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■スラム街に咲く花■ |
神無月鎌 |
【0452】【李・光華】【エスパー】 |
とあるスラム街。この世界ではスラム街なんて珍しくもないだろう。
復興もちまちまとしており、そこには荒くれ者が集うという。
そんな危険なスラム街に二人の見慣れぬ人影が現れたのは数日前の事。
「カイル。本当にここにあるのでしょうか?」
「あるって言ったのは貴公だろう?それを今更そういうのはらしくないぞ」
「それでも私は不安になってきたのですよ。何分、貴方と一緒なわけですから」
「それは俺をバカにしてるのか?」
「バカにしているだなんてとんでもない。ただ、余計な破壊活動をしないかどうかが心配なだけですよ」
盲目で糸目の少女がからかうようにそう言う。
隣にいる青年は不機嫌なようでムスッとしている。
彼等がここに来たのは他ではない、綺麗な花を探しているのだと言う。
それは、この世界では珍しいもので、白くて綺麗な花であるという。
綺麗な月の夜にしか咲かない白くて小さくて綺麗な花。
それを見れない少女は、カイルと呼ばれる青年にそれを記憶させ
どんな物かというのを見てみたいらしい。
しかしスラム街は広い。
そして数も多い。スラム街はここだけではなく、各地にスラム街は一つや二つまだ残っている。
そんな中を彼等は探し回っているのだと言う。
「大体、夜にならないと見つけるにも話にならないんだろう、マイ?」
「それはそうなんですけどね。でも、もし昼の間に踏まれでもしたら大変じゃないですか」
「だからってアテもなく探すのはどうかと思うぜ?」
「……。適当な人を探して手伝って貰うのはどうでしょう?」
「他人に接触するつもりか?…気は乗らないが」
「それでも二人だけでというのは流石に無茶がありますよ。人が居そうな所へ行きましょう。カイル、先行してくださいね」
マイは淡々とそう言うと、カイルの肩にそっと手を置く。そうでもしないと盲目の彼女は歩けないからだ。
「やれやれ。なんで俺が貴公とこんな事をしなきゃなんないのだか…」
そうぼやく二人の後ろで不気味な目が光る。
「あいつ等、見かけない奴等だな」
「丁度いい獲物だぜ。女の方は売れば高値かもしれねぇ」
「よし、決まりだな。男の方は殺しても構わんだろ」
スラム街に住む荒くれ者達だった。
果たして二人は月夜に咲く花を見つけられるのだろうか…?
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スラム街に咲く花
とあるスラム街。この世界ではスラム街なんて珍しくもないだろう。
復興もちまちまとしており、そこには荒くれ者が集うという。
そんな危険なスラム街に二人の見慣れぬ人影が現れたのは数日前の事。
「カイル。本当にここにあるのでしょうか?」
「あるって言ったのは貴公だろう?それを今更そういうのはらしくないぞ」
「それでも私は不安になってきたのですよ。何分、貴方と一緒なわけですから」
「それは俺をバカにしてるのか?」
「バカにしているだなんてとんでもない。ただ、余計な破壊活動をしないかどうかが心配なだけですよ」
盲目で糸目の少女がからかうようにそう言う。
隣にいる青年は不機嫌なようでムスッとしている。
彼等がここに来たのは他ではない、綺麗な花を探しているのだと言う。
それは、この世界では珍しいもので、白くて綺麗な花であるという。
綺麗な月の夜にしか咲かない白くて小さくて綺麗な花。
それを見れない少女は、カイルと呼ばれる青年にそれを記憶させ
どんな物かというのを見てみたいらしい。
しかしスラム街は広い。
そして数も多い。スラム街はここだけではなく、各地にスラム街は一つや二つまだ残っている。
そんな中を彼等は探し回っているのだと言う。
「大体、夜にならないと見つけるにも話にならないんだろう、マイ?」
「それはそうなんですけどね。でも、もし昼の間に踏まれでもしたら大変じゃないですか」
「だからってアテもなく探すのはどうかと思うぜ?」
「……。適当な人を探して手伝って貰うのはどうでしょう?」
「他人に接触するつもりか?…気は乗らないが」
「それでも二人だけでというのは流石に無茶がありますよ。人が居そうな所へ行きましょう。カイル、先行してくださいね」
マイは淡々とそう言うと、カイルの肩にそっと手を置く。そうでもしないと盲目の彼女は歩けないからだ。
「やれやれ。なんで俺が貴公とこんな事をしなきゃなんないのだか…」
そうぼやく二人の後ろで不気味な目が光る。
「あいつ等、見かけない奴等だな」
「丁度いい獲物だぜ。女の方は売れば高値かもしれねぇ」
「よし、決まりだな。男の方は殺しても構わんだろ」
スラム街に住む荒くれ者達だった。
果たして二人は月夜に咲く花を見つけられるのだろうか…?
