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■秋篠神社奇譚 〜参拝日誌〜■

藤杜錬
【1560】【羽雄東・彩芽】【売れない小説家兼モグリの占い師】
緑に囲まれた小道を抜けあなたは階段の前に立っている。
この階段の上にあるのは秋篠神社の境内だ。。
あなたは何かを祈願にやって来たのだろうか?
それともここの住人に用事があってきたのだろうか?
あなたはそっと一息ついて、ゆっくりと階段を上り始める。
階段をのぼった貴方はそこで人影を見かける。

「あの今日は……。」

そう言ってあなたはその人影に声をかける。

秋篠神社奇譚 〜参拝日誌〜

羽雄東彩芽編

●夏の日
 たまたま今日出かけてみようと思ったのは偶然だったのだろうか?
 普段余り外に出ない羽雄東彩芽(はゆさき・あやめ)は、その日、少し曇りがちで日も翳り少し涼しい事もあり今書いている原稿の気分転換も兼ね、少し気ままに散歩する事にしたのだった。
「と言ってもどこに行こうかしら…?」
 普段、余り散歩などした事がない彩芽は少し考えた結果、普段余り乗らない電車に乗って、知らない町に少し行ってみよう、という事になった。
「切符は……、降りる時に清算すれば良いわよね」
 そう思い最低限の切符を買い、電車に乗り込む彩芽であった。
 電車の中は平日の昼間という事もあり彩芽が思っていたよりも空いていて楽に座る事が出来た。
 しばらく電車に揺られ、窓から見える景色を眺めていた彩芽であったが、心地よい空気に気がつくと寝息を立てていた。

……
………
…………

 心地よいゆれに揺られながら彩芽はふととある駅に停車しているところで目を覚ます。
「あれ?ここは…、折角だからここで降りようかな」
 そう言って彩芽は電車を下りるのであった。

●二人の会話
 電車を下りた彩芽は、これからどこにいこうか考える。
 降りた駅は鎌倉であった。
 人気のあるところを避けながら、のんびり歩いて行た彩芽であったが気がつくと雑踏から離れ、ひんやりと心地よい風の吹く、木々に囲まれた道を歩いていた。
「ずいぶんここの辺りは涼しいですね…、おや?」
 彩芽はふと、この道の先に階段があるのに気がつく。
 ゆっくりと道なりに進んで行き、その階段を見てみると、どうやら神社の境内へと続く階段らしい。
『折角だからお参りでもして行きましょう…』
 そう思った彩芽は蝉時雨が響く中、ゆっくりと階段を上り始めた。
 階段を上り終えた彩芽は周囲を見渡す。
 他よりも高台にある為、流れてくる風に髪を彩芽は押さえる。
「拝殿は……どちらかしら?」
 そう彩芽は呟く。
 そして拝殿らしき建物を見つけるとそちらに向かって歩き始める。
 歩きながら彩芽は何を祈願するか考え始める。
『余り……こないから……、どれも祈願したいけれど…』
 そんな風に考えながら彩芽は歩く。
 彩芽はそしてふと視線を上げ、賽銭箱に良い御縁があるようにと五円玉を放り鐘を鳴らす。

……
………
…………

『どうか……私にも勇気を…出せますように…』
 そう彩芽は祈りを込めしばらく目を瞑り祈りをささげる。
 そしてゆっくりと手を離し大きく息を吸った。
「うまく……行くといいな…」
 そう小さく呟き、ゆっくりと戻ろうとしたその時であった。
 神社の奥から一人の青年が顔を出した。
 神社にはあまり似つかわしくない、普段着の眼鏡をかけたその青年は彩芽の姿を見ると少し驚いたような表情を浮かべる。
 彩芽にはその青年の顔に見覚えがあった。
 先日キャンプに行ったおり、一緒に行った青年であった。
 青年の名前は冬月司(ふゆつき・つかさ)という。
 司は境内に登ってきた彩芽の足音に気がつき視線をあげる。
「あれ?彩芽さんじゃないですか?お久しぶりです。今日はどうしました?」
 不意に司に声をかけられ彩芽はその足を止める。
 声をかけられたが、予想もしてなかった知り合いからの言葉に彩芽は一瞬言葉が出なくなってしまう。

……
………
…………

「彩芽さん?」
 その彩芽の様子に少し心配になった司はそのまま彩芽の顔を覗き込む。
 司と視線が合った彩芽はさらに緊張の度合いが増してしまい、ますます言葉が出なくなってしまう。
『さっき勇気が出せるようにって願ったばかり…なのに…頑張ら…ないと…』
 そう思った彩芽は小さくだがしっかりと言葉を返す。
「こ…こんにち…は…司さん」
「ああよかった。いきなり何も言わなくなっちゃったからどうしたかと心配しましたよ、人違いだったのかな?とか思ってしまいましたし」
 そんな風に司は安心したような笑顔を浮かべる。
「それでどうしたんですか?まさか彩芽さんが来るとは予想してなかったんですが」
「あ……その……たまたま近くまで来たものでお参りにと思ったのですが…司さんの方こそどうしてここに…?」
「ああ、ここは僕の親戚の…一緒にキャンプに行った静奈のいる神社なんですよ。今日は境内の掃除を頼まれたんですよ」
「そう…ですか…」
「はい」
 そしてまた再びの沈黙…。
 彩芽は何か言おうと思うたび気持ちだけが空回りをしてしまう。
 そしてしばらくそんな時間が過ぎる。
「もし…何か嫌なこととかあって誰かに聞いてほしいと言うなら僕でよければお話くらい聞きますよ。ここじゃ暑いですしなんだったら中の涼しいところに行きましょうか?」
 司がそういって彩芽の事を誘う。
 そして司の手が彩芽の手に触れた瞬間、彩芽の口から何か堰を切ったように言葉が発せられる。
 彩芽の口から出たその言葉は珍しく愚痴のようなものであった。
「私は…本当にこの世の中の…誰かの…役に立ってるんでしょうか?私みたいにこうやって誰かと話すのにも…勇気を出さなければいけないような…人間…でも…」
 何か自分の中にあったもを吐き出すかのようにそう話した彩芽の事を司はじっと見つめる。
 そしてしばらく彩芽の事を見つめていたが、そっと微笑を浮かべ彩芽の頭に手を置いた。
「大丈夫ですよ。彩芽さんは誰のためにもなってない…なんて事はないですから。それは僕が保障しますよ」
「本当…ですか…?」
「ええ、本当ですよ」
 まだどこか疑心暗鬼のその彩芽の言葉に司は頷く。
「こうやって暑い中での立ち話も結構堪えますし、よかったら中でお茶でも飲みながらゆっくり話をしていきませんか?」
「はい」
 司のその誘いに今度は先ほどとは違い素直に答える事ができた彩芽はそう堪えゆっくりと歩き出した司の後に続いて行った。

 まだ暑い夏の日のとある一日の出来事であった。


Fin

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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≪PC≫
■ 羽雄東・彩芽 
整理番号:1560 性別:女 年齢:29
職業:売れない小説家兼モグリの占い師

≪NPC≫
■ 冬月・司
職業:フリーライター

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■         ライター通信          ■
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 どうもこんにちは、ライターの藤杜錬です。
 今回は秋篠神社のゲームノベル「秋篠神社奇譚 〜参拝日誌〜」へのご参加ありがとうございます。
 司との一コマ、と言う事でこのようになりましたが、いかがだったでしょうか?
 夏は過ぎてからの納品になってしまいましたが楽しんでいただけたら幸いです
 もしまた司とのご縁があるようでしたら、その時はよろしくお願いいたします。

2005.09.20.
Written by Ren Fujimori