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■★鶴来理沙の剣術道場■

雛川 遊
【5307】【施祇・刹利】【過剰付与師】
剣神リアイアの巫女、鶴来理沙の剣術道場です。
理沙と一緒に武の道を極めたい人や、必殺技の修行をされたい人は修行をされて汗をかいてみませんか?
剣術道場では修練を積むお手伝いから戦いのアドバイスまで、手広くカバーしています。
なんとなく和みたい人も大歓迎!
ぜひ一度当道場の門をお叩きください。

★鶴来理沙の剣術道場

●ようこそいらっしゃいました! 〜オープニング〜

 はじめまして!
 当道場は剣神リサイアの巫女、鶴来理沙(つるぎ・りさ)の剣術道場になります。
(――――つまりこの私が道場主です!)
 場所はあやかし荘の大部屋を間借りして開いています。が、とある結界の力を用いて道場内に色んな修行の場を出現させたり、古の武術を伝える師範がいたりと、ふつーの道場ではないのです。
 武の道を極めたい人、必殺技の修行をされたい人、なんとなく和みたい人などは、ぜひ当道場の門をお叩きください。ビンボーですががんばりますので!
 あ、それと補足がひとつ。
 ただいま門下生希望者は、随時熱烈大歓迎です☆

 それでは、本日も良き修行の場となりますように。


●本日の修行、開始です!

 滅華師―― 施祇 刹利(しぎ・せつり) は炎暑の中を剣術道場にやって来た。

 季節は夏、太陽がさんさんと照りつける日々にうだるような暑さが続いている。
 ――――リン。
 どこからか涼しげな風鈴の音が聴こえる。風鈴の音は異界を思わせる。
 鶴来理沙が、道場のすぐ前で水を撒いていた。夏の水打ちをしていたのだ。地面に撒かれた水が蒸発する際の気化熱によって涼を運んでくるという先人の知恵。理沙は地球にやさしいエコロジーな道場主なのだ。
 やあ、と手を挙げる刹利に理沙は笑顔で迎えた。
「あ、ようこそ刹利さん! 剣術道場へようこそ!」
 今日も料理の修練ですか? とにこやかにうなずいた刹利は、まるでトマトの色は赤色だね、という当たり前のことを自然に告げるかのように言った。


 「死の荒行コースで教えて欲しいんだ」


 ‥‥‥‥。
                    リーーン。
                             リーーン。

 鈴の音を聞きながら暑い中を見つめあう刹利と理沙。
「本気――ですか? 死の荒行コースで料理修行なんて‥‥」
「ええっと‥‥‥‥本気のつもりだけど。あ、いや‥‥何か落ち込んでいたみたいだから、何となく」
 沈黙すること数十秒、理沙はカッと目を見開くと重々しくうなずいた。
「‥‥わかりました‥‥ただいま、準備をしてまいります‥‥」

                             ○

 道場内の異空間を抜けて、深山の奥にある清流の河原が修行場所だ。
 巨大な滝があり、夏の暑さと滝から落ちてくる冷たさが周囲の木々と共に凛とした空気をかもし出していて修行に最適な場所だといえる。
 ――普通の修行なら、という場合の話だけれど。
 しかし、これから行われるのは料理の修行なのだ。
「で、ここでどんな料理を作るのかな? もしかしてバーベキューとか‥‥それもいいね」


「流しソーメンです」


 ‥‥‥‥。
                    リーーン。
                             リーーン。

 キッパリと理沙は答えた。
 どこか恐ろしげな雰囲気すら漂わせながら‥‥。余りにも真剣な理沙の表情に、思わず刹利も笑いをとめて顔を引き締める。この雰囲気はただ事ではない。
 彼女は本気なのだ。
「流しソーメンって、あの流しソーメン――だよね?」
「‥‥はい。あの、流しソーメンです‥‥」
「そうなんだ、まあこんなに暑いんだから素麺もいいかもしれない。流しそうめんか‥‥うん、涼しそうだね」
「はい、死を感じるような涼しさになるでしょう‥‥」
 それってどんな涼しさなんだろう。
 などと、重い空気を吹き飛ばすように刹利は元気よく声をかける。
「修行であっても料理なんだから楽しく行こうよ。一応、理沙が料理を苦手そうだから、それにも役立てればいいな、と思ってね。これで、自信つくといいね」
「私の、ため‥‥」
「逆の可能性もあるけど、何事も挑戦挑戦」
 どこか理沙は蒼い顔をしてあらぬ方向を見つめた。
「そうですね‥‥私にとっても、これは試練です‥‥」
「で、流しそうめんなら肝心のそうめんを流すための水の台はどうしようか?」
 いざとなれば自分の能力を使って台を強化して立派なものにするくらいはいいかな、と考えていた刹利だが――、
 そんな彼の予想を裏切るように、理沙はただ無言で遠くを指差す。
「‥‥‥‥どうしたの?」
「あれが、そうめんを流す水流です」

