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■EP1:The First Contact■
はる
【0592】【エリア・スチール】【エスパー】
 都市区画『マルクト』の片隅。何かに惹かれるように狭い路地裏に入り込んだ貴方。
 教会と思われる建物の横を抜けると不意に開けた場所に出た。
 広場の中央に一人の少女。
「お譲ちゃん、こんなところを一人で歩いていると危ないぞ」
 少女は貴方の言葉に、不思議そうに首をかしげる。
『うにゃ〜』
 足元に屯していた薄汚れた猫が警戒するように、少女の前に進みでる。
「おいおい、俺は怪しい人物じゃないって」
 猫たちに詰め寄られて、何となく自分が悪人になったような気がして一歩後ずさりをする。
「この辺は危ないからさ、俺が家まで送っていってやるよ」
 名前は?と尋ねると、少女は小さな声で一言

「アシャ」

 とだけ答えた。
EP1:The First Contact

「まだ、少し早いかしら……」
 稽古用の剣を手にした、エリア・スチールは立ち止まってあたりを見回した。
 時間の流れが曖昧な、マルクトの中にあっても人の流れ等から何となく今の時を察することができる。通りにはあまり人通りがなく、閑散とし飲食店からは下ごしらえでもしているのか、よいにおいが漂ってくる。
 時計を確認するとやはり、お昼にしては少し早い時間をさしていた。
「少し散歩でもしようかな」
 知らない道に入ると、わくわくする。路地裏の小さな探検。
 小道を一本は入っただけで、様子はガラリと変わる。比較的歩きやすかった、メインストリートと違い、所々に水溜りができ、ぬかるんでいる。にごった水に虹色の波紋を描く、なんだかよくわからないオイルを踏まないように慎重に足を進めると、エリアの前に崩れかけ建物が現れた。
「……教会……?」
 壁は崩れ、窓も割れていたが、そっと中に入ると正面に飾られた聖母の像はたおやかな微笑みを浮かべていた。

  カタン。

 小さな物音に、振り返ると一人の少女が壊れた柱の影からそっとエリアの様子を伺っていた。
「あら?」
 この辺りでは珍しい、真っ白なワンピースを着た可愛らしい少女。
「あのぉ〜」
 ここはどこでしょう?
 声をかける間もなく。少女はたっ、と踵を返し駆け出していった。
「あ、待ってください!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 条件反射でエリアは少女の後を追った。
「きゃっ」
 舗装の悪い、路地裏で小石にでも躓いたのか少女は前のめりに転ぶ。
「大丈夫ですか!?」
 あわてて、エリアは少女に駆け寄った。見ると少女の小さな膝からは薄っすらと血がにじみ出ている。
「ふ〜・・・!」
 駆け寄って、少女の傷の具合を見ようとしたエリアをそばにいた猫が威嚇した。大きな瞳いっぱいに涙をためる少女と、毛を逆立て威嚇する猫を前に何だか自分が悪人になったような罪悪感を感じる。
「猫さ〜ん、そんなに警戒しなくても良いですよぉ、わたくしいじめたり致しませんから」
 必死に笑顔を浮かべて見せながら、少女の血をぬぐってやる。そんな、エリアの様子に一先ず警戒を解いた、猫は少女に足元に身を寄せた。まだ完全には信用してくれていないらしい。

「今日は、こんな所で如何したの?」
 傷の手当をするエリアの様子を、じっと少女は身動きひとつせずに見ていた。
「お花あげに来たの」
 見ると少女の手の中には、転んだ拍子に潰してしまったのか、花びらの拉げた一輪の花。
「聖母様にですか?」
 こくりと、大きく頷く。
「わたくしは、エリア・スチールです」
 貴女のお名前は何でしょう?
「…アシャ……」
 少女は小さく、しかしハッキリと名前のつぶやいた。
「アシャ様ですか、いい名前ですね」
 エリアの言葉に、少しだけ恥ずかしそうにアシャは微笑んだ。
「エリアは何をしてたの」
「わたくしは……」
 小さな少女の問いに、エリアは当初の目的を思い出した。
「剣の稽古をするつもりだったんですけど……また今度でいいです」
「アシャの所為?」
「違います!」
 あわてて、首を振った。
「たまには、お休みも必要ですから」
 今日はおさぼりです。と、内緒話をするようにアシャの耳元でこそっとささやいた。
「でも、マルクトでお花なんて珍しいですね」
 少女の手の中にある花を見る。物珍しそうに、見るエリアの様子に、アシャが不思議そうに首をかしげた。
「そうなの?」
 アシャの、おうちにはいっぱいあるよ。
「そうなんですか?」
 土地柄、少女一人を帰すには不安を覚え家まで送ってやることにしたエリアがその小さな手を引く。
「うん」
 ぽつぽつとだが、アシャはエリアの質問に答えてくれた。
「羨ましいです」
 二人は、薄暗い裏路地をいろいろな話をしながらあるいていった。

「きゃぁ!」
 突然何もないところで、エリアが躓いて転ぶ。
「だいじょうぶ?」
 エリアも転んじゃったね、おかしそうに笑いながらアシャが小さな手を伸ばしてきた。
「はぃ……」
 辺りを見まわしても何もない平坦な道。自分のドジさ加減に恥ずかしくなってエリアは、赤くなって俯いた。躓いたときにぶつけたのだろうか、手のひらが赤くなっていた。
「アシャ様?」
 何もいわずに、少女は髪を結んでいた、淡いグリーンのリボンをエリアの手のひらに結わえ付けた。
「エリアもアシャと一緒だね」
 にこっとはじめて満面の笑みを見せてくれた、少女の足元で猫も口元を笑うように吊り上げ
「うにゃー」
 と一声あげた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ヘブンズドアが近くなったとき、アシャはエリアの手を離した。
「ここまでで、大丈夫」
 アシャのおうちは、この近くだから。
「本当に大丈夫ですか?」
 この先もまだ暗がりが続いている。
「うん、バイバイ」
「待ってください!」
 そのまま駆け去ろうとするアシャを、呼び止める。
「また会えますかねぇ?わたくしこの子も好きなのですがぁ、アシャ様の事も好きになってしまいましたわ」
 どこに行けば会えますか?アシャの足元の猫を指差し、たずねると小首を傾げてアシャはしばらくかんがえる素振りを見せた。
「エリアが、アシャのことを覚えてくれたらまたあえるかもしれない」
 でも、どうだろうね?と足元の猫の顔を覗き込み笑いあう。
「じゃあ、わたくし絶対にアシャ様のことをわすれませんから……そしたら会えますね!」
 その言葉に走り出した少女は、一度だけ振り返り笑顔を見せた。

「またね、エリア」




【 To be continued ……? 】



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス】


【0592 / エリア・スチール / 女 / 16歳 / エスパー】

【NPC / アシャ】


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■         ライター通信          ■
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エリア・スチール様

ゲームノベルEP1へご参加いただき、ありがとうございます。
エリアさんも転ばれるということで、いつの間にか話の流れの中でアシャと同じ少しドジッ子にしてしまいましたが・・・(マテ)
いかがでしたでしょうか?
アシャとの再会が果たされるかどうか・・・は、まだ私にも皆目見当がついておりませんが、アシャの方は少しエリアさんが気になるようです。
またのご参加お待ちしております。