コミュニティトップへ



■おそらくはそれさえも平凡な日々■

西東慶三
【0424】【水野・想司】【吸血鬼ハンター(埋葬騎士)】
 個性豊かすぎる教員と学生、異様なほど多くの組織が存在するクラブ活動、
 そして、「自由な校風」の一言でそれらをほぼ野放しにしている学長・東郷十三郎。

 この状況で、何事も起きない日などあるはずがない。
 多少のトラブルや心霊現象は、すでにここでは日常茶飯事と化していた。

 それらの騒動に学外の人間が巻き込まれることも、実は決して珍しいことではない。
 この物語も、東郷大学ではほんの些細な日常の一コマに過ぎないのである……。

−−−−−

ライターより

・シチュエーションノベルに近い形となりますので、以下のことにご注意下さい。

 *シナリオ傾向はプレイングによって変動します。
 *ノベルは基本的にPC別となります。
  他のPCとご一緒に参加される場合は必ずその旨を明記して下さい。
 *プレイングには結果まで書いて下さっても構いませんし、
  結果はこちらに任せていただいても結構です。
 *これはあくまでゲームノベルですので、プレイングの内容によっては
  プレイングの一部がノベルに反映されない場合がございます。
  あらかじめご了承下さい。
過去と未来を繋ぐ想い

〜 出撃!? 故意の狙撃手 〜

 風野時音(かぜの・ときね)と歌姫の、時空を越えた切ない恋の物語。
 その物語が無事にハッピーエンドを迎えられるか、はたまた悲恋に終わるのか。
 現在進行形の物語の行く末は、まだまだ予断を許さない。

 そんな二人を、何とかして助けたいと思っている一人の少女がいた。
 名を、森里しのぶという。

 なんとかして、二人には幸せになってもらいたい。
 しかし、そうは思ってみても、彼女一人の力では、どうしてあげることもできない。

 そこで彼女は、頼りになる……と言ってはやや語弊があるが、どうにかしてあげることができるかも知れない人物――水野想司(みずの・そうじ)に、相談してみることにしたのだった。

「どうにかして、二人の恋が叶うように手助けしてあげられないかな」
 それは少女の無垢なる願い。
 ところが、それに応えたのは想司の無垢なる(?)勘違いであった。
「つまり! 激しく狙撃依頼ということだね♪」
「えっ?」
 一体、どこをどう解釈したらそうなるのだろうか?
 しのぶが驚いて聞き返すと、想司は楽しそうにこう続けた。
「歌姫君の切ない故意心を時音君の胸に届けられればいいんでしょ?
 このマジカル☆ソージーの手にかかれば確実だよっ!
 早速『ハート型の炸薬を仕込んだ特製弓矢』を準備するね♪」
 完全に間違っている、というわけではない。
 ものの例えだとすれば何とか理解できなくもないのだが、「炸薬」などという物騒な単語が聞こえたのは気のせいだろうか?
「ちょ、ちょっと、想司君!?」
 しのぶは慌てて聞き返そうとしたが、もはや手遅れだった。
「さあ、レッツ、故意の狙撃手(キューピット)!」
 その言葉を最後に、電話は切れてしまったのである。

 これは、まずいことになった。
 どうやら、想司は本当に「ハート型の炸薬を仕込んだ特製弓矢」とやらで、時音を狙撃しに行くつもりらしい。
 その狙撃自体が成功するか失敗するかはわからないが、実際にそのような暴挙に及べば、時空跳躍者の集団やらIO2やらを敵に回しての大戦争にもつながりかねない。
 しのぶは大慌てで想司に再度電話をかけてみたが、電源から切ってしまったのか、さっぱり繋がる様子はない。

 どうしたらいいんだろう?

