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■EP4:Cry of soul ■
はる
【0233】【白神・空】【エスパー】
 あなたはだれ?わたしはあたし・・・・・・これ以上あたしに構わないで・・・わたしのこころをかきまわさないで!

 聞えてきたのはテレパシーによる悲鳴。
 鳴り響く警報に、立ち上る黒煙。都市マルクトの中は一次、騒然とした空気に包まれた。
 
 タクトニムが都市マルクト内に進入した為に、掃討せよとの命を受けたビジターたちは狐に何も出来ずに呆然とその場に立ちすくむ。
 あたりに散らばる異形の消し炭はタクトニムの残骸だろうか・・・・

 炎が激しすぎて、近寄ることが出来ない。
 しかし、炎の奥から聞えてくる泣き声は路地裏でたまにあう少女のもの・・・是は一体なんなのだろうか・・・
 悪夢のような光景に、何も出来ずにいた。
「なにしてるんだ!早く残りのタクトニムどもを探せ!!」
 まだ生き残りがいるぞ!と、どやされて我にかえった。

 そうだ・・・あの子を救わなければ・・・・おれは今何をすればいい・・・?
EP4:Cry of soul


「いったいなんなのよ……」
 騒ぎを聞きつけその場に駆けつけた白神・空の前に、都市セフィロトの天井を焦がさんばかりの火柱が上がっていた。
 火事にしては不自然すぎるほどの、火の勢いにその場に集ったビジター達にも成す術が無いようにも見えた。
「こっちに負傷者がいるぞ!」
「まだ、奴らが残っているから気をつけろよ!!」
 火事とタクトニムの襲撃で慌しく動く、戦場で確かにその声が空には聞こえた。

『いや!、イヤなの!!あたしに構わないで!』


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「……!?何今のは…」
 心を貫くような強烈な悲鳴のような心の叫び(テレパシー)。
「アシャ……なの…?」
 それともドゥルジ?
 それは何時も路地裏で出会う不思議な少女の声に酷似していた。
「……ッ!」
 こんな声を聞いていて、放っておける空ではなかった。
「こんなんだったら……もっと動きやすい服を着ていればよかったわ」
 体のラインにフィットしたタイトなロングスカートの裾を掴み、一思いに引き裂く。
 黒のスウェードのスカートは音を立てて破けた。
「これで少しは動きやすくなったかしら?」
 太腿近くまで引き裂き、空は眼前の火柱を睨み付けた。
 後は……この目の前の炎をどうするか……
「人魚姫の力を使えば何とかなるかしら?」
 それはある意味大きな賭けとも言えた。一歩間違えれば空自身の身も危ない。
 でも、空は数度だけあった、路地裏の少女を見捨てることが出来なかった。
 それは、ある意味彼女の信念。
「折角二人と仲良くなれたのに……」
 ここで少女が消えてしまっては、今までの苦労が水の泡である。
 人魚姫の鱗である程度の、炎を弾きとりあえず、少女の下まで辿り着く……話はそれからだった。

「ひとまず…焼き魚にならないことを祈るだけよね……」
 そうなったら洒落にならないわと呟き、もう一度白焔を睨みつける。
 一つ深呼吸すると儘よと途中まで体の表皮を変容させ鱗で覆い、空は覚悟を決めて燃え盛る炎の中に身を躍らせた。


