■神の剣 異聞 Invisible Blade 3 退魔■
滝照直樹 |
【5096】【陸・誠司】【高校生(高3)兼道士】 |
あれから友情を深め、退魔行も2人で行う事が多くなる織田義明と衣蒼未刀。
義明は未刀に剣と神秘を教えていた。
彼は知識を徐々に物にしていく。
あなたも未刀の変わる姿が楽しく思えた(半分嫉妬の場合あるが)。
ある日、2人は大きな仕事に出掛ける。まずは下見だ。
どうも、おかしなマンションがあるらしい。死人の山を見つけたと通報が入ったのにも、駆けつければ、そんなことは全くなかった。
警察では全くわからないようになったため、長谷家に“仕事”が来る。其れを通じて、義明達が仕事を受け持つ形になった。
故に、建築家でもないが、下調べで一度訪れる。義明。
「異様な気分になる」
未刀が呟く。
「固有異界か? 超越するための儀式なのだろうな」
「超越……こんな能力をもって何を得たいのだろう?」
「何、霊長の魂の高みを目指すなど、魔術師を筆頭に神秘使いにとって基本的なことだ」
「そうか……」
お互い、まずは間取りを調べた後、本業準備の為に一度戻る。
“気配”がする。
「魔術師か……三滝を思い出す」
義明はごちた。
「三滝?」
「ああ、前にかなり戦った死者の魔法使いさ」
――あの神の子に封門の剣士か……。
――嬉しいぞ……織田義明、衣蒼未刀……そして……
“気配”は喜んでいた。
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神の剣 異聞 Invisible Blade 3 退魔 陸誠司編
あれから友情を深め、退魔行も2人で行う事が多くなる織田義明と衣蒼未刀。
義明は未刀に剣と神秘を教えていた。
彼は知識を徐々に物にしていく。
あなたも未刀の変わる姿が楽しく思えた。
ある日、2人は大きな仕事に出掛ける。まずは下見だ。
どうも、おかしなマンションがあるらしい。死人の山を見つけたと通報が入ったのにも、駆けつければ、そんなことは全くなかった。
警察では全くわからないようになったため、長谷家に“仕事”が来る。其れを通じて、義明達が仕事を受け持つ形になった。
故に、建築家でもないが、下調べで一度訪れる。義明。
「異様な気分になる」
未刀が呟く。
「固有異界か? 超越するための儀式なのだろうな」
「超越……こんな能力をもって何を得たいのだろう?」
「何、霊長の魂の高みを目指すなど、魔術師を筆頭に神秘使いにとって基本的なことだ」
「そうか……」
お互い、まずは間取りを調べた後、本業準備の為に一度戻る。
“気配”がする。
「魔術師か……三滝を思い出す」
「三滝?」
「ああ、前にかなり戦った死者の魔法使いさ」
――あの神の子に封門の剣士か……。
――嬉しいぞ……織田義明、衣蒼未刀……そして……
“気配”は喜んでいた。
〈陸誠司〉
「超越……なんか〈バベルの塔〉と似てません?」
陸誠司が言う。
「確かに似ているような。実際はどうなんだろうと言うところがあるけど」
織田義明は、ウンウン頷いていた。
当たらずも、遠からずだろう。
一般的に〈バベルの塔〉というのは、人間が、神が住まう“天”に昇ろうとする為に建設したところ、神の怒りによって崩された有名な建造物だ。もしくは、神が降りてくるための階段という説もある。結果的に“崩された”訳なので理由というモノはこの際問題ない。ただ、コレが崩されずに、建造されていれば人が超越する手段の基盤にはなるだろう。
もっとも、人間が超越するというのは人でなくなるわけであり、何か得体の知れないモノになるのは確かだ。目の前に既に人間の皮を被った人外が〜つまり義明〜居るので、其れになりたいと思うモノはいるのはごく一部の人間など当たり前の感情をもつのである。最も、退魔の一族である衣蒼にとっても義明という存在は、恐ろしいとも言える。
「建物自体が何となくバベルの塔ですねぇ。逸話と同じように外装から破壊するのもいいかなぁ……。な、何か悪い事言いました?」
陸誠司が、真剣に塔の破壊を言うと、2人の目から白い目で見られる。
「塔を壊したら其れこそ大事だよ。退魔行は基本的に極秘裏なんだから。目だった事はしない方が良い」
