■マーブル■
追軌真弓 |
【0630】【蜂須賀・大六】【街のチンピラでデーモン使いの殺し屋】 |
強く身体を揺さぶられ、久世隆司――ジーンキャリアとなった今では『ヒトツデ』とも呼ばれる男は目を覚ました。
「ヒトデ! 雪だよ、起きて」
舌足らずな言葉に細く瞳を開ければ、ホスピタルグリーンの病衣に身を包んだジーンキャリアの少女・ヨツバが紫の瞳で覗き込んでいた。
身体は十八歳だが、記憶操作により現在の精神状態は七歳程度まで退行している。
「ヒトツデ、だろヨツバ」
何度目かの訂正を口にして久世は簡易ベッドから身体を起こした。
長い髪の隙間から垣間見えた腕時計の時刻は午前十一時で、午後の実験開始時間まで三時間もある。
「雪か……実験中止になんないかね」
「ねぇ、雪見に行こう?」
今日、久世と共に実験に参加するはずのヨツバは無邪気に久世の腕を引っぱった。
「ヨツメはどうしたよ?」
ヨツメはヨツバと同じくティターニア計画で生み出されたジーンキャリアで、ヨツバにとって『特別』な少年だ。
「……リーナの所」
感情表現に乏しいヨツバだが、その呟きは寂しそうに聞こえた。
リーナ・アハティサーリはかつてヨツメが空間跳躍能力を使ってまで追いかけた女性研究員で、妖精ラボの本格稼動につき、再びフィンランドより招かれたのだ。
――まだ時間もあるし、いいか。
「仕方ないな。俺が外でうさぎと雪だるま作ってやるよ、ヨツバ。
その前に飯食いに行こう。何がいい?」
「プリン!」
見ていてこちらが肌寒く感じられそうなヨツバに、久世は椅子にかけてあったパーカーを羽織らせた。
白衣のIO2研究員がスクリーンにポインタを合わせ説明している。
会議室に着席しているのは通称『妖精ラボ』の総責任者・各務雅行と、研究員・リーナ・アハティサーリ、ジーンキャリア・ヨツメ、数名の情報解析担当研究員、そしてIO2外部から呼ばれた自分だ。
「まずは現状の確認から。
現在の天候は時折風雪が混じりますが、概ね晴れ。気温マイナス二度。
実験対象地区、半径三キロメートルを封鎖しました。
マスコミ公式発表には『公園内で見つかった不発弾処理』とし、付近の住人は避難させています」
「実験には問題ないな」
各務が言った。
照明を落とした中、スクリーンに映し出された地図を見ながら自分は実験の概要を反芻していた。
公式には初めての、実験場所を外部へと移した神降ろし実験。
媒介はジーンキャリア・ヨツバ。
彼女の意識に働きかけ、何らかの『感情』を発露させ、それに呼応した不可視の絶対存在――『神』を実体化・視覚化し、捕縛する。
バックアップには、すでにヨツバと共に実験場所へと赴いている久世隆司と、ヨツメが付く。
研究員の説明は続く。
「ジーンキャリア・ヨツバと接触、『虚神』出現後は速やかにそれを捕縛。
捕縛を確認した時点でIO2スタッフが回収に向かいます」
それまでは安全な場所で見ているという訳か……。
「不確定要素は多いが、ここ数週間の実験結果からも、今回有益な結果が出せると我々は判断した。
君にも期待している」
各務がそう言って、実験前の打ち合わせは終了した。
ヨツバが悲しみにかられたり喜びに満たされるのは、何を思った時なのだろう?
