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■EP1:The First Contact■ |
はる |
【0233】【白神・空】【エスパー】 |
都市区画『マルクト』の片隅。何かに惹かれるように狭い路地裏に入り込んだ貴方。
教会と思われる建物の横を抜けると不意に開けた場所に出た。
広場の中央に一人の少女。
「お譲ちゃん、こんなところを一人で歩いていると危ないぞ」
少女は貴方の言葉に、不思議そうに首をかしげる。
『うにゃ〜』
足元に屯していた薄汚れた猫が警戒するように、少女の前に進みでる。
「おいおい、俺は怪しい人物じゃないって」
猫たちに詰め寄られて、何となく自分が悪人になったような気がして一歩後ずさりをする。
「この辺は危ないからさ、俺が家まで送っていってやるよ」
名前は?と尋ねると、少女は小さな声で一言
「アシャ」
とだけ答えた。
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EP1:The First Contact
錆びた鉄の匂いと、古いオイルの匂い。人間社会の荒廃をまざまざと見せ付けるかのような、薄暗マルクトの一角を女は歩いていた。
濡れたように艶やかな真紅の唇は楽しげな笑みの形を作り、少し尖り気味の形の良い耳が流れるような、銀色の髪の間から覗く。遮光バイザーをかけ素顔は見えずとも、その美貌が全身の雰囲気を通して辺りに伝わる。足場の悪い道も危なげなく、高いヒールの音を響かせて歩くその姿に、路地に屯する人相の悪い男達が冷かしの口笛を吹いた。
「姉ちゃん、俺達とあそばねぇか」
「悪いけど、後でね」
ひらひらと片手を振り、相手にせず女は路地裏へ歩みを進めていった。
群れることは嫌い、群れいてる男も勿論嫌い。
「やっぱり、相手をしてもらうなら…可愛い子が一番よね」
男の子でも女の子でも、可愛いなら性別は関係ないわ。と、人気のない路地裏で自嘲気味にくすりと、笑う。女の肩を竦めて見せる些細な仕草さえ、色気を感じさせる。辺りが無人だったのが幸いしたのか、その様子を見ていたものはいなかった。
「あら?」
どこかに可愛い子は落ちてないかしら…と溜息をついた女は崩れかけた教会の傍でふと足を止めた。
「いるじゃない…」
一言呟くとかけていたバイザーを片手で外し、胸ポケットにしまった。バイザーの下から現れた意思の強そうな銀色の瞳は、獲物を狩る獣の様な輝きを放っていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
小柄な少女が教会の壁に体を預けるようにして立っていた。ただ、真っ黒なそらを見上げ。肩までの波打つ髪は、この辺りの子供にしてはよく手入れされ、来ている飾り気のない白いワンピースも悪いものではない。
「なにか面白いものでも見える?」
少女の目線まで身を屈め、女は同じ視点で暗いマルクトの天井を見上げる。
「………」
瞳の大きい金の眼差しが、何か不思議な物のように女を見た。思わず触りたくなるような、この年頃の子供特有のふっくらとした薔薇色の頬。長い睫に縁取られた瞳はくっきりとしていて……
「……お持ち帰りしちゃおうかしら」
美味しそう♪と、思わず女は少女を値踏みした。ウィルスのキャリーとかでもなさそうね……美味しく頂いて、こっちの生死がかかるのも嫌だからと心の中で舌をだす。
「……アシャになにか御用?」
少女はアシャと言うらしい。ことんと、身長の比率に対して小さめの頭を、訝しげに反対側に傾げた。
「あたしは、空。白神 空よ。貴女みたいな可愛い子が大好きなの♪」
「…くう?」
よく意味が分かっていないのか、アシャはきょとんとしている。
「駄目よ、貴女みたいな小さな子がこんな所に一人でいたら」
怖い人につれていかれちゃうかも知れないわよ。たとえばあたしとか。心の中で付け足し、妖艶な笑みを浮かべた空はアシャの小さな頭を撫でた。
「アシャ、一人じゃないよ。皆がいるもの」
ポツリと呟くアシャの声に、アシャの足元で思い思いに寛いでいた猫たちが、まるで同意するように鳴き声を上げる。
「でもこの辺りは治安が余りよくないから、あたしが家までおくっていって上げる」
久々に出会った好みの少女に機嫌が良い空は、あわよくばと小さな下心を隠したままにっこりとアシャの手をとった。
