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■EP1:The First Contact■
はる
【0351】【伊達・剣人】【エスパー】
 都市区画『マルクト』の片隅。何かに惹かれるように狭い路地裏に入り込んだ貴方。
 教会と思われる建物の横を抜けると不意に開けた場所に出た。
 広場の中央に一人の少女。
「お譲ちゃん、こんなところを一人で歩いていると危ないぞ」
 少女は貴方の言葉に、不思議そうに首をかしげる。
『うにゃ〜』
 足元に屯していた薄汚れた猫が警戒するように、少女の前に進みでる。
「おいおい、俺は怪しい人物じゃないって」
 猫たちに詰め寄られて、何となく自分が悪人になったような気がして一歩後ずさりをする。
「この辺は危ないからさ、俺が家まで送っていってやるよ」
 名前は?と尋ねると、少女は小さな声で一言

「アシャ」

 とだけ答えた。
EP1:The First Contact


 伊達・剣人と彼女の出会いは突然だった。
 何時もの様にふらりと、都市マルクトの裏道を近道とばかりに抜けていこうとしたときにわき道から飛び出してきた少女とぶつかった。
「きゃっ・・・」
 体格の差で少女はすてんと膝を付く。
「おっと、大丈夫かおじょうちゃん?」
 怪我などはしていないだろうか?と、慌てて剣人が少女に駆け寄った。
 そんなに急いで何処に行くのだろうか?
 世話しないマルクトの片隅で、少女はまるで何かに追われているような素振りだった。
「……うん…平気…」
 警戒するように剣人を恐る恐る見上げる。
 このぐらいの年頃の少女が、こんな裏路地をうろうろするのは珍しい。
「どこかに行く予定でもあったのかい?」
 そんなに急いで……
 剣人の問いにふるふると少女は大きく首を横に振った。
「違うの、アシャはお家に帰るだけなの」
 腕に嵌めた時計を見れば確かに、時間は夕飯時。時から隔離された都市マルクトの中で、時計だけが時間の流れを知る全てだった。
「アシャちゃんか、俺の名は伊達剣人悪をぶっ飛ばす青年探偵だ23歳なのでおじちゃんとか言わないでくれ」
 ぐっと親指を突き出し、宣言する剣人にアシャと名乗った少女は首を傾げる。
「たんていって……?」
 なぁに?
「うーん、一先ず困っている人を助けるのが仕事かな?」
「そうなの?」
 真摯な眼差しは、疑いを知らない。まるで珍しい物を見るように、興味深げに繁々と剣人を見上げるのだった。
 その足元で数匹の猫が『ふにゃー』と此方も聊か胡散臭げに剣人の周りを警戒するようにうろうろとうろつく。
「アシャちゃんはお家に帰る途中だったのか」
 この辺は治安もあまりよくないから送っていってやるよ。
 ここであったのも何かの縁。迷子を探すよりは楽だと思うも、一抹の不安感じながら剣人は少女を家まで送る事にした。
 それは、探偵としての剣人の正義感ともいえよう。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『さて……どうしたもんかな……』
 剣人の心の声が聞こえたかのように前を歩く少女が振り向いた。
「うんとねーアシャのお家こっちー」
 少女が指差すのは、通いなれたヘルズゲートの方角。
 あぁ、この子はエスパーなのか……探偵としての勘が少女の素性を告げていた。
「そんなに走ると危ないぜ」
 薄暗い人工照明だけが頼りの、都市マルクトの中で二人は直ぐに打ち解けた。
 付かず離れず後を付いて来る数匹の猫達と一緒に、剣人は少女の手を引き歩いていた。
 家に帰るのだという、少女がふと足を止める。
「ん?どうかしたのか」
 その視線の先にあったものを見て、剣人は苦笑した。
「あれが欲しいのか?」
 そににあったは、派手派手しい蛍光灯に彩られたジェラート専門店の看板。
「………」
 剣人の問に少し頬を赤らめて、少女は大きく頷いた。
「いいよ、その代り一つだけだぜ」
「ほんと!」
 いい男ってのは嘘はいわねぇもんだぜ。と剣人は、ニッと歯を見せて笑い、自分の腰ほどの位置の少女の髪を乱暴に撫でるのだった。
 その言葉を待ちかねていたように瞳を輝かせて少女が、ショーケースに走りよる。
「アシャねアレがいいの!」
「わかったわかった」
 微笑ましそうに、二人のやり取りを見つめる店員に目配せし、同じものを二つコーンに乗せてもらうのだった。

