の後姿を追っていた。灰色の街に白装束の男は目立つので、見失い難く丁度良い。パン屋で買ったらしいパンの耳を時々袋から出しているが、自分で食している様子は無かった。何かに与えているらしい。何をやっているのか、中々に謎の男だ。
マルクトはビジターとマフィアの街で、二つの荒れた要素が混じって出来ている。だから賑わっている所は本当に賑わっているが、人通りの無い所は本当に誰も居ない。今二人が歩いている路地は後者に属する場所だった。たまにどこかのスピーカーから元気なラジオパーソナリティの声が響いてくるが、寂れた路地にそれは尚更の荒廃感を与えている。
少し不安になって、璃菜は秀流の袖を掴んだ。賑わいと寂れの急な到来に、何かを思い出しかける。父が居た時の家と、父が居なくなってからの家――賑やかさと、静寂。ぽんっと手に手を重ねられてハッとする。秀流が少しだけ、笑みを浮かべていた。むっとしてその頭を軽く叩く、いつもの遣り取り。
「あ、路地裏行ったよ？」
「追い駆けてみる、か？」
「そうだね、何かの取引とかしてたら取り押さえられるしっ」
「……何のだ？」
「……な、なんかあくどいこと」
「何だよそれは」
「な、なんかよ、なんかなのよッ！」
ぷぅっと膨れれば笑われる、ぺしぺしと頭を叩かれる。兄妹のように一緒に育ってきた彼にはいつも子供扱いをされるが――璃菜はほんの少しだけ、気を引き締めた。もしも本当に何か不正な取引をしている――例えばゲート破りに他の目的があるとか、マフィアがギルドの権威を貶めるために彼を雇っているとか――そういう可能性が完全に無いとは、言い切れない。そしてもし戦闘になった場合は、自分が彼をサポートしなければならないのだ。
妹でも子供でもなく、パートナーとしての役割。
そんな彼女の様子を知ってか知らずか、秀流は璃菜の手を握りながらゆっくりと裏路地を進んでいた。曲がり角の向こうに妙な気配が感じられて、足を止める。人、かどうか――分からない。まさかタクトニムか、警戒して足を止めたところで、それは飛び出した。
「ッ」
「秀流！」
「みゃー！！」
……。
みゃー？
「こらミケ太、そっちに――」
「みゃーん？」
「………………」
…………。
ミケ太？
角から猫を追って出て来た男の髪は白に近い銀色だった。その眼はごくごく薄い金色で、一瞬瞳孔しかないようにも見える。羽織られたのは真白のコート、薄暗いマルクトでは目立つ色。ビジターだと言うのにまったく汚れている気配は無い。
ゲート破りの常習犯、ギルドや自警団に目を付けられる男。ビジターもタクトニムも、自分の前に立ちはだかるものは簡単に薙ぎ払い駆逐する。本名は知られず、ただ字名だけが、『葬師』と知られる男。
が。
そんな男が頭にイタチを乗せ、猫を追い駆け、足元に犬を纏わり付かせていた。
見れば、角を曲がった突き当たりで、食パンの耳に貪りついている野良犬や野良猫の姿があった。
ぷ、ッと璃菜は吹き出す。
葬師の顔が硬直していた。
■□■□■
「うわー……でも、マルクトで野良犬なんてめったに見ないのに、なんでこんなトコにいるんだろ？」
「俺は野良イタチこそ見たことが無いぞ」
「これは俺の個人所有だ。……大方、繁華街の女共がペットとして連れてきたものだろうと思っているがな。群れを作ってこの辺りで食糧を探しているのに行き合って以来、たまにこうして面倒を見ている」
璃菜が犬の頭を撫でているのを眺めながら、秀流は猫の顎を擽った。葬師は相当恥ずかしかったらしく、無意味にイタチの頭を指で撫でている。なんとも噂とえらく違う性格をしているようだが、どうなのだろうかこの男は――人懐こい動物達は、彼らにじゃれ付いてくる。
捨てられたのか、迷子になったまま忘れられてしまったのか。元が人工の街だけに、マルクトには動植物が圧倒的に少なかった。一歩外に出れば照り付ける太陽と熱帯雨林、そしてサバイバル色の強い動物達がうようよとしてはいる。だが、こういった愛玩動物はそうとも言えない。捨てられた――ほんの少し孤児と言う自分の境遇を連想する。秀流は、ふるッと頭を振った。
「しかし、ある意味穴場だな。こういう動物がいる場所というのも」
「そうだね、可愛いなあ……飼ってあげたいけど全員は無理だもんね。ね、たまに私達もこの子達の面倒見に来て良いわよね？ ねっ？」
「勝手にすれば良い、残念ながら俺のものじゃないからな、こいつらは」
ほんの少しぶっきらぼうな言葉の裏に優しさを見て、二人は顔を見合わせる。その胸ポケットにギルドの通行証を見付け、葬師はふん、と小さく鼻を鳴らした。
