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■獣達の啼く夜sideβ■

水貴透子
【2512】【真行寺・恭介】【会社員】
誰か、あたしを助けて。
そうずっと願っていた。
だけど、誰も助けてくれる人はいなかった。
あの時以上の地獄なんてあるわけないと思っていた。
だけど、あの時の出来事は地獄の始まりに過ぎなくて
更なる悪夢があたしに襲い掛かってきた。
だから、あたしはもう助けを待たない。
待っても救いの手を差し伸べてくれる人なんていなかったから。
地獄がくるなら来るがいい。
あたしは全てを受け止める事にしてやる。
今のあたしに怖いものなどない。
だから、あたしは後ろを振り返ることなく前に進む。
その先に何があるのかは分からないけれど。


※※始まりの第一夜※※


その日は激しい雨が降りしきる夜だった。
尭樟生梨覇(たかくす おりは)と雪沢海斗(ゆきさわ かいと)は公園の前で震えながら座っている少女を見つけた。
その少女の瞳は闇夜の中でもはっきりと分かるくらいの赤い瞳。
「あなた、どうしたの?」
なにやら普通ではなさそうな少女に生梨覇が問いかける。
「家出少女にしては変だな」
海斗も少女の顔を覗きこみながら言う。
だが、その瞬間、少女の身体がグラリと揺れ前のめりに倒れこんできた。
「お、おい!」
水溜りに倒れこむところを海斗が抱きとめる。
「…おい、こいつ…牙がある…」
苦しげに息を吐く少女から見え隠れするのは肉食動物のように尖った牙、犬歯にしては鋭すぎる。
「どうしたものかしらね」
生梨覇が困ったように言うと暗闇の中一人の人影が二人の視界に入ってきた。
「あら、お久しぶりね」
「何だ、あんたか。そういえば…あんたの家がこの近くだったよな。行き倒れの人間見つけたから連れて行ってもいいか?」
こうして一人の少女を拾ったのだが、キシキシと軋む運命の歯車の中に巻き込まれたことなどこの時の自分は思いもしなかった…。
獣達の啼く夜sideβ

オープニング

誰か、あたしを助けて。
そうずっと願っていた。
だけど、誰も助けてくれる人はいなかった。
あの時以上の地獄なんてあるわけないと思っていた。
だけど、あの時の出来事は地獄の始まりに過ぎなくて
更なる悪夢があたしに襲い掛かってきた。
だから、あたしはもう助けを待たない。
待っても救いの手を差し伸べてくれる人なんていなかったから。
地獄がくるなら来るがいい。
あたしは全てを受け止める事にしてやる。
今のあたしに怖いものなどない。
だから、あたしは後ろを振り返ることなく前に進む。
その先に何があるのかは分からないけれど。


※※始まりの第一夜※※


その日は激しい雨が降りしきる夜だった。
尭樟生梨覇(たかくす おりは)と雪沢海斗(ゆきさわ かいと)は公園の前で震えながら座っている少女を見つけた。
その少女の瞳は闇夜の中でもはっきりと分かるくらいの赤い瞳。
「あなた、どうしたの?」
なにやら普通ではなさそうな少女に生梨覇が問いかける。
「家出少女にしては変だな」
海斗も少女の顔を覗きこみながら言う。
だが、その瞬間、少女の身体がグラリと揺れ前のめりに倒れこんできた。
「お、おい!」
水溜りに倒れこむところを海斗が抱きとめる。
「…おい、こいつ…牙がある…」
苦しげに息を吐く少女から見え隠れするのは肉食動物のように尖った牙、犬歯にしては鋭すぎる。
「どうしたものかしらね」
生梨覇が困ったように言うと暗闇の中一人の人影が二人の視界に入ってきた。
「あら、お久しぶりね」
「何だ、あんたか。そういえば…あんたの家がこの近くだったよな。行き倒れの人間見つけたから連れて行ってもいいか?」
こうして一人の少女を拾ったのだが、キシキシと軋む運命の歯車の中に巻き込まれたことなどこの時の自分は思いもしなかった…。


視点⇒真行寺・恭介


「遺伝子操作の研究…?」
 仕事が終わって帰宅するところを上司に呼び止められ、内密にと仕事の依頼をしてきた。
 内容は最近極秘に遺伝子操作の研究をしている組織がある、機会があったらその研究の正体と成果を探るようにとのこと。
「分かりました」
 断る理由もなかったし、恭介自身も少しだけ興味があったのでその仕事を受ける事にした。
 その帰り道だった、彼女を見つけたのは…。


