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■CallingU 「小噺・南瓜」■

ともやいずみ
【3525】【羽角・悠宇】【高校生】
 もらったチケットを片手に困るのは、遠逆の退魔士。
 せっかくもらったタダ券だったが、ペアということと、ハロウィンの仮装が条件。
 困った。
 誘う相手もいないというのに。自分は東京に出てきてまだ少し。
 さて、どうしよう?
CallingU 「小噺・南瓜」



 ぼんやりと公園のベンチに座っている少年に気づいて、羽角悠宇は足を止めた。
 ちょっと考える。
(あれ、って……欠月、だよなあ?)
 遠逆欠月と名乗った退魔士。
 無表情の欠月を眺めていると、彼がこちらを見た。うぐっと悠宇は動きを止める。
 欠月はにこーっと笑う。かなり可愛い。
(な、なんであいつニコニコしてんだろ……)
 頬を赤らめて片手を挙げて挨拶する悠宇。
「よ、よぉ。こんなとこでなにしてるんだ?」
「覗きとはいい趣味だね?」
 笑顔で言われて悠宇はガーンとショックを受ける。
 もしかして怒っていた笑顔だったのか?
「ち、違う! たまたまだ! 偶然!」
「ほんとに馬鹿正直なんだから……。なんだかボク、心配になるよ」
「ほっとけ!」
「結婚詐欺にあいそうなんだもん、羽角さんて」
「あうかーっ!」
「冗談だよ」
 にこっと微笑む欠月に、悠宇は嘆息した。
(変なヤツ……)
 欠月はベンチから立ち上がる。
「あ、そうだ」
「ん?」
「羽角さんてさ、暇?」
「…………はあ?」
 学校帰りの学生に言うセリフだろうか?
 というか、コイツはこんなところで何をしてたんだろう……。
「いや、まあ……もう帰るから予定はないけどよ」
「そう」
「そういえば、おまえの学校ってこの近くなのか?」
 こんな制服の学校はあっただろうかとちょっと考えていると、欠月は少し不思議そうな表情をした。
「…………」
「なんだよその顔」
「あ、そうか。羽角さんは知らないんだ」
 納得した欠月はぽん、と掌を打つ。
「ボク、こっちには仕事で滞在してるだけなんだよ」
「そうなのか!?」
「うん。それに、高校には行ってないよ」
 ……え?
 じゃあなんで制服を?
(趣味か……?)
 顔をしかめる悠宇の顎を欠月が手で掴む。
「む!?」
「なんかさ、今、失礼なこと考えなかった?」
 さっと悠宇が青ざめた。欠月の顎を掴む力は思った以上に強い。しかも笑顔が怖い。
(え、エスパーかこいつ! だいたいこんな細ッこい体のくせにどこからこんな力が……!)
「思って……ない!」
「そう。ならいいけど」
 パッと手を離した欠月は悠宇の前に何かを掲げる。チケットだ。
「なんだこれ?」
「タダ券。条件付きだけど」
「へえ! 食費の足しになっていいじゃん!」
「お金には不自由してないんだけど」
「え? そ、そうなのか?」
「ボクは仕事で来てるって言ったでしょ?」
 なるほど。そう言われればそうか。
 悠宇はひらひらと顔の前で揺れるチケットの文字を読んだ。近すぎて見え難いが。
「ペアと、仮装が条件!?」
「そういうこと」
「面白そうだけどな。俺なら彼女を誘うけど」
 ぼそっと言った一言に、目の前からチケットが一気に遠くなる。欠月が手を引いたためだ。
 彼は驚いた表情で悠宇を見ている。そこに含まれる失礼な感情に悠宇は敏感に気づいた。
「おまえ……シツレーなこと考えてないか……?」
「羽角さんて、彼女がいるの……?」
 衝撃の告白を受けたかのようなリアクションをする欠月。オーバーすぎる。
「い、いちゃ悪いか」
 赤くなって言うと欠月はさらにのけぞった。
「うわっ、キモ!」
