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■恋する君へ。■

観空ハツキ
【0322】【高遠・弓弦】【高校生】
 暗く、何処にも繋がらない世界。
 唯一の明りである不可思議な光は、今にも消えてしまいそうなほどか細く弱く。
 忘れてしまいそうになる、何もかもを。
 生きている証であるように輝いていた全ての想いを――今がある理由を。


「恋の話を聞かせて貰えないかしら?」
 閑静な住宅街にひっそりと佇む児童公園。
 赤いビジネススーツに身を包んだ女性が、一人ブランコに揺られて空を見上げる。
「突然何をって思ったでしょ? そうね……人助け、だと思ってくれないかしら? 生きる力を求めてる、そんな少し虚ろになってしまった人間に気合充填して欲しいの」
 おいでおいで、と通りかかったあなたに、彼女は手招きを繰り返す。
 涼やかな印象を与える漆黒の瞳を縁取る目元が、人懐っこく笑い細められる。
「どんな話でもいいのよ。例えば失くしてしまった恋の話でも、現在進行形の片思いの話でも、熱愛中のラブラブな話しでも」
 ラブラブか、と自分で語った言葉がおかしかったのか、赤いスーツの女はくすくすと小さく笑う。
「ま、そんな所につっ立っているのも何でしょ? よかったら、ここにどうぞ」
 示されたのは彼女の隣のブランコ。
 つい先ほどまで誰かが座っていたのか、風もないのにゆらゆらと揺れている。
「私は火月(かつき)、あなたは?」
恋する君へ 〜Happy Of Me〜

 名前を呼んでくれるその声に、物凄い感謝の気持ちを覚える。
「たったそれだけのこと?」
 他の人が聞いたら、笑うかもしれない。だって恋人同士でなくても、それ位のこと当たり前の日常の中の出来事だから。
 けれど――違うのだ、弓弦にとっては。
『……弓弦』
 まだほんの少し照れを感じる声で。他の誰でもない、貴方のその声で。
 名前を呼ばれる――それは、確かに二人がここに存在している揺ぎ無い証。それはこの上なく、幸せなこと。
 たった一年。
 けれど無限の一年。
 貴方のいない世界、それは私が彼を残してきた時間と同じ。
 二人の魂が時空さえも隔たってしまった刻、また巡り逢えると信じてはいたけれど、永遠にも似た闇の中。
 真の再会までは、またさらに十数年。強い想いがあってなお、その時間は決して短いものではなかった。
 だからこそ。
『弓弦?』
 その声だけで、胸の奥が熱くなる。この言葉に出来ないほどの歓喜の気持ち、いったいどれほどの人が理解できるだろうか。
 更なる永遠を誓う想い。
 何があっても、誠実に。ただ彼だけを想い続けて行こうと――それは前世からの約束。


