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■居候神様・桐鳳の巻■

日向葵
【5698】【梧・北斗】【退魔師兼高校生】
 とある神社の御神体として収められていた木彫りの鳳凰が人化した存在――端的に言ってしまえば神様である桐鳳は、とある事情のもと、曰く付きの品々を集めている。
 かつて桐鳳が御神体として納められていた神社は、曰く付きの品の供養・封印を行うことを主な仕事としていた。
 しかし神社は、戦中の空襲により焼失し、そこに集められていた品々は火事場泥棒やその後の騒ぎで散逸してしまった。
 だが特殊な能力を持つ品々や、世間に害のある存在を封印した品々は、あまり一般に放置しておけないような品ばかりなのだ。

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●ライターより

・このシナリオは完全個別となっております。他のPCと一緒に参加したい場合はその旨プレイングに明記お願いします。

・下記のシナリオの他、桐鳳と遊びたいとかからかいたいとか、回収品が欲しいなんていうシチュエーションノベルっぽいものもOK。


桐鳳や他のNPCに関しては、東京怪談個別部屋を参照願います。
http://omc.terranetz.jp/creators_room/room_view.cgi?ROOMID=397
預言者のツボ

●傍迷惑なツボ、脱走する

 草間興信所のデスクの上に、一つの桐彫刻が置かれている。
 鳳凰の姿をかたどったそれは、実はただの彫刻ではない。とある神社の御神体であった彫刻であり、その彫刻には神様が宿っている。
 その名も桐鳳。
 何時の間にやら草間興信所に居候している桐鳳は、かつて自分の神社に納められていた品の回収をしている。
 時に興信所の調査員に協力を願い、時に自分一人で行動して。
 かつて桐鳳が御神体として納められていた神社は、曰く付きの品の供養・封印を行うことを主な仕事としていた。
 ゆえに。
 盗難に遭い散逸してしまった神社の品々はすべて、あまり一般に放置しておけないような品ばかりなのだ。


「おぬし、今日は体調を崩すぞ」
「え゙?」
 その日、回収品の整理をしていた桐鳳は、言われた言葉に固まった。
 振り返ればそこには片手で軽く持ち上げられるようなサイズのツボがひとつ、目に入る。
 ……確かあれは危険だからと封印されていたはずの品だ。何かのはずみで封印が解けてしまったのだろう。
 ぼてっと。
 よく割れないなあと思うような大雑把な動きでハネて、ツボが部屋の外へと向かった。
「うわっ、そっち行っちゃだめだって!」
 とりあえず最封印してやろうと思ったのだが――
「……体調崩すってこういうこと…?」
 何故か能力が使えない。
 あれが告げる予言は妙にセコかったり、些細なことだったりするのだが、それだけに覆すのが難しい。あれが今日は体調を崩すと言ったのならば、多分今日一日は能力を使えないであろう。
 大災害には絶対にならないやつだがめちゃくちゃに傍迷惑なあれを野放しにするわけにはいかない。
 デスクで仕事中の草間武彦に向けて、桐鳳は思いっきり声を上げた。
「武彦さんっ、そいつ捕まえてっ!」

 扉の向こうからの叫びに、武彦は書類から顔を上げた。
 直後。
 ぼってぼってと器用にハネて、ツボが何故だか走って行く。
「なんだ…?」
 武彦と目が合った途端、
「おぬし、頭上と金ダライに気をつけよ」
 ツボは謎の言葉を残して、扉の向こうへとハネていった。
「は…?」
 わけのわからない武彦は茫然とそれを見送り、直後――
 ガンッ!!
「…っつう〜〜〜」
 どこからか降ってきた金ダライに激突した。


