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■想いの数だけある物語■

切磋巧実
【3860】【水滝・刃】【高校生/陰陽師】
 ――アナタは眠っている。
 浅い眠りの中でアナタは夢を見ています。
 否、これが夢だとは恐らく気付かないでしょう。
 そもそも夢と現実の境界線は何処にあるのでしょうか?
 目が覚めて初めて夢だったと気付く時はありませんでしたか?
 アナタは夢の中で夢とは気付いていないのだから――――

 そこは夜だった。
 キミにどんな事情があったのか分からないが、見慣れた東京の街を歩いていた。賑やかな繁華街を通り抜けると、人の数は疎らになってゆく。キミは何処かに向かおうと歩いているのだが、記憶は教えてくれない。兎に角、歩いていたのだ。
「もし?」
 ふと穏やかな女の声が背中から聞こえた。キミはつい顔を向けた。瞳に映ったのは、長い金髪の少女だ。髪は艶やかで優麗なラインを描いており、月明かりを反射してか、キラキラと粒子を散りばめたように輝いていた。赤い瞳は大きく、優しげな眼差しで、風貌は端整でありながら気品する感じさせるものだ。歳は恐らく17〜20歳の範囲内だろうか。彼女の肢体を包む衣装は純白のドレスだ。全体的にフリルとレースが施されており、見るからに――――あやしい。
「あぁ、お待ちになって下さい!」
 再び先を急ごうとしたキミを、アニメや漫画で見るような奇抜な衣装の少女は呼び止めた。何故か無視できない声だ。再びキミは振り向く。
「わたくし、カタリーナと申します。アナタに、お願いが、あるのです」
 首を竦めて俯き加減に彼女は言った。両手をモジモジとさせて上目遣いでキミを見る。
「私は物語を作らなければなりません。あぁ、お待ちになって下さい!」
 ヤバイ雰囲気に、キミはさっさと立ち去ろうとしたが、彼女は切ない声で呼び止めた。何度か確認すると、どうやら新手の勧誘でも商売でもなさそうだ。兎に角、少女に先を促がした。
「あなたの望む物語を私に教えて下さい。いえ、盗作とかそんなつもりはございませんし‥‥えぇ、漫画家でも作家でもございませんから、教えて頂けるだけで良いのです」
 何だか分からないが、物語を欲しているようだ。仕方が無い、適当に話して解放してもらおうと思い、キミは話し出そうとした。
「あぁッ、待って下さい。いま準備しますね」
 教えてくれと言ったり、待ってくれと言ったり、我侭な女(ひと)だなと思いながらキミは待つ。彼女は腰の小さなポシェットのような物を弄ると、そのまま水平に腕を振った。すると、腕の動きに合わせてポシェットから青白く発光する数枚のカードが飛び出し、少女がクルリと一回りすると、カードの円が形成されたのである。
 これは新手のマジックか、それとも‥‥。
「どれがよろしいですか? これなんかいかがです? こんな感じもありますよ☆」
 彼女は自分を中心に作られたカードの輪を指差し、楽しそうに推薦して来る。カードは不思議な事に少女の意思で動くかのように、自動で回転して指の前で止まってくれていた。
「あ、説明が未だでしたね。あなたの望む物語は、このカードを選択して作って欲しいのです。簡単ですよ? 選んで思い描けば良いのですから☆」
 キミは取り敢えずカードを眺める事にした――――。
想いの数だけある物語

 ――もし?
 部活が終わり夜の帳も降りた頃、俺が公園を何となく歩いていた時だ。
 ――あぁ、お待ちになって下さい。
 所謂コスプレ少女と思しき少女に声を掛けられた。
 確かに俺は、何か面白いことはないかとぶらついていた訳だが‥‥。
 ――あなたの望む物語を私に教えて下さい。
 滅多に味わえないチャンスだし乗ってみるか。
「俺が選ぶ物語は――これだ。細かい所や結末は好きにしてくれ」
 そう‥‥確かに俺は、何か面白いことはないかとぶらついていたんだ――――。