「あら、そこ行く可愛らしいお嬢さん。せっかくだからお姉さんとお話でもしていかない?」
 高遠・弓弦がそんな風に妙なナンパに引っかかったのは、休日の午前中。バレンタインデーを目前に控え、世の女性達が浮き立つそんな時分。
 普段はカトリック系の高校に通う学生である彼女も、大事なその日のための準備の買い出しに出かける所だった。
 普段、バイトバイトと忙しくしている彼に、少しでもたくさん喜んでもらいたい。それは少女の行動を後押しするだけの充分な力になる。
 まだ春には遠い寒空の下、姉に言われて着込んだ厚手のコートの襟元をかじかむ手でそっと押さえた。指の隙間から零れる呼気が、大気に触れて白く輝く。
「……はい?」
 通り掛ったのは閑静な住宅街の狭間にある児童公園。この付近に珍しいチョコレートを扱う店が出来たとクラスメートの話で聞き、ちょっと頑張って遠出をしてきたのだ。
 アルビノ特有の薄い色素。日本人とは思えない煌く銀の髪が、さらりと乾いた風に攫われる。
「何かお急ぎの御用中、かしら? これだけ寒いとなかなか人とも会わないじゃない? なので出会った記念にぜひ少しお話を」
 澄んだ赤い瞳が見つめる先には、真紅のビジネススーツ姿の女性が一人、ブランコに揺られながら弓弦に向って「おいでおいで」と手招きを繰り返す姿。
 年は二十代半ばから後半と言ったところか、凛とした雰囲気はどことなく彼女の姉を彷彿させるものがある。
 だから、かもしれない。
 不審極まりない呼びかけに、弓弦が思わず足を止めてしまったのは。
「さしずめバレンタインデーのお買い物中って所かしら? この時期はやっぱり女の子は大変よね」
 見えない糸に手繰り寄せられるように、弓弦は児童公園内に足を踏み入れた。
 都心では珍しい、剥き出しの大地。靴底から伝わってくるのは、どことなく優しい気持ち。春の芽吹きが息づいているのを期待させるような。
「ささ、どうぞどうぞ。温かい飲み物……は出てこないけど」
 何時いかなる時も油断ならない、とはこの事かもしれない。
 ふっと我に返った弓弦は、いつの間にか自分が見知らぬ女性の隣のブランコに座っている自分に気付いた。
 けれど、何故だか悪い気はしない。
 それはにこにこと邪気のない笑顔で、自分の顔を覗き込む女性の気配のせいだろう。不審かつ強引極まりないのに変わりはないが、纏う空気は学校の礼拝堂に満ちる清浄なそれと酷似している。
 慈愛の精神を持つ弓弦にとっては、とても心地よい空気。
 バレンタイン用の特製チョコケーキの準備も、失敗さえしなければ夕方までに帰り着けば充分間に合うはずだ。
 軽く握り締めたブランコを支える鎖は、ほのかに温もりを秘めていた。つい先ほどまで誰かがこの場にいたのだろうか。
「あの……ここで何をしてらっしゃるんですか?」
 あまり長いこと寄り道をしていると、姉にいらない心配をかける事は分かっていたが、ほんの少しくらいなら。不思議な女性の行動に興味を抱いた弓弦は、小さくブランコを漕ぎ始める。
 キィっと軋む音は、子供の頃に馴染んだ音。
 まだ『運命の恋人』と出会えず、切なさと苦しさと――そして期待に胸を灼いていた頃と同じ。
「あ、そうそう。肝心の目的を話してなかったわね――の前に、私ったらまだ名乗ってもなかったわね。私は火月(かつき)、お嬢さんは?」
 可愛らしい女の子を発見して思わずはしゃいじゃったわ、と火月と名乗った女性は弓弦に向けて右手を差し出す。
 どうやら握手を求められているらしい。
 ここまで来たら彼女のペースに巻き込まれ続けるのもいいかもしれない。自分に害をなすような人物には見えない――どちらかと言うと、初対面だけど親しくなれる予感のする人柄な気がする。
「弓弦……高遠弓弦です」
 ふわりと春を舞う蝶のような軽やかさで、火月の手を握り弓弦は微笑んだ。まるで砂糖菓子のように甘やかな笑顔は、『天使の微笑み』と形容するに相応しい。それは外見から与えられる印象だけではなく、彼女の心が滲み出ているからこその光。
「弓弦さん、ね。良かったら貴女の恋の話を聞かせてもらえないかしら?」
「え?」
 つい先ほど、大切な人に想いを馳せた事をまるで見透かしたかのような火月の言葉に、弓弦の白い頬に鮮やかな朱が走る。
「あら……なんだか素敵な恋をしてるみたいね。それならなおさら是非にお話を伺わなくっちゃ。あのね、これは人助けだと思ってもらえると嬉しいわ。生きる気力を失った寂しい大人に恋の話で渇を入れたいの」

   ***   ***

 『彼』と出会ったのは重厚なパイプオルガンの演奏が響く教会。
 礼拝を終え、立ち上がろうとした瞬間、自分のうっかりで聖書とメモ帳を床に落としてしまった――それを拾ってくれた少年。
 少し前、眠る顔を見た事のある相手だった。
 その日から、決して胸から離れる事のなかったその面差し。
 そして再会――揺り起こされた魂。
 ステンドグラスを抜けて七色に煌く光が、二人の『再会』を祝福の色に教会の中を染め上げた。
 開け放たれた扉から舞い込む風が、淡いグリーンのワンピースの裾を天使の羽ばたきのように軽やかに躍らせる。
 触れた指先から伝わる熱が、希望を確信へと変える――間違いない、彼こそが。
「走り続けた日々が今、報われたんだわ……」
 思わず抱きついた。頬を寄せた胸から、彼の鼓動が直に伝わる。抱き返された肩が、感動の熱に震えるのを止められない。
 それが、前世から結ばれた二人の運命が、現世で再び交差した瞬間。


