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■具現化協奏ファントムギアトルーパー――testee2■

切磋巧実
【0086】【シュライン・エマ】【翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
●公表
 ――麗刻学園。
 小学校から高等学校までを対応とした総合学園だ。但し、誰でも入学できる訳でも編入できる訳でもない。この学園の入学条件は『異能力者』である事が必須とされている。
 先日起きた騒動から翌日。全校生徒は体育館を集められていた。壇上では白髪混じりの小太りな校長が、額の汗を吹きながら俄かに信じられない現実を話し続けている。
「えー、ですから皆さん方には、一般人を危険な目に合わせない為にも、その、妖機怪なる侵略者と戦うパイロットになって頂きたいのです」
 当然、生徒も教師も動揺していた。当然だ。突然、敵対するモノを倒せる力があるのだから協力しろと言われているのである。そんな不条理な話が、しかも学校で告げられるとは誰一人想像すらしないであろう。校長は更に慌てた様子で続ける。
「いや、これは強制ではありません。勿論、今まで通り、学園で学び、大らかに過ごすのも良いでしょう。学園の本分は勉学なのですから、引き受けても良い方だけお願いします。尚、分かっていると思いますが、このことは外部に漏らさないようにして下さい。それは皆さんの安全の為である事も付け加えて置きましょう」
 つまり、巨大ロボットの存在と、異能力者の力を具現化する方法が世間に知られれば、危険が伴うと説明したいらしい。元々、異能力者として自覚している者は、何となく校長の話は理解できたろう。
 それでも生徒達のどよめきは止まる事を知らなかった。次に壇の中央に現れたのは若い女の教師だ。
「さあさあ、どうするかはゆっくり考えなさい。話は変わるけど、もう夏も真っ盛りよね? みんな、海に行きたくない?」
 雰囲気を変えようとでもする如く、若い教師は笑顔で訊ねた。小学生は歓声を交えて元気よく手をあげてハシャいだ。中学生以上になると、面倒そうな表情を浮かべる者もいれば、素直に喜ぶ者や、複雑な表情が覗える。
「それじゃ、全校生徒全員で臨海学校を体験しましょう♪」
 それは一泊2日の臨時教育活動だった。

●見つめる瞳
「校長も巧く説明してくれたようですわね♪」
 モニターに映し出される体育館の情景に、銀髪の少女は微笑みを浮かべた。傍に佇むのは初老の紳士だ。
「ええ、多少動揺はしておりましたが‥‥しかし、よろしいのですか? 生徒や教師全員に公表されて‥‥」
「構いませんわ。だって、あんな大きなものを隠しながら動かすのは大変ですもの。皆さん異能力者としての経験がおありでしょ? 世間に知られなければ問題ありませんわ」
 ゆったりとした椅子に腰掛けた西洋人形を思わせる少女は、モニターから視線を逸らさずに話した。鎮芽・グリーペルの言葉を受け、初老の紳士は次の報告に入る。
「海岸はグリーペル財閥で確保致しました。宿泊施設も用意は整っております。一般人の立ち入りも禁止し、霊駆巨兵の搬送も予定通りに終わります。しかし‥‥」
「心配いりませんわ、騒動だって起こしていますもの♪」
 ――夏の海岸行方不明事件。
 被害者は若い男性ばかり。一夜を過ぎても帰って来ないというものだ。
 真偽は定かでないが、被害者と数分前まで一緒にいた者や、偶然目撃した者の証言によると幾つか共通点が浮かび上がっていた。
・皆、夜の内に姿を消したらしい。
・子供を抱いたような女の姿を見た。
・男が頭上を見上げたまま動かなくなっていた。
・大きな津波に呑まれるのを見た。
 占い師の告白。
・海岸に水の滴る美女が見えます。
・牛と鬼が見えます。
・明かりに映る自分に気をつけなさい。

 この物語は、霊駆巨兵――ファントムギアトルーパーで戦う生徒と教師達の記録である。
具現化協奏ファントムギアトルーパー――testee2

 ――燦燦と輝き照り付ける陽光。
 雲一つ見当たらない澄みきった青空。小波の音と共に揺れる紺碧の水面。ジリジリと熱を帯びた気温と焼ける砂浜――――
 歓声を響かせながら幾つもの足跡を残して砂浜を駆けて行くのは少年少女達だ。はしゃぐ声が時折流れて来る心地良い潮風に運ばれて行く。
 ここは貸し切り状態の楽園そのものだった‥‥。

