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■スラム街に咲く花■ |
神無月鎌 |
【0351】【伊達・剣人】【エスパー】 |
とあるスラム街。この世界ではスラム街なんて珍しくもないだろう。
復興もちまちまとしており、そこには荒くれ者が集うという。
そんな危険なスラム街に二人の見慣れぬ人影が現れたのは数日前の事。
「カイル。本当にここにあるのでしょうか?」
「あるって言ったのは貴公だろう?それを今更そういうのはらしくないぞ」
「それでも私は不安になってきたのですよ。何分、貴方と一緒なわけですから」
「それは俺をバカにしてるのか?」
「バカにしているだなんてとんでもない。ただ、余計な破壊活動をしないかどうかが心配なだけですよ」
盲目で糸目の少女がからかうようにそう言う。
隣にいる青年は不機嫌なようでムスッとしている。
彼等がここに来たのは他ではない、綺麗な花を探しているのだと言う。
それは、この世界では珍しいもので、白くて綺麗な花であるという。
綺麗な月の夜にしか咲かない白くて小さくて綺麗な花。
それを見れない少女は、カイルと呼ばれる青年にそれを記憶させ
どんな物かというのを見てみたいらしい。
しかしスラム街は広い。
そして数も多い。スラム街はここだけではなく、各地にスラム街は一つや二つまだ残っている。
そんな中を彼等は探し回っているのだと言う。
「大体、夜にならないと見つけるにも話にならないんだろう、マイ?」
「それはそうなんですけどね。でも、もし昼の間に踏まれでもしたら大変じゃないですか」
「だからってアテもなく探すのはどうかと思うぜ?」
「……。適当な人を探して手伝って貰うのはどうでしょう?」
「他人に接触するつもりか?…気は乗らないが」
「それでも二人だけでというのは流石に無茶がありますよ。人が居そうな所へ行きましょう。カイル、先行してくださいね」
マイは淡々とそう言うと、カイルの肩にそっと手を置く。そうでもしないと盲目の彼女は歩けないからだ。
「やれやれ。なんで俺が貴公とこんな事をしなきゃなんないのだか…」
そうぼやく二人の後ろで不気味な目が光る。
「あいつ等、見かけない奴等だな」
「丁度いい獲物だぜ。女の方は売れば高値かもしれねぇ」
「よし、決まりだな。男の方は殺しても構わんだろ」
スラム街に住む荒くれ者達だった。
果たして二人は月夜に咲く花を見つけられるのだろうか…?
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スラム街に咲く花
とあるスラム街。この世界ではスラム街なんて珍しくもないだろう。
復興もちまちまとしており、そこには荒くれ者が集うという。
そんな危険なスラム街に二人の見慣れぬ人影が現れたのは数日前の事。
「カイル。本当にここにあるのでしょうか?」
「あるって言ったのは貴公だろう?それを今更そういうのはらしくないぞ」
「それでも私は不安になってきたのですよ。何分、貴方と一緒なわけですから」
「それは俺をバカにしてるのか?」
「バカにしているだなんてとんでもない。ただ、余計な破壊活動をしないかどうかが心配なだけですよ」
盲目で糸目の少女がからかうようにそう言う。
隣にいる青年は不機嫌なようでムスッとしている。
彼等がここに来たのは他ではない、綺麗な花を探しているのだと言う。
それは、この世界では珍しいもので、白くて綺麗な花であるという。
綺麗な月の夜にしか咲かない白くて小さくて綺麗な花。
それを見れない少女は、カイルと呼ばれる青年にそれを記憶させ
どんな物かというのを見てみたいらしい。
しかしスラム街は広い。
そして数も多い。スラム街はここだけではなく、各地にスラム街は一つや二つまだ残っている。
そんな中を彼等は探し回っているのだと言う。
「大体、夜にならないと見つけるにも話にならないんだろう、マイ?」
「それはそうなんですけどね。でも、もし昼の間に踏まれでもしたら大変じゃないですか」
「だからってアテもなく探すのはどうかと思うぜ?」
「……。適当な人を探して手伝って貰うのはどうでしょう?」
「他人に接触するつもりか?…気は乗らないが」
「それでも二人だけでというのは流石に無茶がありますよ。人が居そうな所へ行きましょう。カイル、先行してくださいね」
マイは淡々とそう言うと、カイルの肩にそっと手を置く。そうでもしないと盲目の彼女は歩けないからだ。
「やれやれ。なんで俺が貴公とこんな事をしなきゃなんないのだか…」
そうぼやく二人の後ろで不気味な目が光る。
「あいつ等、見かけない奴等だな」
「丁度いい獲物だぜ。女の方は売れば高値かもしれねぇ」
「よし、決まりだな。男の方は殺しても構わんだろ」
スラム街に住む荒くれ者達だった。
果たして二人は月夜に咲く花を見つけられるのだろうか…?