 少しの間そう考えて、しのぶはある人物に思い至った。
 想司のことも時音のこともよく知っていて、なおかつこういうときに頼りになりそうな人物。
 ちょっと苦手な相手ではあるのだが、こうなった以上、背に腹は代えられない。

 そう決心すると、しのぶは黒須宵子に連絡するため、再び携帯電話を手に取った。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜 萌える手がかり 〜

 加地葉霧(かじ・はきり)の手記を読み終えてから、どれくらい経っただろうか。

 とにかく、いつまでもここで泣いていても始まらない。
 何としてでも、時音にもう一度会わなくては。
 ようやく歌姫が泣くのをやめた時、どこからかオルゴールのような音が聞こえてきた。
「あ、私の携帯です」
 音の正体は、宵子の携帯の呼び出し音だったらしい。
 彼女は鞄の中から携帯電話を取り出すと、相手を確認して、嬉しそうな様子で電話に出た。
「あ、しのぶちゃん? どうしたの〜?」
 どうやら、電話の相手は森里しのぶのようだ。
 宵子はそのまま数分間ほどしのぶと話していたが、やがて電話を切ると、歌姫の方に向き直ってこう言った。
「いいニュースです。時音さんの居場所の手がかりがありましたよ!」
 それは、一体どういうことだろう?
 歌姫が首をかしげてみせると、宵子は満面の笑みを浮かべてこう続けた。
「カギは想司くんです。
 今、想司くんはとある理由で時音さんを探しているようですから、想司くんを見つけられれば必ず時音さんも見つけられます」
 なるほど、確かに想司なら、時音を見つけられるかもしれない。
 けれども、この方法にもひとつだけ問題があった。

 そもそも、その想司をどうやって見つけたらいいのだろう?

「で、問題はどうやって想司くんを見つけるか、なんですよねぇ〜」
 宵子もそこに気づいたらしく、腕組みをして考え込んでしまう。

 そういえば、最初に手記を見つけたきりで、この部屋の中はまだほとんど捜索していない。
 何か、役に立ちそうなものはないだろうか?
 歌姫があちこちを見回してみると、隅の戸棚の上に「萌えレーダー」と書かれた箱があるのが目に入った。
 ひょっとしたら、これなら想司を見つけ出せるかもしれない。
 そう考えて、歌姫はせいいっぱい背伸びをして箱を下ろした。

 中に入っていたのは、ノートパソコンの上にアンテナが付いたようなものだった。
 電源を入れると、画面に色とりどりの点がいくつも浮かび上がる。
 その中でも、やや大きめの点が画面中央に一つ。
 そして、それよりもさらに大きな点が、画面の左上に見えた。
「多分、これが想司くんですね」
 そう言いながら、宵子が左上の点を指さす。
 想司は十中八九それで間違いないだろうし、画面中央の点は、おそらく宵子だろう。
 歌姫はそう思ったが、それはあまり関係ないと思い、あえて指摘しないことにした。

 と。
 宵子が、こんなことを口にした。
「ところで、加地さん、これを何に使っていたんでしょうねぇ?」
 言われてみれば、加地が普段から想司を追っていたとも思えないし、これがここにある理由がさっぱりわからない。

 ――ひょっとしたら、加地はこれで「お姉さん萌え」の時音の居場所を探っていたのだろうか?

 歌姫は一瞬そんなことを考えて、すぐにその想像を否定した。

 ふと見ると、画面中央のやや大きめの点は、いつの間にか二つになっていた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜 全ての道が通じるところ 〜

 途中でしのぶと合流した歌姫たちは、「萌えレーダー」の大きな点のある方へと向かい……辿り着いたのは、なんとあやかし荘の裏手の、ちょうど時空跳躍者たちが現れた辺りだった。

 はたして、本当にここに想司はいるのだろうか?
 そして、本当に時音の居場所がわかるのだろうか?

 そんな歌姫の心配をよそに、しのぶと宵子はぴったりとくっついたまま――もちろん、宵子がしのぶにくっついているのだが――想司を捜し回っていた。
「想司くん、いるんでしょ?」
 ところが、二人がいくら呼んでもいっこうに想司が出てくる気配はない。

 やはり、ここではないのではないだろうか?

 歌姫が不安に思っていると、突然、宵子がとんでもないことを言い出した。
「三下さんが決着をつけたいって言ってましたよ〜」
 その効果は抜群で、たちまち想司が頭上から降ってくる。
「それホント? だったらこうしちゃいられないっ♪」
 今日も見事な魔法少女ルックではあるが、でっかいハート型の矢とそれに合わせた弓以外は、見事に緑と茶色の迷彩色で統一している。
 一言で言うならミリタリー系魔法少女。何とも微妙な格好であった。

