■神の剣 吸血通り魔事件 3 真相■
滝照直樹 |
【1703】【御柳・紅麗】【死神】 |
義明、ディテクター、鬼鮫も影を追った。
未だに増加する吸血種による殺害事件。
「いや、増殖……儀式なのか?」
「世界に根付いた“闇”を胎盤に、負の命を得ると言うことか」
謎を解き明かしていく。
絶大な威圧感を持った霊格の波動を感じ皆は追う。
長谷神社で静香が震えた。
「闇の王、血の騎士。殺戮の……」
当然茜も其れに気づき、恐怖で震える。
「な、何て事なの?」
茜は震えるしかない。
影法師の送った主は、吸血種の中でも恐ろしいもの……。
“知られざる”吸血神だという。
「復活しちゃう……。このままだと復活しちゃう……よしちゃん!」
茜は自分の責務で動けないため、結界中心地の神社にて祈る。
「あの方なら大丈夫でございます」
静香も茜を案じてそう言うが、不安を隠しきれない。
未だ吸血神が復活しているわけではない。しかし、被害を最小限にしなければならない。命をアレに与えては、ならないのだ。
闇の中で胎動する禍々しき存在を止めなければならない。
何故、その存在が知られていなかったのか?
倒す方法はあるのか……?
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神の剣 吸血通り魔事件 3 真相
義明、ディテクター、鬼鮫も影を追った。
未だに増加する吸血種による殺害事件。
「いや、増殖……儀式なのか?」
「世界に根付いた“闇”を胎盤に、負の命を得ると言うことか」
謎を解き明かしていく。
絶大な威圧感を持った霊格の波動を感じ皆は追う。
長谷神社で静香が震えた。
「闇の王、血の騎士。殺戮の……」
当然茜も其れに気づき、恐怖で震える。
「な、何て事なの?」
茜は震えるしかない。
影法師を送った主は、吸血種の中でも恐ろしいもの……。
“知られざる”吸血神だという。
「復活しちゃう……。このままだと復活しちゃう……よしちゃん!」
茜は自分の責務で動けないため、結界中心地の神社にて祈る。
「あの方なら大丈夫でございます」
静香も茜を案じてそう言うが、不安を隠しきれない。
未だ吸血神が復活しているわけではない。しかし、被害を最小限にしなければならない。命をアレに与えては、ならないのだ。
闇の中で胎動する禍々しき存在を止めなければならない。
何故、その存在が知られていなかったのか?
倒す方法はあるのか……?
〈紅い月〉
「厄介だ」
誰かが呟いた。
空の上には未だ、煌々と、紅い月が輝いている。既に式は起動しており、いつ“ソレ”が起きあがってくるか分からない戦慄を覚えるのだ。
「まず、どうすべきか? だな」
聖武威が舌打ちする。
「復活と言っていましたね?」
天薙撫子が、義明のそば迄かけより、言った。
「ああ。蓮也大丈夫か?」
「ああ、何とか……腕が折れそうなほど痛いけどな…」
運命を無理に弄った代償として、御影蓮也の腕は浅黒く変色している。
影法師を斬り裂くために、瞬間転移のいきまで弄ったのだ。
「と、いうことは過去にやられたって事だよな? 何か欠点がないものか?」
武威がいう。
「わたくしが善良を付くし、調べてみます」
撫子が言う。
「と、此処にいても始まらない」
ディテクターと、鬼鮫はビルの屋上を去ろうとする。
「復活するというなら、其れ相応の準備をしないと行けねぇな……」
と、言い残し、去っていった。
「復活阻止が出来れば……いや、最悪復活してもかなり弱体化出来ればいいんだけどな……。“見えない”」
蓮也は自分の見る力がなくなっていることに舌打ちする。
「此処にても始まらない……いちど、落ちつける場所で話すべきだ」
義明が言った。
皇茉夕良は、他の者の言葉を聞いていた、が自分からは何も答えず、ただ紅い月を見ていた。
「皇」
義明が声をかける。
「なに?」
「前にも言ったが、首を突っ込むべきではない」
