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■鳴海 鳴門の日常■

メビオス零
【5731】【来栖・麗菜】【モデル】


 ○月××日 1453時(現地時刻)
 夢見ヶ原学園高等部職員室前廊下消火装置前にて………


「ふっふっふっ……これで良し」

 鳴海 鳴門は、不敵に笑いながら消火装置に爆弾を装着させた。これでこれから起こる爆破作業を消火されるとか、そういう事態は起こらなくなるだろう(他の場所にも設置済み)。
 背後で控えている科学部員と同士達を振り返り、鳴門は元気いっぱいに頷いた。

「さぁ、これで準備は万端。今こそ我らの真の力を示すときが来た!!同士達よ、用意は良いかぁ!!?」
「「「「おーーーーーーー!!!!!」」」」

「こらぁ!貴様等、そんな所で何をやっている!!?今は授業中………ってお前達かよ!?」
「チィッ!柳川(古文)にばれた。全員散れ!散れーーー!!」
「ま、待たんかコラ!」

 職員室から出て来た教師達が、逃げ出した生徒達を慌てて追跡する。だがテロリストとして、追われる事に慣れっこな鳴門は、仲間と共に長い廊下を駆けていった………


〜鳴海 鳴門の日常〜


「ふぅ、今日はなんだかついてないわね………」

 来栖 麗菜は溜息を付きながら、夢見ヶ原学園の塀の外を通り掛かった。
 麗菜は、この日、異様に運の悪い出来事が続いていた。
 事例@:写真集の撮影に行く途中、車が事故って撮影に遅れる。現場に到着するが、写真家も事故って結局中止。
 事例A:今日の予定を確認し、他の仕事が入っていない事を確認したにも関わらず、急遽ファッション雑誌のモデルとして呼ばれ、帰宅しようとする所を引き返す。
 事例B:車が故障したままなので、仕方なく途中までバスに乗り、残りを徒歩で稼ぐ………
 そして今、麗菜は第四の不運に巻き込まれようとしていた………!!

「…………今一瞬……何か聞こえたような気が……」

 麗菜の暗殺用アンドロイドとしての機能が、さほど離れていない所での爆発音を聞きつける。一体何事なのかと、麗菜はちょうど目の前に来た学園の門からチラッと中を覗き見る。
 …………そして少しだけ後悔した。

「何よ。この騒ぎは…………」

 校門から見える光景にしばし唖然とする。
 大きな校舎からは不可思議な色彩の煙が上がり、窓ガラスが割られ、あちこちの教室から悲鳴と怒声、そして何故か笑い声が響いていた。
 本来は門や学園のあちこちを巡回していなければならないはずの警備員達が、その騒ぎを起こした張本人達を追いかけている。犯人であろう覆面をしている生徒達は、自分達を追ってくる警備員達の手を巧みに潜り抜け、あっちこっちへと逃げ回っている。人手が足りないのか、警備員だけでなく教師達まで出張っているようだ……
 その為授業が中止になっているらしく、無関係な生徒達はその様子を楽しそうに眺めていた。………もっとも、あまり気を抜きすぎると自分達に被害が及ぶ事を承知しているらしく、騒ぎを起こした犯人達には関わらないように距離を置いている………
 まるで紛争地帯のようになっている学園をぽか〜〜んとしながら眺めていた麗菜は、あまりに非常識な光景に、今まで溜め込んできた人間としての知識をフル動員して眼前の光景を分析していた。
 ……………ない。この人間に成ってからと言うもの、かなりの量の知識を収集したのだが……………どう思いだしても、たとえ五指に入る不良校でさえ、学園はこんな紛争状態になってない!!と言うか爆発物!?警察は何故来ない!?
 様々な思いが超高速で麗菜の脳内を駆け回る。だがどれもこれも当然と言えば当然なのだが、全く答えが出る目処が立たず、完全に硬直状態になってしまっていた。
 ……………その為か、ちょうど学園の塀に沿って逃げてきた女子生徒が、自分を見てニヤリと笑った事に気が付かなかった。
 走り寄ってきた女子生徒は麗菜の手を掴んで拘束し、素早くその背後へと回る。そして自分を追ってきた警備員と教師達に向き直り、手に持った携帯電話をビシッと麗菜の首にあてがう。
 状況が掴めていない麗菜が未だ呆然としているのを気にすることなく、女生徒は警備員達にストップを掛ける。

「おっとそこまでだよ!!それ以上近寄ったら………この携帯電話に仕込んだ隠し武器が発動するからね?」
「なにぃっ!鳴海、貴様部外者まで巻き込むつもりか!?この騒動といい、いい加減にしろ!!」
「嫌」

 即答してから、鳴海と呼ばれた生徒は相手の動きが全員止まったのをサッと見て取り、携帯のボタンを素早くプッシュして装置を作動させた。
 たちまち携帯からピンク色の煙が噴出され、周囲に広がって視界を染める。