■陰陽剣士・刃――紫刳守睦正封印解除編
「ぐはあぁッ!」
 苦悶の呻きを洩らす男の首を、細い指がギリギリと締め上げた。周囲の者達が怯え、恐れ、恐怖を露に浮かばせる中、男に跨っているのは艶やかな着物をはだけさせた若い娘だ。彼女の爪が男の首にメリ込み、河谷柳は白目を剥く。これでは整った顔立ちも台無しだ。
「刃殿! このままで良いのでごじゃるか!?」
「良い訳がないでしょう。ですが、先に除霊すると申したのは河谷殿ですから」
 水滝刃は溜息を洩らしたものの、冷静だ。長めの茶髪を柔らかそうに揺らし、漆黒の着流しを纏いし少年は腕を組んだまま、端整な風貌は清ました表情の中に苦笑すら浮かべていた。うら若き娘の鬼気迫る醜態に震えつつ、再び十八の若者へ白塗り顔の男は訊ねる。
「し、しかし、げ、現にこうしてお、襲われているではないか?」
「河谷殿に策でもあるのでしょう? それとも過ちを認めますか?」
 釣り上がった冷たい眼差しが、柳を射抜く。既に口から涎を垂れ流し、不様な有様の陰陽師は、小刻みに首を縦を振り続けた。尚も指が首をへし折らんとメリ込んでゆく。
「苦しむ前に退くべきだったな、河谷殿。‥‥娘に執り付く悪霊よ!」
 だんッと畳みに刀の収まった鞘を叩き付け、刃は鋭い視線を娘に向けた。長い黒髪を振り乱し、娘は悪鬼の如き形相で若者を睨み付ける。瞳は夜行性の獣の如く輝き、口には牙が覗く。咆哮の如き奇声をあげ、威嚇を繰り返す中、ゆっくりと鞘から刀身が抜かれてゆく。
「俺の除霊は少し荒っぽいが、我慢するんだな」
 刹那、懐から一枚の符を引き抜き、刀身へとあてがいながら呪文を連ねた。唸る娘は危険を知るや、柳の首から手を放し、刃へと飛び掛かる。カッ! と若者の瞳が見開く。
「風に因りて悪しき霊魂を引き離さん! 衝撃一貫! 斬ッ!!」
 振り下ろされた切先に、誰もが、娘の柔肌が切り裂かれ、真っ赤な血が噴き出たと思った事だろう。だが、斬撃と共に放たれた疾風は娘の着物を微塵に斬り飛ばしたのみで、飛び掛かった姿勢のまま、宙に浮いていた。周りの者達は何が起きたのか分からず、ただ腰が抜かして呆然とするばかりだ。
「あんただな? お屋敷の御姫さんに執り付いていたのは」
 しかし、刃には風と共に娘の身体から引き剥がされた悪霊のおぞましき姿がハッキリと映っていた。一瞬怯んだ悪霊は咆哮を轟かせて若者に食らい付こうと迫る。
「火に因りて悪しき霊魂を燃やさん! 炎撃斬光! 波ッ!!」
 炎を纏った刀身を横薙ぎに振るうと、半透明の身体を紅蓮の炎に包んで悪霊は失散。同時に、娘は落下し、刃の両手に支えられた。若者の整った顔に安堵の色が浮かぶ。
「執り付いていた悪霊は退治しました。御姫様も直に意識を取り戻すでしょう」
「流石は陰陽道と剣の使い手として名を馳せた刃殿でおじゃるな。ここで延びとるコヤツも同業と聞くが、請負料は約束の倍を払おうぞ」
「それは有り難い。俺は故郷の村に戻るつもりだったので、路銀に余裕があれば、ひもじい思いをせずとも済みますからな」
 若者は泡を吹く柳を一瞥し、不敵な笑みを浮かべて見せた。