「……何故? そう突っぱねるの?」
「分かるだろう。この世界は覚悟はいるんだ。表の世界で称賛を浴びているならそれだけに向けるべきだ」
と、義明は難しい顔をして言う。そして去っていくのであった。
長谷神社。長谷の家にある縁側では長谷茜と静香、御柳紅麗が居た。
御柳紅麗はいきなりかなりの高さから地面に叩きつけられたほどの激痛を感じ、苦しんでいた。
「い、いてぇ!」
いきなりの空間転移だったのか、色々なところで歪になったのだろう。泡を吹いて気絶してしまいそうだ。
「大丈夫?」
不安になっている長谷茜が紅麗の顔を覗く。
「な、なに……。じ、地獄の筋肉痛みたいなもの……かな……?」
笑って、なんとか耐えようと思うのだがなかなか、そうはいかない。
茜が、紅麗の腕を触ってみた。
「ぎゃ〜!」
激痛が走って、紅麗は絶叫する。
「うわ〜、肉離れ? それとも骨折?」
「い、いきなり触らないでくれ……」
涙目で訴える紅麗。
「あ、ご、ごめん……」
笑ってごまかそうとする茜。
「紅麗様、今しばらくのご辛抱です」
静香が、彼の額に手をあてる。
紅麗には見えないが、優しい風のような声を聞いた。
痛くはなく心も体も癒される心地よさで、紅麗は眠りについた。
「よし、と。次はどうしよう……」
茜は、長谷神社の惨状を眺めており……不安を隠せない。
木々は折れ、地面は穴があいており、前は人だったり生き物だったりした骸が灰になっていく。
鳥居から行きなりの車の音、そして足音が聞こえた。
「茜さん! 大丈夫ですか!?」
宮小路皇騎である。
「皇騎さん!」
茜はかなり久しぶりの恋人との再開に、明るくなった。
「よ、良かった! 無事で!」
と、皇騎は茜を抱きしめた。
「こ、こ、皇騎さん! あ、あいたかった〜! 」
茜は緊張が解けたのか、皇騎の胸の中で泣いた。
「すみません。私があなたを守ります……」
と、皇騎は優しく抱きしめていた。
それから数十分後に武威が運転する車が着いたのである。
数日後。
一刻を争う事態に、IO2は各種部隊を東京全体に出動させた。しかし、この数日間、もう事件という事件は起こっていない。ただ、夜中に紅く月が輝くだけで、日中は平穏な世界であり、肩すかしを食らった感じであった。既に復活が確定したため、復活する養分は要らないとオカルティックサイエンティストは考えているそうだが、現場では、各地に置ける死の気配を追い続けている。
今回の事件に全く関係ない吸血種の誤認逮捕、抹殺の事件もみ消しにも奔走するエージェントもいれば、ディテクターや鬼鮫のように、自分の足で今の事件を追う者もいる。
さて、一応の協力関係である義明達も手がかりを探しているがどうしているだろうというと、天薙撫子が情報を整理し、其れを皇騎と茜に譲り、吸血神の伝承口伝を探し、武威と蓮也は武威の仕事であった行方不明者の捜索を続行し、怪しい地点も探している。紅麗は、未だ歪の転移は完全回復しているのだが、宿敵“禍”に呪いを受けた部分が悪化したため、長谷神社で休養を余儀なくされていた。
「す、すまねぇ……」
禍の接近とは違うが“吸血神”の気というのは似ているようで、呪いが悪化し死に至らしめられるようだ。幸い、天空剣の達人達のおかげで封の技を使い、事なきをえているが、いつまた呪いにより死亡するか怪しくなっている。
義明といえば、それからずっと道場で汗を流している。
「義明くん……?」
素振りをしている恋人に声をかける撫子。
「いや、俺の見る力が使えない状態になっている……。俺が出来ることと言えば、いつでも体を動かせる状態を維持するしかない。すでに、茜からの先見術以上の手がかりが見あたらない……」
神格具現剣『水晶』を納刀し、身体から発する神格を鎮めた義明が言った。
「いま、天薙家、宮小路家の情報網と長谷家の口伝などを元に捜していますけど……。龍晶眼も先を見通せないのです……」
首を振る撫子。
「かなり巧妙に占術妨害術を張っているようだね……」