「キモいとか言うなよ!」
「だって似合わない!」
「そんな力一杯言うなって!」
「ど、どんな女……いや、男の子なの?」
「おっまえ本気でシツレーなヤツだな!」
 こめかみに青筋を浮かべる悠宇の前で欠月は姿勢を正す。
「ごめんごめん。あまりに羽角さんがノリがいいからさ」
 今までの行動が嘘のようにサラっとした顔でいうので悠宇はズッコケそうになった。
 なんなんだ、この変わり身の早さは。
「でもなんて奇特な女の子なんだろ。羽角さんのどこに惚れてるのかな」
「どこが好きかは知らないけど……メチャクチャ可愛いんだぞ!」
「……なるほど。可愛いかわりに頭が足りないとか?」
「失敬だぞ! 頭も良くて性格もいいっつーの!」
「…………」
 白けた顔をする欠月は「やれやれ」と頭を振った。
「そりゃどういう奇跡なんだろうね。羽角さんてさ、それに人生の運という運を使ってると思うよ」
 殴りたい。こいつを殴りたい。
 悠宇は頬を引きつらせて拳を震わせたが、すぐに嘆息した。
 わざと言われているだろうから、相手にするのはやめよう。
「……おまえと居ると疲れる……」
「声をかけたのはそっちでしょ?」
 欠月はしれっとして言った後、悠宇にチケットを差し出す。悠宇はきょとんとしてチケットを見つめた。
「あげる。奇特な彼女さんと行ってきなよ」
「えっ!? で、でもこれおまえのじゃないか!」
「いいんだよ。ボクには誘う相手もいないし、キミに使ってもらったほうが喜ぶでしょ、この券も」
「…………」
 欠月からチケットを受け取って悠宇は彼を見つめる。
「遠慮なんてしなくていいから」
「で、でも……」
「じゃあね」
 軽く手を振って去ろうとする欠月に、悠宇は慌てて手を伸ばす。彼の襟首を掴むはずだったその手を、欠月に掴まれた。
「なに?」
「あ……。これ、お前さえ嫌じゃなかったら、付き合ってもいいぞ?」
「…………なに言ってるの?」
 怪訝そうにする欠月に悠宇はさらに慌てる。
「ハロウィンパーティやる時の仮装の予行演習だって!」
「……言い方が気に食わないね」
「は?」
「付き合って『も』いい、だって? 目上に対する言葉がなってないよ、キミ」
 刹那、欠月の手刀が一閃した。悠宇の前髪が少しだけハラリ、と切れて落ちる。
「言葉遣いに気をつけなよ、羽角さん?」
 ね? と笑顔で言われた。
(こ、こえぇぇぇぇぇ!)
 冷汗がどっと吹き出る。
「わ、わりぃ」
「そんな青くなることないのに。冗談だよ、ジョウダン」
 あははと笑いながら手を振る欠月に悠宇は泣きそうになった。
 なにが本当で嘘なのか、こいつはわからない。なにが冗談で、なにが本気なのかも。
 怒っていたと思ったら怒っていないようで。怒っていないのかと思えば怒っていて。
(もーヤダ)
 欠月は肩をすくめた。
「で、それどうするの? ボクは別に付き合ってもらうほど落ちぶれてないんだけどさ」
「イエ、付き合ってください……俺に」
「あれえ? 彼女を誘うんじゃないの?」
 首を傾げる相手に、「おまえのせいだ、おまえの」と言ってやりたい。
 悠宇は姿勢を正してコホンと咳をする。
「で、衣装はどうする? おまえ、なに着ても似合いそうだよな……」
「はあ?」
「顔もスタイルもいいだろ」
「褒めてもなにも出ないよ」
「…………そうだ! タキシードにオペラ座の怪人のマスクをつけるのどうだ?」
「……なにそれ」
「何それって、知らないのか?」
「怪人と訊くと思い出すのはコレだね。ほら、腰にベルトつけて『へ〜んしん!』ってヤツかな!」
「……それは改造人間じゃなかったか、たしか」
 かなりどうでもいい知識を持っている欠月に、「衣装は俺が持って来るよ」と疲れた感じで言う悠宇であった。