「……明日は、帰りの早い日だったかしら?」
 自室の壁にかけられたカレンダーを見つめながら、曜日を確認していた弓弦は小さく溜息を零した。
 永い時間をかけて巡り逢えた人。けれど自分には今の自分の生活があるように、彼にも今の彼の日常があった。
 年齢は自分より一つ下。そしてバイト三昧の日々――つまり、いつも忙しくしている。
 だから、ずっと傍にいるなんて事できない。
 出会えなかった日々を思えば、それは贅沢な悩みなのかもしれない。
 膝の上のブランケットを掛け直してから、弓弦は机に肘を乗せる。そのまま頬杖をついて、見慣れた天井を視線だけで見上げる。
 再び零れる吐息。
 本当は片時も離れてなどいたくないのだ――それは叶わぬことだと知ってはいるけれど。でもそれならせめて、少しでも長い間、誰よりも近くにいたいのに。
 カーテンの隙間から覗く夜の帳。白く曇ったガラスの向こうに繋がる世界で、彼は今も忙しなく働き続けているのだろうか。
 桜貝のような爪に、銀の髪を一房絡める。
 そのままくるくると巻き付けて、バラリと解く。何か理由があるわけではない、物憂げな気分を表現した仕草。止めようと思っても、手持ち無沙汰な気持ちが、行ったり来たりで落ち着かない。
「電話は……まだ、だめかしら」
 視界の端に写った携帯電話に、指を伸ばしかけて――躊躇う。
 再会して、メールや電話のやりとりをしている間に知ることが出来たのは、彼の生活習慣。
 今日はまだ、バイトの途中。
 明日なら、電話をしたら出てくれる時間。
 明後日なら、時間に余裕があれば会いに来てくれる時間。
 一つずつ増えて行く彼に関する知識が、二人の距離が徐々に縮まっている事を教えてくれはするけれど、それでもやっぱり会えない時間に切なさは募る。
「メールくらいなら……後で見てくれれば良いし――っ!」
 暫く宙を彷徨っていた手が、思い切りをつけて携帯電話へと向ったその瞬間。
 短い電子音のメロディが、弓弦の室内に高らかに鳴り響いた。まるで彼女がそうするのを待っていたかのような、絶妙なタイミングで。
 驚きで早鐘を打つ心臓を、きゅっと右手で押さえて左手で携帯電話を手に取る。おそるおそる開いたディスプレイには、メール着信の合図。
 暇を見つけて慌てて打ったのか、タイトルは入らないまま。当然、送り主は――
『今、ちょっと外に出た。今日は随分寒いのな。風邪とか引かないよう温かくしとけよ』
 短い簡単なメッセージ。
 たったそれだけなのに、弓弦の目頭が熱くなる。
 生まれついて体の弱い彼女を案じる彼の気持ち。ちょっとした寒さにも、体を壊しやすい事を、もう知ってしまっているから。
 だから、放っておけない。
「もうもうっ――なんてタイミングなのかしら」
 無機質な文字の向こうから伝わる彼の想いに、弓弦の胸を温かく優しい感情が満たしていく。
 メッセージが表示された画面を開いたままの携帯電話を、両手で抱き締め未だ鼓動高鳴る胸に押し付ける。
 不意打ちな、こんな優しさが嬉しい――涙が出るほどに。
 さっきまでのもやもやも、一瞬で吹き飛んでしまう。
 拗ねたように唇を尖らせたのは、照れ隠し。誰かが見ていたというわけではないけれど、一気に上がってしまった体温がどうにもこそばゆくて。
 紅潮した頬を冷ますために、立ち上がり窓際へ近付く。本当は夜風に直に当たりたい気持ちだったけれど、それで体調を崩すような事になっては、彼に会わせる顔がないから。
 こつん、と額を窓に当てて軽く深呼吸。先ほど零してしまった溜息を、こっそり回収するように。
「今度会ったら……」
 どうしよう、なんて未だ決められないけれど、この嬉しさを少しでも返せるように。
 窓越しに振り仰いだ空には、幾星霜の過去から今へと光を届ける星々の瞬き。
 今ではない過去、見上げたそれより数は少なくなっているような気はするけれど、それは確かに同じ物に間違いなかった。