■testee2:臨海学校の中で
「いや、酷い目に会ったな」
 浜辺や海に繰り出してハシャぐ子供達を眺めながら、草間武彦はビニールシートに腰を降ろす。丈の長い半ズボンにシャツを羽織った男の隣には、一人の女がいる。
「大丈夫? 武彦さん。ちょっと見せてみて」
 細い眉をハの時に歪め、切れ長の青い瞳は心配気な色に浮かばせた。ワンピースの上にパーカーを羽織った女は、ズイッと顔を近付けると、彼の頭を掴んで後頭部を覗き込む。武彦の瞳を飛び込んだのは母性の象徴だ。別に慌てるほどではないが、生徒達に誤解されても可笑しくない。
「あ、あぁ、大丈夫だ。気は失ったがダメージは酷くない」
「そうみたいね。腰はいいの?」
 安堵の表情を取り戻した彼女はパーカーを脱ぐと、日焼け止めを塗りながら訊ねた。
「ああ、まあ激しい運動は厳しいかな。シュライン、似合わなくはないが、なんでワンピースなんだ?」
「なに? ハイレグなビキニ姿でも想像していた訳?」
 からかうように話す女に、「いや、そういう訳でもないが」等と反論する中、微笑みを浮かべて彼女が顔を向ける。
「私達は教師じゃない。遊びに来た訳じゃないでしょ?」
「確かに、な」
 素性や目的はどうあれ、彼等は教師として麗刻学園を訪れ、この臨海学校という行事に参加しているのだ。
「背中、塗ってくれる?」
 シュラインは背中を向けるとサンオイルを手渡す。こりゃ塗り忘れたりすると大目玉だな、なんて思いながら、武彦は白い背中に指を滑らせた。平穏そのものな時間が流れてゆく――――
「あら?」
 彼女は小さく声をあげると、立ち上がった。どうやら何か見つけたらしい。武彦が顔をあげると、シュラインの白い肌が陽光に照り返し、普段とも違う印象を感じた。
「熱中症に気をつけてね。あと、子供達から目を離しちゃ駄目よ」
 まるでお姉さんが弟に言い聞かせるような口振りで告げると、女は砂浜へと歩いて行く――――。

「藍原、先生」
「よぉ、名前は覚えてくれてたみたいだな」
「はい‥‥それより何か用ですか?」
「いや用って程じゃないけどよ。折角の海だぜ? 月見里は泳がないのか? 水着忘れたのか?」
 確かに千里はビニールシートの上で膝を抱えており、細い身体を包むのは軽装の私服だ。あれこれと詮索する藍原和馬に、少女は不機嫌そうに片眉を跳ね上げる。
「気にしないで下さい。担任には許可してもらっているんですから」
「まあ、担任が良いって言ってるなら仕方ないが‥‥臨海学校だぜ? それとも具合でも」
「藍原先生?」
 声は彼の背後から聞えた。咎めるようなキツイ感じの声だ。和馬が視線を流すと、瞳に映ったのはシンプルなワンピースの上にパーカーを羽織った、中性的風貌の女だった。腕を組んで仁王立ち。切れ長の青い瞳が男を射抜く。
「エマ先生‥‥な、何か?」
「何かじゃありません! 体育教師なら準備運動させたり、事故が無いかもっと周りを見るべきじゃありませんか? 月見里は私が見ますから大丈夫です」
 やたらと大丈夫を強調した声だった。これは退散した方が良さそうだ。茶髪をポリポリと掻いてバツが悪そうに周囲を見渡す。
「分かりました分かりました、月見里はエマ先生にお任せしますよ。じゃな、気が向いたら俺に相談してくれよな」
 軽く手を振って和馬はその場を離れた。シュラインは苦笑しながら溜息を吐くと、千里の隣に腰を降ろす。
「ごめんなさいね。まったく男は乙女心が分からなくて駄目ね」
「いえ‥‥そんな大袈裟な事じゃなくて‥‥」
 ――きっと似合わないから‥‥。
「いいのよ、誰にでもそんな時期はあるわ。また、無神経な男に訊ねられたら私に言いなさい☆ それじゃ、私は仕事があるから行くわね」
「仕事ですか?」
「これでも教師は雑用とか忙しいのよ☆」
 シュラインは立ち上がって微笑むと、軽くウインクして見せた。