「集まってくださったのは何人ですか、カイン?」
「3人だ。女一人、男二人だ。ご協力感謝する。カイル・B・イェーガだ」
「私はマイ・ランフォードと申します。皆様にはお手数をかけさせてしまいますが何卒よろしくお願いしますね」
「私は別に危なっかしいから協力するだけ。他の人もそうなんじゃない?あ、私は李・光華…よろしくね」
光華が苦笑を浮かべてそう言う。確かに盲目の女一人と少し乱暴な男一人の旅だと危険な部分もあるだろう。
ましてやこのスラムの事を全く知らないのだから、狙われても当然である。
「俺はアルベルト・ルール。どんな花か詳しく聞きたいんだけどさ」
「そうですね。私が探しているのはとても綺麗な花です。綺麗な月の夜にしか咲かないんです」
「夜にしか咲かない花か…。花っていっても色々あるからな…こう、赤い…アマリリスとか」
「…赤い…?」
アマリリスを何とか頑張って想像するものの、盲目の彼女にとっては色とかまでは知らない。
知っていて名前だけ。困ったような表情をしていると、アルベルトがマイの脳裏に映像を送信する。
マイも何とか知ってるような、でも初めて見る映像に少しうっとりしていた。
「でも、これじゃないです。こんなにも綺麗な赤じゃあ…」
「白くて月夜の夜に咲く花…そう言えば何年も、花見てない…」
「にしても、この時代に花探しなんて。何か訳でもあるのかしら?」
今まで黙っていた白神空が口を開く。
このスラム街にある花なんて聞いた事がない。
そしてこの時代に花探しなんて人も見た事がない。
「その花の名前はなんていうか分かるのか?」
「アルフェリアという花です。気高い白が特徴的なんですが…」
「アルフェリアの花?聞いた事がねぇな…」
「探しているのも、訳ありかしら?」
「まぁ、そうなるな。マイの事情で探しているだけだが」
カイルがぶっきらぼうにそう言う。
あまり他人にかかわりたくなかったのか、結構不機嫌だ。
そんなカイルを見て、マイは苦笑を浮かべる。
「ごめんなさい。彼はあまり他人と触れ合ったり会話したりするのに慣れていませんから」
別にカイルには興味はないという人が多い為
別段気にもされなかった。
とりあえず今気になるのは…。
「この周りの殺気、かしらね」
空がポツリと呟くと、カイルも少し目つきが変わる。
マイ達がいた安全であろう区域は荒くれ者立ちに囲まれている。
嫌な空気だ。
「何だか、狙われてしまっているみたい…ですか?」
「やれやれ、行く先々でこんなんじゃ退屈しないのはいいが飽きがくる」
「そうぼやかないでください、カイル。出来れば皆さんにお任せ致しましょう?私達がここで怪我する訳にもいきませんから」
マイがそう言うと、三人は小さく頷きそれぞれ戦闘体勢をとり始めた。
空の体が白銀の毛に覆われていく。
その姿はまるで妖艶な狐。
「おい、姉ちゃん!そこの女を渡して貰おうか!男は好きにすりゃいい!」
「それはダメね。だってあたしの報酬、貴方達の命なんだし」
「んだと!?ナメやがって!」
「どっちにしてもゴロツキなんだし、いなくなっても誰も不審がらないわよ?」
空の言葉に挑発されたかのように、ゴロツキ達の顔は怒りに震え始める。
結局「やってしまえ」という命令が下ったのはすぐ後だった。
逆にやられるという事は考えずに。
空はその華麗な格闘能力で一人、二人と鋭い爪で喉を引き裂いていく。
こういう時だけ、マイの目が見えない事を助かったと思うべきなのかも知れない。
辺りには血飛沫が飛ぶ。喉を切り裂いた男達が地面に沈むと、その妖艶な視線を残りの男に向ける。
「助かりたかったら手伝ってよ。あたし達も人手が足りないのよ」
恐怖に怯えた男は、嫌でも頷く事しか出来なかった。
荒くれ者の一人がマイ達の方へと襲い掛かる。
それに気付いたアルベルトがその男をテコンドウでねじ伏せる。
「カイルだったか?テメェも少しは手伝えよ」
「俺だってやりたいのはやまやまなんだが、それだとマイの護衛が薄くなる。だろ?」
既にやる気のない声だ。
彼も結構暇になってきているらしいが、どうも隣のマイに何か釘を刺されているようで動けない。
「しゃーない。後はどうせ面倒だし」
PK能力で建物を持ち上げる。それを見た男達は逃げようとする。