●梧北斗の場合


 いつもと同じ、学校帰り。
 何か面白いことはないかと興信所の扉を開けた瞬間、視界に飛び込んできたのは、一昔前のドリフのギャグの如く金ダライと激突している草間武彦の姿であった。
「……なにやってんだ、武彦?」
 あまりにもな姿に思わず、呟く声に抑えきれない笑いが漏れる。
「北斗さん、そいつ捕まえてっ!」
「へ?」
 叫ぶ声に顔を上げると、必死の形相の桐鳳と目が合う。
「そこ、足元〜っ!」
「足元?」
 言われるままに視線を下げる。
「おぬし、子供に気をつけよ」
「はあ?」
 足のすぐ傍にあるツボからよくわからない声が響いたかと思ったら、ツボはぼってぼってと不器用に跳ねて、廊下の向こうへ姿を消した。
「なんだ、今の……?」
「まずいよ、北斗さんっ」
「なにが?」
 あっという間に通り過ぎていったそれを半ば呆然と見送りつつ、桐鳳の方へと向き直ったその時!!
「おい、桐鳳……たいした害はないんじゃなかったのか?」
 呆れなのか怒りなのか、はたまた諦めなのか。
 震え交じりの声音で告げた武彦が、妙に大きくなったような気がした。ついでに、周囲にある机もドアも椅子も、すべてが急に大きくなったような気がする。
「えーと、北斗さん……」
 どこか沈痛な面持ちで、桐鳳が北斗の前に鏡を差し出す。
 そこに映っていたのは今はもうないはずの……過去に見慣れた姿であった。
「なんだよ、これぇぇっ!?」
 慌てて自分の姿を再確認する。
 そこにいたのは、十歳になるかならないかという、幼い子供の姿であった。



 とにかく、ツボを捕まえないと話にならない。
 そういう結論に至った一行は、ツボの足取りを追って草間興信所を飛び出した。
「桐鳳が空から探すとか、無理なのか?」
 北斗の問いに、桐鳳はなぜか妙に爽やかに笑って手を振った。
「無理むりー。僕もあのツボの被害受けちゃって。今日はなーんにも能力が使えないんだ」
 だったらあれを捕まえても誰が封印するんだ、とそんな疑問が頭の隅によぎったが、それは今はあえて言わないことにする。
「いたぞ!」
 大人の足で数メートル先を駆けていた武彦が、ツボの姿を見つけたらしい。
「武彦、そいつを細い路地に追い込んでくれ!」
「わかった!」
 すぐさま動き出した武彦に目をやりつつも、桐鳳が疑問の声を口にする。
「どうするの?」
「近道つかって回り込む」
 言って北斗はいきなりひょいと横道に逸れた。
「大人じゃちょっと無理だろうけど、今のサイズなら……」
 武彦がうまく追い込んでくれることを祈りつつ、北斗は横道の行き止まりにある塀の小さな亀裂を指差した。
「へぇ、よく知ってるんだね」
「まあな」
 一応地元民だし、退魔のお仕事は表立ってやるもんではないので、自然と裏通りに詳しくなってしまうのだ。
 北斗を先頭に塀を抜け、少々悪いと思いつつも人様の敷地をすり抜けて、武彦に指示した路地の方へと回りこむ。
「よおし、挟み撃ちだっ!」
 ちょうどタイミングよく、ツボは路地に入り込んできたところであった。
 ツボは慌てて方向転換をするが、そちらにはもちろん、追いかけてきた武彦がいる。
 きょろきょろと慌てた様子で行く先を決めかねているツボにタックルをかけた――が。
 北斗の勢いに驚いたのか、ツボは武彦の伸ばした手を器用にすり抜けてぼってぼってと跳ねていく。
「逃がすか! 武彦、肩かせっ!」
 言うが早いか。
 武彦の返答を聞く暇もなく、北斗は思いっきりジャンプして、武彦の肩を踏み台にしてツボの行く手に着地する。
「さあ、俺を元に戻してもらおうか」
「おま……いくらなんでも、無茶だろう」
 今度こそとツボを包囲しつつ、武彦が疲れたような声で言う。
「いいじゃないか、体重も軽くなってるんだし、そんなに負担じゃなかっただろ?」
 さらりと言い放った北斗の態度に、武彦もそれ以上何か言う気はなくなった様子。
 そんな武彦を無視して、北斗は今度こそ、しっかとツボを捕まえた。
「で。どうするんだ、これ?」
「明日まで確保しといて、能力が戻ったら僕が封印するよ」
「俺は?」
 元に戻る気配のない自分の身体を見つつ、呟く。
「……今日はうちに泊まってく?」
 あははと笑う桐鳳に、武彦はさらなる深いため息をついた。

 結局北斗は、その日いちにち子供のままで、翌朝は興信所から学校に向かう羽目になったのであった。


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   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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整理番号|PC名|性別|年齢|職業

5698|梧・北斗|男|17|退魔師兼高校生

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         ライター通信          
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 こんにちわ。日向 葵です。
 今回は預言者のツボへのご参加ありがとうございました。
 お子様好きの私は、書いていてものすごく楽しいお話でした。
 PLさんにも楽しんでいただければ幸いですv

 それでは、またお会いする機会がありましたら、どうぞよろしくお願いします。