「はい……」
2人はそれから黙っていた。
「こっちも異常なしか……」
武威は各墓場の地点を調べてみたが、全く変化は見られない。盾座、水瓶座、コップ座でエネルギー流出を調べてみても紅い月にエネルギーが届くという地点は見あたらない。
「こっちもないですね」
一緒に同行している蓮也も運命の糸などたぐり寄せて過去にあった事を見てみる。
「まったく、養分補給が続けられると思ったんだが……全然だな」
武威は、車を走らせた。
紅麗曰く、陰の気配がある場所に何かあると言うことから、一番に動力のある武威と、先見や運命操作ができる蓮也で各地をしらみつぶしに探している。IO2も人手不足な為完全に墓場や自殺の名所、薄気味悪い洋館を当たっているのである。
広い場所に、うっすらとシルバールークやIO2の臨時拠点を隠している地点も見つけ、チェックしておく。下手に動いて、その主砲で丸焼けにされるのは御免被りたい。
「念のため浄化しておきます」
蓮也は運斬を具現化し、天空剣・斬で浄化する。
墓場の気を吸い取られる可能性はゼロではないため、地道な浄化作業は進めているのだ。
蓮也のかんがえは出かける前に相談しているが……。
「あえて、復活を早めることで不完全な神を倒すと言うことか……」
その意見は皆真剣に考えていた。
復活は影法師曰く、完成していると言う。蓮也はあの紅い月自体が卵であるとこう推測しており、いっそのこと早く孵らせた方が仕留めやすいのではないかと言うものである。しかし、未だ欠点やあの紅い月と関連性の在る場所が見あたらないため、決め手に欠けるのだ。
「欠点とか分からないと、その方法は難しいな」
「ヤッパリ吸血種だから、にんにく? 十字架? それとも杭?」
「流れる水もしかし、神になるほどの其れってそんなに弱点はないよな?」
よって、運命の糸や龍晶眼で伝承を見つけるまで、地道な足を使って捜索することになった。
皇騎の方も、ずっと、長谷神社で茜を守っている。コレといった動きがないので、配下などを外に出し、茜の情報収集を手伝っている。撫子の龍晶眼とリンクできる特殊装備も今のところ役に立っていないが、いつ何か引っかかるか分からないため茜は其れを常時つけている。
「分かることありますか?」
皇騎は茜に訊く。
茜は首を振るだけ。静香も首を振っているようだ。かなり過去の伝承・口伝を探しているのだが、日本などでは“知られざる”吸血神についての情報は、霊木静香のネットワークでも分からないらしい。
「妨害されているのか、風化したのでしょうか?」
「可能性はあるかもしれないね……」
あれから、1週間過ごしていた。
〈犠牲〉
笛が鳴った。
義明を呼ぶ笛だ。
「皇……まったく……」
あれほど言っていたのにと、舌打ちする義明。
「何処か分かりますか?」
撫子が茜と義明に訊く。
「原宿の裏通り! ――の1〜2何丁目!」
いつでも“跳べる”様に準備は万端だ。しかし義明は“瞬間移動”が出来る訳ではないし、今長谷神社にいる全員がそんな秘術を持っているわけではない。
「織田! 乗れ!」
武威がチューンナップしている愛車NSX−Rを引っ張り出した。
「先に行ってます!」
と、義明は武威の車に乗った。
そのままエンジン音を響かせ、武威は走る。
「わたくしたちも後を!」
「これに乗るんじゃ!」
と、長谷平八郎ワゴンに御柳紅麗、御影蓮也、天薙撫子が乗り込んで後を追った。
「撫子!」
従兄の皇騎が呼び止める。
「欠点らしい候補が見付かった……茜さんが其れを今解析中だ」
「分かりました……其れは早く教えていただければ……」
「ああ。茜さんも最善を尽くして……早く送るそうだ」
「平八郎様、お願いします」
車が走り出す。
後ろ姿を静香が不安そうに眺めていた。
さて、茉夕良がなにゆえに笛を使ったのか? のっぴきならない状態だというのは分かるだろう。笛を吹く前、彼女は何をしていたのだろうか?
