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■秋篠神社奇譚 〜参拝日誌〜■

藤杜錬
【4984】【クラウレス・フィアート】【「生業」奇術師 「本業」暗黒騎士】
緑に囲まれた小道を抜けあなたは階段の前に立っている。
この階段の上にあるのは秋篠神社の境内だ。。
あなたは何かを祈願にやって来たのだろうか?
それともここの住人に用事があってきたのだろうか?
あなたはそっと一息ついて、ゆっくりと階段を上り始める。
階段をのぼった貴方はそこで人影を見かける。

「あの今日は……。」

そう言ってあなたはその人影に声をかける。

秋篠神社奇譚 〜参拝日誌〜

クラウレス・フィアート編

●秋篠神社の境内にて
「確かこの辺り…だったはずだな…」
 夏は過ぎたとはいえ、まだ残暑の残る初秋の中一人の黒ずくめの少年が鎌倉の木々の生い茂る道の中をあ歩いていた。
 彼の名前はクラウレス・フィアート、この辺りにあるという話だった神社へ向かおうとして歩いているところだった。
「それにしても、もう秋だと言うのに一向に涼しくならないな…」
 歩きながら汗をぬぐってクラウレスは呟く。
 薄手の白いサマーセーターと黒いズボンというういでたちにはまだ少し早かったかもしれない。
「といっても、急に寒くなられても仕方の無いわけだが…」
 そんな風に一人呟きながら歩いている内に、目の前に階段が現れる。
「ここか?話に聞いた秋篠神社は…」
 目の前に見える階段を見上げながらクラウレスは呟き階段を上り始める。
 階段を上り終えたクラウレスは周囲を見渡す。
 そして境内にて履き掃除をしている銀髪の巫女の少女に声をかけた。
 声をかけてから気がついたのだが、以前とある事件がきっかけで知り合った少女、秋篠宮静奈(あきしのみや・しずな)であった。
「こんにちは、秋篠神社はここで構わないんだよな?」
 そう話しかけてきた青年に対し静奈は不思議そうな顔を向ける。
「あの…失礼ですけど、どちら様でしょうか?」
 いかにも見知った顔と言った様子で声をかけてくるクラウレスに対して思わず静奈はそう問う。
「ああ、私はクラウレスだ……」
「え?クラウ…レスさん?」
 驚いたような表情になる静奈を見て、クラウレスはようやく納得がいった。
「ああ、そうか静奈とはこの姿で話すのは初めてだったな…。まぁ、少し理由があって私の本来の姿はこの姿なのだ、だが普段は力を温存する意味もあってあの姿なのだ」
「そうなんですか…」
 まだ驚きを隠しきれないまでもようやく静奈にも事態は飲み込めた。
「だがここが静奈達の神社とは思わなかったな、だとしたらこの姿でいる必要もあまりないか…」
 クラウレスはそう呟くとふっと小さく何かを呟く。

………
…………
……………

 そして静奈の目の前には今までの青年の姿から小さな少年の姿へと姿を変えたクラウレスの姿があった。
「ところででちね…。つかささんはいらっしゃいまつか?」
「司兄なら今日はまだ顔見てないけど、どうしたの?」
「そうでちか…。きょうはいろいろこのじんじゃについておはなしとかおちゃのさほうとかおしえてもらおうとおもってきたのでちが…」
「なんだそういう事なら司兄じゃなくても、ボクでよければ付き合うよ」
「ほんとうでちか?」
「こんな事、嘘言っても仕方ないじゃない」
「そ、そうでちね」
 思わず苦笑するクラウレスを見て静奈も思わず笑みがこぼれる。
「それじゃこのはき掃除とっとと終わらせちゃうからちょっと待っててね」
「はいでち」
 しばらくして静奈は掃き掃除を終え、クラウレスと一緒に建物の中へと入って行った。