「え?!」
どっちに取ればいいのか分からない言葉だ。
“外観を壊すのか”、それとも“この建造物の中心を壊すのか”。
「ヒョッとして、言い方悪かったスか?」
「思いっきり。あんたの言い方はモノの取りようによっては、危ない。テロリストみたいな……」
溜息をつく衣蒼未刀。
「うう。え〜っと、システムを破壊って言う事を言いたかったんですが」
「あの中身がどうなっているか分からないけどね。最終的にはバベルの塔は破壊される。システムを破壊するか魔術師だけを捉えるかは下見の後だ」
義明が見取り図を見て中に入った。
螺旋階段と、この塔の導線といえる1つだけのエレベーター。不安を感じさせる狭い空間と色彩。バベルの塔とはかけ離れたとも言える不気味さ。其れは天から落ちている蜘蛛の糸とも取れる。
「うあ……」
思わず声を上げる陸誠司。
「見たところ、“気持ち悪い”以外では何にもないですね」
「まあ、普通はそうだよね。良く“こっち側”に居る訳ではないから、“日常”と比べると居座りたくないよね」
義明が頷いている。
「……しかし、此処って不便でないかな?」
未刀が指さした。
確かにこの形としては構造上仕方ないのだろうが、1階には広くロビーとエントランスがある。しかし階を上ると、隔離された迷宮と化す。住んでいる人の確認等もするわけだが至って普通に対応している。
「おかしな話ですよね。違和感だけはあるのに、普通だ」
誠司が感想を漏らす。
「まあ、そうそうおかしい事が起これば、IO2も地元退魔も黙っては居ないさ」
一時はIO2に狙われそうになった義明は苦笑している。
「あ、何かとラップとか!?」
「まあ、条件設定というのはあるだろう」
未刀が霊視を試みる。
確かに何かおかしい波がある。ただ、その流れを把握するには未刀の視る力では看破できなかったようだ。
「今は下見だけ。もう少し情報を集めた方がいいかも知れませんね」
「そうだね」
と、いったん戻る事にする。
下見を済んだわけだが、あの違和感だけでコレといった情報はない。かなり巧妙に隠されているのだろう。しかし、既に敵は神秘使い3人があの場所に現れた事は知っている。先手を打つのだろうか?
「む。何故電話が?」
義明が電話に出る。非通知のようだが……。
「……何?」
電話を切った義明は怖い顔をしていた。
「どうしたんですか? 義明さん」
陸が訊く。
「あのビルに住む魔術師からだ。来い、だとさ」
「……」
既に察知してもおかしくはないが、まさか向こうから誘ってくると言う事は、過去の嫌な思い出を蘇られたのだろうか?
「うう、どうします?」
「向かうしかないだろ? 仕事なんだ。手間が省けると思う」
溜息をつく未刀。
「相手は俺たちの力奪い、使いたがっている事だな」
「つ、使うって! お、俺はそんな力なんて!」
陸が驚く。
「魂の力を侮るな。純粋な力に消化させたときに爆発力は恐ろしい」
そして再び偽りのバベルの塔にたどり着く3人。
下見の時とは違い、異様な気配が外側にあふれ出しそうなモノだった。
「余計に不気味ですね」
陸がぶるっと身を震わせる。
それ以降誰も言葉を発しなかった。
ロビーにたどり着くと、陸が地面を叩く。流れが何か異なっていたのだろうか。とたんに目の前に気の刃が降り注ぐ。
「かなりトラップをしかけていますね。俺が全部解除しますから」
と、2人に前に立つ。
エレベーターや階段からヒトノカタチをしたモノがあふれ出してきた。
幾ら殴っても起きあがるヒトノカタチをしたもの。キリがないと、思う陸。義明は鋼糸を使い、未刀は未だ見ぬ刃を振るう。
「こんなにいっぱい……」
「マネキン工場か? ここは!」
螺旋階段を上る3人。溢れるヒトノカタチ。
普通ならこれを見れば、青ざめるものだ。何の原理で動いているのすら分からない。四肢を斬り裂いても首をはねても動いているのだ。
「うわ! こっち来るな!」
陸が思いっきりけりつける。ヒトノカタチをしたモノはそのまま吹っ飛び、ドミノ倒しの様に後列の物体共に落ちていく。
「あと、数階か!」
最後の階に上る。
何もない広い部屋にたどり着いた。
「ここは?」
――天と地の狭間だ
どこからか声がする。
「!?」