茉夕良は単独で動いていた。そして、場所を見つけたのだ。事件現場などを浄化していき、力を盗めないかを模索していたのだ。
墓場でも何でもない。ただのテナントビルの裏にある空き地だった。曰く付きのお化け屋敷でもなく、歴史書にも口伝にも残されてもいない。そんな街の死角に、ぽつりと無造作に、石がおいてあるのだ。いや、ただ、動物が死んで、子供が泣く泣く埋葬したときに建てる墓標にしか見えない。ただ、彼女は其処が危険だと言うことを何となく分かってしまった。
既にこの事件に足を突っ込んでいるわけだから、今更抜け出すこと何てできないわけで、屍術を用いて、ひたすら探していたのだ。しかし、神とエネルギーを供給するシステムを見つけられないことはおかしかったのだ。
「隠匿されている?」
なんと、エネルギーの流出はかなり巧妙に隠されていたのだ。あらゆる占術、そして検索に引っかからないように。彼女が其れを見つけたのは本当に皮肉な話である。
「直ぐに止めないと……」
エネルギーの流出は、その一点のみ。その場所はまるで心臓にている。隠匿術を解呪し、真実を明らかにした事で、その場所はドス黒い血の匂いと波動に支配されていた。屍術に長ける彼女だからこそ遭遇したのかも知れない。ではその見つけたときにどうするか何て決まっている。浄化し、封印術を何とかすればいいことだ。カタリナを抜き、その心臓に突き立てれば全て終わりなのだ。
「これで……終わり……」
と、思った矢先、剣が弾かれたのだ。
更に、折れた。
聖女の魂を封印されていると言われる、その剣が折れたことに茉夕良は驚く。
「そ、そんな!」
その力を……心臓は吸い込んでいくのだ。
ふと、思うことがある。一般的に吸血種というのは、清らかな心や純血の少女の生き血を好むと言う説が有力。そうすると、自分にしても、そのカタリナにしても、格好の餌だ。
心臓が怒る。
「い、いけない……」
どんどん、彼女の力も吸い取られていく。
カタリナが使えない今、彼女には為す術がない。
その時、無意識に、彼女は義明から貰った笛を吹いてその場に倒れたのだった。
〈復活〉
現地にたどり着く聖武威と義明。
「こんなところに!」
捜索、検索に引っかからないというのは難儀であるが、相手も其れを防ぐ手段を講じているのは常套手段だといえる。“見つけて下さい”と言わんばかりの影法師の行動は攪乱だったのかどうかさえ怪しく思えるだろう。
「奴さん……厄介なことやってくれるぜ……」
武威は舌打ちした。
心臓の手前で、皇茉夕良が倒れている。
2人が其処に近づこうとすると、何とも言えない脱力感に襲われた。全身から血を抜かれるような……感じもある。
「くそ! 行けねぇじゃねぇか!」
ラウズブラスターを構える武威。
「聖さん! 無茶な!」
義明が何か技をしかける前に素早く彼は動いたのだ。
盾座のカードにより、生気を吸い取られる感じを抑制させ、急いで茉夕良を抱きかかえてくる。
「ぜーぜー。献血後に100mダッシュした気分だぜ……」
彼の顔は青ざめており、今にも貧血で倒れそうだ。
水瓶座から、水を手にして回復を図る。問題は茉夕良の方だが、かなり衰弱が激しい。
「こりゃ、入院必須だ……俺もヤバいな」
「聖さん、あとは……俺に」
「ああ、そうするよ。先にこの女を病院に運ぶ。俺も気合い入れ直してくる」
と、彼は急いでその場を去った。
「……これほどの力の持ち主を倒せるのか……?」
義明は、ゆっくりと神格具現剣『水晶』を抜刀した。
「聖さん!」
武威に追いついた撫子たち。
「お、丁度良いところに! この嬢ちゃんを頼む」
「これは厄介じゃな……」
脈を測って、様態を調べる平八郎。