●村での平穏な日々
「起きて下さいな! もう昼ですよ? 刃様ったら!」
 ゆさゆさと揺り動かされ、若者が瞳を開くと、視界に長い艶やかな髪の娘が映し出された。整った顔立ちに大きな瞳、蕾のような唇は尚も刃の名前を呼び続けている。困ったような八の字を模った眉が何故か滑稽だ。
「ん? 白か‥‥」
「白かじゃありませんっ! 都では名を馳せたからって、寝過ぎですよ」
 ぷいッと背中を向け、純那白は頬を膨らます。確か齢は十七だったか。刃はゆっくりと半身を起こすと、頭をポリポリと掻き、思い出したように口を開く。
「あ、そうだ。その刃様ってのは止してくれないか? お互い幼馴染じゃないか」
「えっ? でも‥‥刃様は都で出世した方だし‥‥私よりも大人っぽくなられたし」
 そんな事はない。白だって十分大人の女に成長していた。村では裕福な家の娘で、質素な着物から浮かびあがる胸の膨らみや色香は、時々若者を戸惑わせるほどだ。現にこうして拗ねたような表情は悩ましく、刃の目に毒だった。
「お、やっと起きやがったな?」
 突然戸を豪快に開けて顔を覗かせたのは、短めの髪が若干乱れている精悍な男だ。
「なんだ猖巣か‥‥」
「なんだはねぇだろ? 都で名声を得たからって調子乗ってんじゃないぞ」
 瓦曾猖巣は太い腕を刃の首に絡ませ、グイグイと絞め付ける。汗臭いのと苦しさで若者は苦悶の表情を浮かべるが、男は歯を剥き出しに満面の笑顔だ。堪らず白が助けに入る。
「もうっ、猖巣様! お止めになって下さい!」
「猖巣、様? こいつにも『様』を付けて呼んでいるのか?」
「えっ? だって‥‥猖巣様は‥‥」
 途端に白は頬を桜色に染めて口篭もる。確かに猖巣は二十二になり、刃よりも年上だ。しかし、そればかりではない事は若者にも読み取れた。ふっと溜息が漏れる。
「なるほど、そういう事か。俺が都にいる間、色々と変わったんだな」
「だって‥‥刃様が‥‥!? もぉッ」
 外へと飛び出す白。残された二人の男は静寂の中で気まずさを感じたのは言うまでもない。
 それからも平穏に日々が続いたものだが、安息の日々は突然踏み躙られた――――。