「しまった!追え!奴はこっちの足を止めるつもりだぞ!!」
「ダメです!奴を中心に半径三十メートルが濃い煙に覆われています!!これでは追えません!!」
「何でそんなに詳しく解るんだよ!!」

 煙の中から警備員や教師達の怒鳴り声が響き渡る。何人もの生徒達が巻き込まれたが、幸いその煙は有毒なものではなく、誰一人として不快な症状を訴える事はなかった。
 煙は段々と上に上がっていき、風に流されて周囲に広がり、そして薄まっていく。
 残されたのはピンク色に染まった警備員に教師、そして巻き込まれた生徒達…………


 鳴海と麗菜の姿は、何処にも見当たらなかった………




★★★

 ところ変わって、場所は校舎の中、女子更衣室………鳴海によって引っ張られてきた麗菜は、目の前で着替えながらピンク色に染まった顔や手足を洗っている鳴海を見つめるに至ってようやく正常な判断力が戻ってきた。
 随分と長い間止まっていた思考が復活する事によって、ようやく状況が飲み込めてきた。そしてよくよく見てみると、あの煙の中にいた自分もピンク色の色素に染まっており、麗菜の高い服が台無しになっている………
 ムッとした表情になって自分の服を調べている麗菜に気が付き、鳴海はニコニコと笑いながら口を開いた。

「おっ!やっと落ち着いたみたいだね。いやぁ〜、さっきまでは話し掛けても何しても全然反応無いからさ、一体どうしたのかって心配しちゃったよ〜!あ、安心して!そのインクは水洗いで全部落ちるから。でも他の物と一緒に洗っちゃダメだよ?他のに移る可能性があるからね」
「………そ、そう」

 一気にまくし立てる鳴海に少々気圧されて、麗菜はそれだけを返事した。
 そんな事に構わず、鳴海はさらに言い続ける。

「さぁ着替え着替え!その服はこの紙袋の中に入れちゃって!あ、替えの服はないだろうから、この体操服に着替えてね?大丈夫!ちょっとサイズ大きめの予備だから。ブルマだけど気にしないように。……全く、あの警備員達があまりにもしつこいからこうなるんだよね!!こんな可愛い女子高生と美女を追いかけ回して…………あの変態共が!!よし!こうなったらあたしが正義の鉄槌を加えてくる!あなたの仇も討ってあげるから、安心して帰って頂戴!!それじゃ」
「ちょっと待て!」
「チィッ!誤魔化せなかったか!?」
「勢いで押し切ろうとしたってそうはいかないわ。この状況……何でこんな事になっているのか、聞かせて貰うわよ」

 鳴海の手を引っ張り、更衣室に連れ戻す麗菜。元暗殺用のバイオロイドである麗菜の腕力には勝てずに、鳴海はあっさりと白旗を揚げた。
 大人しくなった鳴海は体操服に着替えている麗菜を眺めながら、この学園の事、教師や生徒達の事、そして、自分が学校崩壊を起こそうとテロ活動をしている事を暴露した。
 何でも、学校崩壊とは学級崩壊を巨大にした状態の事らしい。要するに………今の状態の事か?

「チッチッチ。今の状態は、あくまでテロ側しかはっちゃけて無いからね。これじゃあダメダメ。全校生徒が同じようにはっちゃけなきゃ」
(そんな事になったら、この学園廃校になるんじゃないか?それ以前に、どうして退学とかにならない)
「あ、着替え完了だね。ん〜〜〜〜〜………………グッジョブ!」
「嬉しくないわ」
「そんな事言わないでくださいよ御姉様♪体操服+ブルマ、とってもお似合いですわ〜〜♪」
「ちょっ、擦り寄るな!」

 鳴海が差し出した体操服に着替えた麗菜に、鳴海が擦り寄ってきた。どういう訳か御姉様などと呼び、ニヤニヤと頬を緩ませながら触れてくる。
 まるでエロ親父だ。麗菜は、背筋を走り抜けていくゾワッとした感覚に、思わず手を振って突き放す。
 離れた鳴海は、上機嫌で麗菜の姿を観察し、唸ってから両手を合わせて、写真のような四角を付くって麗菜を写し、覗き込んだ。

「あ、ちょっと今素が出ましたね。………でもこうしてみると………どこかで見た事があるような………」
「う……」

 しげしげと眺めてくる鳴海に、麗菜は顔を背けて冷や汗を流した。モデルをやっている麗菜の顔は、ファッション雑誌を読めば見かける事が出来る。そして鳴海のような女子高生ならば、まさに今が旬。麗菜の事を知っていても、全くおかしい事ではない。
 モデルがこんな所にいるとか、そう言うのは別に良い。どうせ自分は引きづり込まれただけなのだから、いくらでも言い訳がきくだろう。
 だが……………
 この格好は拙い。モデルをやっているだけあって、こんな格好で気が付かれたら、どうなる事か解ったものではない。
 特に目の前にいる少女は、脅しぐらいなら簡単にやってきそうだ。