「何だ、お前らはギルドのビジターか」
「ああ、だから一応あんたを捕まえる立場だな」
「ほう」
「今はしないけどね、犬猫可愛いし」
犬猫＞葬師。
さり気なく項垂れている彼をさらりと無視しつつ、璃菜は気に入ったらしい一匹の犬とじゃれていた。一匹ぐらいなら飼っても良さそうだが、群れだと言うのだから特別扱いは良くない気がする。だから、やはりここに様子を見に来ることになるのだろう――まあ、これはこれで和むから、良いか。秀流は考えて少しだけ笑う。
「ふん。なら止めておくか」
「何をだ？」
「今からゲートに行くからな。一人も効率が悪いから、どこかでビジターでも募ろうと思っていた所だったんだ。お前らで良いかとも考えたんだが、ギルドなら止めておくかと」
「ああ、私達も今日はゲートに行くんだよね、初めてだから装備を整えて行こうと思ってて――あ、ねぇ秀流、葬師と一緒に行ってみようよっ？」
「……おい、璃菜」
「だって、あたし達だって実戦は素人に近いわけだし？ 葬師、一応毎回帰って来れるぐらいなんだから、ちょっとは強いんだと思うの。一緒に行けば、心理的には心強い感じっ」
一応。心理的。殆ど評価されていないに等しいのをずっしりと気にしている葬師を尻目にしながら秀流はふむと頷く。確かに、ゲート破りの常習と言うことは毎回ゲートから生きて戻っていると言うことである。出没場所はまちまちだが、タクトニムが多い警察署や病院にもよく現れるらしい――と言う事は、能力はそれなりに長けていると思って良いだろう。
摸擬戦やシミュレートには慣れているが、やはり実戦には若干の不安もある。璃菜の提案は悪くない。
「ゲート破りを追い駆けてる振りしてさ、一緒に入っちゃえば良いよねっ。だから葬師、ちょっと待ってて？ 私達はギルドで準備してからゲートに行くからっ」
「そうだな、準備はしておいた方が良いだろう。っと、そうなると商店街に戻ってまた部品探しもしなくちゃな」
「もー、買い物長いんだよ秀流はっ。もっと即断即決！」
「…………俺の意思は無視か」
取り残された葬師が、巨大な溜息を吐いた。
■□■□■
「秀流、ゲート破りよ、追い駆けて！！」
璃菜の声に、秀流のＭＳが走り出す。ゲートの守衛として立っているギルドのＭＳの間を駆け抜けていく葬師の後を追って、二人は地獄の門を潜った。中はマルクトの内部よりも更に暗く視界が悪い――葬師の白い装束が、よく目立っていた。門を背にしている分には少し安全だが、いつまでもこうしているわけには行かない――進んで調査を進めてこその、ビジターなのだから。
ほんの少しの武者震いが、彼女の身体を走る。ＭＳの中からそれを見た秀流は、ばれないように苦笑をする。やはり子供だ、と言えば、怒られるだろうけれど。
「さて――初心者だったか。どの辺りまでなら対処出来る？」
「え？」
「璃菜、だったか。マシンテレパスはどの程度扱える？ 何機のタクトニムまでなら、その動作を追うことが出来る」
「――多分、三機」
「ふん」
シミュレーションでは四機まで応戦できたが、実戦ということを考えればやはり三機と言うのが妥当な所だろう。頷いた葬師が歩き出すのを追い駆ける、ＭＳが地面を踏む音が嫌に大きく響いている気がした。シンと静まり返っている、死んだ街――ただひたすらに壊れた町は、大災害をリアルに伝えるに充分だった。廃墟の何処に、何が潜んでいるか判らない。そしてそれが何機いるのかも判らない。持続する緊張感は、少し、気持ちを重くする。
「三機なら、精々住宅街が関の山だな。まあ腕試しには丁度良いだろうが、くれぐれも油断はするなよ。連中は手加減などしないし、俺も助けはしない」
「……判っている」
「判ってるわよ。多分助けてくれることぐらい」
「なッ」
「だって小動物好きじゃない」
葬師が黙り、少し歩く速度が上がる。クスクス笑う璃菜をカメラ越しに見ながら、秀流はセンサーの様子を絶えず確認していた。ゲートの周りならば安全圏だが、そこを少しでも離れれば何が襲い掛かって来ても不思議ではない――対処は出来るように、して置くべきだろう。不意に何が来たとしても。
「ああ。来たぞ」
「ッ――秀流」
「確認した。一機だな」
「二機よ。センサーの範囲ギリギリにもう一機、判る？」
画面が書き換えられ、タクトニムの反応が増える。カメラの画像とセンサーは必ずしも平行しないらしい、軽く構えのポーズを取って秀流は止まった。相手が動くのを待つ――が、葬師はさっさと歩いて行く。
「お、おいッ」
「お前達に任せる、俺は急ぐからな。こいつらに用は無い」