●先生達の予定
「どうやら亜真知様は出掛けたようです」
 夕食が終わり、暫らく時間が経過した後、ドアを開けて部屋に入って来たのは撫子だ。集まっているのは3名の教師である。彼女の話を聞き、和馬が口を開く。
「青春だね〜。俺も学生時代に戻りてぇなぁ」
「‥‥やはり学園側で、もっと管理した方が安全だったかもしれないわね」
「あまいなぁエマ先生。管理されればされるほど燃えるもんだぜ?」
「いずれにしても、生徒達が規則を破るのは良くありません」
「それが青春ってもんだぜ、撫子先生」
 シュラインは、当たり前のように青春を語る、小麦色の青年に溜息を吐く。
「そんな歪んだ青春を称賛されてもね‥‥」
「分かってるって。この海岸に恐らく出現するだろう存在だろ? 生徒達を危ない目に合わせる訳にゃいかねぇからな」
「やはり、妖機怪でしょうか?」
「可能性は高いわ。多くの人に目撃されていない事から、出現時刻は遅い筈。‥‥そうね、分担して部屋を見回りましょう」
 中性的な女は腕に虫除けを擦り込み、行動に備える。腰にはしっかり虫除け用の音波発信機が付けられていた。

■肝試しの中で
「はぁ? 肝試しだと?」
 素っ頓狂な声をあげたのは和馬だ。傍にはシュラインや撫子といった教師達が立っており、対面して顔色を曇らせているのは肝試しに参加した生徒達である。生徒の一人に目線を合わせ、眼鏡を掛けた和服美女が穏やかに口を運ぶ。
「それで、もう肝試しに行った子はいるのですか?」
「‥‥尾神君と、銀野さん。後から榊船さんと‥‥」
「亜真知様!?」
 生徒の小さな声に、撫子は上擦った声をあげる。
「亜真知様が肝試しに? わたくし、行って来ます!」
 慌てた様子で駆け出した。そんな様子を精悍な風貌の体育教師が眺め、溜息交じりに呟く。
「歩幅の取れない和服で転ばねぇと良いがな」
「他には? 零ちゃんとか行ってないの?」
「‥‥あの娘は来てないです。肝試しなんてやめた方が良いとか言ってました。後は、ファルナさんと‥‥あれ? メイドさんも行ったのかな?」
「‥‥メイドさん?」
 そう言えば、何故かメイドを従えた金髪の少女がいた。それは兎も角、疑問点を感じた外国語教師が切れ長の青い瞳で射抜く。
「どうして、そんなにバラバラに? 戻ってから次のペアが行くのではないの?」
「‥‥先生に見つからないように手早く済まそうと思って‥‥距離も長いし、人数も多かったから‥‥」
 シュラインは溜息を吐いて、腰に手を当てた。七重は霊駆巨兵を呼び出せるし、問題は無いだろう。しかし、もし、他の生徒が騒動に巻き込まれれば‥‥。
「まあ、男女ペアなら大丈夫かしら?」
「分からないぜ? 若い少年は食べ頃じゃねーの? 俺は探しに行って見る。エマ先生は生徒達を頼む!」
「ええ、藍原先生‥‥何かあったら携帯に」
 青い瞳に不安の色はなく研ぎ澄まされていた。意味を理解した和馬は二ッと歯を見せる。
「ああ、分かってるぜ★」

「さ、もう遅いんだから寝なさいよ」
 シュラインは生徒達を部屋へと送り届けた。生徒達も不満そうな顔色を浮かべるものの、従ってくれたようだ。
「シュライン、先生。こんな夜中に何をしているんだ?」
 肩に腕を置いて、首を左右に傾げて安堵の息を洩らす中、姿を見せたのは武彦である。
「大変だったのよ、生徒達が勝手に外出して肝試しですって」
「あぁ、まあ良いんじゃないか? 思い出を作りたいってやつだろ?」
 ポリポリと頭を掻くと、男はポケットから煙草を取り出す。しかし、鋭い眼差しを向けるシュラインの姿に、思わず咥えた煙草を落した。何か怒るような事を言ったか? そんな顔だ。
「良いわけないじゃない! 思い出を作りたいのは分かるけど、何かあっても子供達には責任が取れないのよ」
「‥‥確かにそうだが‥‥」
「そうです! 教師の言葉とは思えないわ。尤も、隠れ蓑って所でしょうかしら?」
 青い瞳が研ぎ澄まされ、口元は不敵な笑みを浮かべた。
「おいおい、勘繰るなよ‥‥」
 その時だ。シュラインの携帯が着信メールを知らせる。
「ごめんなさい、他に抜け出した生徒がいないか探して来るわ。武彦さんも、部屋から生徒が抜け出さないよう見張ってて!」
 シュラインは駆け出しながら告げた。