「調子はどうだ?」
 あの公園の前で尭樟生梨覇と雪沢海斗に出会ってから数時間が経った。恭介が普段使っているベッドの上では一人の少女が苦しげに息をしている。
 最初に公園で彼女達を見つけて、自宅に連れて行くより病院に行ったほうがいいんじゃないか?恭介はそう言いかけて言葉を止めた。何故なら少女の口から見え隠れする鋭く尖った牙、そして意識があるのかないのか分からない瞳は赤く染まっていたからだ。顔立ちから見て外人というわけでもないだろう。
 これは普通じゃない、東京に潜む闇の一つかもしれないし、何より自分の仕事のプラスになるかもしれないと考えた恭介は自宅に連れてくることを了承した。
「熱はまだ下がらないわ。薬を飲ませようと思ったんだけど飲もうとしないのよ」
 生梨覇が困ったように言うと、海斗も同じくやれやれと溜め息をついた。
「…う…」
 その時、少女の閉ざされていた瞳が開き、その瞳に三人を映し出す。
「…あんた達は誰…」
 頭を押さえながら、威嚇するように少女は三人と距離を取った。
「あ、あいつらの追っ手?」
「あいつら…?」
 恭介が少女の言葉に疑問を感じて聞き返すと少女は「違うのか…?」と安心したように呟いた。
「とりあえず、命の恩人に礼くらい言ってもバチは当んないと思うぜ」
 海斗が言うと少女は慌てて「悪かった…」と言葉を返してきた。
「…自己紹介もかねて話を聞いてもいいか?」
 恭介が言うと少女は唇を噛み締めながら俯いた。それは何かに怯えているようにも見えた。
「…あたしは…優。小日向…優。ひとつ聞いてもいいか?あたしは『何』に見える?」
 優と名乗った少女の言葉に生梨覇と海斗は顔を見合わせた。ただ一人、恭介のみが椅子に座ってジッと優を見ていた。
「何…ってどういう意味かしら?人間にしか見えないわ」
「確かに、まさか人間じゃないとでも言うつもり?」
 海斗の言葉に「その通りだよ」と小さく優は呟いた。
「あたしは人間だった。だけど…もう人間じゃない。…ある製薬会社の実験体で…遺伝子を操作されて…」
 優の言葉にピクリと恭介の指が震える。今、目の前の少女は遺伝子操作で人間ではなくなった、確かにそう言った。恭介の頭の中に上司の言葉が蘇る。
「詳しく話を聞かせてもらおうか」
 恭介が優が寝ているベッド脇まで行くと椅子を持ってきて腰掛ける。優はギュッと布団を握り締めながら「助けてもらったしね…」と溜め息混じりに呟きながらポツリと話し出す。
「西脇製薬会社って知ってる?そこでは警察や政府が絡んでの極秘に行われた実験があったんだ。…それがビースト・プロジェクト。人間と動物の遺伝子を混ぜ合わせて最強の兵器を作り出す計画。その被験者の中にあたしがいたんだ…」
 その時のことを思い出したのか優は肩を小刻みに震えさせながら話している。
「色々な薬を飲まされて、電流を流された事もあった、そして…一人の被験者が暴走したんだよ。その被験者を押さえ込むので研究所は大騒ぎになって、あたしはその隙をついて逃げてきた」
 優は自分を落ち着かせるためか大きく深呼吸をした。
「あたし、出て行くよ。ここにいたら研究所からの追っ手もあるだろうから迷惑をかけることになるし」
仕事のためにはこの少女と共に行動する事が一番効率がいい。そう考えた恭介は出て行こうとする優を呼び止めた。
「出て行ってどうなる?また倒れてさっきの繰り返しだろう、それよりはここにいた方が安全じゃないのか?あいにくと俺達は心配されるような弱い人間じゃない」
 恭介の言葉に生梨覇と海斗も頷く。
「あたし…いてもいいの?」
 優は瞳に涙を溜めながら小さく、消え入りそうな声で呟いた。
「勘違いをするな、これは俺のためでもあるんだ」
 恭介はそれだけ言うと別室へと消えていった。
「まぁ、よろしくね」
「ま、あんたに何かあったら守ってやるからさ」


 〜別室にて〜
「西脇製薬会社…か」
 恭介の知る限り、西脇製薬会社とは小さな会社だ。とても政府や警察の人間が極秘のプロジェクトを任せるような会社には見えない。
「…普段の姿はカモフラージュ…か?」
 恭介は溜め息と共に言葉を吐き出し、背もたれに体重を預ける。そのせいで椅子はギシと軋んだ悲鳴を上げた。
 真実がどちらにしろ、調べてみる価値はありそうだ。
 だけどこの時、恭介はまだ気がついていなかった。上司の依頼を受け、優という少女を拾った事によってこの後の恭介の運命が大きく変わっていく事に…。
 窓の外には丸い月が全てを見透かしたように鈍い光を放っていた…。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2512/真行寺・恭介/男性/25歳/会社員

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■         ライター通信          ■
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特別出演
東圭真喜愛様よりお借りしました⇒『尭樟生梨覇』
風深千歌様よりお借りしました⇒『雪沢海斗』

★★★★★★
真行寺・恭介様>

いつも本当にお世話になっております^^
『獣達の啼く夜sideβ』を執筆させていただきました瀬皇緋澄です^^
今回の『獣達の啼く夜sideβ』はいかがだったでしょうか?
設定等も自分なりに気に入っているのですが…どうだったでしょうか?
少しでも楽しんでくださると幸いです^^
どうか、第二話でもお会いできる事を祈っております^^

            −瀬皇緋澄