 その気配に気が付いたのは本当に偶然のこと。
 店先でアシャと並んで、アイスクリームを口に運んでいた剣人の首筋がチリチリと何かの視線を感じた。
「たまに食べると旨いもんだな」
 不穏な気配を少女に気取られぬように、剣人は少女を自分の体で隠すようにする。
「おいしいね♪」
 そんな様子を全く感じていないかのように、アシャは無邪気に剣人に満面の笑みを向けた。
(何が目的だ……)
 俺が目的か?確かに商売柄、恨みの一つや二つは身に覚えがあるが……今まで剣人が感じたことのある気配と何かが違った。
(…もしかして……)
 この子が目的なのか?
 ハッと傍らで美味しそうに、アイスクリームを口に運んでは頬を緩める少女に目をやった。
 先ほどのやり取りから、この子がエスパーであることは確実……エスパーの子供達を必要とする不貞な輩など掃いて捨てるほど、この地には溢れていた。
 まして、可愛らしい少女を愛玩物か何かの様に飼う輩もいる。
 都市セフィロトにおいて……世間から焙れたアウトローのみならず、そういった世間の汚物とも呼べる者が存在するのもまた確か。
「アシャ、ちょっとだけ此処で待っててくれるか?」
「?うん」
 懸念すべき存在は排除するに限る………
 そんな剣人の決意を知らず、少女はアイスクリームを手にご機嫌なまま頷いた。

「……よう?あんた達、何が目的なんだい」
 先ほどの気配の主……見た感じビジターズ崩れのごろつきと言ったところだろうか?
「お目当てはあの子か?」
「っ!?」
 背後からかけられた、剣人の問いかけに動揺したのだろうか、アシャを見つめていた三人の男達は我武者羅に剣人に襲い掛かってきた。
「遅いぜ!」
 空中から取り出した銃を構え、剣人は相手に反撃する間を与えずに引き金を引いた。

「……殺しはしないぜ、だけどな今度こんなことしたらただじゃすまさねぇからな……」
 低く、嘲る様な調子で剣人はうめき声を上げて、のたうち回る男達に声を落すのであった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「剣人!」
 どこ行ってたの?店先でアイスクリームを食べ終わり、手持ち無沙汰に高い椅子の上で足をぶらぶらさせながら待っていた少女が駆け寄ってきた。
「ん?ちっと野暮用」
 大したことじゃないさ。先ほどの交戦の気配を微塵も感じさせず少女に笑いかける。
「食べ終わったらな、行くか」
「うん」


 少女を家に送り届けるだけのはずが、結構ハードな半日になった気がする。
「やれやれ、また儲からない仕事をしてしまった……かな?」
 少女の保護者にでもあったらアイスクリーム代ぐらいは請求しても問題あるまい……そう、暗い都市マルクトの空を見上げながら剣人はそう心の中で呟くのであった。





【 To be continued ……? 】



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス】


【0351 / 伊達・剣人 / 男 / 23歳 / エスパー】

【NPC / アシャ】


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■         ライター通信          ■
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伊達・剣人様

始めまして、ライターのはるでございます。
お届けが少々遅くなって申し訳ありませんでした(平謝り)
さて、アシャにアイスを奢っていただける……と、いうことでアイテムが他の方と若干異なるものとなっておりますが……
これに懲りずまた遊びに来ていただければ幸いです。

またのご来訪お待ちいたしております。