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■闇風草紙 〜特別編〜■

杜野天音
【1913】【麗龍・公主】【仙姑】
闇風草紙 〜バレンタイン物語〜

□女性PC用オープニング□

 彼に会って、何かが変わった。それは何だろう?
 街の飾りや店先のディスプレイ。世の中は聖なるバレンタイン。
 伝えなければ。
 これからどうなるかは分からない。でも――。
 想いを伝えなければいけない気がする。

 熱い頬はきっと貴方を想うから。

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□男性PC用オープニング□

 そこにいるのが不思議だ。
 彼という存在を認めた時に、どんな風に世界は変わったんだろう?
 魅了される。
 なんて言葉を男に使うつもりはない。けど。
 一緒にいる時の空気は嫌いじゃない。――そんな気がする。

闇風草紙 〜バレンタイン物語〜

□オープニング□

 彼に会って、何かが変わった。それは何だろう?
 街の飾りや店先のディスプレイ。世の中は聖なるバレンタイン。
 伝えなければ。
 これからどうなるかは分からない。でも――。
 想いを伝えなければいけない気がする。

 熱い頬はきっと貴方を想うから。


□金と青のリズム――麗龍公主

 崑崙山というのだった。僕はまた、龍華に連れられて異界の山へ来ていた。少ししか日数が経過していないのに、すでに春の装い。花が咲き乱れ、木々の葉は緑濃く美しい。
 東京の寒さが嘘のように暖かな陽射し。僕は澄んだ空気を吸い込んだ。開かれた窓から望む風景がのどかに時を刻む。部屋の奥では、龍華がお茶を用意してくれている。カチャカチャと響く音が安堵を誘った。
 すべてが整った時間。ただひとつ僕にはよく分からないのが、龍華がここに僕を連れて来た理由だった。以前は天鬼を封印してしまったことなどで気持ちの整理が出来ていない時に、休みをくれるつもりで連れてきてくれたようだったが。今はどんな理由があるというのだろう。
 お茶を持ってきた彼女に尋ねると、
「だ・か・ら、バレンタインじゃからじゃよ」
 クスクスと笑いながら、龍華が僕の額を小突いた。勧められるままに出されたお茶を飲む。香ばしい香りが立ち込めた。
 バレンタインという聞き慣れない言葉。尋ねてみるのもどうかと思案していると、お茶を飲み終わった龍華に腕をひっぱられた。慌てて、湯のみを机の上に置く。
「ちょっ…、どこかに行くのか? あの…手を取らなくても歩ける」
「未刀はすぐに逃げるからの♪ 流れ星を見た大樹のところへ行かんか?」
「あの川を渡ったところ…? 別に構わないけど――っていうか、そ…そんなにくっつてい歩かなくても……」
 困ってしまう。
 戸口を出て歩き出したのはよかったが、僕の腕にしっかりと龍華の腕絡みついていたから。どうにも歩きづらい。それは嫌なのではなくて。

 ――なんか、胸が苦しくなる。
    心臓の音がうるさい……。

 鳴り止まない鼓動。こんな気持ちになるのは、彼女の前だけだ。わずかな強引さに、抵抗できない自分に驚いていた。
 出会った時から彼女の僕に対する扱いは変わっていない。けれど、僕の方は自分の理性と行動に差異が生まれている。心を許してはいけない。関わってはいけない。そうすることで、彼女を自分の運命に巻き込まなくても済む――そう考えていたはずなのに。
 嬉しいと思う。
 腕を取られ、龍華の体温を傍に感じながら歩く。そんな他愛ないことが、胸を熱くするから。

 彼女の長い髪が暖かな風に運ばれて、僕の頬を撫ぜた。甘い香りは野の花からだろうか? それとも龍華の発する香りなのだろうか?
「ほれ、ここに座れ」
「え…また?」
 柔らかな草の上に座った龍華が、ポンポンと膝を叩いた。以前、星を一緒に見たときと同じ、膝枕というもの。照れくさくて躊躇していると、困ったような哀しげな目をされた。僕は慌てて頷いた。
「わ、わかった……。龍華は僕が頭を乗せても痛くないのか?」
「痛とうないから、早よう」
「ああ……」
 慎重に位置を選んで、寝転ぶ。空を見上げると、夜とはまた違う木漏れ日が差し込んでくる。光の小宇宙。
 眠くなるのは、安心するからだろうか?