「織田はこの先だ。早く行ってやってくれ……」
「はい」
撫子は直ぐに天位覚醒し、走っていった。
「じゃ、俺も目覚めるか」
と、紅麗も人間の肉体を離れ真の姿にかわる。仮面の死神に……。
蓮也も運斬の二刀流で構えて先に進んだ。
「お主も、顔色悪いぞ……治癒が必要じゃ」
「ああ、そうだな……。まったく……」
走っていく3人を見て……
「神様の万国ビックリショーかよ」
と、苦笑した。
心臓がどんどん鼓動を早めていく。
「破裂しそうな勢いだな」
構えて、神格を覚醒させる義明。
これをどう破壊するか考えている。冷や汗が彼の頬を伝った。
「「義明!」」
「義明くん!」
蓮也と紅麗、そして撫子がやってきた。
「気をつけろ!」
義明が叫ぶ。
「うわ……この感覚!」
紅麗は一歩退く。
「気持ち悪いったらありゃしない……良くこんな禍々しいモノを隠し通せたものだ……」
舌打ちする紅麗。
「皆さん、下がって!」
撫子が言う。
おそらくこの中で1番強いと思われるのは撫子であろう。
龍晶眼で全てを見ようと試みる。
目を開いてみたとき……恐ろしいほどの重圧を感じる。
その時、撫子の脳裏に過去の事がハッキリとわかった。
「きゃあああ!」
「撫子!」
それは、リンクしている茜にも伝わるものだった。
長谷神社。
「きゃああ!」
茜は痙攣を起こしその場で倒れ伏す。
「あ、茜さん!」
皇騎は彼女を抱き起こした。
気絶している。一気に情報と恐怖が伝わったためだと思われる。
静香が慌てて姿を現し、茜を呼び続けている。
「あ、茜! 茜!」
「落ち着いて下さい! 静香さん」
「ああ! なんてこと……」
世界の加護さえも通り抜けるモノを見た茜。
「あ、わ、わたし……」
「よ、良かった茜さん……」
皇騎は目を覚ました茜を見て安堵する。
「ああ、こうしちゃ……い、いられない……早く……皆に……」
と、彼女はフラフラと何処かに向かう。
「茜さん……今動いては……」
「いま、行かないと……早く伝えないと……」
茜はどこに向かおうとするのだろう?
「茜さん。私が皆に教えますから」
皇騎は彼女を止めた。
「……皇騎さん……アレの弱点と……真実。そして弱点……」
何か二言三言、言った後。茜は気を失った。
「!? 茜さん! しっかり!」
「大丈夫か?」
義明は撫子を抱きしめていた。
彼女は汗だくになっており、天位覚醒から普通の着物姿に戻っている。
「義明!」
紅麗が叫ぶ。
「ここは、俺たちに任して先に撫子さんを安全なところに!」
と、紅麗は蓮也が義明と撫子を庇うように立ちはだかった。
「しかし」
「いいから!」
「すまん。しかし、無茶するな!」
と、義明は恋人を横抱きして、その場を急いで去った。
「さて……、格好つけてみたけどよ、正直怖い」
ガチガチ口が震えている死神・紅麗。
「さっきとは全然口調が違っているぞ、紅麗」
ジトメで紅麗を見ている蓮也。
「うるさい! あの2人は切り札だぞ! それに何か掴んだかも知れないんだ」
「ま、そうだよな」
と、お互い武器を構えた。
と、2人は運と技を全て使いきるつもりで心臓に向かった。
心臓は敵を排除するために、血管をムチのようにして2人をなぎ倒し、地面に打ち付けた。
「いつぅ!」
地面に転がり受け身をする紅麗に、
「やはり、だめか!?」
蓮也は何かを確信した模様。
「どうすんだ?」
「今のうちに復活を早めることが一番の近道だ」
「な! なにぃ!」
蓮也はとんでもないことを言いのけ、紅麗を驚かせた。
欠けた具現刀を修復し、再び構える蓮也。
「いや、運命の糸でそう分かっただけだ。しかしそれ以降のことは、まったくもってわからない」
「そんな、無責任だな!」