「…………」
 マジメな顔でこちらを見る欠月の反応に、悠宇はついっと視線を逸らした。
 おかしい。
 大抵の人間には強く出ることの多い悠宇だったが、どうも欠月はそうはいかない。
(……む……)
 考えてみれば遠逆の人間には差はあれど強く出られない。確実にやり返してくるからだ。
「羽角さんは、それはなんの仮装なの?」
「リアルライオンマスク……をつけてるんだが。ほら、美女と野獣で」
「……それ、ボクが美女ってこと?」
「違ーうっ!」
 だがしかし、欠月は顔立ちが幼いために女装をしても似合いそうだ。
 想像してしまい、慌ててその映像を追い払う悠宇。
 欠月は悠宇の提案した通りの衣装だ。これがまた似合っている。
「欠月って黒い服が似合うな。余計に細く見えるけど」
「ちゃんと食べてるんだけど……。運動しすぎなのかな」
「運動……」
(それって仕事じゃあ……)
 呆れてものも言えない。

 食べ難いということで仮面を外して欠月は食事をしていた。
 これがまた食べるのが早い。
 一口の分は少ないのに、次から次へと口へ運ぶ。
 唖然としてそれを見ている悠宇の視線に気づいて、欠月は手を止めた。
「食べないの?」
「えっ。あ、いや、食べるけど」
「美味しいね、ここ。ちょっと綺麗すぎる料理だけど。いいんじゃない?」
「あ、ああ……」
「奇特な彼女さんを連れてデートでもすれば? ここで」
「う。う〜ん」
 店内を見回す悠宇。
 さっぱりしていてシックな感じがなかなかいい。
(確かに……喜ぶかも。料理も美味いし)
 喜ぶ様子を想像して微笑んでいたが、視線にハッとする。
「……………………」
 呆れたような、ものすごい同情したような目で見られていた。欠月に。
「な、なんだその目!」
「思い出し笑いしてるから……。なんかヤバいものでも妄想した?」
「もっ、妄想!?」
「なんか気持ち悪い笑みを浮かべてたから……」
 す、と視線をさげる態度に悠宇は眉をぴくぴくと痙攣させた。
「お、おまえさぁ……」
「すぐそうやって反応するんだから。詐欺にあうよって言ってるでしょ?」
「そういうおまえはどうなんだ! 俺にそうやって言うってことは、そういう教訓があるってことだろ!」
 悠宇の言葉に欠月は「うーん」と可愛らしく唸ってにやっと笑う。
「どうだろう。あったことはないと思うけど」
「思うけど?」
「うん。記憶がないんでね。よくわからないな」
「……………………」
 疑問符を頭の上にぽこぽこ浮かべてから悠宇は「はああああああ?」と大きな声をあげた。
 記憶喪失!? 誰が?
「欠月、記憶喪失なのか?」
「そうだよ? あれ。言ってなかったっけ」
「聞いてないっ!」
「そう。じゃあ言ってなかったんだ。ボクは一年前から昔の記憶がないんだよ。事故に遭ったらしくてね」
「…………」
「そういう顔するのやめてくれる?」
 苦笑する欠月の言葉に我に返り、悠宇は慌てて頷く。
「も、戻るって、記憶! 俺が保証する!」
「べつに戻らなくてもいいんだけどねぇ」
「…………だからどうしてそこで一気にオトすんだ……」
 だが、今回のことで少しは欠月のことがわかった気がした。
(なーんかまだちょっと不愉快になるけど……悪いヤツではない、な)



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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PC
【3525/羽角・悠宇(はすみ・ゆう)/男/16/高校生】

NPC
【遠逆・欠月(とおさか・かづき)/男/17/退魔士】

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■         ライター通信          ■
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 ご参加ありがとうございます、羽角様。ライターのともやいずみです。
 完全に欠月がからかっていますが……いかがでしたでしょうか?
 少しでも楽しんで読んでいただければ幸いです。

 今回は本当にありがとうございました! 書かせていただき、大感謝です!