   ***   ***

「前世からの恋人――なんて言ったら笑いますか?」
 ただ穏やかに自身の恋の話を終えた弓弦が、ゆっくりと隣でブランコに揺られる火月に顔を向ける。
 半ば強制的に弓弦を引き込んだ火月ではあったが、弓弦が喋る間はじっと無言で耳を傾けていた。その顔に浮かぶのは柔らかな微笑。
「そんなことないわ。人には人それぞれの繋がりがあるもの――魂のね。迷信だーって笑うヤツがいたらお姉さんがふっ飛ばしちゃうわ」
 そう笑いながら語る火月の瞳に嘘はないと判断し、弓弦の笑顔が更に綻ぶ。まるでそれは、蕾が大輪の花へと移ろい行く様のように華やかであり、そして無限の慈愛に満ちていた。
「小さな幸せなのですけれど、それがとても嬉しいのです。そして……『逢えば分かるから』という約束を、本当に果たせたことが嬉しくて」
 宙に躍らせていた足を、静かに地面へと降ろす。
 暫くは余韻に揺れていたブランコも、水面に弾けた波紋が静まるように、ゆるゆると停止する。
 弓弦は、祈るように合わせた両手をそっと口元に運び、瞳を伏せた。
「不安だってたくさんあります……でも、それら全てをひっくるめて、私は彼のことを愛しているのだと思います」
 誓いにも似た呟き。
 火月に聞かせるための言葉ではなく、それは自身の内側へと向けられたものだったのかもしれない。
 満たされていく想い。
 と、その瞬間。
 劇的に変化した周囲の気配に、弓弦は息を飲んで瞳を開く。
「……これ、は?」
『バッカじゃないの。それっぽっちで幸せなんて信じらんない。それって遠慮とかしてるだけじゃないの? 結局自分がイイ子でいたいだけじゃない? オトコにとって都合のいい女?』
 目の前に忽然と姿を現していたのは、高級そうなブランド物のスーツに身を包んだ女性。宝石類と過剰な化粧で飾り立てられた外見は、彼女の年齢を微妙に読み取りにくくしてしまっている。
「……火月さん?」
 清浄な空気を意図的に汚すような言葉をぶつけられ戸惑った弓弦が、伏目がちに隣で相変わらずブランコに揺れ続ける火月に視線を投げた。
 しかし不躾な乱入者にも火月はまったく動じた様子は見せず、逆に朗らかにすら見える笑顔を弓弦に返す。
「強欲な恋愛者ってところかしら? 貴女の純粋な気持ちと相反する」
 凛と姿勢を正したまま、火月が真っ直ぐに突然現れた女性を指差した。その動きを追うように、もう一度女性に視線を向けた弓弦は、気付いた真実に赤い瞳を大きく見開いた。
「……この方は……現実に存在する人じゃない? 誰かの想いの欠片?」
「さぁ? 詳しい事は分からないけれど。貴女の素敵な恋の話に刺激されて出て来ちゃったって感じ――」
『何、人のこと無視してんのよっ』
 火月の弁を遮り、女性がさらに弓弦へと詰め寄った。
『結局、現状に納得しちゃうのって自分に自信がないからなのよね。女はもっと――』
 言葉が刃となって珠玉の心に傷をつけようと振りかざされる。しかし、それに怯んだ様子もなく、弓弦は立ち上がりふわりと微笑んだ――自分に悪意をぶつけてくる、凝ったな想いの塊りに。
「人には人それぞれの想い方があると思います。だから、貴女のおっしゃる言葉を一概に否定するつもりはありませんが……貴女はなぜ、そんな悲しそうな瞳をされているのですか?」
 しっかりとした足取りで女性に近付き、思いの他細い指の手をそっと取る。
『なっ――何っ!』
「私は貴女が本心からそうおっしゃっておられるのなら、それでいいと思います。けれど……何故?」
 絡んだ指先、流れ込んで来たのは悲しみの思念。
 満たされない心の叫び。
「求めるだけでは、返される事はない。貴女が信じてあげないと……貴女自身の恋心も」
 触れ合った部分から、淡く白い輝きが世界に広がる。視覚化された浄化の光――稀有な癒しの力。弓弦の精錬な心の証。
 弓弦の優しい眼差しに見守られ、唐突に現れた女性は、ゆらりと輪郭を失っていく。
 そして完全にとけ去ってしまう直前、真紅のルージュに彩られた唇が形作ったのは『ありがとう』の言葉。決して音として誰かの耳に届く事はなかったけれど。
「お見事――ってこんな風に言うのは失礼かしらね。でも、ありがとう」
 いつの間にかブランコから離れ、弓弦の背後に立っていた火月が、弓弦の細い両肩に静かに手を置く。
「いえ、これもきっと神様の与えてくれたご縁ですから」
 振り返ろうとして、弓弦は気付く。
 浄化の力は諸刃の剣。受けた傷は彼女の内側へと返り、彼女自身の力では癒すことは不可能なのに。
 今、留めた邪気が火月に接された部分から、吸い取られるように弓弦を清めて行く。
 自分以外の慈愛の心に触れ、目を丸くした弓弦の眼前で、火月がにこりと悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
 離れて一度握り締められた手。再び開かれた時には、弓弦の瞳と同じ色のビー玉が一つ。
「改めて、素敵な恋の話をありがとう。これで気力の萎えてる大人が少し元気になれるわ」
 誰が何をしたというわけではなく、火月の掌の中でビー玉が粉々に弾ける。
 その欠片は、弓弦や火月を傷付けることなく、きらきらとさざめきながら、大気の中へと消えていった。


