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■Calling 〜小噺・演目〜■

ともやいずみ
【3524】【初瀬・日和】【高校生】
 よくわからないのだが。
 たまたま助けた相手が劇団員で、どこかで公演するのに人数が足りないとかで。
(……どうして)
 手伝ってと頼まれて、了承してしまったのだろうか……。
 あと一人、人手がいるとか……。
(…………)
 嘆息するしかなかった……。


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■当方のNPC、遠逆和彦、遠逆月乃、どちらかと共に劇を成功させてください。
NPCに頼まれて劇に参加することになった。
困っているNPCを見つけたので、手伝うことにしたなど。とにかく手伝って劇を成功させることが目的となります。
演じる劇と配役によっては、親密度があがったりします。積極的にNPCを助けることも親密度をあげることになります。

■どんな劇を演じるか(童話など、既存の話は誰もが知っているものでお願いします)、NPCにはどの役を演じさせるか、あなたはどんな役を演じるかを決めてください。
オリジナルの劇ならば、どういう話でということは必ず書いておいてください。
ライターにお任せでもいいです(「恋愛もの」「熱い青春もの」などの指定さえあれば良いです)

■完全個別受注となっております。

■初対面の方は初対面として描かせていただきます。

■内容はコメディか、ほのぼのなものになりそうです。(憑物封じは基本的にしませんので、戦闘はないと考えてください)

■参加NPC・世界観については、下記URL「東京怪談〜異界〜」を参照下さい。
 □Calling 〜捕縛連鎖〜
  http://omc.terranetz.jp/creators_room/room_view.cgi?ROOMID=1258
Calling 〜小噺・演目〜



 初瀬日和は書店へと足を踏み入れた。自動ドアをくぐって中に入り、お目当ての棚へと向かう。
(えっと……雑誌は……)
 と、足を止めた。見知った人物をいま、視界の隅で見かけたような。
 一歩。二歩。三歩。
 戻ってから、そっと棚と棚の間を見遣る。奥にある児童書コーナーで、眉間に皺を寄せたその人がいた。
(…………)
 珍しい……というか、想像もしなかった光景だ。
(和彦さん……ですよね)
 黒のジーンズに赤のラインの入った黒いパーカー姿の遠逆和彦は、絵本が並べてある棚を睨みつけている。かなり異様な光景だ。
 日和は足早に近づき、横にそっと並ぶ。彼の視線を追うと、一冊の本で止まっている。
(シンデレラ……?)
 なぜそんな本を?
「初瀬さん?」
 びく、として横を見上げる。横目で彼がこちらを見ていた。
「か、和彦さん……」
 照れたように苦笑する日和。目を細めて彼は嘆息する。
「お、お邪魔してしまいましたか……?」
「いや、べつに」
「あの、どうして和彦さんがここに?」
「ちょっと頼まれ事があって……」
 はあ、と大仰に嘆息する和彦の様子に、日和はきょとんとする。大抵のことは冷静に対処しそうな彼が、どうしてここまで悩むのだろうか。しかも児童書のコーナーで。
「あの……よければお話をきかせてください」
「この間、偶然なんだが車に轢かれそうな人を助けた」
「そうなんですか? お手柄ですね、和彦さん」
「……そう思うか?」
「はい」
 颯爽と助ける様が想像できる。
「妖魔と戦っている最中で、突き飛ばしただけだとしても?」
「…………」
 無言になる日和は、どうしていいかわからず硬直した。
「そのせいか、車からは助かったが電柱に腕をぶつけてな。腕が折れた」
「ええっ!?」
「で、その代打で劇に出ることになったんだ……。よくわからないが、どうしてもと必死に頼まれてな」
「そうなんですか……。でも、その気持ちわかります」
 和彦が顔をこちらに向ける。
「だって、和彦さんは顔が綺麗ですから。王子様の役なんてぴったり…………」
 声が途中で小さくなった。
 そうだ。
 彼の顔はかなり整っている。こんな間近にあれば、それは尚更……。
 かあああああ、と顔が赤くなっていく。慌てて両頬を手でおさえた。
(そ、そうでした……和彦さんは、こんなにかっこいい人でした……)
 不思議そうにこちらを見る和彦をちらっと一瞥するものの、すぐに視線を逸らす。
 いつも出会う時は学生服だったため、そこまで意識はしていなかった。私服だからこそかもしれないが、彼はそこらの芸能人以上に目立つ存在なのだ。気配さえ消していなければ。
「顔が赤いが……大丈夫か?」
 そっと、和彦が日和の額に手をおく。
「ひゃああ!」
 悲鳴をあげる日和に驚いて、和彦は慌てて手を引いた。
「す、すみません和彦さんっ」
「い、いや……」
 複雑そうな顔の和彦は、引いた手を眺め、苦笑する
「いいんだ。俺に触れられるのが嫌だったんだろ? 平気だ。そういうのは慣れているから」
「ちっ、違います!」
 激しく否定する日和の頭はかなり混乱していた。
「和彦さんが嫌だったわけではないんです。その、考え事をしていて、それで驚いたんですっ」
「……そ、そうか。そんなに勢いよく言わなくても……」
 戸惑う和彦に、日和は微笑んだ。顔はまだ赤い。
「ところで、その劇というのは?」