 ざざざざざざーーーーーーーーーー。

 そこにあるのは怒涛のように水が流れ落ちる大滝‥‥。
 滝?
 あの大滝を使って流しそうめんをするというのだろうか!?

 ざざざざざざーーーーーーーーーー。

 流石の刹利も呆然として大滝を見つめた。だが、そこは刹利も只者ではない。
「これはやり甲斐があっていいね。おいしいそうめんになるかもしれないよ?」
「え! この滝を見てまだそんなことを――!?」
「そうそう、前向きに考えてさ、頑張っていこうよ。人間、ちょっとやそっとじゃ死なないと思うから遠慮なくよろしくね」
 なんて爽やかに笑いながら、刹利は流しそうめんの準備をはじめるのだった。


 近くで見る大滝は、ざざざざ、何て可愛い音はしていない。どちらかといえば、ゴゴゴゴゴゴ、Tといった擬音を当てはめるべきだと思った。
 見降ろした滝壷は、まるで地獄にでも通じているような大迫力。うわーと内心で感嘆してみる。
「い、いきますよ! 刹利さんっ!」
「いつでも!」
 滝の上流から理沙が声をかけた。大皿から一口分の麺の塊が冷たい川に放り込まれた!
 激しい流れに巻き込まれながら滝に向かって流れていくそうめん、そして――
 そうめんが落ちる‥‥!

 だが、刹利は全く慌てない。

「流しそうめんを過剰に強化するとどうなるんだろう‥‥動き出したりするのかな?」

 瞬間、彼の持つ箸が異常な長さに伸びた。
 水と共に流れ落ちてくるそうめんの動きを見事に見切り、捉え、そして――パシッと鮮やかにつまみ取る。
 そのまま箸が縮んで手元の麺つゆにつけると、ちゅるんと一口で麺を喉元に流し込む。ごくん。麺の感触とつゆの程好い味わいが口の中で混じり合い、奏でられるは清涼なる味のハーモニー。
 言葉の代わりに親指を立てて味わいの深さを伝えた。

「極上の味だよ、理沙さん」

 大滝から流れ落ちるという死を賭けての荒行を超えた先に開かれた味の楽園――流しそうめんの桃源郷だ。
「それじゃ、次、行きますね!」
「ああ! いつでも!」
 豆粒みたいに小さな理沙の影は、感動で泣いているように見えた。



【本日の修行、おしまい!】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【5307/施祇 刹利(しぎ・せつり)/男性/18歳/過剰付与師】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、雛川 遊です。
 ゲームノベル『鶴来理沙の剣術道場』にご参加いただきありがとうございました。
 それと作成が遅くなり申し訳ありません。いろいろあってダウンしていました(汗)
 それにしても本格的な夏になって暑い日が続きますね。夜まで熱帯夜で、7〜8月は雛川にとっての天敵です。ムワッとした熱風はアスファルトのにおい。この熱気は何事でしょうかとアイスを食べながら太陽を睨みつけてみたりします。雛川は地球温暖化なヒートアイランドに断固反対します!
 ‥‥暑さにやられてるかも‥‥。

 さて、剣術道場はゲームノベルとなります。行動結果次第では、シナリオ表示での説明にも変化があるかもしれません。気軽に楽しく参加できるよう今後も工夫していけたらと思います。

 それでは、あなたに剣と翼の導きがあらんことを祈りつつ。


>刹利さん
えーと、なんだかとんでもない方向に話が行ってしまい‥‥これも夏の暑さの魔力でしょうか(汗)
ファンレター毎回ありがとうございました。良い感想をいただけると雛川も励みになります。
あ、理沙が不幸な理由というのは‥‥‥‥秘密なのです。
ということで一つよろしくお願いしますー。