 ――濡れ女と遭遇。
 数分後に霊駆巨兵を呼ぶ――――

 メールは和馬からのものだった。シュラインは彼の元へと急ぎ、暗闇に包まれた砂浜を走る。
「確か、この方角よね。近くなら良いんだけど‥‥場所くらい教えなさいよ‥‥砂浜で場所の特定もないわね」
 どうやら体育教師にミスは無かったようだ。仕方が無い。音を頼りに探すしかない。彼女は、聴音と音の記憶力に優れているのだ。
 刹那、砂浜が振動に揺れた。
 耳に聞えるは飛沫のような音。何かをセリ上げた機動音。足音――――
「こっちね!」
 闇の中を走る中、次第に音が近く聞える。視界に映し出されたのは、顔をあげて動きを止めた男の姿だ。
「変ね‥‥自分に被せた大きい幻影を見せて相手の動きを止めるなら、幻影なんかに騙されるとは思わないけど‥‥!!」
 耳に飛び込んだのは、機械音が和馬に近付く感覚。動きを止められた男に、何かが近づこうとしている。かなり危険な状況と予測された。
「なに? これってピンチじゃない。藍原先生ッ!」
 シュラインは人に聞えない声を響かせた。忽ち、水面が暴れだし、何かが悲鳴のような叫び声を轟かす。
「エマ先生ッ!!」
「もう、情けないわね。濡れ女に鼻の下を延ばしてた訳?」
「いい女だったぜ‥‥幻だったけどよ♪」
「‥‥幻?」
 駆け着けたシュラインが腕を組み、細い顎に指を当てる。
「妖怪濡れ女の正体は大きな大蛇で、美女の姿で騙すって話は確かにあるわね」
るかもしれない。そ 女性が実在の人だとしたなら、敵に関しての何らかの情報得られう考えていたシュラインは溜息を吐いた。
「それより、聞えているだろ?」
「ええ、二体いるわね‥‥濡れ女と牛鬼って所かしら?」
 二人は妖機怪が警戒している内に、巨兵へと乗り込んだ。
「先ずは武器だな!」
 和馬が二本の操縦桿を握ると、霊駆巨兵は変容を開始した。光の中から姿を見せたのは、彼のワーウルフの変身能力により、変容を遂げたメカニカルなシルエットの半獣人と化した巨兵だ。盛り上がった肩まで太い腕をあげ、ファイティングポーズを見せる。
「俺を食おうなんざ10000000年早いんだよッ!」
「待って! 何か飛んで来るわ!」
 瞳を閉じたシュラインが、注意を促がす。次の瞬間、コックピットは鈍い衝撃に包まれた。和馬が顔色を変える。
「おい、こんなに動きが遅かったか?」
「違うわ! 何かもう一体からの攻撃を受けたのよ!」
 対峙しているのは牛鬼だ。ならば濡れ女が手薄になったという事か。
「あの妖怪は赤ん坊を投げ付けるのが攻撃だからな」
「赤ん坊を抱いた男の腕は、石のように重くなるというわ」
 ――マズイ!!
 一機の巨兵で対処できるものじゃない。
「おいおい! 牛鬼は口から火炎放射して来るぜ!」
「また音が聞えたわ! 躱して! あぁッ!」
 再びコックピットを襲う振動。刹那、室内は灼熱に包まれた。
「うあぁぁッ! タダでさえ暑い真夏に勘弁して欲しいぜ!」
「冗談言ってる場合じゃないでしょ! こんな所で、ローストは、願い下げよぉぉッ!」
『こちら千里です。これより支援に入ります』
 通信機から飛び出したのは少女の声だ。
「月見里か、助かったぜ! 生徒達を探していたら見初められちまってよ」
「藍原先生、惚気るのは構わないけど、状況を理解してるのかしら。千里さん、妖機怪がニ体いるの。どちらかお願いしていいかしら?」
『エマ先生? 分かりました。でも、あたしには敵が見えなくて』
「私がサポートするわ。藍原先生には直接見えるみたいなの」
『お願いします☆ 牛鬼と濡れ女ですよね?』
「御名答よ。それじゃ、濡れ女を頼むわね。妖機怪は赤ん坊の形をした物体を投げて来るらしいわ。微かな音で分かるけどね防げるならそうして頂戴」
『分かりました! 広域シールドを展開します』
 フッと安堵の笑みをシュラインは浮かべる。
「藍原先生、操縦を私に回して! 機体に音波を流して赤ん坊を振り落とすわ」
「できるのかよ?」
 顔を向ける和馬を、切れ長の青い瞳が射抜く。
「私達に害が無いとは保証できないわよ」
 選択肢はない。濡れ女の攻撃は千里が食い止めてくれるとしても、今の鈍い動きでは牛鬼の放つ紅蓮の洗礼を防ぐのは困難だ。
「‥‥やってくれ!」
「‥‥分かったわ、いくわね」
 操縦桿を握る絞め、シュラインが絶叫する。コックピットを小刻みな振動が包み込む中、巨兵は青白い波紋を全身に伝わらせた。ボトリボトリと、赤ん坊の形をした塊が砂浜に落下してゆく。
「‥‥終わったわ」
「よっしゃあぁぁッ! 水牛狩りだぜッ!!」
 鋼鉄の指に鋭い爪が生え、獣の牙が揃った大きな口を開いて、ワーウルフと化した巨兵が、妖機怪へ飛び掛かる。爪が切り裂き、牙が装甲に食らいつく。止めとばかりに繰り出した文字通りの鉄拳が牛鬼の頭部にメリ込み、そのまま腰を捻って奥へと叩き込むと、巨体は光の粒子と化して失散していった。
『終わったみたいです。そちらはいかがですか?』
 深い溜息を洩らす和馬の耳に、少女の声が飛び込む。
「おう! ご苦労さん。こっちも終わったぜ★」
「ありがとう。助かったわ」
『いえ、こちらこそサポート助かりました♪』
 和馬は巨兵の腕を千里の方角へ向けさせると、親指を突き出す。すると、彼女の駆る巨兵も、同じように親指を突き出して応えた。