陸が驚く。周りに誰もいないからだ。
「どこに隠れてるんだ! 出てこい」
叫んでみると、笑い声がする。
――道士の魂は美味そうだ。
「うわ、俺の魂は不味いっすよ」
「冗句に聞こえないな」
未刀が刃を持って構える。
「冗句と受け止めるか、それ?」
自分が生け贄の目標なので渋い顔をしている義明。
「魂を食うことで、人間を超越すると言う事は、食人鬼になるつもりなのか!?」
陸が叫ぶ。
――超越している魂。制御を司る魂。磨きが掛かる未熟なる魂さえ揃えば……全てを手に入れる事が出来る。
「え? そんな事をしたって意味がない! 人を犠牲にしてまで」
「最もアレは人と呼べる代物ではないだろう。何処かの神秘使いが何かに取り憑かれたんだろうな」
義明が言う。少し落ち着いた感じの声だ。
「義明さん?」
陸と未刀は義明を見る。
「三滝尚恭の考えだ。其れを消化したのだろう。私の出番という事か」
三滝尚恭。一度義明の魂を奪おうとして超越を測った忌屍者。既に魂と共に知識はなくなったはず、だ。
そして、織田義明の雰囲気が変わる。
その雰囲気に反応してか、部屋が揺れる。恐怖に震えるものだ。
「うわ! この部屋全体が魔術師!?」
陸が驚いた。
「落ちつけ、陸!」
未刀が刀を持って構える。
「え? はい!」
気を取り直し構える陸。
瞬間、視界が真っ暗になった。
闇の中に1つの光。
「ひょっとして、喰われた?」
と言う考えを頭から払う。
陸誠司は、何故義明がこれほどまでの気を持つのか疑問に思った。あれは全く人の物ではない。人間の力は無限と思えるが、何かしらブレーカーがある。危険信号が出れば其れは落ちるのだ。
「考えてみたら俺、義明さんや未刀の事あまり知らないや……」
神格というモノも未だハッキリ分からない。
其れに封門の技についても。
彼らは一体、何を目指しているのだろう? 義明のあの雰囲気は恐怖するモノだったが、孤独すら感じた。
しかしこの闇の中は不快極まりない。何か大事なモノがそげ落ちそうな不安に駆られる。
「そうはいかない! 俺は、まだあの2人の事が分からないんだ!」
何かが弾ける。
彼もまた孤独な少年だった。親友と言える人がどれだけいるのか? 未だ分からない事明かりだ。
彼は、【五凱】を放つ。
光は闇を払いのけた。
視界が光に包まれた。
気が付くと、ベッドの上だった。
「あれ? ここは?」
起きあがる誠司。
「起きた?」
と、前に出会った長谷茜が看病してくれていた。
「俺は一体?」
「仕事の後で倒れたのよ。影斬化したよしちゃんの隣で自然現象の力も借りたから、オーバーワークしたの。暫く地獄の筋肉痛かもよ?」
「うはぁ……」
あの闇の中で力の放出は一体何だったのだろう?
「2人は?! 無事なんですか?」
慌てるように陸が確認する。
驚く茜は、
「え? うん大丈夫。呼んでくる?」
「よ、よかった……。お願いします」
自分では分からない事。訊きたい事がいっぱいあるのだ。
そして、彼らと本当の友達になりたいその気持ちは本当なのだから。
あのマンションが取り壊される事になるのは、後日の事らしい。何かの怒りに触れて破壊される。
End
■登場人物
【5096 陸・誠司 18 男 学生兼道士】
【NPC 織田・義明 18 男 神聖都学園高等部・天空剣剣士】
【NPC 衣蒼・未刀 17 男 妖怪退治屋(家離反)】
【NPC 長谷・茜 18 女 神聖都学園高等部・巫女(長谷家継承者)】
■ライター通信
滝照直樹です。 神の剣異聞 Invisible Blade 退魔に参加して下さりありがとうございます。
さて、バベルの塔と言う発想はなかなか面白かったです。其れを極力使ってみました。如何でしたでしょうか?
神の剣本編や、「かわうそ?と愉快な仲間達」を利用すると、義明の事が何となく分かると思います。
衣蒼未刀君は杜野天音ライターのキャラクターの為、彼の葛藤を体験したい場合「闇風草子」がベストかも知れません(ただし、此方の未刀君と相違はかなりあります)。
では、コレにて失礼します。
滝照直樹拝
20051112執筆
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