「やれやれ、仕掛けておいて逃走かよ」
「空が確か何人かに手伝って貰うとか言ってたな。なら数は多い方がいいか」
遠くに逃げていく男達に向かって、カイルが走る。
その速さは並ではなかった。逃げる男達の首根っこをひっ捕まえると、ずるずると連れ戻ってくる。
「マイ、こいつ等も喜んで手伝ってくれるそうだが?」
「あら。それは助かります。宜しくお願いします、ね?」
微かに笑い、そういう彼女を見て「嫌だ」とは言えなくなってしまった男達は、がっくりと項垂れて従う事にした。
「カイル、少し手伝って」
「まぁ…この数じゃあなぁ?」
どうやら光華の所には4人くらいの男が群がり始めているようだ。
幾ら八極拳の使い手でも、確実にのさなければ意味がなくなってしまう為だ。
「手伝うにしても、俺だと少しやりすぎるぞ?」
「やりすぎるくらいが丁度いいんじゃない?どうせこいつ等、懲りないわよ」
「懲りてくれると俺としても叱られない分嬉しいんだがなぁ…」
ぼやきながらも能力を少し開放し、かまいたちの如く男の喉をナイフで掻っ切る。
血飛沫がまた飛び散り、男が地面に沈んだ。
光華の方も、八極拳特有のステップ、流れで男達を沈めていく。
しかし、これだけの男を相手にして疲れすら見えない彼等は本当に凄いものであった。
「それじゃあ、皆さんに探して頂く花はアルフェリアという白い花です。月夜にしか咲かないらしいので、結構苦労するとは思いますが宜しくお願いしますね?」
「それで、あたし達はどうするの?」
「そうですね、周りの人達にもどこにあるか聞いて歩いてみましょうか」
そう言うと、マイはアルベルトの肩にそっと手を置く。
「先行、してくださいますね?カイルはあの男の人達の監視に回します。お願いします、カイル」
「りょーかい…なんかあったら壊すわ、あいつ等」
「あたしも【玉藻姫】で手伝うわ。とりあえず子供とかホームレスの人に聞き込み、かな」
空がそう言うと、アルベルトもそれに従って子供達が集まりそうな場所へとゆっくりと歩き出す。
マイが転ばないように、慎重に、慎重に。
「でも、どうしてそんな花を見つけようと?」
「…そうですね、アルフェリアの花は、私にとっては思い出の花なんです」
「思い出の、花?」
「私が最後に見た、花です」
マイがそう言うと、光華は少し苦笑を浮かべる。
彼女が最後に見たというのは、目が見えなくなる寸前に見たという事だろう。
「盲目になる前に見れてよかったです、あの花を。あの花は、どんな病でも治すと言われていますし…」
「自分の目に、使うの?」
「そんなもったいない事しませんよ。他の人に少しだけ使ってみようかと…。そんな気まぐれですよ」
そんな話をしながら、四人は聞き込みを続けていた。
どんな場所でどんな花を見たのか。
どんな色でその時間帯は何時だったか。
記憶にあるという部分だけでもいい。
聞き出せればそれだけでも手がかりだった。
そうこうしているうちに日も暮れ始める。
花の事は誰もあまりよく知らなかった為、アルベルト、空、光華も少し諦めムードだった。
「本当にあるのか、このスラム街に?」
「分かりません。なければ他のスラム街に行くしか…」
「どうしてスラム街なの?もうちょっとまともな所にあったりでもしたら…」
「スラム街にも花は咲きます。その花は、その街に小さな光をもたらしてくれるかも知れないじゃないですか」
「何か信仰してたりとか、するの?」
「そんなんじゃないんですよ?そんなんじゃないんですけど…私にも光が来るかもって」
そう言うと、マイは壁伝いにゆっくりと座る。
そんな時だ。アルベルトの脳内に聞き覚えのある声が聞こえた。
『…こえるか?おい、聞こえるか?』
「あ…?カイルか?」
『これが聞こえるって事は多少心が開いてるって事か。そんな事よりだ。アルフェリアの花が見つかった。場所言うから今すぐマイと一緒に来い』
「マイ、見つかったらしいぜ。アルフェリアの花がさ」
「本当ですか!?」
「場所はカイルに教えてもらった。行こうか?」
「あ、待ってください」
アルベルトが手を差し出し、マイを立ち上がらせようとすると、マイは意識を手に集中させる。
そしてゆっくりと立ち上がると、アルベルトの頬を軽く撫でると小さく頷いた。