黒いソフト帽。黒のダークスーツ。そして何処となく凛々しい顔つき。
ガタイは結構がっちりしている。
しかし、唯一の難点。背が小さくみえる。そんな男が街を歩いていた。
無論、する事なんてない。さすらいの探偵だから。探偵にそんなに仕事はホイホイくるものではないが。
それでも好き好んでやっている事だから、いいのだろう。
「しっかし、ホントに暇でやんの……」
溜息混じりにそうぼやく。確かに、このご時世に楽しい事なんて何一つないかも知れない。
そんなとき、彼の目についたのは一人の少年と一人の少女。
しかも少女の方は少年というより青年の肩にしっかりと置かれて離れない。
多分、目が……。彼の直感はそう感じた。
……それだけならよかったのだ。
「やれやれ、今時ああいう二人連れも珍しくはないんだが……」
視線を彼等の背に移す。一人、二人、三人。
数えただけでも結構な数だ。スラム街なんだからこれも珍しくはない。
「やれやれ、お節介でもしますかね」
ソフト帽を被りなおして、探偵の伊達・剣人は歩き出した。
「…さて、本当にどうしましょうか」
「こんな所にあの花があるってのも怪しいんだけどよ…ガセ掴まされたんじゃないのか?」
「人を信じることは時には大切ですよ、カイル?」
「しかしこれだけ探して手がかりゼロはどう考えてもハズレだろうが」
米神を押さえながら、未だ情報を信じるマイにカイルはそう告げる。
彼等がここを探し始めて5時間あまり。それでも情報は何一つないのだ。
「そこの少年少女」
二人に声がかかった。マイは声がした方へとぎこちなく顔を動かす。
カイルは少年という言葉に反応して何か不機嫌そうではあったが、剣人はそれにすら構わない。
「困り事か?なんだったら相談に乗るぜ?」
「えっと…その声は…何方、ですか?」
「俺は探偵の伊達剣人。ケント・ダテだ」
「探偵?まった怪しいものに捕まったようだな?」
「しかし今は頼る伝がないのも確かです。…伊達さん、でしたか。私達に何か?」
小声でカイルと会話しながらも、マイは剣人に尋ねる。
警戒はしているものの、あまり怯えていないようにも見えて少し不思議を感じた。
「君達、狙われてるぜ?」
「……またか」
「また?という事は他でも同じように?」
「えぇ。私達、どうも弱そうに見えてしまうみたいで」
マイが苦笑を浮かべる。弱そうに見えるという事はそれなりに腕もたつのだろうか。
カイルはともかく、マイはそんな強いような少女には見えない。盲目である以上、接近も辛いだろうというのに。
「とりあえず、何か困ってるみたいじゃないか?どうしたんだ?」
「実は……」
「マイ!」
「カイル、頼りましょう。今は少しでも人がいた方がよろしいですから。…伊達さんでしたか。実は私達、花を探しているのです」
「花?」
剣人が聞き返すと、マイはゆっくりと頷いた。
「とても綺麗な白い花で、月夜の日にしか咲かない特殊な花。人は皆その花を「アルフェリア」と呼びます」
「アルフェリア、か。聞いた事ない花だな?」
「そりゃそうだ。アルフェリアといえば幻想の産物と言われている仙の薬草だからな」
「ふむ。その花を探してどうするつもりなんだ?まさか、目を?」
剣人が尋ねると、マイは小さく首を横に振った。
「いえ…私の目は先天的なものです。アルフェリアの花は薬草とは言われていますが、後天的なものにしか効果はありません」
「なら何故その花を探すんだ?」
「触れてみたいのです。私は目が見えないでしょう?だからどんな色をしているのか、形をしているのか。分からないんです。ですから、触れるだけでも…と」
「よっし!決まったな。手伝ってやろう♪」
「簡単に決めていいのか?普通ならこんな広いスラムで見つかるわけないとか思うだろうに」
「少女が求めてるのなら助けてやらんと大人として失格だろう?それに俺は探偵だ、物探しなら結構得意なんだぜ?」
……探偵。本当に信用出来るのか? カイルは心の中でそう呟いた。確実に信用出来る要素は、何処にもない。
三人は情報を集めながらスラムの街を歩き回った。
子供から、老人から。そしてタチの悪そうな集団からも。
そして、その時得た情報の中で一番有力だとされたのが「夜、町外れを探してみろ」という事だった。