その感情を、自分は引き出せるのだろうか。
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マーブル
冬の低い位置にある太陽が穏やかに陽射しを投げる午後。
午前中から降り出した雪が、広場へと抜ける小道やベンチ、遊具の上にふわりと積もっている。
軽くステップを踏むように小道を歩く少女の銀色の髪にも、雪は降り続けている。
足跡がつくと雪が踏まれて黒いアスファルトが見えるのが面白いのか、後ろ向きに歩いていた少女――ジーンキャリア・ヨツバが言った。
「人、いないね」
「そうだな」
ヨツバの足跡を辿るように歩くIO2エージェント・久世隆司――ジーンキャリアとしてまたの名をヒトツデは、コートの首元から耳までを覆うネックウォーマーを引き上げながら答えた。
二人が着ている実用一辺倒の黒いキルティング・コートは、幼い精神を宿したヨツバの振る舞いには重すぎ、これから実験任務にあたるヒトツデには軽すぎた。
公園内に一般人がいるはずはなかった。
IO2によって公園を含む半径3kmが封鎖されているのだ。
これからここでIO2は『神』と呼ばれる存在の実体化を行う。
その媒介となるのがヨツバだ。
常に実体化と虚無化を繰り返す不定の存在を、額に開いた第三の目――魔を見つめる『妖精の瞳』で捉えてこの世界に呼び降ろす。
その目的で作り出されたヨツバは腹部に刻印された魔方陣と、全身を覆うパワードプロテクターが無いとこの世界でも存在し続けられない。
半分は『向こう側』の存在なのだ。
久世もまたコートの下にパワードプロテクターを着込んでいるが、彼の場合は純粋に戦闘服の意味合いが強い。
気に入った場所に着いたのかヨツバは歩みを止めてしゃがみこむ。
「うさぎってどう作るの?」
紫の瞳が三つ、久世を見上げた。
「ああ、先に目になる実を取って来なきゃな」
「目?」
「兔の目は赤いんだよ」
午後の実験を知らされていなかったヨツバが研究所の外に出たいと言い出した時、久世は迷ったが一時間程度なら実験開始前に遊べると判断し、ティターニア計画の責任者である各務雅行にも許可をもらった。
記憶を消去されてからは特に意思・感情の薄いヨツバが、自分から行動を起こす事は珍しい。
感情の欠如は第四世代ジーンキャリアに特有の症例だったが、神降ろしにはヨツバの感情が不可欠だった。
神――虚ろな世界から、虚ろな心へと出口を求める存在『虚神』は、媒介の感情を目当てに現われるのだから。
雪だるまを作るよりも小道に足跡を残す方が気に入ったヨツバは、公園に着いてからずっと散歩を続けていた。
そろそろ実験開始時間が来る。
と、久世は肌の表面だけを焼くような、『見られている』感覚を覚えた。
もう始まるか……。
感覚のする方向に久世は片手を挙げて見せた。
「こちら見てますよ、あの人」
デーモン『ホーニィ・ホーネット』が片手を挙げる無精髭の男をその目で捉えた。
デーモンを公園の地下深く展開した蜂須賀大六は、同じくデーモン使いの御守殿黒酒と共に地下へと潜り、ヨツバたちの様子を探っていた。
同化能力を持つ黒酒のデーモン『ピンキー・ファージ』が伝える振動・共鳴音などの情報を、大六の『ホーニィ・ホーネット』の戦闘端末が視覚で補っている。
御守殿黒酒が使役するデーモン『ピンキー・ファージ』は同化能力を以ってその場を支配する。
今、大六たちはピンキー・ファージの同化能力で地下へ身を隠しているのだ。
「へらっとしてるけど、あのオッサンは食えないよォ。あんまり油断しないでね〜」
「一応あの人も協力者じゃないのですか?」
大六は疑問を口にした、が、本心は別の所にある。
協力者が全て手の内を見せてくれるなんて、思ってはいませんよ。俺もね。
同じデーモン使いである黒酒の誘いに大六が乗ったのは、IO2という金蔓の良さと、何らかの繋ぎが出来ればと考えての事だった。
金にまつわる欲望に忠実なら、金で繋がっているうちは信用できる。
そう黒酒も思っているはずだ。
「邪魔はしないだろうけどねェ……ヨツメは今どの辺にいる訳?」
もう一人の協力者であるジーンキャリア・ヨツメも公園内に配置されているはずだ。
「いました。久世さんたちからは死角になる場所で待機してます」
大六の目はホーニィ・ホーネットの視覚と繋がっている。
「そぉ……」
そろそろ作戦開始の時間が来る。
大六は先刻会議室で行われたブリーフィングを思い出した。