「そういうな。完全復活されるより最善の方法がこれしかない……」
そして……二筋三筋の閃光……。
しかし、彼らの斬撃や運命操作も同時に紅い月とこの心臓に大ダメージを与えた。
紅麗の愛刀・氷魔閣は破壊され、蓮也は限度をこえた運斬の力を行使して意識を失った。
「ま、未だ大丈夫か……俺だけ……かよ。まったく、蓮也、格好つけやがって」
と、紅麗は苦笑する。
自分が刀だけ折れて打ち身程度というのが奇蹟だったのだ。蓮也が運命を弄ったと思われるのだ。
欠けた運斬と氷魔閣は見事に心臓と月の連結部分を“斬り裂いていた”
心臓は行き場のないエネルギーに苦しみもがいている。
「おっと、爆発する!」
蓮也を担いで紅麗も一目散に逃げた。
負のエネルギーが爆発拡散し……その振動は東京全土に響いた。
紅い月がより一層輝いた。
「ふ、復活しちゃう……」
長谷神社で茜が、
「復活する……」
義明の胸の中で撫子が呟いた。
由来は殆ど風化しているが。2人が“見た”吸血神の正体はこうである。
これは、今までの吸血種の恐怖話が収集され、話自体が物質化した“幻想生命”で“現象化”らしい。かつて吸血種の話が存在する以上、常に存在するという厄介なモノだった。つまり、話を信じる者がいれば其れは信者であり、現実に存在する吸血種がいるならば其れは使徒となる。その循環さえあればこの“吸血神”は常にいる。しかし、噂だけ故に信憑性はなく、実際に見た者もかなり少ない“現象化”だったため一部の者しか知られていなかったようだ。
しかし、物質化した時点で其れは一つの個体になった。現象化のような厄介なものでなくなったのだ。そのあと、何者かが封印したのだろう。
なにゆえ、“神”となったのか? いや、そう呼ばれていただけ、倒しにくかったものだろう。姿がない故に、他の吸血種や吸血種を恐れる人々に潜在的に恐れられていたと思われる。
いつしか、それは神としてカルト的に信じられていた。仮にこの現象化を封印したというならば……かなりの力を必要とするだろう……それは……。
「アレを封印もしくは“殺す方法”は分かる?」
義明が紅い月を見てから、愛する人に目を向け尋ねる。
「吸血神を倒す方法は、単純に……木の杭です。しかし……」
「一度壊れたと言われる……世界樹で出来た杭です……」
「あの……帰昔線の大元だったと噂されるあの樹!?」
義明は驚愕する。
「世界樹で出来た杭ですって?!」
皇騎も茜から聞いたことで驚く。
「どうすればいいんだ……そんなもの探すのは……」
今の情報では世界樹とされる樹は数多くある。
しかし、帰昔線で大元となった樹を加工することなど……まず不可能に近い。
この事を詳しく知っているという人物は……SHIZUKUこと瀬名雫とディテクターこと草間武彦だろう。
紅い月は何かを産み落とした……。
その場所で、吸血神は禍々しい産声をあげたのだ。
4話に続く
■登場人物
【0328 天薙・撫子 18 女 大学生・巫女・天位覚醒者】
【0461 宮小路・皇騎 20 男 大学生・財閥御曹司】
【1703 御柳・紅麗 16 男 不良高校生&死神【ALICE I 副長】】
【2276 御影・蓮也 18 男 大学生 概念操者】
【4464 聖・武威 24 男 レーサー/よろず屋】
【4788 皇・茉夕良 16 女 ヴィルトゥオーソ・ヴァイオリニスト】
■ライター通信
滝照直樹です
かなりの人数がぶっ倒れてしまいました。
直ぐに復帰できる人とかもいますが。
その辺は個人差があります。
4話に続きます。その時ご縁があれば宜しくお願いします。
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