「本当にあんなハズレで見つかるのか?」
「さぁて、それは見てみない事にはわからんな♪」
「気楽なおっさんだ…」
「おっさんは流石に失礼ですよ、カイル」
そんな三人をつけている無数の影。ピタリとカイルと剣人の足が止まる。
「おっさん、気配は」
「ざっと5人弱ってとこか?それとおっさんじゃなくてお兄さんだ」
「どうでもいい。…のすか?」
「その方が手っ取り早いだろう」
「決まりだな」
そう言うと同時にカイルがマイの手を引いて自分達の後ろへとやる。
剣人が炎の聖剣を召喚する。その刀身は燃えさかるかのように、焔が纏われていた。
「やれやれ、少年少女を狙って金稼ごうだなんていい大人がするもんじゃないぞ?」
「だから俺は少年じゃなくて青年だってんだろうが!」
懐から銃を取り出すと、カイルはそれを一人の男に向かって引き金を引く。
チラリとその銃を見る。…ただの銃ではなさそうだ。それが剣人の感想でもあった。
「マイ、お前は下がってろよ?」
「貴方に言われなくても。でも、大丈夫みたいですから」
そう。マイの目の前では剣人が悪漢を剣で斬り伏せているのだ。
最後の一人。剣人に向かって襲い掛かる。
「だから、いい大人がすることじゃないって忠告しただろうになぁ」
残念そうに呟き、最後の一閃を振るう。
崩れ落ちる男。その男の顔めがけて銃が一発、撃ち込まれる。カイルだ。
「お前さん、結構酷いのな?」
「フン。俺達を狙うからこうなるというある一種の見せしめだ」
「可愛げのない子供は嫌われるぞ?」
「子供じゃないっての!」
喧嘩する二人をよそに、マイは何か光に気がつく。
ふらふらとその光が感じられる方へと歩いていくと、小さな声を漏らす。
二人が駆け寄ってみると、そこには小さな一輪の花が咲いていた。
白く、露が月の光で光っているようにも見える。
これが薬草アルフェリアだ。
「ほー。これがアルフェリアか?綺麗っちゃ綺麗だが」
「まさか実在していたとはなぁ?」
「摘み取るのは何だか気がひけてしまいますね」
アルフェリアの花びらをそっと撫でながらマイが言う。
本当は摘んで帰るつもりだったのだろうか。
「伊達さん、最後のお願いいいですか?」
「何だ?お兄さんに言ってみろ」
「この花を、スラムの怪我をしている子供達に差し上げてください。…折角あるのですから、使わないと…ね?」
「おう、分かった!で、お前達はどうするんだ?」
「私達はまた旅に出ようと思います。私達の記憶探しの旅に」
「記憶探し?」
「えぇ。私達が私達である記憶です」
笑顔でそう言うと、マイは小さくお辞儀をし、そしてそのままカイルと二人で消えてしまった。
どうやらテレポートを使ったらしい。
剣人は帽子を被りなおし、花を摘むと空を見上げて少し笑いながら呟いた。
「また、な♪」
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス】
【0351】 伊達・剣人/男/23/エスパー
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■ ライター通信 ■
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初めまして、神無月鎌です。
この度は私のシナリオ、【スラム街に咲く花】にご参加頂きありがとうございました。
何だかナイスミドルなお兄さん!?という感じでノリよく書いてしまいました。
何処となくPCさんと違っていたらごめんなさいです(汗)
どうも好きなキャラタイプだったので本当に楽しく書けました。
まだ登録して間もない私にPCさんを書かせて頂きまして本当にありがとうございます。
感謝感激の嵐でございます(笑)
まだ不手際とか納得のいかないような書き方があると思います。
そういう時は遠慮なく「コラー!」の声と共に送ってくださいませ。
次からは気をつけ、精進して書いていこうと思います。
本当にありがとうございました(深礼)
鎌
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