白衣のIO2研究員がスクリーンにポインタを合わせ説明している。
会議室に着席しているのは通称『妖精ラボ』の総責任者・各務雅行と、研究員・リーナ・アハティサーリ、ジーンキャリア・ヨツメ、数名の情報解析担当研究員、そしてIO2外部から呼ばれた黒酒と大六だ。
「まずは現状の確認から。
現在の天候は時折風雪が混じりますが、概ね晴れ。気温マイナス二度。
実験対象地区、半径三キロメートルを封鎖しました。
マスコミ公式発表には『公園内で見つかった不発弾処理』とし、付近の住人は避難させています」
「実験には問題ないな」
各務が言った。
実験の概要はこうだ。
ジーンキャリア・ヨツバの意識に働きかけ、何らかの『感情』を発露させる。
それに呼応した不可視の絶対存在――『神』を実体化・視覚化し、捕縛する。
バックアップには、すでにヨツバと共に実験場所へと赴いている久世と、ヨツメが付く。
研究員の説明は続く。
「ジーンキャリア・ヨツバと接触、『虚神』出現後は速やかにそれを捕縛。
捕縛を確認した時点でIO2スタッフが回収に向かいます」
それまでは安全な場所で見てるって訳ですか。
いいですね、高見の見物。
「不確定要素は多いが、ここ数週間の実験結果からも、今回有益な結果が出せると我々は判断した。
君にも期待している」
各務がそう言って、実験前の打ち合わせは終了した。
ぞろぞろと席を立った研究員がドアへと向かう中、各務に大六が近寄る。
「あなた神信じてますか?」
不躾に大六は各務へ隙だらけの乱喰歯を見せて笑った。
各務は冷ややかに一瞥したが、特に気分を害した様子も無く大六の言葉を待っている。
「俺は信じてます。
デーモンと神はコインの裏表ですからね。
俺ならコインを確かめようとゴシゴシ擦らないですな。
いつ穴が開くかわかりませんからね」
そう言ってうやうやしく身体をかがめると、大六の胸元のネックレスが音を立てた。
幾重にも巻かれたゴールドチェーンだ。
「まぁ、老婆心ながら」
各務は付け加えられた皮肉ををさらりと交わして答えた。
「私は神なんて信じていない。
それが神だと、そう言った方が大多数の人間にはわかりやすい概念だからそう呼んでいるだけだ。
神と言う名前は未だに大多数の人間には大きな影響力がある。
それを利用しているだけだ」
淡々とそう答え、各務は白衣を翻した。
「君もその首に巻いたものは擦らない方がいいな」
各務が続けて口にした言葉は本気で言っているのか、それとも皮肉を込めての言葉なのか判断できなかった。
「薄いメッキが剥がれる」
あの各務って男、とんでもない現実主義者ですね。
利用できるものは全て使い切る……フフ、嫌いじゃありませんよ。
大六の思考を黒酒の言葉が遮った。
「時間だよ」
黒酒の言葉と共に、ピンキー・ファージと同化した地面が溶け出し、その上にあった公園のジャングルジムが飲み込まれてゆく。
一旦形を変えられた子供の遊び場は、ピンキー・ファージの海から鉄の触手になってヨツバに迫った。
それを追うように、拘束されたヨツバの身体をざわざわと土の群れが動き回る。
えげつない動きですねえ。
ま、その位しないとあのヨツバって娘が神を呼べないようですがね。
ヨツバは一見隣にいる黒酒と同年代のように見える。
が、公園での行動を見ていると小学生のようだった。
表情はやや乏しいが、雪を固めて遊んでいる姿は子供と言っても良い位だ。
黒酒は以前ヨツメのプロテクターをピンキー・ファージで溶かした際、デーモンの一部を取り込まれてしまった事から、同じジーンキャリアのヨツバにも今回はあくまでプロテクター越しに接触しているようだ。
口と鼻を覆われ、生命の危機にさらされているヨツバを、久世は怒りも悲しみもせず、ただ見ている。
「っ……ぐっ、ぅあ……あ!!」
「……ピンキー・ファージ。黒酒君か」
以前にも久世はこのデーモンの働きを見ている。
ヨツバが苦しむ姿にヨツメも注目している事は、ホーニィ・ホーネットからも伝わってくる。
ヨツバから押し殺した殺気に近い波動を感じる。
それが大六に向けられたものかは判別つかないのだが。
黒酒から「ヨツバはヨツメの彼女だから、あんまり手荒な事しないでねェ〜」と聞かされた時は半信半疑だったが、今の表情を見るとあながち冗談でもないらしい。
実験の趣旨に感情を交えない久世ならば、目の前の状況に取り乱す事は無いだろう。
けれどヨツメならば?