 炎の中は通常の人間であれば一瞬にして消し炭になっていたであろう。
 硬い人魚の鱗をしても、中まで伝わる熱までは止めることは出来なかった。
 空はやむ終えず、八百比丘尼の力を解放していた。
 火傷を負う傍から、回復させる言わばこの空間を進む上での最後の砦。
 といっても、能力には限界があるからそう長いことは持たないであろう事は目に見えて確かであった。
「アシャ!ドゥルジ!何処なの!!」
 返事をして!
 劫火の中で声を張り上げる。空は思わず熱風を肺に吸い込んでしまい咳き込んだ。
 その背中に襲い掛かるもの………
「あんた達なんてどうでもいいのよ!!」
 大人しくセフィロトの塔の中に篭っていれば良いものを……半分八つ当たり気味に、背後から襲い掛かってきたタクトニムの首を鋭い爪で切り飛ばした。
 そう、空にとってタクトニムなどどうでも良いことであった。
 今大切なことは、この場の何処かで泣いている少女を探し出すこと。
「随分と動転しているみたいだけど……大丈夫かしら……」
 アレから少女の叫びは聞こえてこない。
 ひょっとして気のせいだったのだろうか……?
 そう、空が不安に思いかけたとき……ハリケーンの目の様にぽっかりと炎が無い空間に辿り着いた。
 無限ともいえる八百比丘尼の再生能力を使ってしても、限界擦れ擦れの強行軍であった。
 ぼんやりと、宙を見上げ少女が宙に浮いている。
 その瞳に、理性は見えない。
「アシャ!」
『嫌!こないで』
 衝撃波が空を襲った。突然の攻撃に構える間もなく空は背後にあった壁に叩きつけられた。
「……ッう……」
 背骨を壁に直撃させ思わず息が詰まる。
 どうやら相当動揺している様子であった。でもここで引くわけには行かない、意を結して空はもう一度少女に呼びかけた。
(ドゥルジは“おいしかった”し、アシャは“蕾が芽吹く”のに)
 絶対に少女を正気に戻させる、その信念だけで空は痛む体を無理やり引き摺り起こしもう一度少女に向き合った。

「アシャ!聞こえてる?聞いてあのときの花もう少しで咲きそうなのよ……一緒に花を見るって約束したよね」
 先日少女と一緒に植えた鉢植えも順調に育ち開花を待つばかりであった。
「ドゥルジも落ち着いて……また遊ぼうっていったわよね?」
 まだ二人ともあたしとの約束……まもってないわよ?
 何があったか知らない……それでも、少女の心を空は救いたかった。
「……は、な……?」
「そう、お花。この間二人で埋めたやつ……」
 もう少しで花が咲きそうなのよ。

 空の出した花という単語に少女の表情に変化が訪れた。
 何の花だか知らない。でもそれを彼女と一緒に育てようと約束したのだ。

「……そ……ら………?」
「そうよ、気が付いた?」
 炎の中心にいた、アシャはそれほどでもなかったかが空の外見はぼろぼろであった。
 服は焼け焦げ、自慢の髪も所々焼けてしまっている。これは一度軽くカットして整えなければならないだろう。
「……あしゃがやっちゃったの………?」
 思わず呆然と傷ついた表情の少女を抱きしめる。
「大丈夫、直ぐに直るわよ」
 その証拠に、重度の火傷をおった表皮の再生が既に始まっていた。
 何があったかは無理には聞かない、その必要があったら少女の方からきっと話してくれるだろう。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 それからの事は流れ的に少女と空は、裏道のモーテルに辿り着いていた。
 ぼろぼろの空の状況と、あまり場所を動きたがらない少女との最大の譲歩案。
「空もうだいじょうぶ?」
 少女の瞳には、意志の強い眼差し。いつの間にか人格がドゥルジと交代していた。
「大丈夫よ……ほらね?」
 空が見せるスタイルの良い腕や足には、既に肉が再生うっすらとした傷跡の痕跡だけが残されていた。
 二人は焦げ臭い匂いが体中に染み付いてしまった、所為もあり仲良くシャワーを浴びていた。
 場末のモーテルだから、それ程衛生的とは言い切れないが、シャワーからお湯が出るだけで十分であった。
「そうだ……この間よりも、楽しい遊びがあるんだけど……あたしの家にこれから来る?」
 アシャにもこの間の花をみせたいしね。
「いいの?」
「もちろん♪一緒に遊びましょ♪♪」
 皆でね………

 心に大きな痛みを抱えた少女の傷が少しでも和らぐのならと、空は少女を自宅へ誘うのだった。
 そして名も知らぬ小さな花は少しずつ花開きつつあった………



【 To be continued ……? 】



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス】


【0233 / 白神・空 / 女 / 24歳 / エスパー】

【NPC / アシャ】

【NPC / ドゥルジ】


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■         ライター通信          ■
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白神・空様


こんにちはライターのはるです。ぎりぎり納品になってしまって申し訳ありませんでした(汗)
今回もゲームノベルへのご参加ありがとうございました。
無事NPCも救出していただき感謝の言葉もありません。
そろそろ物語が動き始めてまいりましたが………
少しでも楽しんでいただければ幸いです。

またのご来訪おまちいたしております。