●悪鬼と化した者
「柳。おまえ何時の間に悪鬼と化したのか‥‥!」
 夜な夜な遭遇する旅人や村人を次々と血祭りにあげた人物は、宿敵と噂された陰陽師だった。艶やかだった長い髪はガサガサに汚れ、見目麗しき顔立ちは数日前の苦悶の色よりも一層醜く変容していた。失ったものも大きいが、逆に得たものは屈強な肉体と人外の眼光と鬼のように裂けた大口だ。対峙した刃、白、猖巣を前にして、柳だった悪鬼はうめくような声を響かせる。
『じぃんんんん‥‥きさまがにくいぃぃ‥‥きさまはぁおれがぁくろうてやるうぅ』
「刃、おまえ、都では色んな友達がいたんだな?」
「‥‥あんたにはあいつが友達に見えるのか?」
「お喋りはここまでですよ、お双方!」
 白は瞳を研ぎ澄ますと息を呑んだ。頬に伝う一筋の汗が緊迫感に拍車を駆ける。
「この悪鬼、邪念が相当に大きいです! 私達で退治できるか‥‥猖巣様ッ!?」
 敵の霊力を計った娘の忠告を聞かず、飛び出したのは筋骨逞しき男だ。地を蹴った横顔は不敵な笑みすら浮かべ、勇猛に巨体へと肉迫する。
「へッ! この野郎は刃に執着してやがる! 倒さなきゃ村がヤバイだろがッ! 俺達の未来の為にもなッ! 猛虎嵐舞!」
 胴衣の懐から掌大の宝玉を握り、男はそのまま拳を叩き込んだ。刹那、一頭の虎のシルエットが宝玉から現れ、次々に悪鬼へ猛威を振るい捲る。
「ほう、白よ、圧倒的じゃないか? 猖巣の体術も腕あがったな。‥‥白?」
「‥‥き、効いてないのです。こ、このままじゃ!」
 蒼白の娘が悲鳴のような声をあげた時だ。乾いた音が響き渡り、互いに交差させた表情が慄いた。視線が猖巣へと注がれる。
「なにィッ!? 宝玉が砕け」
 強烈な衝撃が男を襲い、言葉半ばのまま、物凄い勢いで真横に吹き飛ばされた。屈強な身体が骨が入っていない肉人形の如く不可思議な湾曲を描き、宙を舞う。飛び散るのは鮮血と赤黒い塊だ。
「猖巣様ッ!? あぁッ!」
「宝玉が砕けただと? それほどの邪念を‥‥柳、そんなに俺が憎いのか!」
 畑に土飛沫を巻き上げて突っ込んだ男の元へ白が駆け寄る中、刃は鞘から刀身を引き抜き、懐から抜いた符をあてがうと、鋭い眼光を研ぎ澄ました。
「悪鬼退散! 柳よ、己が邪念と共に滅せッ!」
 一気に地を蹴って間合いへ飛び込んで行く刃。肉迫かる中、耳に流れたのは猖巣の声だ。
「おまえ一人じゃ敵わん! チッ、刃の野郎、俺の二の舞だぞ」
「‥‥猖巣様! それって」
「邪念を鎮めるのに一人の力じゃ負えないってやつだ。俺達三人でも敵うか否か‥‥白?」
 すっくと立ち上がると、瞳を研ぎ澄まして悪鬼を見やる娘に、猖巣の表情は不安を浮かべる。
「分かりました! 猖巣様はお休みを!」
「待て! 白ッ!」
 男の瞳に映る白い着物を纏った娘の背中が遠ざかり、その先では刃が切先を振るい斬光を叩き込んでいた。刹那、若者の刀が弾かれ、体勢を崩す。次に強襲するのは悪鬼の豪腕だ。
「させません! 我を護りし衣よ! 其の力を我の両手へ!」
 素早く九字を切り符を二枚懐から抜くと同時、両手に当てると共に悪鬼へと叩き込んだ。眩い光が巨体の脇腹から炸裂し、振るわれるべく豪腕は僅差で刃の目前で止まった。吹き抜ける風に茶髪が舞う。
「ッ、白!? 離れるんだ!」
 即座に状況を理解した刃が叫ぶ。確かに若者を狙った洗礼を防いだものの、左の豪腕は娘の頭を叩き潰さんとゆっくり力を滾らせていたのだ。視線を下ろすと、白が奥歯を食い縛って邪念を抑え込もうとする身体を震わせている。このまま抑え込めねば両手の骨が砕ける可能性も否定できない。
「私は大丈夫、で、す!」
「駄目だ! 俺の斬撃では倒れない! 紫刳守睦正の封印を解く! その時間が必要なんだ!!」
「ならば、今の内、にッ!」
「白が耐たないんだよ! 早く離れ‥‥!」
 霊刀の封印を解くべき指を動かしながら呼び掛ける刃の言葉が途切れた。瞳は見開き、視界に映るは振り下ろされる豪腕だ。間に合わない! 呆然と顔を強張らせる若者の目の前で鮮血が舞い飛ぶ。娘の白い着物が朱に染まり、白は崩れた。
「‥‥痛ッ、何が‥‥っ!?」
 娘は苦痛に耐えながら半身を起こすと、衣服が真っ赤に染まっている事に震え、ゆっくりと顔をあげる。視界に飛び込んだのは、豪腕を肩にメリ込ませた男の姿だ。
「猖巣様!!」
「刃、左腕は、抑え、た。さっさと送ってやりな!」
「猖巣‥‥待ってろ! どう転ぶかわからないがこの状況を打破してみせる‥‥! 紫刳守睦正封印解除! 邪念を葬れるならどちらでも構わない! 鬼よ、侍よ、我に宿るがいいッ!」
 刹那、暗雲が上空を覆い、風が渦巻く中、刃の瞳が赤く染まり、口元が吊り上がった。豹変した若者の姿に、娘は戦慄を覚え、身体を小刻みに震わす。
「笑っているのですか? 刃様が‥‥あんな表情を‥‥ッ!!」
 白の視界に映ったのは目を覆うほどの圧倒的な暴力だった。巨体から鮮血が煙のように舞い、骨を砕ける乾いた音が響く中、赤黒い肉の塊へと腕をメリ込ませては、引き抜いての動作を繰り返す。ビクビクと巨体を痙攣させ、悪鬼は咆哮をあげるものの、それすら心地良い音色の如く、刃は恍惚とした表情で血肉に塗れていった。断末魔と共に悪鬼が絶命した事すら気付かないだろう。奇声を発しては両手を滅茶苦茶に突き入れ続けていた。
 ――もう終わった! 鎮まれ! 霊刀に宿りし鬼よ! 鎮まれ!
「じ、刃、様? もう、倒れましたから‥‥じ、ん」
 ギラリと眼光を輝かし、強暴な笑みを浮かべる若者が娘を射抜く。口いっぱいに涎を垂れ流し、厭らしそうに口を歪める刃の風貌に、端整な面影すらない。血肉を滴らせた赤黒い手が白へと迫る。
 ――やめろ! 何をする気だ!?
「刃様ッ!」
≪小僧! 未だ扱い切れぬとは嘆かわしい≫
 ――誰だ? 霊刀に宿りし侍か?
≪情けないぞ小僧‥‥今の御主は悪鬼そのものぞ。御主は肉に溺れおったのだ。見ろ、一歩遅ければこの娘の柔肌を突き破り、元の姿も分からぬほど蹂躙したであろう≫
 ――いやだ! 霊刀に宿りし侍よ、俺を戻してくれ!
 このままでは白が! 俺は‥‥。
「‥‥俺は‥‥はッ!」
 視界に映ったのは娘の白い肌に四本の指を突き当てた自分の腕だった。視線を落とすと、白の身体に跨っている事に気付き、悲鳴をあげて飛び退くと、地面に強かに腰を打ちつける。
「‥‥正気に、戻られたのですね?」
「あ、あぁ‥‥俺は‥‥はッ? 猖巣!?」
 視界を流すと、切断された豪腕を肩にメリ込ませ、片膝を着いて動かない男が映った。二人が傍に駆け寄ると、猖巣が力ない微笑みを向ける。
「梃子摺ったな‥‥刃、白を‥‥頼んだ、ぞ」
「猖巣様ッ! な、なにを‥‥夫となる者が死ぬのなら私も」
「猖巣、諦めるな! 未だ助かるさ!」
 フッと微笑むと、男は視線を娘に流す。もはや首を動かせないのだろう。
「白‥‥おまえは生き、ろ。俺の分まで、幸せにな、れ。刃、白を、頼、む、ぞ」
 そのまま猖巣は動かなくなった。既に息絶えた男の名を二人は涙を流して呼び続けていた――――。