黒酒が更にピンキー・ファージの動きを強めた。
「苦しいいかァい? そういう時はどうすればいいか、わかってるよねェ!」
妖精ラボで実験をモニタリングしている研究員が、モニターの画像を解析する。
「媒介の周囲に虚数空間反応。
29秒後に実体化と予測されます」
虚神は極時的な虚数空間を展開した後実体化する事がわかっている。
今までのデータの積み重ねから、出現までの時間もかなりの精度で予測できるようになっている。
各務は何の感情も表さず、ただ現場から送られてくる実験の様子を見ていた。
その横顔をリーナは沈痛な面持ちでうかがった。
「ヨツバ、ヨツメとヒトツデに接近しています! 制止しますか?」
研究員がそう言って各務を振り返る。
モニターにはヨツバに駆け寄るヨツメが映し出されている。
「……ヒトツデが止めるだろう。
実験続行。
制止を聞かなければ処分しても構わない。そうヒトツデに伝えるよう」
「了解しました」
苦しむヨツバに駆け寄ろうとするヨツメの腕を久世が取った。
「ヨツメ、これは実験だ。
あんな程度では死なない。再生能力の方が上回る」
事実、ヨツバは瀕死に陥りながらも身体を再生し、ピンキー・ファージに拘束されながら生きている。
「死の恐怖か。エグイ感情選んだね黒酒君も」
呟く久世の肩をヨツメが掴んで揺さぶった。
しかしその動きは弱々しい。
「何で……ヨツバを苦しませなきゃならないのか、わからないんだ……」
そのために作られたからだ。ヨツバも、ヨツメも。
だがそう言ったところで、何かが変わるだろうか。
久世がためらっていると、ヨツバがふと虚空を見上げた。
「……虚神が降りて来る」
予想よりも早い出現の予見に、久世はヨツメに指示を出した。
「ヨツメはヨツバを守れ! 虚神はヨツバを取り込もうと襲ってくるぞ!」
気圧が急激に変化し、空間が凝縮してゆく。
その様子をうかがう大六が感嘆の声を上げた。
ゾクゾクしますね……! 神が降臨する姿は、なんておぞましいんでしょうか!!
「これが、神の姿ですか……!」
神と呼び慣らされたものが、ヨツバの上の空間に姿を現してゆく。
歪んだ空間の狭間から姿を現す神の影は、二つあった。
「虚神第7844号『ヨルデガルド』確認しました」
「続けて虚神第221号『アベルシルド』確認しました」
ヨルデガルドは不完全な翼を両腕に着けた蜥蜴を思わせる姿だ。
長い尾を持ち、つるりとした肌の表面は銀の鱗が覆う。
進化の過程で鳥と爬虫類が分かれる、その一瞬の姿をヨルデガルドは持っていた。
一方アベルシルドは、完全な人間の姿だ。
豪奢な甲冑の背には巨大な翼を持ち、その手には長剣が握られている。
波打つ金髪を頬にまとわせた女性の姿にも見えるが、その雰囲気は猛々しく危険だった。
虚神二体はヨツバの前に立つヨツメと久世に注目しているようだ。
「黒酒君たちは地下か。俺たちが狙われるな」
虚神の動きから目を逸らさずに、久世が呟く。
虚神を捕獲するのが今回の実験目的だ。
単純に破壊すれば良い訳ではない。
「出ましたよ、神様が!」
興奮を抑え切れない様子の大六に黒酒が言う。
「……それじゃ、始めよっかァ!」
ピンキー・ファージに拘束されたヨツバを黒酒は地下へと引き降ろした。
ヨツバが傷付けられては、せっかく出現した虚神もまた失いかねない。
ヨツバが視界から消えたので、二体の虚神は目標をヨツメと久世に替えて中空から二人に迫る。
「シールド・ビーズは隙があったら撒いちゃっていいよン」
「わかりました」
女王型の本体が無制限に生成する小型の端末が、低い唸りと共に虚神を囲む。
ホーニィ・ホーネットの端末が虚神の周りを無数に舞い、間髪入れず一斉に攻撃を仕掛けた。
そしてその隙を逃さず、更に土と同化したピンキー・ファージが鋭い地の槍を形成して打ち込む。
ジーンキャリア二人が多少巻き込まれているようだが、黒酒と大六の攻撃は続く。