●話
 和室の部屋の中。
 クラウレスは慣れない正座と格闘をしていた。
『たえるでち、つらくてもたえるでち……』
 そんなクラウレスの苦しそうなものが顔にも表れていたのを静奈は読み取ったかのようにクラウレスに話しかける。
「クラウレスさん、苦しいなら足を崩しても良いですよ?」
「だ、だいじょうぶでち…」
 そう言いながらも苦しそうなクラウレスの表情を見て、思わず静奈は笑みをこぼす。
 その笑みで緊張がほぐれたのかクラウレスも硬かった表情がようやく柔らかくなる。
「それじゃせっかくのごこういでしゅし、おことばにあまえさせていただくでち」
 そう言ってクラウレスはようやく足を崩す。
「あいたたた…、あしがしびれてるでちよ…」
 今まで慣れない正座をしていた所為か、緊張がほぐれたためか、それともその二つが原因か、クラウレスの足が激しくしびれる。
「ちょ、ちょっとしつれいするでし」
 クラウレスはそう言って立ち上がる。
 そしてしばらく伸びをするように体を動かし足の痺れをとる
「ふう…なんとかしびれもとれたでちごめんなさいでち」
 クラウレスは今度は足を崩したまま座布団に腰掛ける。
 座ったのを見た静奈はクラウレスにお茶とお茶菓子を差し出す。
 お茶受けに出された団子を見てクラウレスは目を輝かせる。
「ちょうどおなかがすいていたんでちよ、このおだんごはありがたくいただかせてもらうでち」
 美味しそうにそう言いながらクラウレスは団子を頬張る。
 それを見て静奈は思わず笑みをこぼす。
 あっという間に無くなった団子の皿を見て、静奈は自分の分の団子の皿もクラウレスの方に差し出す。
「そんな風に美味しそうに食べてくれるんだったら出した甲斐があるよ。もしもっと食べたいのならボクの分のお団子もあげるけど、いる?」
 静奈のその言葉にクラウレスはうれしそうに頷く。
「ぜひほしいでち」
「それじゃボクの分もあげるよ」
「ありがとうでち」
 クラウレスは静奈にお礼をいうと静奈に貰った団子も美味しそうに頬張った。
 あっという間に団子の皿の上のは空になった。
「あーおいしかったでち」
「良かった、お客様に喜んでもらうのはやっぱり嬉しいから」
 静奈はそういうと改めてクラウレスの方に向きなおす。
「それでクラウレスさんはこの神社について聞きたいんだっけ?」
「そうでち、このじんじゃのゆらいとか…きいてみたいとおもったでち」
「でもなんでいきなりそんな風に思ったの?」
 不思議そうに静奈が問いかける。
「まえまえからすこしきょうみがあったでちよ。ちょっとなにかいわくのありそうなじんじゃだな、とおもっていたから…」
 それは多分、クラウレスが静奈や司と一緒に不思議な事件に関わり一緒にその事件を解決してきたからこそそう思うのだろう。
 それを感じ取った静奈は少し天井を見上げ、自分の考えをゆっくりとまとめる。
「由来…といってもたいした事でもないんだけどね」
 そう切り出すと静奈はゆっくりと話し始める。

………
…………
……………

 静奈が話したのはこの神社がこの地の鎮守の目的で建てられた事、神器である神弓を代々護ってきている事などを話していった。

●エピローグ
「なるほどでち…。そういうことならしずなさんたちのやってきたことのいみがわかったでち」
「まぁ、守護や鎮守をする、といってもそんな大層な事をしている訳ではないんだけどね。元々関東の地というのは呪的なものが絡み合った土地だから…」
 どこか複雑な思いのこもった声で静奈が呟くとも話しかけるとも取れる声を出す。
 クラウレスはその複雑な声を聞いて声を出す事が出来ず、しばし無言の時間が過ぎていった。
 しばらくのちクラウレスは、場の空気を換えようとひとつの提案をする。
「あの…もし良ければで良いのでちが…、おちゃのさほうをおしえてもらえないでしょうか?」
「お茶の?」
「そうでち、まえまえからきょうみがあったんでちけど…、なかなかおそわるきかいがなくて…」
「そういう事なら教えてあげる」
 そう静奈は快諾をした。
 そしてそれからしばらくの間クラウレスは正座と格闘する事になり、当分の間正座をしたくないと思う事になったという……。


Fin

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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≪PC≫
■ クラウレス・フィアート
整理番号:4984 性別:男 年齢:102
職業:「生業」奇術師 「本業」暗黒騎士

≪NPC≫
■ 秋篠宮・静奈
職業:高校生兼巫女

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■         ライター通信          ■
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 どうもこんにちは、ライターの藤杜錬です。
 今回は秋篠神社のゲームノベル「秋篠神社奇譚 〜参拝日誌〜」へのご参加ありがとうございます。
 それから納品が遅くなり申し訳ありません。
 本当はもう少し早い時期の納品を目指していたのですが、このような時期になってしまい申し訳ありませんでした。
 今回は上手くクラウレスさんの描写が出来ているか、少し心配ではあるのですが、如何だったでしょうか?
 今回クラウレスさんが知る事が出来たのは大まかな秋篠神社についての話です。
 神器についてや静奈の役回りなどについては大雑把についてですが話されたと思ってください。

 少しずつ本格復帰を目指して行こうと思いますので、またどこかで見かけた折にはよろしくお願いします。

2005.10.17.
Written by Ren Fujimori