(……浮気者……)
 心の中で自分を叱る。自分にはちゃんと彼氏がいるのに和彦を前にしてかなり動揺してしまった。
(だって……全然タイプが違うんですもの……)
 明るくて元気な少年を思い出す。それとは対照的な和彦の笑みが脳裏に浮かんで慌てて頭を振った。
(なにを思い出してるんですか、私は……!)
 それよりも。
 考えなくてはならないのは、和彦が代打で出る劇のことだ。
 幼稚園でやるためのものらしいと彼は言っていた。それならば手伝えると日和は申し出たのだ。
「そうか。実はもう一人手伝いがいるって言われてたんだ。初瀬さんがそう言ってくれると助かる」
 屈託なく笑われて、どきんと鼓動が鳴った。
 それを思い出してとうとう日和はその場にうずくまってしまう。
(反則ですよ……和彦さんひどいです……)
 日和のイメージをことごとく打ち崩す彼の素の表情に、彼女は正直参っていたのだ。
 練習しているらしい場所――小学校の体育館へと向かう日和。昨日の今日で、和彦にどういう顔で会えばいいというのか……。

 日和の目の前でがらっと体育館の扉が開いた。開けようとした矢先のことだったので、彼女は完全に硬直している。
「あ、なんだ。初瀬さんか」
 声に、また心臓が跳ねた。
 恐る恐る顔をあげる。
「か、和彦さ……」
「気配がしたから誰かと思ったんだが……。とにかく中へ。初瀬さんにシンデレラをやって欲しいそうだから」
「そうですか………………って、私がですか!?」
 どうして?
 困惑する日和の手を和彦が無造作に引っ張る。瞬間、全身の血が沸騰するような感覚に陥った。
(わ、私……どうしてこんなにドキドキしてしまうんでしょうか……)
 後ろめたい気持ちに胸がじくじく痛む。
「あ、あの、どうして私が……?」
「俺が王子役だから、相手が知り合いのほうが演じやすいんじゃないかと言われてな。初瀬さんが女の子だと言ったらそういう話になったんだ」
「そ、それでいいんですか? だって私……」
「いいんだ。俺が助けたのは、リーダーみたいな人だったから。その人が言うんだから、どうしようもないだろ。元々人数もぎりぎり定員でやってたらしいしな」
 日和は胸元をおさえる。
 まさか自分が主役をやることになろうとは。
 それに……。
(和彦さん……やっぱり王子様なんですね……)



 助けた相手は素人にも近い人物であった。言ってみれば、頼まれてボランティアでやる集団なのだ。地域の。
「子供はよーっく見てますから、照れないで演じないとだめですよ、和彦さん」
 衣服を着替える前にそう言った日和の言葉に、和彦は無言で目を細める。呆れているようだ。
「和彦さん?」
「……早く着替えろ」
 そう言うやドアを閉めてしまう。

(チェロの舞台とは、やはり違いますね)
 気分は幼稚園に贈り物を届けに来たサンタだ。
 ざ、と横に立たれて日和はそちらを見遣る。
「あ、和彦さ……」
 完全に凍り付いてしまう。
 貸衣装とはいえ、イメージを損なわないようなものが選ばれている。貧乏な娘姿の日和とは雲泥の差だ、王子姿の彼は。
「? どうした、初瀬さん」
「え……あ……」
 戸惑う日和に、無情にも開演の合図が鳴る。



