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■闇風草紙 〜特別編〜■

杜野天音
【2187】【花室・和生】【専門学校生】
闇風草紙 〜バレンタイン物語〜

□女性PC用オープニング□

 彼に会って、何かが変わった。それは何だろう?
 街の飾りや店先のディスプレイ。世の中は聖なるバレンタイン。
 伝えなければ。
 これからどうなるかは分からない。でも――。
 想いを伝えなければいけない気がする。

 熱い頬はきっと貴方を想うから。

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□男性PC用オープニング□

 そこにいるのが不思議だ。
 彼という存在を認めた時に、どんな風に世界は変わったんだろう?
 魅了される。
 なんて言葉を男に使うつもりはない。けど。
 一緒にいる時の空気は嫌いじゃない。――そんな気がする。

闇風草紙 〜バレンタイン物語〜

□オープニング□

 彼に会って、何かが変わった。それは何だろう?
 街の飾りや店先のディスプレイ。世の中は聖なるバレンタイン。
 伝えなければ。
 これからどうなるかは分からない。でも――。
 想いを伝えなければいけない気がする。

 熱い頬はきっと貴方を想うから。


□手のひらペリドット――花室和生

 キラキラと眩しいのは、あなたの瞳。
 私を見詰めるあなたの真っ直ぐな青。



 もうすぐバレンタイン…だなぁ。
 未刀くんってチョコ好きかな?
 好き…だよね。だって甘い物食べてる時、すごく幸せそうだもの。
 うーん、何作ろう。

「――生、和生! 手、止まってるよ」
「……え? あわわっ、ごめん!!」
 しっかりしてと、友人が溜息をついた。手にしたボールの中には泡立て途中の生クリーム。慌てて再開する。けど、また考えてしまう。そんなに長くない私の人生の中で、男の人にチョコレートをあげたことは数えるほどしかない。
「しかも、お父さんと近所のお兄ちゃんだもん…ね」
 呟いていることに気づかず、また友人に笑われてしまった。
「ほんと、和生ここのところ変だよ? な〜んか浮かれてるっていうか、フワフワしてる」
「えっ…そ、そうかな。普通だと思うんだけど」
 友人が首を横に振った。
「絶対違う! うーんと、1ヶ月前くらいから1人で真っ赤になったり、青くなったり百面相してるしさ。特に昨日辺りから、ぼーーーーーっとしてるの気づいてた?」
 私は困った笑顔を作るしかなかった。理由なんてすぐに分かる。未刀くんに出会ってから、私の心はいつも彼のことばかり考えているから。

 今、彼は私の管理している六花荘に住んでいる。つまりは壁ひとつ隔てて、同じ家に住んでいるようなモノ。彼の息遣いやちょっとした仕草まで、逐一気になってしまう私が確かに存在していて……。
 ドキドキしてしまう心を彼は知っているんだろうか?
「あの…ね。男の人って、どんなお菓子もらったら喜んでくれる…かなぁ。えっと、あの…私のことじゃなくて…その」
「はいはい。好きな人ができたのね。のんびりな和生しては頑張ってるじゃない♪ もちろん本命なんでしょ?」
「う、うん…。で、どんなのが好きだと思う?」
 料理の専門学校に行っているだけあって、私の友人はお菓子作りが好きな子ばかり。きっと良いアイディアを持っているはず。
 でも、友情は厳しい。
「そういうのはね、自分で考えなさい。ま、甘いモノが好きな人なら、なんでもいいんじゃない? 特別なんだって、きちんと伝えられればそれでいいのよ」
「と、特別!? そ…そ、そうだよね……」
 そうなのだ。今までこんな気持ちでバレンタインにチョコを贈ろうとしたことはない。こんな、強い好きという気持ち。
 私は何を贈るのか迷いながら、授業を受けた。

