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■かわうそ?の上手な捕まえ方■

にしき
【0170】【大曽根・千春】【メイドな高校生】
 もうすぐ夏を迎える頃、とある午後。
 薄暗闇の空間には、小さな机と怪しげな蝋燭、怪しげな器具。そして地図。
 机を挟み、向かい合うようにして座る少女が二人。

――この二人が何処かへ姿を消したなら、日本の一角はものすごく平和になると思う。

「だぁからぁ、此処にこう、トラップを仕掛けてだなあ……」
「いや、そんなところに仕掛けたって無駄に目立つだけだよ。罠は最小限に、かつ大胆に」
 ぼそぼそと話し合う内容はどう考えても穏やかでない。
……二人の会話がかつて穏やかであった例など、片手で数えるほども無いのだが。

 片方の少女――此花茜(このはなあかね)――は、ふと片眉を下げて疑問を口にした。
「でものう、わしら二人の組み合わせという時点で既に警戒されとるんではないか?」
 するとそれを捉えたもう片方――岡千尋(おかちひろ)――が、何を今更、とふんぞり返る。
「……馬鹿だな。だから、彼にとって警戒対象じゃない人に協力を頼もうって、最初に言っただろ」
「ああ ……そっか」
「そうそう」

 ほんの一瞬、シンとして。

 他の誰に聞かれている訳でも無いだろうに、千尋は辺りを見回して、茜の耳に何事かを囁く。
 それを受けた茜は、暫くふんふんと大人しく耳を傾ける。
 そして今度は彼女が二言三言、千尋へと呟いた。
 二人が定位置に戻る頃、その顔は、何とも言いがたい悪人顔だったそうで。

「んっふっふっふっふ……御主も悪よのう、茜」
「いやいや岡様こそ、……ぬはははははははは……」

 草木も眠る丑三つ時、とある神社の一室から響いたどす低い笑いは暫くの間噂になったとか、ならなかったとか。