「う〜ん……だめだ。思い出せない………こう、ボヤ〜〜ッとは浮かんできてるんだけど……顔が思い出せないんだよね」
「セーフ」
「え?何か言った?」
「いいえ。何でもないわ。それより、私はここに用はないの。この体操服は後日返しに来るから、出来れば誰にも見つからないようで入り口とかに案内してくれないかしら」
「ごめんね〜巻き込んじゃって。じゃ、案内するから、脱いだ服も持ってきてね?」

 そう言って更衣室から出て行く鳴海。麗菜は脱いだ服を差し出された紙袋に入れてから後を追った。
 校舎内にはまだまだ生徒達が避難もせずに残っているようで、ワイワイガヤガヤと騒がしい。さすがに授業中だった事もあり、教室から出てこないのは幸いか………麗菜は出来るだけ人に見つからないように行動し、コソコソと鳴海の後を追っていった。
 だが、しかし………

「いたぞぉ!鳴海だ!」
「捕獲しろ!簀巻きにして東京湾に沈めてやる!!」
「うわっ!ばれたか!」
「廊下を堂々と歩いてるからでしょ!!」

 折角麗菜が気が付かれないようにしていたのに、鳴海が隠れない事で失敗した。鳴海を捜索していた教師に見つかり、また逃走劇にはいる。
 鳴海の横を駆けながら、麗菜は不意に、一つの疑問に思い至った………

(思えば……私、逃げる必要なかったんじゃ………)

 麗菜は人質にされ、校舎の中に連れ込まれた立派な被害者だ。
 ……………逃げ回る必要など全くない事に気が付き、麗菜はまだ自分がパニックに陥っているを自覚した。

「コラァッ!そこの二人!止まりなさい!!」
「“二人”!?私は共犯者じゃないわよ!」
「やっだよ〜!追いつけるもんなら追いついてみなさい!!私達俊足コンビには勝てないんだから!!」
「鳴海さんは煽らないで!!それと私を共犯者にしないで!!」

 怒鳴る麗菜。だが鳴海には全く効果が無く、鳴海は本当に楽しそうに麗菜の横を走っていた。
 この逃走劇を楽しみ、楽しそうに走っている鳴海の横顔を見て、麗菜も自然に笑みを零した。自分が過去に行っていた逃走劇よりも、こちらの方がずっとスリルがあって、尚かつどういう訳か気分が高ぶり、昂揚してくる
 この学園とこの少女が特殊なのだろうが、麗菜はこう言うのも悪くはないなと、心の中でこっそりと呟くのだった……




★★★

 ようやく教師達を撒き、誰も周囲に居なくなった頃、ちょうど麗菜は鳴海と一緒に用務員用出口に辿り着いた。中から鍵を開け、外に出る。
 走り回っている間にすっかり紅くなった空を見上げながら、麗菜はウンと伸びをした。
 今日はなんだか慌ただしい一日だったが、そう悪い一日ではなかった気がする。

「はぁ、疲れたねぇ。何でこんなに疲れなきゃならないんだろ?」
「あなたは自業自得。私は………厄日かしらね」
「ブ〜ブ〜!そんな事無いよ。よしっ!厄日でない証拠品として、そのブルマを上げよう!」
「いらないわよ!」

 ただ、この少女は悪者だと思う。とりあえず、次に来る時には出会ったときのことの対策を立てておこう。
 鳴海は屈託の無い笑顔で校舎の中に向かって歩き出した。走っている間に聞いた事だが、この事件の事後処理などは全て鳴海がやっているらしい。自分がやっていたという証拠も消さなければならないらしく、これからが忙しいんだとか………
 小さく手を振ってから、麗菜は用務員用の扉を閉めた。インクで染まった服が入った紙袋を持って、帰路につく……
 帰り道、人に見られないようにして帰る事には苦労したが、麗菜は今日の出来事、特にあの少女の事を記憶に止めるようにして、張り詰め、酷使した体を休める事にする………





 ………数日経った今でも、体操服とブルマは、麗菜の部屋の中で眠っている………



fin





★★参加PC★★
5731 来栖・麗菜

★★WR通信★★
 またまたありがとう御座います!メビオス零です!!!!
 久しぶりのゲームノベルだったのですが、一人でも来てくれて嬉しかったです、ありがとう御座いました。
 さて、今回のお話………はっちゃけてます。来栖麗菜と鳴海鳴門の邂逅、楽しんで頂けたでしょうか?楽しんで頂けたら幸いです。

 「しかしブルマはまずいだろ」?え?趣味かって?いや、ノーコメノーコメ。ナニヲイッテイルノカ、ワタシワカリマセーン(^_^)
 
鳴海参上!「天誅!」グシャ。

 ……はいすみません。趣味です(^_^)と言うか私暴走気味です。最近色々あったんで……
 では、これ以上惨状を広げないうちに撤退します!
 今回のご依頼、誠にありがとう御座いました!またの御機会をお待ちいたしております!