●終章・そして――――
「起きて下さいな! 刃様ったら! 今日は祭に行く御約束ではありませんか!」
「あ、あぁ。‥‥そうだったな」
 あれから数日が経ち、今日も白は刃を起こしている。ただ、以前と変わった点が一つだけあった。傍で若者に微笑む娘は、同じ布団から半身を起こし、少しはだけた寝間着を纏っていたのだ。
「‥‥白は疲れ知らずだな」
「な、何を‥‥もぅ、知りませんッ」
 頬を赤く染めてそっぽを向く娘の横顔を見つめ、若者は柔らかな微笑みを浮かべていた――――。


「‥‥これがアナタの描いた物語なのですね」
「やっと戻れた‥‥。物騒だったけど最後はおいしかったような‥‥退屈はしなかったぞ?」
 少年が疲労感を抱きながらも微笑むと、カタリーナは胸元に当てていた一枚のカードを、刃に差し出す。
「このカードは、刃さんが物語の続きを描く時に使って下さい。カードに記録として履歴が残ります」
「俺の履歴だと?」
「はい☆ 今回の場合は、『侍や陰陽道が盛んな日本。陰陽剣士として名を馳せた刃は悪鬼を退治し、哀しみを乗り越え幼馴染と恋仲に☆』って感じです」
 いいのか? こんなてきとーな履歴で‥‥。
 刃はカードを受け取った。微妙な履歴の刻まれたカードを眺め、少年は微笑みを浮かべる。
「それでは、刃さん、ごきげんよう☆」
 カタリーナが微笑む中、次第に大きくなる眩い閃光に、刃は瞳を閉じた――――。

<陰陽剣士を続ける> <目を覚ます>


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】
【3860/水滝・刃/男性/18歳/高校生/陰陽師】

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■         ライター通信          ■
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 この度は発注ありがとうございました☆
 はじめまして♪ 切磋巧実です。
 さて、いかがでしたか? 物語で猖巣を失うと明記されていた事に笑ったのはヒミツです。殺しちゃうんだぁ(笑)と、で、自分は幼馴染と恋仲に? いえいえ、これも物語の一つですからアリです。一応人間関係だけ演出させて頂きました。
 尚、暴走した際の復帰として霊刀を演出させて頂きました。あくまで物語の中での表現ですから、念の為、他のノベルで霊刀へ呼び掛けるみたいな行動はしないで下さいね。
 さて、陰陽剣士・刃に続編はあるのか? 勿論、別の選択肢を選んで、まったく別の物語を描いても構いません。お気に召したら是非カタリーナに聞かせてあげて下さいね。
 楽しんで頂ければ幸いです。よかったら感想お聞かせ下さいね。
 それでは、また出会える事を祈って☆