「じゃなくて、危ないって――」
襲い掛かるタクトニムを簡単に避け、葬師の姿が消えた。ボディＥＳＰか何かを使ったらしいが詳細は判らない、確かなのは目の前の二機が、自分達の最初の敵になると言うことだけだった。チッと小さく舌打ちをする、まったく当てにならない――二機以上の気配は無いか、見落としがないかを確認し、秀流は璃菜を庇うように少し前に出る。同時に、一機が踏み込んできた。
「秀流！」
「見えてる！」
転送されてきたデータにカメラが切り替えられる、彼は脚を振るうことによって襲い掛かってきた一機の腹を蹴った。伝わってくる振動は強い、相手の速度があった所為か。僅かに痺れるのを叱咤しながら次のデータを見れば、上である。飛び退けばボディプレスか、ベッコリと床が凹んでいた。パワー型とスピード型のコンビらしいが、こちらとて、同じような状況である。
転送されたデータを読み込みながら、踏み込む。まず片付けなければならないのはスピード型の方だ、翻弄されては勝てるものも勝てなくなる。動作の切り替えに掛かる時間はコンマ単位、俊敏だ。右にも左にも避けられる、だからこそ、真っ直ぐに突進する。
「秀流、スタビライザーを使って。どっちに避けられても良いように巻きつけるイメージで！」
璃菜の声が響き、秀流はタックルをする。肩から突っ込むが勿論それは避けられる、左。瞬時に踵を返せばスタビライザーが直撃した。なるべく壊さないようにと手足の関節部分だけを粉砕する。内部のＩＣチップが無事なら、良い土産になるだろう。次は――
「ッきゃ」
小さな悲鳴にカメラを向ければ、璃菜の上にパワー型が跳んでいるところだった。押し潰されればひとたまりも無い、直線攻撃だけに避けるのは容易いはずだ――が、彼女は動かない。足が震えていた。
秀流は大きく踏み込み、跳躍する。落ちる寸前のタクトニムに体当たりをして軌道を変えれば、それは跳ね飛ばされた。璃菜の無事を確認してからその前に立ち、守るようにする――こちらはどうやら作りが頑丈らしい、びりびりとした振動が肩に伝わるのに、秀流は口唇を噛む。
「璃菜、あいつの装甲にどこか弱点は！？」
「ッ、あ、ごめッ」
「良いから！」
「――左大腿部の付け根に応急処置の後、ひび割れが残ってる。それと今のタックルで右腕が損傷、そこを落とせば動きは止められる！」
「了解ッ」
再び飛び上がったタクトニムに、彼は――
■□■□■
「、ッと」
ＭＳを通しても伝わってきた痺れで震えが止まらない秀流の腕に湿布を貼りながら、はぁあッと璃菜は深い溜息を吐いた。
シミュレーションでは、サポートメンバーにタクトニムが向かってくる事は無い。ただひたすらに情報を伝えることに関しての訓練を積んでいたのが災いした、まさか動けなくなるとは思わなかった――自分もまだまだ、実戦では学ぶことが多い。
何よりも凹まされたのは、程なくして戻ってきた葬師が三機のタクトニムを引きずって来ていたことだった。確実にあの男よりは秀流のＭＳの方が戦闘に対する性能や適正はあるはずなのに――再び漏れた溜息に、秀流が苦笑する。
「まあ、そう凹むなよ璃菜。痺れ以外は無事だし、初めてにしては上々だって言われたろ？」
「そーゆーのに甘えるのは良くないってお父さんも言ってたもん。本当、頑張らなきゃ」
もっとちゃんとサポートできるように。
「まあ、そうだな」
「でしょ？ と言うわけで、あの有名な鬼キャンプに――」
「それは止めとけ」
もっと心配を掛けずにいられるように。
「あ、この部品売ってこようか。で、帰りにあの犬達のとこに寄ってさっ」
「そうだな、何か買って行ってやるか」
「やっぱりパンの耳？」
「肉の方が良いんじゃないのか？」
心ひそかに誓うことは一緒、笑い合いながら、二人は拳を合わせていた。
■□■□■ 参加ＰＣ一覧 ■□■□■
０５７７ ／ 神代秀流 ／ 二十歳 ／ 男性 ／ エキスパート
０５８０ ／ 高桐璃菜 ／ 十八歳 ／ 女性 ／ エスパー
■□■□■ ライター戯言 ■□■□■
初めましてこんにちは、ライターの哉色と申します。この度はご依頼頂きありがとうございました、早速お届け致しますっ。幼馴染という微妙な関係なので、付かず離れずに気を付けてみたのですが、如何でしたでしょうか……お二人共初めてなので能力や口調など上手く表現の出来ていない箇所も在るかと思いますが、少しでもお楽しみ頂けて居れば幸いです。それでは失礼致します。
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