興味を引かれたのか、目線を合わせるために屈んだ空の、艶やかな長い髪に触れ遊んでいたアシャは、一頻り触って気が済んだのか、その言葉にこくっと一つ縦に首を振った。
「ばいばい」
アシャが手を振ると、まるで言葉が分かるかのように、猫たちは悠然とその場から離れていった。
このマルクトには珍しい真っ白な少女。それがアシャに対する空の最初のイメージ。初めて会う空になんの警戒も示さず、大人しく一緒に歩いている。
こっちこっちというように、アシャが飛ぶように前を行く。
「あんまり走ると危ないわよ」
それでなくても、この年頃の子供はバランスが悪くて、よく転ぶのだ。案の定、空の目の前で何かに躓いたアシャが、転ぶ。
「あらあら、大丈夫?」
抱き起こし、ワンピースの埃を払ってやる。折角の白が台無しになっている。転んだ拍子に切ったのか、その軟らかい手の平からうっすらと血が滲んでいた。
「擦りむいちゃったみたいね」
苦笑しながら、空がその傷口に口を近づけた。
「空、汚いよ」
泥がついてる。
「大丈夫、あたしが舐めると早く直るのよ」
引こうとする、手を許さず傷口を丁寧に舐めあげる。
「………ぁ…」
傷のある手の平だけでなく、指の間そして皮膚の薄い白い手首にちろちろと舌を這わすとアシャが小さく声を漏らした。
舐め終えた傷口を持っていたハンカチで結んでやる、結び目が気になるのかアシャは暫く結んだハンカチの端を弄っていた。
「アシャのお家はどこなの」
遠いのかしら?
「……あっち」
すっと、ヘブンズゲートの方向を指差す。
「ふ〜ん…ねえアシャ、あたしと楽しいことしない」
「楽しいこと?」
それはなあに?と仕草でその心を語り、熱に潤んだ大きな瞳で空を見上げる。
「まだ、晩御飯まで時間があるでしょ」
だから…楽しいことを教えてあげる。片手で長い髪を掻き揚げ、空は自分の胸の位置よりも低いアシャの小さな唇に舌を這わす様に口付けた。
「………ん…ふ…」
状況が分からないのか、大きく瞳を見開き空の肩にその小さな手でしがみ付く。たっぷりと時間をかけ、空は少女特有のアシャのその柔らかい唇を味わった。
「……だめ…!」
アシャが空を突き飛ばした。
「だめ。アシャに近づいちゃだめなの!優しくたらいけないの!!」
その瞳に涙を溜め、後も振り返らず少女は駆け去った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「これは……?」
少女の駆け去った後に手の平に収まるくらいの大きさの袋が落ちていた。中を開けると、出てきた物はこの辺りでは珍しい何かの植物の種。
「あの子のものかしら?」
手の平で種を転がし呟く。まるで捨てられた子猫のような瞳をしていた少女。
「……逃げられちゃったわね……」
久々のタイプの子だったのに。残念そうに空は、暗いマルクトの天井を見上げため息をつく。
また会えるかしら……?逃がした魚は大きく感じるものである。
でも……彼女とはまた会うことになるだろう……空の中にはそんな確信のような予感があった。
「次は逃がさないわ……」
獲物を狙う狐のように、妖艶な笑みを口元に湛え。空は喧騒に満ちた街へ消えていった。
【 To be continued ……? 】
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【0233 / 白神・空 / 女 / 24歳 / エスパー】
【NPC / アシャ】
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■ ライター通信 ■
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白神・空様
初めまして、ライターのはると申します。
サイコマスターズ素人のノベルにもかかわらず、御参加ありがとうございます。
空さんの色気に私がめろめろでした(何)
少しお望みのものと違ってしまったかもしれませんが……続きはまた次回をお待ちくださいませ。
当方NPCがお子様なので、少しお時間を頂きたいかと……。(申し訳ありません)
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