 ともあれ、宵子はそんな想司にいきなり抱きつくと、耳もとで囁くようにこう言った。
「ウ・ソ。ごめんね、どうしても想司君に会いたかったの」
「そっかぁ」
 ちょっと残念そうな顔をしながらも、おとなしく抱きしめられている想司。
 しのぶはややむっとした様子でそれを見ていたが、やがてバッグの中からハリセンを取り出すと、さっそく想司の後頭部に一発お見舞いした。
「想司くんっ! なんで一回で出てこないのよっ!」
「ごめんごめん♪ 狙撃のために木の上に隠れてた所だったからさっ☆」
 狙撃?
 そう言えば、想司が時音を捜していた理由については、歌姫は何も聞いていなかったが……ひょっとすると、想司は時音を狙っていたのだろうか?
 だが、もしそうだとしたら、一体何のために?

 と、歌姫がそんなことを考えていた時。
「歌姫さん」
 誰かが、背後で歌姫の名を呼んだ。

 この声は。

 間違いない。

 振り向くと、そこに時音がいた。

 いつものように。

 想いが溢れて、歌姫は時音の胸に飛び込んだ。
 少しの間の後、時音の手が、優しく歌姫の背中に触れた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜 乙女心とハリセンと 〜

 時音と歌姫が抱き合うのを、しのぶは半ば呆然と見つめていた。

「いったい、いつの間に時音が戻ってきたのだろう」という驚きと。
 恋人同士の二人に対する、ちょっとした羨望と。
 そんな気持ちが混じり合って、しのぶの足を止めさせていた。

 しかし、それを許してくれるほど、周囲の状況は甘くない。
「さ、時音さんたちの邪魔にならないように、私たちは向こうに行きましょうね」
 これ以上ないほどの笑顔を浮かべて、宵子がしのぶと想司を促す。
 その笑顔の理由が、「うまく想司としのぶを確保できそうだから」であることは、ほとんど疑いの余地がない。

(だから、私は宵子さん苦手なんだけど……想司くんは、宵子さんのことどう思ってるのかな) ふとそんなことを考えて、しのぶはちらりと想司の方を見た。

 ところが、当の想司はというと、宵子の話なんか全く聞いちゃいなかったのである。
「至近距離の僕に全く無警戒な今こそ絶好のチャンス☆」
 一声そう叫んで、早速弓に矢をつがえる。
「その胸に届け故意心っ♪ ソージー☆アロー発射準備っ♪」
「って、まだやる気だったわけ!?」
 弓を引こうとする想司を、しのぶは思いっきりハリセンで引っぱたいた。
「え? でももともとしのぶが依頼」
「してませんっ! 全部想司くんの勘違いっ!!」
 立て続けに、さらにもう一発。

 すると、それを見かねたのか、宵子がいきなり想司をぎゅっと抱きしめた。
「いくらなんでも、そんなにばしばし叩いちゃ想司くんがかわいそうですよ」
 そう言いながらも、前から抱きしめるだけで、ハリセンの当たる後頭部はさっぱりカバーしていないのが宵子らしいと言えば宵子らしい。

「いいんですっ! 今日という今日はこれくらいしないとっ!
 危うく大惨事になるところだったんですからっ!!」
 自分でもよくわからない苛立ちを感じながら、しのぶは三度ハリセンを振り下ろしたのであった。

□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 0424 / 水野・想司 / 男性 /  14 / 吸血鬼ハンター(埋葬騎士)
 1219 / 風野・時音 / 男性 /  17 / 時空跳躍者
 1376 / 加地・葉霧 / 男性 /  36 / ステキ諜報員A氏(自称)
 1136 /  訃・時  / 女性 / 999 / 未来世界を崩壊させた魔

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

 撓場秀武です。
 この度は私のゲームノベルにご参加下さいましてありがとうございました。

・このノベルの構成について
 今回のノベルは、基本的に六つのパートで構成されています。
 ただし、話の都合上、想司さんのみ、個別パート二つを含む全四パートとさせていただきました。
(その他の方々に納品されているノベルは全て同一のものです。ご了承下さい)

・個別通信(水野想司様)
 今回はご参加ありがとうございました。
 今回も「ミリタリー系魔法少女」とか、「三下さんネタのブラフにあっさり引っかかる」とか、かなり弾けた感じで書いてみましたが、こんな感じでよろしかったでしょうか?
 もし何かありましたら、ご遠慮なくお知らせいただけると幸いです。