 さやさやと風が流れる。
 時間という概念すら、忘却の彼方。
 耳を澄ますと、自分の心臓の音と龍華の心臓の音がリンクしていくのを感じた。トクトクと脈打つ体。生きているという実感。それは今まで感じたことのない感覚だった。龍華に出会って、人の暖かさを知った気がする。
 避けねばならないと信じていたのは偶像。まやかしの規律。彼女の奔放な生き方を目の当たりにすればするほど、自分という器の小ささを知った。逃げることでしか解決できないと信じていたように。
「のう…未刀。今日が何の日か知っておるか?」
「……え? 今日は何か特別な日なのか? もしかして、ここに来た理由もそれ…なのか?」
「そうじゃ♪ ほれ、バレンタインじゃから……チョコじゃよ、甘く作っておいたから安心せい♪」
「これを渡すために?」
 ただそれだけの為に、彼女が好きな場所に僕を連れてきたのだろうか?
 他に何か意味があるのか……。
「未刀に渡したかったのじゃ。この場所で。バレンタインは女が男に愛を告白する日じゃからな」
「え…」
 僕は絶句した。返す言葉がない。変に顔が熱い。
 胸の上に、小さな箱が置かれた。手作りなのだと龍華が言った。料理なんてするんだ――そんな感想を思い浮かべながら、思考は別次元へ飛ぶ。彼女の言葉の真意を読み違えてないだろうか?
 結局、言葉の理由を尋ねる勇気もあるはずもなく、光を遮って僕の頭上にある龍華の顔を見詰めた。途端、彼女が照れくさそうに視線を逸らした。しばらく空を見上げた後、決心したように見詰めてくる。今度は僕が照れくさい。
「えっとの……未刀……ちょ、ちょっと目を瞑ってくれんか?」
 龍華が言った通り、僕は目を閉じた。
 この行動に何か意味があるのかと考えていた瞬間、僕の唇に暖かなものが触れた。驚いて、目を開けると間近に龍華の顔。花にも似た甘い香りが鼻腔をくすぐる。

 重なるのは唇。
 離れて、残る熱い吐息。

「………………りゅ、龍華!?」
「口付けじゃ♪ あまりにも可愛かったのでの」
 言葉をなくしていると、龍華が続けた。
「ずっと傍におるぞ。私は未刀が愛しくてたまらん。淋しければ胸を貸すし、涙くらい拭いてやる。他の誰にも出来なくても、私にはなんでも言ってくれていい。未刀には笑っていて欲しいのじゃ」
「龍華……」
 唇に残った熱。あれは彼女の想いだったのだ。
 僕を心配する声。
 僕を安堵させる声。
 僕の心を戸惑わせる声。
 だから、言葉を返そう。優しい言葉をくれた龍華に。
「ごめん。…情けなくて。誰かが傍にいてくれるのが、こんなに嬉しいとは思わなかった。えと…違うな。多分、誰かじゃなくて、龍華だからなのかもしれない」
「未刀……。そうじゃと、嬉しいのう」
 髪を優しく撫ぜられた。くすぐったい気持ち。考えなければならないことはたくさんある。けれど今は忘れる。
 そうすることが、龍華に対する感謝の形。笑っていたい。できるならば。できる限り。

 自然に綻ぶ笑顔は、彼女のくれたモノだから。
「龍華」
 呼ぶ声。答える声。陽射しの金色が織り成す、青空のリズム。世界はこんなにも光に満ちていたのだ。
 気づかせてくれたのはきっと――。


□END□

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

+ 1913 / 麗龍・公主(れいりゅう・こうしゅ) / 女 / 400 / 仙女&死神【護魂十三隊一番隊隊長】

+ NPC / 衣蒼・未刀( いそう・みたち) / 男 / 17 / 封魔屋(逃亡中)

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■         ライター通信          ■
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 遅れてしまい申し訳ありませんでした。ライターの杜野天音です。
 なんだか一番甘くなってしまった龍華ノベルです(>v<)"" プレイングのせいもありますが、もちろん公主の手腕によるもの(笑) 戸惑いつつも、未刀も自分の気持ちを自覚し始めているようです。口付けの後、きっと照れくさかったことでしょう……頑張れ未刀。
 プレゼントを用意しました。大切にしてもらえると嬉しいです♪
 本編がなかなかオープンできずすみません。こちらも合わせて、またご参加下さい。今回は特別編にご参加下さりありがとうございました(*^-^*)