●格納庫にて
「皆様、お疲れ様でしたわ☆」
 胸元で手を組み、鎮芽は満面の笑みと共に霊駆巨兵ファントムギアトルーパーのパイロット達を迎えた。皆、後部ハッチを開くと次々と咳き込んだり、顔を顰めたり、リアクションは様々だ。何故なら機体は砂浜や浅瀬で戦いを繰り広げた為、砂と潮に塗れていたのである。
「まあ☆ 大変でしたわね。後でFGTも洗ってあげなきゃですわ」
 あまり大変そうに聞えない。
「それは兎も角として、まあ☆ 沢山集まってくれましたのね♪」
 瞳を輝かせてパイロット達に視線を流す。ずらりと並ぶ人数は11名の生徒に教師だ。
「では、折角ですから自己紹介でもしませんこと?」
 両手を合わせ小首を傾げての笑顔に、小麦色の肌が健康的な青年が苦笑してみせる。
「まあ、共に事態を収めた仲間だからな。俺からいくぜ? 藍原和馬だ。知ってる奴もいるだろうが、麗刻学園の体育教師を務めている。ま、ヨロシク頼むわ」
 次に口を開いたのは、切れ長の瞳が落ち着いた雰囲気を醸し出す中性的な女だ。
「シュライン・エマよ。外国語講師を務めているわ。ヨロシクね」
「では、教師ですので、わたくしが」
 丁寧で何処か、おっとりとした口調の和服姿の淑女がお辞儀する。眼鏡の奥に浮かぶ瞳は優しげだ。
「古典補助教諭の天薙撫子と申します。皆様、宜しく」
「えーと、撫子お姉様とエマ先生に藍原先生‥‥これで先生方は終わりね☆ わたくしから始めます♪」
 長い黒髪の美少女が手をあげる。
「高等部の榊船亜真知ですわ☆ 皆様、頑張りましょうね♪」
「次はあたしでいいかな?」
 茶髪のショートヘアを掻きながら、背の高い少女が微笑む。
「あたしは高等部の月見里千里だよ。誕生日は8月12日。身長166cm、体重50kg。3サイズは秘密ね☆ ゲームが好きで、コスプレが趣味。あのパイロットスーツはあたしがデザインしたんだ♪」
 気に入ってくれた? と訊ねるものの、数名は苦笑いだ。千里は、「ま、いいか☆」と笑うと次へバトンを回す。流石に年頃の女には抵抗があるかもしれない。
「レディファーストよね。クミノちゃん、どーぞ」
「私は、別に‥‥」
 流れるような優麗な黒髪に、赤いリボンをあしらった小柄な少女が溜息を吐く。
「‥‥ササキビ・クミノ。中等部よ‥‥よろしく」
「‥‥えっと、それじゃ僕かな」
 簡単な挨拶に終わりなのかと戸惑いながら、灰色に近い銀髪のショートヘアの少年が口を開く。
「尾神七重です。あ、中等部です。よろしくお願いします」
 これで前回の妖機怪小豆荒いの時から参戦したメンバーの紹介が終わった。
「次、誰から? あたしから始めよっか?」
 丸眼鏡を掛けた少女が元気な声を響かせた。彼女が顔を左右に向ける度に、長い三つ編みの後ろ髪がブンブンと揺れる。
「お先によろしくてよ」
「私はマスターの後で構いません」
「レディファーストで来たなら、俺は一番後で構いません」
 三人の少年少女が先を譲った。
「そう? こほんっ☆ 銀の螺旋に勇気を込めて、回れ正義のスパイラル! ドリルガールらせん、ご期待通りに只今見参! ドリルガールこと銀野らせんよ☆ ヨロシクね♪」
 大きなドリルを召喚し胸に抱くと、らせんはウインクして微笑んで見せた。‥‥なるほど、確かにドリルガールだ。
「では、わたくしですね〜」
 ニッコリと微笑んだのは、金髪の少女だ。ほがらかな雰囲気を漂わせ、何処かノホホンとした印象を与える。