「場所は検討がつきました。皆さん、私の肩に手を。このままテレポートしてそこまで行きます」
「大丈夫なの?何だったらあたしは飛んでいくケド…」
「大丈夫ですよ。三人くらいなら一緒に連れて行けます」
「連れて行けるって…本当に大丈夫なの?」
「光華卿、信じてくださいませ」
マイがそう言うと、三人はそれぞれマイの肩に手を置く。
意識を集中し始めるとマイの体が淡く、蒼く光出す。どうやらテレポートで移動を試みるようだ。
気がつけばそこは、カイルが言っていた場所だった。何とか成功した。そんな顔だった。
「来たか…」
「見つかったんですね…何処です?」
「まぁ、待て。もうすぐ夜だ、花が咲く。その時にでもアルベルトに映像を貰えばいい」
「あぁ、そうか。彼女は盲目だからな」
「でも、アルフェリアの花って…目の前にあるこれなの?」
光華の目の前には、小さくてまだつぼみのままの花が一輪だけ咲いていた。
空もそれを珍しそうに見てみるが、今はどう見てもただの花だ。
「そうだ。それがアルフェリアの花だ」
「どう見ても普通の花じゃない?」
「夜になれば分かる。不思議な花だって事はな?」
日が暮れた。
もう辺りは暗くて、夜になっていて。
月が高く天に昇る頃。
その花に動きが見えていた。
ゆっくりとつぼみが開かれ始める。
それは光を放ちながら。
不思議な光。柔らかくて、暖かく感じる光。
そして暫く見ていると、花が咲いた。
綺麗な白。
気高き白。
まるで今にも散ってしまいそうな。
儚い花。
「綺麗…」
「こんな世の中にも、まだこんなにも綺麗な花があったのね」
「マイ、花が咲いたぞ」
「本当です?アルベルト卿、見せてください」
少し興奮気味な彼女は、アルベルトに映像送信をせがむ。
無理もない。盲目だからみんなと同じようには見られない。
アルベルトはアルフェリアの花をイメージし、マイの脳裏に映像を送る。
「確かに…これが、アルフェリアの花です」
「良かったわね、マイ。探している花が見つかって」
空がそう言うと、マイは小さく頷き静かに歌を口ずさむ。
その歌は透き通っていた。
まるでアルフェリアの花が放つ光のように暖かな声だった。
不思議な歌だった。落ち着いていくような、何処か安心感が感じられる歌。
「それで、この花はどうするんだ?」
「本当は採っていこうと思ったのですけど…少し気が変わりました」
「どうするつもりだ?」
「アルベルト卿。これを」
そう言ってマイはアルベルトにアルフェリアの花を手渡した。
アルベルトは少し驚きながらもその花に目をおとす。
「どうか、貴方の母上様に」
どうやら頬に触れた時に記憶まで読み取ってしまったらしい。
それのお詫びという事なのだろうか。
「それでは、また縁がありましたらお会いしましょう」
「おい、マイ。行くぞ」
「貴方達、一体なんで放浪したりして…?」
「私達が私達である証を見つける為、です」
意味深な事を言い残すと、マイはカイルと二人で夜のスラム街に消えて行く。
「一晩の報酬、取り忘れちゃったわね…」
空がポツリとそう呟いた…。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス】
【0233】/白神・空/女/24歳/エスパー
【0552】/アルベルト・ルール/男/20歳/エスパー
【0452】/李・光華/女/22歳/エスパー
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■ ライター通信 ■
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初めまして、神無月鎌です。
この度は私のシナリオ、【スラム街に咲く花】にご参加頂きありがとうございました。
PCノベルというのは初めてだった為、不手際な所とか
納得の行かないような書き方があるかと思います。
そういう部分は遠慮なく申してください。
次からは気をつけながら頑張って作成させて頂きます。
皆様のキャラを書かせて頂き、光栄です。
本当にありがとうございました。
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