と、地下に匿ったヨツバの様子に黒酒は変化を感じたようだ。
今は地上にいた時よりも拘束を緩めているのだが、デーモンが伝えるその鼓動の早さと息遣いは一向に穏やかにはならず……むしろどんどん早まっているらしい。
「虚神が……一つに……」
ホーニィ・ホーネットが見せる映像に、大六は声が震えるのを感じた。
切り刻まれた神が、粘土細工のようにぞんざいに混ぜ合わされ、一つにされていく。
大六がホーニィ・ホーネットの眼を借りて見たものは、崩れた二体の虚神が無秩序に組み合わされて一体になりつつある光景だった。
輝きを放って美しかった人間の顔の位置に爬虫類の瞳が無数に開き、甲冑を突き破って翼が腕・足からも不規則に生えている。
蜥蜴の目の中心に、人間と同じ瞳が一つだけ開いた。
その色はヨツバの持つものと同じ、アメジストの紫色だった。
「ヨツバが虚神を支配してるか……」
久世は舌打ちし、腕のファントム・スレイブを解放させようと構えた。
支配……いや、ヨツバは神を融合させて作り変えているのか。
時間が経つほどこちらが不利になるのは明白だ。
「ビーズを!」
黒酒の言葉と同時にホーニィ・ホーネットがバラ、とビーズを散布する。
実体化した虚神の身体に当たったビーズが、薄青い燐光を発して幾何学模様を描く。
その幾何学模様が完全な魔法円を描く一瞬前、虚神がビーズの一部を握り潰した。
乾いた唇を舐め、黒酒はシールド・ビーズを使える一瞬を作る為、土の槍を虚神の四肢に打ち込んだ。
その隙を逃さず、再びホーニィ・ホーネット素早くがビーズを撒く。
今のうちにIO2に恩を売っておくのもいいですね。
今度は完全な円が描かれ、それを中心とした球が虚神を包み込んで鋭い爆発音を響かせる。
シン、と静まり返った公園の雪の上に、手の平ほどの半透明な球が一つ転がった。
地中から姿を現した大六たち三人に、ヨツメと久世が歩み寄ってくる。
久世は少し離れた場所で大六と話し始めた。
「お疲れさん。いろいろ面食らったろ」
「いえ、大変に面白かったですよ。ああも人工的に神をこの世界に寄せるとはね」
「そりゃここ数年で飛躍的にマニュアルもレベル上がったし、当然だろう」
大六はマニュアルという単語に笑った。
「あなた方は神を呼んで、どうするつもりなんですか?」
眠そうに一つ欠伸をして、久世は半眼を大六に向ける。
ジーンキャリア化した影響で久世は睡眠時間を多く取らないと活動できなくなったらしい。
「……それは各務に聞くといいさ。
俺は使われてる身だからうっかりバラす訳にもいかないよ」
と言う事は、この久世って男もただのIO2エージェント以上に、内情を知っているという事ですか……。
大六はヨツバを抱きかかえて歩くヨツメと、全身を防護服で覆ったIO2研究員が虚神入りの球を回収していくのをぼんやり見つめながらそう思った。
(終)
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【 0596 / 御守殿・黒酒 / 男性 / 18歳 / デーモン使いの何でも屋(探査と暗殺)】
【 0630 / 蜂須賀・大六 / 男性 / 28歳 / 街のチンピラでデーモン使いの殺し屋】
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■ ライター通信 ■
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蜂須賀大六様
納品が遅れてしまいまして、大変申し訳ありませんでした。
納品が遅れてしまった時点で、果たしてお金を頂くに値するのか、ものすごく迷ったのですが……。
リテイクやお叱りのメールもお受けしたいと思いますので、ご意見あればどうぞお寄せ下さい。
御注文ありがとうございました。
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