                    +

 色々悩んだが結局、一番シンプルなチョコレートになってしまった。
「未刀くん…にあげても変じゃないよね……。バレンタインデーって知ってる…かな?」
 自己確認してみる。テーブルの上には彼の瞳の色に合わせた青い包装紙とリボン。丁寧に包んでプレゼントの完成。手にしてみて初めて、未刀くんに好きだと伝えるんだという現実感を帯びる。声に出す勇気がないかもしれないから、一応カードも書いておいた。でも、飽くまでも声が出なかった時の保険。入れるのは考えてしまう。言葉はすぐに消えるけど、カード後から読み返されてしまう可能性が高いからだ。
「そ、そんなの恥ずかし過ぎるもの……」
 緊張が全身をかけめぐった。
 指先が震える。彼が住んでいる方角の壁へそっと手のひらを当ててみた。未刀くんがすぐに存在を感じられる場所に居てくれることが嬉しい。すこし気持ちが楽になった。意を決して、私は服を着替えた。前日からコーディネイトしたとっておきのワンピース。

 ――夕暮れ。
 星がもうすぐ瞬く頃、私はようやく彼の部屋のドアをノックした。
「はい…和生?」
「あっ! は、はい!」
 気づいていたのだろうか?
 すぐに声がして、私の方が訪ねたのに不恰好な返事をしてしまった。
 扉を開けた彼。黒いハイネックにジーンズ。シンプルな服装なのに、どうしてこんなにカッコいいんだろう……。目の前がぼんやりと霞む。
「和…生? どうかしたのか? こんな時間に」
「……え? あ…うん。ええと」
 声を掛けられて我に返った。チカチカと星が舞う。何を言うつもりだったのか、緊張しすぎてよく分からない。辛うじて、手にしたチョコのことだけ思い出した。カードのことなど思い出す余裕はない。掠れた声を懸命に操る。
「あの……あの、これ受け取って」
「何?」
「お菓子なの…チョコ。好き、だよね?」
 自分で言っておいて、『好き』という単語に心臓が跳ね上がった。顔が一気に赤くなるのを感じる。私は慌ててしまった。

 ど、どうしようっ〜!
 変に思われちゃう……。静まれ、心臓。

 動悸が納まる気配はなくて、私は未刀くんが手を差し出してくれていることに気づかなかった。
「それ…もらっていいのか? ずっと抱きしめてるけど……」
「あ、うん! ど、ど、どうぞ!!」
 目を閉じて念入りにラッピングしたチョコを渡した。すっと手の平が軽くなって……。

 あ、受け取ってくれたんだ!

「よかった。これ私が作っ――」
 顔を上げた瞬間。頬に軽い感触。それがキスだと気づいて、私はへたり込んでしまった。
「……………………///////!!」
「な、何か間違ったか?」
「あの…いゃ、そう…じゃ……なくて……」
 ニの句を続けることができない。だって、突然過ぎる。いつもいつも、彼には驚かされてばかり。
 口をパクパクしていると、彼が言った。
「相手を……好き……な時、こうするので間違ってない…か?」
 優しい腕が私を立たせてくれる。私はこれからどうすればいいんだろう。恥ずかし過ぎて、嬉し過ぎて思考回路が機能してない。

 ただ、眩しく光るあなたの瞳。
 きっと私の瞳も瞬いているわ。
 手のひらの乗せて、どこへでも運んで――。

 ドアはパタンと閉じられた。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)      ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

+ 2187 / 花室・和生(はなむろ・かずい) / 女 / 16 / 専門学校生

+ NPC / 衣蒼・未刀( いそう・みたち) / 男 / 17 / 封魔屋(逃亡中)

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■         ライター通信                   ■
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 お久しぶりです♪ ライターの杜野天音です。
 わぁ〜和生ちゃんを書けて本当に嬉しいです♪ 今回は(も…笑)大胆な未刀を書かせてもらいました。多分ね、和生ちゃんから――ということには絶対にならないような気がしたので(*^-^*) このシーンの続きは妄想補完で(笑)
 今回バレンタイン物語は全て石の名前がついてます。「手のひらペリドット」のペリドットは和生ちゃんの瞳の色。で――そりゃもう、未刀が手のひらに乗せて持ち運びたくなってしまうほど可愛い和生ちゃん。という意味です(>v<)""
 ではでは、短いお話ですが、参加して下さってありがとうございます♪
 プレゼントをつけておきました。どうぞ、大事にしてやって下さい★

 次に企画がありましたら、ぜひご参加下さいませ。