「待って!」
 和彦に手を掴まれる。
 日和は振り向く。豪奢なドレスに包まれた日和は悲しそうに眉をひそめた。
「離してください!」
「せめて……せめてお名前を……!」
 必死な和彦の目に日和の心臓がばくばくと鳴り出す。
 これはお芝居なのだ。それなのに。
「離して……!」
 日和は手を振り払って去る。残された和彦は、手を伸ばし……ゆっくりと降ろした。
 そして何かに気づいた彼はそれを拾い上げる。ガラスの靴だ。
「これは……もしかしてあの人の……? ええい、誰かおらぬか! 国中全て探してでも、この靴がぴったり合う娘を見つけ出せ!」
 バッとマントをひるがえす和彦。

 王子は従者と共に日和の元を尋ねる。
 それを窓から見ていた日和は戸惑った。
「どうしましょう……あれは王子様の馬車だわ。ガラスの靴が合う娘を、国中ずっと探しておられるとか……」
 待って、と言われて手を掴まれた感触が思い出される。目を見開くものの、日和はなんとか平静を装って続けた。

「もう一人、ここには娘がいるはずだ」
 和彦の言葉に、継母役の女性が首を振る。
「いいえぇ。ここにはもう娘はおりません!」
「そんなはずはない。もう一人いるだろう!」
 きっぱりと強く言い放った和彦の様子に継母と、義理の姉たちは驚く。
「……召使いならおります」
 そして、日和が登場する。
 みすぼらしい格好の日和は、和彦と目が合ってしまい、慌てて逸らした。まともに顔が見れない。
「娘、この靴を履いてくれないか?」
 靴を持って近づいて来る和彦の足音に、思わず体がすくんでしまう。
「いいえ、それはわたしではありません。その靴はわたしのものではありません」
「娘、一度でいい。履いてくれないか?」
 真摯な眼差しで、日和の目の前に立つ和彦。
 誰もがうっとりするほど、彼は真剣な表情で立っている。日和は彼を見上げた。
 あらがえない。
 靴を下ろしたそこを見遣り、足をあげる。
 ガラスの靴は日和の足を見事に受け入れた。和彦が嬉しそうに微笑む。
「ああ、やはり……! 一目見た時から、あなたではないかと思っていた」
「どうして……。わたしはこのような身なりをしているのに」
「私はあなたの美しさに惹かれた。だが」
 和彦は日和の頬に片手を添える。心臓が破裂しそうなほど高鳴った。
「私は、あなたそのものに心を奪われたのだ」
 くら、と立ちくらみがしてしまう。
 ひどい。はんそく。
 そんな言葉が浮かんだ。そして、罪悪感も。



「シンデレラは、むずかしい話だな」
 日和を送っている和彦は、そう呟いた。
「そ、そうですか?」
「絵本での王子はバカだと思った」
「ば、ばか?」
 無表情の和彦は頷く。
「シンデレラを好きになったのは、彼女が美人だったからだ。それはどうかと思う」
「…………」
「外見だけじゃ……なにも見えない」
 そう言って和彦はふ、と笑う。
「初瀬さん、まだ少し時間があるなら何か食べないか?」
「え?」
「美味い蕎麦屋を知っていてな、よければ一緒に」
「…………」
 どうしよう、と日和は思ってしまう。これ以上彼といれば、彼のことが更に気になるに決まっている。
「嫌ならべつに……」
「嫌じゃないです!」
 そう言い放ってから、しまったと思うがもう遅い。
 和彦はパッと顔を輝かせた。
「そうか。じゃあ行こう」
「……和彦さん、お蕎麦が好きなんですか?」
「ああ、好きだ」
 満面の笑みを浮かべて言われて、日和はよろめく。慌てて和彦が手を引いた。
「だっ、大丈夫か? どうした、気分でも悪くなったのか?」
「……和彦さん……ずるいですよぉ……」
 ごめんなさい。
 そう彼氏に心の中で謝りつつ、日和は和彦に苦笑してみせたのだった。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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PC
【3524/初瀬・日和(はつせ・ひより)/女/16/高校生】

NPC
【遠逆・和彦(とおさか・かずひこ)/男/17/高校生+退魔士】

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■         ライター通信          ■
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 ご参加ありがとうございます初瀬様。ライターのともやいずみです。
 今回はかなりコメディ色が濃くなっていますが、和彦がかなり初瀬様に心を許した形をとらせていただきました。
 初瀬様は和彦を意識しているのに、まだ和彦は恋愛感情になっていない状態です。これから、ですね。
 少しでも楽しんで読んでいただければ幸いです。

 今回は本当にありがとうございました! 書かせていただき、大感謝です!