「不思議な出会い、というのも色々あるのね」
 児童公園の入り口で火月に見送られるようにして別れた弓弦は、少々遅くなったが目的の買い物を終え、家路を急いでいた。
 今なら、昼食までには帰り着く――少し遅い食事になってしまうけれど。
 これ以上遅れて心配をかけるより、と歩む足の速度を少し上げる。
 手にした荷物に、思い描くのは大切な人の少し驚いたような笑顔。
 改まって口にして喋ったりしたものだから、たったそれだけのことに感じる幸福感が、いつもより大きく感じられるのはどうしてだろう。
「そう……これが私の幸せ」
 棘のような言葉に、胸を刺されなかったか、というと嘘になるかもしれない。けれど、自身が放った言葉に嘘はない。
 ふるふるるっと、バッグの中に仕舞い込んであった携帯電話が、バイブレーションでメールの着信を告げたのは、その時だった。
「――そう、私は幸せだわ」


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名】
  ≫≫性別 / 年齢 / 職業
   ≫≫≫【関係者相関度 / 構成レベル】

【0322 / 高遠・弓弦 (たかとう・ゆづる)】
  ≫≫女 / 17 / 高校生
   ≫≫≫【 ― / F】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは。ライターの観空ハツキです。
 この度は『恋する君へ。』にご参加下さいましてありがとうございました。

 高遠弓弦さま、初めまして。以前からコソリと「素敵な方だな〜」と拝見させて頂いておりました者で、ご発注いただいた時ひそかに大喜びしておりました。
 そして、素敵な恋のお話をありがとうございました。きちんと表現できているかは甚だ不安な所なのですが……私の方が癒される気持ちでいっぱいでした。
 なお、発注時にご指定のなかった『対極の恋の形への対処方法』に関しては、此方で判断させて頂いたのですが……雰囲気を壊していないか、どきどきしております。
 見当違いなようでしたら申し訳ございません。
 少しでも楽しんで頂ける部分がある事を、祈っております。 

 誤字脱字等には注意はしておりますが、お目汚しの部分残っておりましたら申し訳ございません。
 ご意見、ご要望などございましたらクリエーターズルームやテラコンからお気軽にお送り頂けますと幸いです。
 それでは今回は本当にありがとうございました。