「ファルナ・新宮と申します〜☆ キャッチフレーズは、いつも笑顔でマイペースにです〜♪ 宜しくお願いしますね」
「私は護衛メイド・ファルファと申します。マスターであるファルナ様に仕えております。皆様、お見知り置きを」
 青い髪のシャギーヘアの少女が丁寧にお辞儀する。確かにメイド服を纏った彼女は、護衛は兎も角、紛れも無くメイドだ。
 最後に残った、整った風貌に精悍さを漂わす少年が、組んでいた腕を下ろして背筋を張る。
「俺は櫻紫桜です。偶然、ササキビさんに乗せてもらっただけの、普通の高等部生徒です」
「‥‥普通? 紫桜さん、妖機怪が見えてたでしょ?」
 クミノが冷たい視線を流してポツリと洩らす。すると話に割って入ったのは、和馬だ。
「妖機怪が見えるのかよ! 俺と同じ能力じゃん。謙遜するんじゃねーぞ? 少年は、自己主張も大事な勉強だからよ」
「勉強、ですか。覚えておきます」
 総数11名の挨拶が終わると、鎮芽が締め括る。
「頼もしい方々ですわ☆ もっともっと増えると部隊編成が出来て楽しそうですわよね? 次もお願い致しますわ♪」
 結局、新たな情報は見つからなかったが、戦いは始まったばかりである。妖機怪とは? 作られる目的とは何なのか?
 ――不明な点は多々ありますが、戦い続ける事で真相に近付けると信じています――――。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/担当】
【5453/櫻紫桜/男性/15歳/高等部学生】
【0165/月見里千里/女性/16歳/高等部学生】
【1533/藍原和馬/男性/920歳/体育教師】
【1166/ササキビ・クミノ/女性/13歳/中等部学生】
【2557/尾神七重/男性/14歳/中等部学生】
【0086/シュライン・エマ/女性/26歳/外国語講師】
【0158/ファルナ・新宮/女性/16歳/高等部学生】
【0328/天薙撫子/女性/18歳/国語・古典補助教諭】
【1593/榊船亜真知/女性/999歳/高等部学生】
【2885/護衛メイド・ファルファ/女性/4歳/完全自立型メイドゴーレム】
【2066/銀野らせん/女性/16歳/高等部学生】

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■         ライター通信          ■
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 この度は御参加ありがとうございました☆
 引き続き参加して頂き、嬉しく思っています。切磋巧実です。
 プレイング欄が一杯になった可能性もありますが、可能でしたら提示した項目を明記して頂けると助かります。記されていない場合は、切磋の方で組み合わせますので御了承下さい。と言う訳で、今回も教師組みとさせて頂きました。
 まだ2回目ですので、核心に迫ったりしません(笑)。また、妖機怪の特色上(と言っても未だ2回目ですが)妖怪が生身で登場する事もありません。幻と予想していたのは正解ですね。
 他のPCの活躍と視点が違っていたりする部分もございますので、お時間があれば読んで頂けると嬉しいかも。
 楽しんで頂ければ幸いです。よかったら感想お聞かせ下さいね。
 それでは、また出会える事を祈って☆